ひとりで出来る自主制作映画

その9 はじめに撮影ありき。

第6回で、監督あるいは主要スタッフが考えなければならない、やらなければならない事柄についてお話をしましたが、もう一度おさらいしてみましょう。

1.予算を調達する
2.スタッフを集める
3.キャストを集める

4.予算を管理する
5.ロケ地等撮影場所を選定する
6.移動手段、車両等の取扱いを決定する
7.スタッフ、キャストに対するギャラの取扱いを決定する
8.食事と食費の取扱いを決定する
9.移動に伴う交通費の取扱いを決定する
10.衣装、道具等の取扱いを決定する

11.脚本とスタッフ、キャストのスケジュールから撮影スケジュールを決定し本人に通知し、撮影スケジュールを運用する
12.演技指導する
13.演出プラン、撮影プランを決定する
14.照明する
15.撮影する
16.同時録音する
17.服装、セリフ、その他を記録する
18.音楽、効果音等を準備する

19.編集する
20.録音する

21.上映する

監督やスタッフやらねばならないこれらの事柄(工程/技術)のうち、最も重要でかつ技術やセンスが必要な工程(技術)を3つ挙げるとすると、次の3つの工程(技術)が挙げられます。

1.撮影
2.編集
3.録音

勿論、その他の工程、例えば照明については技術やノウハウ、センスが必要になりますし、記録については経験から得られるノウハウや要領が重要になってくるように、全ての工程についても技術、ノウハウ、センス等が必要になりますが、最重要な工程(技術)を3つ選ぶとすると、多くの映像作家はやはりこれら3つの工程(技術)を選択するのではないでしょうか。

事実、あなたが仮にどこかの映像作品制作サークルに属した場合、あなたはスタッフの一員としてこれら3つの工程(技術)のうち、最低でもひとつの工程(技術)を学ぶ必要があると思いますし、実際はサークルに入った瞬間に、それらの技術部門のひとつに配属されてしまう事になるのではないか、と考えられます。

そういった場合、あなたがサークル内でスタッフとしての経験を経て、監督になれた場合、あなたは撮影あがりの監督、編集あがりの監督と称される事になる訳です。

ところで、私見ですけど、現在第一線で活躍する映画監督には、撮影(カメラマン)あがりの監督が多いような気がします。古くはスタンリー・キューブリックやピーター・ハイアムズ、最近ではバリー・ソネンフェルドやヤン・デ・ボンとかが、パッと思い出されます。

さて、これらの工程(技術)を、皆さんの身近な料理に例えると、次のように考えることが出来ます。

1.撮影
  食材の選択と調達
  なんといっても、料理は食材(素材)が重要(命)です。

2.編集
  食材の調理
  いくら素晴らしい食材(素材)を使ったとしても、食材(素材)を生かすも殺すも、料理人の腕次第です。

3.録音
  料理の修飾
  素晴らしい料理が出来たとしても、食器や飲物、雰囲気やサービスが悪ければ料理は台無しです。

いかがでしょう。これら3つの工程(技術)の大切さは解っていただけたでしょうか。

そして皆さんは、これから自主制作映像作品の制作に携わる事になる訳であり、最初に行わなければならないの工程(技術)が、撮影という工程になる訳ですね。
 
ひとりで出来る自主制作映画 その10
http://diarynote.jp/d/29346/20031003.html

ひとりで出来る自主制作映画 その1
http://diarynote.jp/d/29346/20030806.html

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「閉ざされた森」

2003年9月23日
「ダイ・ハード」のジョン・マクティアナンが仕掛けるシンクロ・サスペンス。

と言うコピーの話題作「閉ざされた森」を観た。
本作の監督であるジョン・マクティアナンの枕詞が未だに『「ダイ・ハード」の』というのがなんとも悲しいのだが・・・・。

いきなり余談だが、わたしが思うに「ダイ・ハード」は脚本が良く出来ている映画だが、その中での最高のプロットは、ナカトミ・ビルを襲った一味は、テロリストを装ったただの強盗だったということ。
ただの強盗が何故テロリストを装ったのか、と言うと、FBIが「FBIのテロリスト対策マニュアル」通りの対策(ビルの電源を切る等)を取ることを彼等は期待していたのである。
このプロットは「ダイ・ハード」のアクション指数には大きな影響は与えないかも知れないが、わたしたちのようなアクション映画にも論理的な脚本やプロットの冴えを期待するような人達にとっては、非常にキャッチーなプロットだったのだ。
また、このプロットにより、アラン・リックマン演じる強盗の首謀者が非常に頭が良いという印象を観客に与えているのだ。

で本作「閉ざされた森」は、そのようなプロットを5倍位深く突っ込んだような作品になっているのだ。

オープニング・クレジットから「ボレロ」がかかるあたりは、どう考えても黒澤明の「羅生門」へのオマージュとしか考えられず、物語が二転三転するだろう事は、多くの映画ファンには想像がつくだろうと思う。
しかもタイトルの「閉ざされた森」は「羅生門」の原作である「藪の中」と符合する。

しかし、本作は一般の映画ファンが考える真実以上の真実が用意されているのは否めない事実である。
しかしながら、字幕がラストのどんでん返しを意識したものになっており、ラストの想像がつきやすく、若干興ざめの印象を受けた。

また、この脚本は、おそらく観客を騙すことを目的としていると思われ、映画に対して真摯な態度で望む観客にとって、素直に楽しめるものでは無いかも知れない。
事実、最後の真実が明らかになっても、「そうか〜、そうだったのか〜、やられた〜。」というようなカタルシスは感じづらい。

また、本作は前述のように「羅生門」の影響下にある作品の一本なのだが、真相は「藪の中」ではなく、ひとつの明確な解釈を観客に与えている。この辺は正にハリウッド作品の所以であろう。
しかし、ラストで再度かかる「ボレロ」により、もしかしたら・・・・、という印象を観客に与えていることも否めないのではないだろうか。

役者的には、ジョン・トラボルタ復活、といった感じであろうか。ラストの真実に向けての伏線的演技、物語進行上の不可解な矛盾的行動が、深読みをする観客にはわかりやすく、ちと残念であった。

最近出ずっぱりのサミュエル・L・ジャクソンは「愛と青春の旅だち」のルイス・ゴゼット・ジュニアか、「フルメタル・ジャケット」のリー・アーメイのような鬼軍曹振りを発揮している。

ヒロイン役ののコニー・ニールセンは観客の代弁者的存在で、本作の主役と言えよう。観客はこのコニー・ニールセンと同時に真実を知り、悩むのであるのだ。

最終的には、ちょっと理屈っぽいけど、どんでん返しか楽しい娯楽作品に仕上がっていると思うが、全ての観客に受け入れられるかと言うと若干疑問である。
明確な回答が提示されるのが、わたし的には残念である。
ひとりで出来る自主制作映画

その8 閑話休題かも

本コンテンツ「ひとりで出来る自主制作映画」第七回の最後に、わたしは皆さんにこういった問いかけをしました。

1.映画制作サークルという組織の中で歯車として映像制作に携わり経験や実績を積み、いずれ監督としての役割が回ってくることを期待する。

2.とりあえず、必要最低限の人数、−ここではひとりということ、−で映像作品の制作を何度も何度も経験し、その映像作品を見せつつ、あなたと同じくらいやる気のあるスタッフやキャストを集め、ゆくゆくは映画制作サークルを主催する。

3.映画制作サークルに属し、スタッフとして映画制作にかかわる一方、必要最低限の人数、−ここではひとりということ、−で映像作品の制作を始め、映画制作サークル内で、あなたの実力を認めたスタッフやキャストを集め、監督として自主制作を行う。

さあ、あなたはどれを選択しますか?

と、言っても、当コンテンツ「ひとりで出来る自主制作映画」がターゲットとする読者層は、現在映像作品の制作経験は無いけれども、将来自主制作映像作品の監督として5〜10人規模(キャストを含めると、のべ20〜50人規模程度かな)のプロジェクトを率いて行きたい方を対象としています。
そして、当コンテンツは、そういった方に対し、将来の自主制作の前段階として、映像作品制作の経験と演習を行ってもらうことを想定しています。
ですから、わたし的には、1を選択されると何となく困ってしまう訳です。

1を選択し、映画制作サークルという組織の中で、監督としての役割が回ってくることを期待する場合の問題点としては、前回も説明しましたが、仮に50名規模の映画制作サークルがあったとして、年間にそのサークルのオフィシャル作品として制作される映像作品は、せいぜい5本位だと思います。従って50名規模の映画制作サークルに入った場合、5/50以内に入らないと監督として映像作品を制作する事は事実上不可能ということになります。
そして、映画制作サークルにとって新参者であるあなたは、サークル内であなたの監督としての実力をサークルの皆さんに十二分に認めさせる必要があるのです。

さて、漸く本コンテンツの本題である「ひとりで出来る自主制作映画」にたどり着くことが出来ました。

ここからは、どうすれば、ひとりで自主制作映像作品を制作することが出来るのかを、いくつかのヒントや例を挙げつつお話していきたいと考えています。
また、本コンテンツでは、技術的な話、 −−例えば撮影はこうする。とか編集はこうやるのだ。または、映像編集ソフトの使い方等、−− については、基本的にお話しするつもりはありません。あしからずご了承願います。

それでは、先ず現在のあなたの状況を確認してみましょう。

1.撮影機材を自由に使える環境にある。
2.編集・録音機材を自由に使える環境にある。
3.監督として撮りたい企画やシナリオが何本かある。

こんなところでしょうか。
しかし、現状のところスタッフはあなたしかいませんし、キャストも、語弊はありますがあなただけです。
このような状況では、自らがあたためているシナリオや企画を基に映像作品を自主制作するのは、余程じゃない限り困難だと思います。

次にあなたの目標を考えて見ましょう。

1.映像作品の自主制作を趣味として続けていく。
2.映像作品の自主制作という趣味を通じて実益を得ていく。
3.将来、商業映像作品の制作を仕事とする。

人それぞれいろいろな考え方を持っていると思いますが、わたし的には、1か2あたりが良いのではないかと思います。
3については、様々な問題点がありますし、当コンテンツの範囲を超えてしまう可能性が多々ありますので、もし機会があれば、別途考えて行ければ良いな、と思っています。

また、2の実益を得るという点について、自主制作の映像作品で、「お金なんて、貰えないよ。」という考えを持つ方もいらっしゃると思いますが、本コンテンツは、訳のわからない哲学的自己満足系の映像作品の制作ではなく、観客を意識し、ある程度娯楽性があり、映像作品として成立している作品の制作を目指している方を対象としています。
勿論、試作的な映像作品でお金を貰う事はおそらく出来ないとは思いますが、お金を貰う、ということは、お金を貰うなりの作品を制作する必要と責任が制作者側に発生する。ということになります。
また同時に、作品を完成させる責任も発生しますので、自主制作映像作品といえども、将来的にはある程度の報酬を得られるような作品を制作するつもりで、また次回の制作費を捻出するつもりで、映像作品の制作に望んだ方が、いろいろ学ぶことが多いのではないかと考えます。

ひとりで出来る自主制作映画 その9
http://diarynote.jp/d/29346/20030924.html

ひとりで出来る自主制作映画 その1
http://diarynote.jp/d/29346/20030806.html
 
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メルシャン品川アイマックスシアターにて、「ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密」を観た。

これは、沈没した本物のタイタニック号を潜水艇や小型潜水艦(ROV)を使用し、撮影したドキュメンタリーで、フォーマットはアイマックス、しかも3Dメガネ着用の3D映画となっている。

ジェームズ・キャメロンと言えば、「ターミネーター」や「エイリアン2」、「アビス」、「トゥルー・ライズ」、「タイタニック」等で知られる映画監督ですが「タイタニック」以後現在まで監督作品はありません。
キャメロンの関心は、最早「ターミネーター」のような作品には無く、自らの財力を海底探査に費やし、今回のような海底探査に移ってきているようですね。

本作の原題は"GHOST OF THE ABYSS"。原題が示すとおり本作は題材を「タイタニック」に求めていますが、実際は「アビス」系の映画となっています。

事実「アビス」に出てくるような潜水艇や、ギークやリトル・ギークのようなROVを実際に使用し、タイタニック号の内部の撮影に望む辺りは、正に「アビス」感覚と言えるでしょう。

内容は、前述のようにニューファウンドランド島沖に沈没したタイタニック号を撮影したドキュメンタリーであり、娯楽性には欠けますが、NHKスペシャル系の良質の科学ドキュメンタリーと娯楽作品の中間の作品に仕上がっています。

また、本作はアイマックスのフォーマットでしかも、3D映画ということで、海面上の波浪状況の3D感覚は大変素晴らしい効果を与えているし、いちいち3Dを意識した広角的画面構成は、3D感をいちいち煽っている。

勿論3D映画をいままで一回も観たことの無い人もいると思いますが、そういった方々には、なんらかの3D映画を是非体験して欲しいと思うのだ。3D映画は事実映画を超えた新たな映像体験と言えるのではないだろうか。

しかしながら本作のメインの題材となるタイタニック号内部の3D感は、ROV(ジェイク&エルウッドと名づけられている)のカメラ機材の問題か、それほど効果的ではないが、実際に「あの」タイタニック号の内部を見ることが出来るのは、非常に素晴らしい体験ではないだろうか。しかもアイマックス・フォーマットですからね。

※ ジェイク&エルウッドとは、ご存知だと思いますが、ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが演じた「ブルース・ブラザース」の主人公の名前です。

※ 因みに、「アビス」に登場したROVの名前ギークはオタクという意味です。
先週末、Naeba MTB FESTA The 22nd MAZDA CUP に参加してきました。

これは一体何だ、という方のため、簡単に説明しますと、一言で言うと、MTB(マウンテンバイク)という種類の自転車の大会です。
舗装路では無く、悪路を走る自転車のレースで、会場は苗場スキー場でした。

こういった大会は、日本国内でも年間何十回も開催されており、その中でも大きな大会の多くは長野県や新潟県のスキー場や高原、湖等々で開催されています。

わたしは比較的大きな大会には年間6〜8回位参加していますが、自転車というスポーツは日本国内ではまだまだ裾野が狭く、場合によっては、オリンピック級の選手たちと一緒に走ることが出来るという、まだまだこれからのスポーツと言えるかも知れません。
今から頑張ればオリンピックに出れるかも、だよ少年少女諸君!

で、わたしは、いくつかあるレースの中で「Jamis 4H エンデューロ」(4時間耐久レース)にソロエントリーしました。このレースは簡単に言うと、4時間経った時点で周回数が一番多いチームが勝つというもので、多くの場合は何人かでチームを組み、ピットで選手交代をしながら順番に走るレースです。
「鈴鹿8耐」や「ル・マン24時間」をイメージするとわかりやすいかな。

わたしたちのチームは、ソロ:3チーム、男子:2チーム、女子:1チームの合計6チームが「Jamis 4H エンデューロ」にエントリーしました。
で、わたしは前述のようにソロエントリーした訳です。

4時間と聞くと、パッと見、時間も短いしそんなに大変そうではありませんが、山中の4時間ですから実は結構大変です。また、4時間連続でスポーツをすると考えると、その大変さが伝わるのではないでしょうか。
因みに、初めて自転車のレースに出た際感じたのは、「あぁ世の中には体力的にこんなに辛いことがあったんだな。」ということでした。

更に、コースの全てのポイントを自転車に乗車した状態で通過できる訳ではなく、場合によっては自転車を担いで走ったり、押して走ったりせざるを得ないポイントもあるのです。
ひどいレースになると、乗車率が低く「自転車担ぎマラソン大会けみたいなレースもあったりします。

でわたしは、ソロの耐久は2回目のエントリーなのですが、前回のソロの際(東伊豆)は、疲労困憊のためか脳内麻薬が出て、とってもハイな感じになりまして、−−ランナーズ・ハイみたいなものですよね−−、今回もなるかな、と期待していたのですが、そうでもありませんでした。
コース的には、わたしにとっては心肺機能に対する負荷より、筋力に対する負荷の方が大きく、足が持たないのですが、レース中も他のライダーと平気で会話できるような心肺機能には余裕がある状況でした。ハイになりきれなかったのは、このせいかも知れませんね。

で、何故わたしがソロ・エントリーでレースに参戦したかと言うと、ソロは自分との戦いだ、と考えるからです。
例えば楽をしようとすれば、1時間でも2時間でも休んでいれば良いし、逆に頑張ろうと思えば、いくらでも頑張れる環境のレースなのです。良くも悪くも自分の責任なんですから。

まあ、結果的には順位はあまりよくありませんでしたが、休憩の取り方や、自分の頑張りには満足がいく結果となりました。

因みに女子チームは4時間耐久で、2位入賞(昨年3位)し、他のメンバーは、じゃんけん大会で自転車(12万円相当)を1台ゲットしました。

男子チームはお立ち台にのぼるのは、結構大変なんですよね。
ひとりで出来る自主制作映画

その7 To do, or not to do, That is the question.

本コンテンツ「ひとりで出来る自主制作映画」も回を重ね、7回目を迎えてしまいました。
不定期連載で、しかもシリーズ全体を通した論理的な構成を全く行っていないので、論旨に瑕があるかも知れませんし、また同じ処を何度も何度も回っているような印象を与えるかも知れませんが、ライヴ感を大切にこのまま進めたいと考えています。

しかし、前回の第6回目から、しばらく間が空きましたので、どんな話になっていたかを簡単にまとめますと、前回は5〜10人規模のプロジェクトとして、映像作品を制作する場合、監督やメイン・スタッフが直面する困難を列挙してみました。

今回は、それに鑑み、何故わたしは、ひとりで自主制作を行うことをおすすめするのか、をお話したいと思っています。

さて、それでは、前回のお話を受けて、論を進めることにします。

前回示した通り、監督として5〜10人規模のプロジェクトチームを率い、映像作品を制作するには、本来監督がやるべき映像作品の制作に関する事柄以外に、些細なそれでいて重要な「やらねばならぬ事柄」が山のようにあります。
何故あなたがそれらの事柄をやらねばならないのかと言いますと、その映像作品の制作は、あなたが監督として、あなたが中心となって、あなたが牽引すべき、あなたのプロジェクトであり、他のスタッフやキャストは、あなたに口説かれて、遊び半分、嫌々ながら、またはボランティア感覚でついてきているに過ぎないからです。
あなたは監督である以上、それらの「やらねばならぬ事柄」を全てこなしつつ、または進捗管理しつつ、メインの事柄である映像作品の制作を行わなければならないのです。

これははっきり言って大変です。語弊はありますし、軽く矛盾していますが、必然的に瑣末なことを行う、優秀なスタッフが絶対的に必要になるでしょう。
しかし、経験の無い監督に、それほどやる気がある訳ではないスタッフをマネージメントし、叱咤激励し義務を果たさせる事は出来るでしょうか。
これはまるで、船に乗ったことの無い人が船長として、素人同然の船員たちを使って大海原を航海するようなものだと思います。
しかも、集まったスタッフは前述のようにあなたほど本気で映像作品を作ろうとは思っていないのです。
何しろ彼らは楽しいことを求めて、遊び感覚のボランティア気分で、このプロジェクトに参加しているのですから。彼らは、最初から義務や役割を負いたいとは考えていないのです。

このような状況では、本来あなたがやらねばならぬ事柄に集中する為、やはり、監督として映像作品制作の経験を積む必要が出てきますね。
これは映像制作に集中する為、映像作品の制作の全工程を体験し、些細な事柄を軽くいなすことを覚え、またスタッフやキャストをマメージメントする経験を積む必要性が感じられるからです。

それなら、どこかの映画サークルに入って、スタッフとして経験を積みますか。
でも、数ある映画サークルはスタッフやキャストを求めているのであって、監督を求めているのではありません。
何しろ、監督になりたい人達が、映画サークルを主催し、その下で働くスタッフやキャストを募集しているのですから。
制作すべき企画やビジョンは既にあり、後はそのビジョンを実現する為の道具としてのスタッフやキャストを彼らは求めているのです。

余談ですが、仮に50名規模の映画制作サークルがあったとして、年間にそのサークルとしてのオフィシャルな作品として制作される映像作品は、経験上せいぜい5本程度だと思います。
つまり、50名規模の映画制作サークルに入った場合、5/50に入らないと監督として映像作品を制作する事はできないのです。

あなたはスタッフで満足できますか。
確かあなたは監督をしたかったのではなかったんですか。

どうです。だんだん見えてきましたね。
ここで大きな分岐点が見えてきました。

1.映画制作サークルという組織の中で歯車として映像制作に携わり経験や実績を積み、いずれ監督としての役割が回ってくることを期待する。

2.とりあえず、必要最低限の人数、−ここではひとりということ、−で映像作品の制作を何度も何度も経験し、その映像作品を見せつつ、あなたと同じくらいやる気のあるスタッフやキャストを集め、ゆくゆくは映画制作サークルを主催する。

3.映画制作サークルに属し、スタッフとして映画制作にかかわる一方、必要最低限の人数、−ここではひとりということ、−で映像作品の制作を始め、映画制作サークル内で、あなたの実力を認めたスタッフやキャストを集め、監督として自主制作を行う。

さあ、あなたはどれを選択しますか?

ひとりで出来る自主制作映画 その8
http://diarynote.jp/d/29346/20030922.html

ひとりで出来る自主制作映画 その1
http://diarynote.jp/d/29346/20030806.html
 
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「運動靴と赤い金魚」、「太陽は、ぼくの瞳」で知られるイランの巨匠マジッド・マジディの「少女の髪どめ」を観た。

「運動靴と赤い金魚」はともかく、本作「少女の髪どめ」は、それほど話題にもならなかった映画であり、わたし的には、本作を見逃した場合、おそらく一生観ない可能性が高いと思われるのだ。

で、今回例によって「新文芸坐」で「ボウリング・フォー・コロンバイン」の併映ということで、観ることが出来たのである。

物語は建築現場で働く17歳のイラン人少年が、アフガニスタンから、少年だと偽った上、非合法に出稼ぎに来た少女に、経済的に全てを捧げる。という、ある種救いの無い悲しい物語である。

この映画を観て思い出したのは、ベトナムの寓話の「サソリとカエルの話」である。(この寓話の原典は諸説あります。)

サソリがカエルに「背中に乗せて川の対岸まで連れて行ってくれ」、と頼むんですが、カエルは、「だって君は僕を刺すだろう。だから嫌だよ。」と言うと、サソリは「君を刺したりしたら僕も溺れ死ぬじゃないか。だから心配することはないよ。」と言い、カエルは嫌々ながらも納得し、サソリを背中に乗せ、川を渡ることにしました。
しかし、川の真中あたりに到達すると、サソリはカエルを刺し、サソリとカエルは双方とも溺れ死んでしまう。と言う物語です。

わたしが聞いた話では、「なんで刺すんだよ。二人とも死んじゃうじゃないか。」というカエルの問にサソリが「残念だけど、これがベトナムなんだよ。」と答える、というものです。※

で、「少女の髪どめ」は、「これがアフガニスタン」で「これがイラン」なんだ、と言っているような気がしたのである。

また、感覚的にはチャン・イーモウの「至福のとき」に似た印象を受けた。
語弊があるが、誤解を恐れず言うならば、両作のひとつのコンセプトは、社会の底辺で貧困に苦しむ人々が、それ以上に貧困に喘ぐ人達に対し、自らの破滅を厭わず経済的な援助を行なう。というもので、手垢がついた言葉で表現するならば「無償の愛」ということなのだ。

「至福のとき」と「少女の髪どめ」を並べて観ると、非常に興味深いと思います。
機会があれば、観て見てください。

※ その他には、「これが東南アジアなんだよ」とか「性(生まれつき)だから仕方がない」とか、複数のセリフがあるようです。
この寓話は、「サイボーグ009」とか「クライング・ゲーム」とかで引用されています。
また、「ベトナム戦記」(開高健)と言う書籍にもこの寓話が書かれているようです。
おそらく石ノ森章太郎は「週刊朝日」に掲載されていた記事(後の「ベトナム戦記」)を引用したのではないかな、と思います。

またサソリとカエルではなく、サソリとワニの同様の寓話もあるようです。これは「アフリカ」らしいです。

オーソン・ウェルズの映画でも、このサソリとカエルの寓話が語られる映画があるらしいです。

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マイケル・ムーア監督作品「ボウリング・フォー・コロンバイン」を観た。

本作は東京では「恵比寿ガーデンシネマ」でしばらくの間ロングラン上映されていたのであるが、わたしは結果的に見逃してしまい、非常に残念な思いをしていた。

で、わたし的「見逃してしまった映画の最後の砦」とも言える池袋「新文芸坐」のしかも最終日でなんとか観ることが出来たのだ。


はっきり言って、素晴らしい作品だった。

こういった作品の前では、わたしは語る言葉を持たないし、この作品は既にDVD国内版も発売されており、今後も目にする機会が多いと思うが、是非観て欲しい素晴らしいドキュメンタリー映画なのだ。

しかも泣けるのである。
わたし的泣けるポイントは二箇所。
ルイ・アームストロングの "What a Wonderful World" をバックにかつてのアメリカが行なってきた政治的事象を紹介する場面。
そして、ジョーイ・ラモーンがカバーした "What a Wonderful World" のエンド・クレジットである。
この曲の使い方が、常軌を逸しているほどシニカルで、強烈に強烈な印象を与える。
ああ、なんて素晴らしい世界に、愚かな人類なのだろうか。

このへんは誤解を恐れずわたしの感性で言わせて貰えば、スタンリー・キューブリックの「博士の異常な愛情」のエンディングと同じような感動をおぼえた。
ああ、なんて人類は愚かなんだろうか。

また、キューブリック繋がりでは、途中のボウリングのシークエンスで「第九」をつかうあたり、またエンド・クレジット直前のマイケル・ムーア本人のボウリングの「神は天にいまし、世は全てことも無し」的感覚は「時計じかけのオレンジ」的な感慨すら与えるだろう。
と考えると、音楽の使い方はキューブリックの影響があるのではないだろうか。

マイケル・ムーアの視線は、ユーモアと愛情に溢れつつ、非常な皮肉に満ちている。
本来ならば、悲惨で直視できないような構成になるような題材であるが、彼の容姿がそうさせるのか、彼のスタンスがそうさせるのか、とっつきはシニカルなコメディ・タッチで観客の心を鷲掴みにし、結果的には、観客にアメリカの銃社会について大いに考えさせ、もしかしたら、もしかしたらだが、観客の人生観や思想を変えさせる程の可能性を秘めた作品かも知れない。

「ゲロッパ!」

2003年9月2日
井筒和幸の新作で話題の「ゲロッパ!」を観た。

一言で言うならば、面白い映画だったのだ。

ここ数年、メディアに取り上げられ、敵も味方も数多く作ってきた井筒和幸であるが、聞くところによると、「今、日本で一番面白い映画を作らなければならない映画監督」だということである。
「ゲロッパ!」はそんな監督が満を持して製作した作品なのだ。

そういったこともあり、メディアの力なのか、井筒の力なのか、キャストもスタッフも良いところが集まっているようである。

例えるならば、テレンス・マリックの20年ぶりの映画である「シン・レッド・ライン」の製作を聞き、ノー・ギャラでも良いから出演したい、ということでオール・スター・キャストがちょい役のために集まったように、この映画にも同様にキャストが集ったような印象を受けた。
誤解を恐れず、悪く言わせていただくならば、「今の井筒の映画に出ておけば、何かと美味しい」と考えたキャストが集まっているような印象を受けたのだ。

しかしながら、その集まったキャストはテレビ・タレントだけという訳ではなく、映画俳優、舞台俳優が多く集まっているのが好印象なのである。
これで、ただ単に旬なタレントが集まっているだけなら、幻滅なのだが、塩見三省や根岸季衣あたりが平気で出てくるあたり、一味違うような気がした。
しかも、癖ある皆さんの大集合で、正にオール・スター・キャストと言って差し支えないだろう。

気になる物語はいかにも日本人受けしそうな、浪花節的人情コメディである。
なんとも日本人が好みそうな、普遍的なキーワードを散りばめているのが、若干いやらしいが、それは勿論戦略的なものなので、それはそれでOKなのだ。

あとは音楽だね。
ソウル系、ファンク系が好きな人にはたまらない選曲なのだ。
事実、ファーストカットの煙突だけで、わたしは泣きそうになってしまうのだね。これが。
音楽の力は偉大なのだ。

音楽映画的には、西田のJBあたりを見ると、アラン・パーカーの「ザ・コミットメンツ」のラスト近辺の大物飛入り!?のような印象も受けた。
また新幹線の中の西田敏行と岸部一徳、ラスト近辺の警察車両の中でのヴォーカルは、これまた「ザ・コミットメンツ」の地下鉄シーンに繋がる、音楽映画史に残る名シーンとなるのではないだろうか。(勿論嘘)

いつもならば、キャストについて、いちいちコメントするところなのだが、今回は芸達者の皆さんが各所各所で非常に印象的な演技を残しているので、コメント不能なのだ。
コメントしだしたらキリが無い。ということね。

たまには日本映画を観たいな。という人にはオススメの一本なのだ。
「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ」を観るなら「ゲロッパ!」観て欲しいな。個人的にはね。
さて、早速ですが2003年の目標の中間発表その7です。

とりあえず目標の再確認を・・・・

目標第一弾 「映画を300本観るぞ!!」(DVD等含む)
目標第二弾 「本を100冊読むぞ!!」

まず映画です。

#050 「ターミネーター3」日劇1 2003/08/14
#051 「ハルク」日劇3 2003/08/15
#052 「HERO/英雄」丸の内ルーブル 2003/08/28
#053 「ファム・ファタール」日比谷映画 2003/08/29


続いて、DVDやCATVです。

#133 「地獄の黙示録 特別完全版」2003/08/03 CATV
#134 「アウトサイダー」2003/08/03 CATV
#125 「ブラック・メール/脅迫」2003/08/04 CATV
#126 「坊ちゃん社員」2003/08/04 CATV
#127 「海潮音」2003/08/04 CATV
#128 「海底軍艦」2003/08/04 CATV
#129 「ワン・フロム・ザ・ハート」2003/08/04 CATV
#130 「姿三四郎」2003/08/04 CATV
#131 「白夫人の妖恋」2003/08/06 CATV
#132 「パシフィック・ハイツ」2003/08/07 CATV
#133 「ナインスゲート」2003/08/08 CATV
#134 「ジキル&ハイド」2003/08/09 CATV
#135 「カンバセーション‥盗聴‥」2003/08/09 CATV
#136 「それいけ!アンパンマン ばいきんまんの逆襲」2003/08/11 HDD
#137 「ドキンちゃんのドキドキカレンダー」(短編)2003/08/11 HDD
#138 「それいけ!アンパンマン とべ!とべ!ちびごん」2003/08/12 HDD
#139 「アンパンマンとゆかいな仲間たち」(短編)2003/08/16 HDD
#140 「それいけ!アンパンマン つみき城のひみつ」2003/08/16 HDD
#141 「鉄火のマキちゃんと金のかまめしどん」(短編)2003/08/16 HDD
#142 「それいけ!アンパンマン ロールとローラうきぐも城のひみつ」
2003/08/16 HDD
#143 「サンダーバード」2003/08/16 TV
#144 「アラン・スミシー・フィルム」2003/08/16 CATV
#145 「時計じかけのオレンジ」2003/08/23 DVD 
#146 「幻の湖」2003/08/30 CATV
 
1月に、地上波のCM入りの映画が3本ありましたので、映画は、DVD、CATV等を含めて28本(累計206本)でした。
とうとう200本を超えました。

さて、本の方は、
#035 「キャラクター小説の作り方」大塚英志著 講談社現代新書 2003/08/03
#036 「日日平安」山本周五郎著 新潮文庫 2003/08/08
#037 「陰摩羅鬼の瑕」京極夏彦著 講談社ノベルズ 2003/08/25
#038 「八つ墓村」横溝正史著 角川文庫 2003/08/28

読書は4冊(累計38冊)でした。

状況として、8月は例によって仕事がとても忙しく、非常に厳しい状況になってきています。いつもおんなじです。

映画は結果月28本(累計206本)ですので、このままのペースだと、309本になります。
因みに、劇場での映画鑑賞は月4本(累計53本)、このままのペースだと、年間80本になります。

読書の方は、月4冊(累計38冊)で、このままのペースで57冊となります。

映画的には、ようやく200本を突破しましたが、まだまだ目標ギリギリのペースです。
読書は非常に厳しい状況です。

9月は仕事が若干すくと思います。(毎月言ってますが、全然すかないです。)
今月も頑張りま〜す。
奇才ブライアン・デ・パルマの新作、話題の「ファム・ファタール」を観た。

前作「ミッション・トゥ・マーズ」と異なり、デ・パルマの面目躍如たる作品に仕上がっている。

はっきり言って大変素晴らしい映画である。
私見ではあるが、先日観た「HERO/英雄」が霞んでしまうほどである。

形式的なところでは、「キャリー」を髣髴とさせるスプリット・スクリーンの多用。
また、音と写真との違いはあるが「ミッドナイトクロス」のような印象も受ける。
更に「レイジング・ケイン」のショック・シーンを思わせるような、まるでセルフ・オマージュのようなショック・シーンや、物語の構成も見られる。
またアルフレッド・ヒッチコックの作品からも多くの影響が見え、本編だけではなく、様々な作品からの引用も、愉しい映画と言えるだろう。

ここでは、物語についてのお話はしませんが、非常に緻密に構成された、大人の鑑賞に堪えうるサスペンス映画に仕上がっている。
前段のシークエンスが導入でしかないのも興味深い。

撮影はティエリー・アルボガスト。リュック・ベッソン系の作品で知られる彼の切る取る画は、デ・パルマの感性と合致しているのか、背景の隅々に写っている物を、効果的に写しだしている。
また、物語のキーとなる様々なアイテムを密かに、それでいながら印象的に撮影し、それが効果的に作用している。

音楽は前々作「スネーク・アイズ」に続き坂本龍一。デ・パルマのファン的には非常に否定的な意見が多いようであるが、わたし的には「ボレロ」のような単調な動機の繰り返しが徐々に盛り上がる曲と、デ・パルマのスロー・モーション的な観客をイライラ、ジリジリとさせるある種スローモーな演出方法(静のアクション)と相まって、素晴らしい効果を与えているのではないだろうか。

編集はデ・パルマ組のビル・パンコウ。今回はアントニオ・バンテラスの登場シークエンスでスプリット・スクリーンが多用されており、またラストのアクション・シークエンスで、非常に効果的な技を披露している。

脚本は勿論ブライアン・デ・パルマ。
こんな良い脚本を書けてしまうのも凄いが、破綻無く演出し、監督してしまうのも凄いのだ。
ラストは賛否両論だが、わたし的には賛成票を投じたい。また本作は前述のアルフレッド・ヒッチコックや、デヴィッド・リンチ、スタンリー・キューブリック等が好みそうな物語であるが、完全なデ・パルマ作品として完成されている。

俳優的には、なんと言ってもレベッカ・ローミン=ステイモスに尽きる。
妖艶でセクシーで、恐ろしく、知的で、可愛い女をそれぞれの場面で演じ分けている。
髪型や髪の色が変わることにより、人格や人物が異なっていく様子は、これもまたアルフレッド・ヒッチコックの影響を感じる。
彼女はオープニング・シークエンスより、中盤から後半にかけて、死と再生のメタファーを潜り抜ける度に、だんだんと魅力的になっていくのだ。

「蛇のビスチェ」強奪犯の首領エリック・エブアニーは、冒頭のセリフは説明的でいただけないが、印象的な役者である。
また強奪犯一味のエドュアルド・モントートもほんわか超絶とした存在感で、殺伐とした中、良い雰囲気を醸し出している。

で、パパラッチであるアントニオ・バンデラスであるが、今回はいつものギラギラ・フェロモンが少し抜けた、良い役を演じている。
中盤の自分を守るべく悪戦苦闘する姿が面白い。
知的ではあるが、それほど切れ者ではない普通の青年(ヒーローではなく、普通の人間)を演じているのが脚本的に良かったのではないだろうか。

出来ることなら、こういった方向性で今後もサスペンス映画を撮っていって欲しいものだ。

デ・パルマ最高!
という感じの一本である。
とある掲示板で、最近スタンリー・キューブリック監督作品「時計じかけのオレンジ」について様々な議論を交わしている訳であるが、思うに「時計じかけのオレンジ」という映画は、わたしが(勿論劇場で)観た回数が一番多い映画の一本であるのだ。

ここではそんな「時計じかけのオレンジ」が如何に素晴らしい作品であるとか、こんな解釈が出来る、とかいうことを一切書かず、わたしと「時計じかけのオレンジ」の関わりを簡単に紹介したいな。というコンセプトで書いてみたいのだ。
多分に自慢話的な話になってしまう危惧はあるのだが、その辺はご容赦願いたい。


わたしの記憶では、初めて「時計じかけのオレンジ」を観たのは高校生の頃だったと思う。
それ以来、リバイバルがある度に、劇場に足を運び、時間に余裕のある大学時代には、毎日劇場に足を運び、1日3回位ずつ「時計じかけのオレンジ」を観たりしていた。

フィルムを追っかけるように、いろいろな劇場のリバイバル上映を追っかけていくと、フィルムの個々の違いに目がいく様になり、フィルムの切れた箇所で、コマが飛んだり、音声が途切れるところ、巻が換わる際にフィルムに登場する緑の物体(スクラッチ)の出現位置を覚えたりも出来るのだ。
勿論セリフやカット割、音楽なんかも覚えたりするのだがね。

そんなことをやっていると、どうしても家庭で「時計じかけのオレンジ」が観たくなるのは人情であるが、この「時計じかけのオレンジ」は、1980年代、「アメリカン・グラフィティ」、「ブルース・ブラザース」と並び、永らく国内版ビデオ・ソフトが版権やヘア該当シーンの関係で出ないベスト3作品と言われていたのである。

しかしながら、北米国内版のビデオ・ソフトは存在する訳で、それをなんとか国内に持ち込もう、という動きが広まっていた。
ビデオを購入する為に、海外旅行をするのもおかしな話だが、日本国内持込不可の作品として税関で止められてしまう「時計じかけのオレンジ」を国内に持込むため、誰もが涙ぐましい努力を重ね、多くのソフトが税関で没収されてしまっているのだ。

海外旅行をする友人には欠かさず「時計じかけ」と「ブルース・ブラザース」のビデオを買って来い。と言うのは、当時では最早合言葉のようなものなだったのだ。

1980年代後期、それでもなんとか日本国内に「時計じかけのオレンジ」のビデオ・ソフトをいわば密輸し、日本国内市場でも、あるところにはある。という状態だったし、どうすれば税関を突破できるか、という情報すら口コミで実しやかに流れたりしていたのである。

で、わたしは渋谷のとある輸入映像ソフト屋で「時計じかけのオレンジ」のビデオ・ソフトを購入する訳だが、当時日本国内販売しているソフトはヘアの該当シーンがなんと消去されているのだ。冒頭付近の劇場のシークエンスと作家の家のシークエンスで消去されたビデオ・ソフトは砂嵐状態なのだ。
消去されていないソフトはアンダー・グラウンド・マーケットで5万円とか10万円で売買されていたらしい。
消去されているものは、当時5千円から1万円程度だった。

で、ビデオ・ソフトを入手したからには、こんどはLDが欲しくなる。というのは人情で、LDなら、物理的に部分的に消去する事はできないので、国内に入ったものを入手すれば、これは完全にノーカット無修正版なのだ。

で、わたしはやはり渋谷のとある輸入映像ソフト屋で購入するわけだが、店のバックヤードから30センチ×30センチのサイズの「時計じかけのオレンジ」のLDソフトが出てきた日にゃあ、これは感涙ものだったのだ。苦節10年、やっとわがもとに来たか。という具合だ。
多分これは、1989年頃の話だったと思う。

確か1991年には、ヘア描写の芸術的解禁を受けてノーカット無修正版の「時計じかけのオレンジ」日本国内版が発売されることになったのであるが、何故だかわたしは購入しなかったのである。
DVDと違って字幕が消せないLDの字幕は最早邪魔な存在となっているのであった。

現在では、「時計じかけのオレンジ」の無修正版国内版DVDソフトがどこでも購入できる訳だが、1980年代から、現代までの「時計じかけのオレンジ」のソフトは、ヘア描写の自由との、戦いに打ち勝ってきた記憶とともに、語り継がれるのだよ。諸君!

「HERO/英雄」

2003年8月28日
チャン・イーモウの新作「HERO/英雄」を観た。

結論から言うと、良い映画だった。
剣客の生き様が心地よい武侠ものの傑作だろう。
上映時間が短いのも更に良い。最近、各社は平気でだらだらと2時間超の映画を乱発している。
わたし的には、タイトで濃密な映画が観たいのだ。


先ずはチャン・イーモウがこういうアクション系の映画を撮ってしまうことに、驚きを禁じえない。何がそうさせたのだろうか。

また、クリストファー・ドイルのカチっとはまった(三脚を使った)映像を見るのも、はじめてのような気がした。
いつもの手持ちカメラ系のドイルの売りを廃した、映像は冷徹で客観的でありながら、感情に刺激を与える映像となっている。ロケーション効果を考えたヒキの画が多いようだった。

音楽のタン・ドゥンはまあ良いのだが、どうしても「グリーン・デスティニー」の亡霊的影を感じる。上映前の休憩中、なんで「グリーン・デスティニー」のサントラ流してるんだ?と思ったくらいである。

チン・シウトンのアクションは残念ながら従来の枠を越える所までは達していないが、ワイヤー・アクションとCGIの相乗効果により、独特の世界観の創出には成功しているのではないだろうか。
しかし、「グリーン・デスティニー」を始めて観た際のような驚愕は無かった。

ワダ・エミの衣装や、美術・セット等は非常に良かった。中国の広大な大地と相まって、素晴らしい効果を与えている。

物語は、秦の始皇帝となる秦王の暗殺を企てる人々の物語であり、その構成は黒澤明の「羅生門」そのものであり、ワダ・エミの起用や「蜘蛛巣城」を髣髴とさせるシークエンスもあり、日本が誇る黒澤明の多大なる影響を感じる。

俳優的には、ジェット・リーはともかく、トニー・レオンが良かった。マギー・チャンと共に一番良いとこを持っていってしまう役である。

女優的には、最近各所で良く顔を見るチャン・ツィイーも良いけど、やはりマギー・チャンも凄いぞ、昔はジャッキー・チェンの映画でスクーターでひきづり回されたりしていたのだが、大女優になったものだ。チャン・ツィイーは可愛いくせに可愛くない、憎憎しげな表情が良いですわ。

あと秦王役のチェン・ダオミンも難しい役所を見事にこなしている。この映画の最大のキーはなんといっても秦王と無名(ジェット・リー)の会話なだけに、ココがこけると全てこけてしまうからね。

無名(ジェット・リー)の生き様がやはり凄いと思うね。秦王は実は残剣(トニー・レオン)以上の感動を無名に与えられてるからね。

「陰摩羅鬼の瑕」

2003年8月25日
先日、京極夏彦の「陰摩羅鬼の瑕」を読了しました。
わたし的には京極夏彦の妖怪シリーズは大好きで、欠かさず読んでおります。
京極夏彦のファン・サイトを立ち上げたこともあります。

で「陰摩羅鬼の瑕」についてですが、わたしはここで内容に触れませんが、ちと気になることがあるのです。
それは、様々なサイトで様々な人が本書のレビューや感想を公開していますが、その中で、「すぐにラストが読める。」だとか、「犯人が意外でもなんでもない。」だとか言う印象を持つ人が多い、ということです。

わたしは常々思っていることがあります。それは、「ラストや犯人が読める」種類の小説や映画は皆さんにとってつまらないものなのか、ということです。

わたしが思うに、多くの小説や映画は、その小説や映画がそのように帰結すべく、正に予定調和的にラストが訪れるよう伏線がはりめぐらされています。
ですから行間を読んだり、フレーム間を観たりする人達にとっては、そのラストは来るべきものであり、最早当たり前の結末なのです。

ですから、そういった物語を見たり読んだりして、「最初の30分でラストが読めた」とかいうのは、わたしに言わせると、「なんて恥ずかしいヤツだ」、「そんな恥ずかしいことを公衆の面前でよく言えるな」ということになってしまうのです。
何しろ、多くの作品には、もともと「ラストはこうなりますよ」という断片情報が、本編に盛り込まれているのですから。

そこで、考えなければならないのは、そういった物語は「ラストや謎解きがどうなるのか」が問題なのではなく、「ラストがそうなってしまうことに対する何か」を表現しているのではないか、ということです。

例えば今回読了した「陰摩羅鬼の瑕」は、犯人が誰なのか、というのが重要なのではなく、−−何しろ懸命な読者諸氏にとってはそれらは最初からわかっていることですから、−−これは予定調和的に物語が進み、ラストが訪れてしまうことにより、語られる物語が引き起こす悲しみを題材にした悲劇なのです。

そして京極堂や懸命な読者は、いかにして真相が明らかになることによる悲劇を回避しようとする、または予定調和的に訪れる悲劇に何某かの救いはないのか、ということを念頭において読むべき種類のものだと思います。

尤も、物語の表面を楽しむ人達にとっては、「誰が犯人で、何故そんなことをしたのか」が重要な問題なのかも知れませんが、物語の奥底を楽しむ人達にとっては、そんなことは自明の理なのであり、自慢げに「はじまって30分でラストがわかった」という言葉を聞くたびにわたしは悲しい思いにとらわれてしまいます。

あぁ、君はなんてあさはかで、愚かなんだ。と。
ひとりで出来る自主制作映画

その6 本当に全部ひとりで出来るの?

今回は、当コンテンツ「ひとりで出来る自主制作映画」の基本コンセプトから若干外れますが、5〜10人程度の小グループで自主制作映画を作る場合に、監督が考えなければならないこと、やらなければならないことを考えて見ましょう。
同時に、ひとりで行う自主制作映画の製作を想定していただければ幸いです。

前提条件として、ここでは、制作する映像作品の企画・脚本等は既に完成しており、機材も整い、すぐにでも制作が始められる状態だと仮定した上で、シミュレーションしてみましょう

監督あるいは主要スタッフが考えなければならない、やらなければならない事柄は次の通りです。

1.予算を調達する
2.スタッフを集める
3.キャストを集める

4.予算を管理する
5.ロケ地等撮影場所を選定する
6.移動手段、車両等の取扱いを決定する
7.スタッフ、キャストに対するギャラの取扱いを決定する
8.食事と食費の取扱いを決定する
9.移動に伴う交通費の取扱いを決定する
10.衣装、道具等の取扱いを決定する

11.脚本とスタッフ、キャストのスケジュールから撮影スケジュールを決定し本人に通知し、撮影スケジュールを運用する
12.演技指導する
13.演出プラン、撮影プランを決定する
14.照明する
15.撮影する
16.同時録音する
17.服装、セリフ、その他を記録する
18.音楽、効果音等を準備する

19.編集する
20.録音する

21.上映する

やや大雑把な感はありますが、監督あるいは主要スタッフは、概ねこれらの事柄の全てを考え、かつ全てを行わなければならないのです。
これは非常に大変な作業です。
ただ単に映像作品を作りたいだけなのに、付随する作業がこんなに必要なのですね。

ちょっと余談で、かつ私見ですが、自主制作映画監督の多くは、ワンマンなタイプの人が多いのではないか、と思います。
というよりはワンマンなタイプでなければ、自主制作映画など出来ないのかも知れません。

監督は、結局のところ自分のビジョンを実現するために、語弊はありますが、スタッフやキャストを利用し、実際の映像作品の制作に集中するために、周辺のスタッフに雑務をやらせてしまうことも往々にしてあるのです。

また、監督として、映像作品の自主制作を目指す人が、目の前に積み重なる様々な問題に対処しきれなくなり、制作自体を打ち切らざるを得ない状況に追い込まれる事は、残念ながら多々あることなのです。

更に、メインキャストが失踪、なんてことも多々あるわけですよ。これが。
何しろ、自主制作映画のキャストはほとんどが報酬無しのボランティア俳優ですからね。

ひとりで出来る自主制作映画 その7
http://diarynote.jp/d/29346/20030910.html

ひとりで出来る自主制作映画 その1
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ひとりで出来る自主制作映画

その5 何を撮ればいいのかわからないんですけど・・・・

前回までで、とりあえず映像メディアと機材についてのお話は一旦はおしまいです。

とりあえず、前回までのお話で、自分が必要としている映像メディアと機材の選択は済んでいるのではないかな。
つまり、8mmフィルムなら、8mmフィルム。miniDVならminiDVということ。
選択が済んだら、即、機材の調達に入って欲しい。

とは言うものの、今後は、お約束通りminiDV規格による自主制作映像作品についてお話しすることになります。
しかも、この時点でminiDVカメラとパソコン、映像編集ソフトとDVケーブル等を既に調達したこととして、お話を進めさせていただきます。
その辺はあしからずご了承願います。

さて、それでは、当コンテンツ「ひとりで出来る自主制作映画」本題の自主制作に入るわけですが、この時点で、自らが監督となり、自主制作映像作品の制作を志す人であれば、漠然としたものを含めて、撮りたい企画の2本や3本は余裕で保有していると思います。もしかしたら既に脚本やなんかも何本かは出来ているかもしれません。

もし、仮にこの時点(機材が揃って、さあやるぞ!という段階)で、何を撮ればいいのかわからない、または撮りたい企画が全く無い。というような人には、残念ながら監督としての自主制作映画はオススメしません。そんなあなたはスタッフ向きなのです。

良くも悪くも映像作品というものは、監督のビジョンを実現し、映像メディアに定着させたものです。
従って、撮りたい企画が無い、何を撮ればいいのかわからない、という人は、その段階で監督失格と言わざるを得ません。何しろ実現すべきビジョンの持ち合わせが無いのですから。

皆さんの身近な漫画で例えるならば、いくら絵が上手くても、訴えたいもの、伝えたいものが何も無ければ、漫画は描けないし、描けたとしても読者には何も伝わりません。
でも、絵はへたくそでも、訴えたいもの、伝えたいものがあり、それを描写することができるのであれば、それは作品として成立することになります。
もし絵が上手で、漫画は描きたいけど、伝えたい、描きたいものが無いのであれば、その辺で作家を捕まえて、その作家のビジョンを実現するスタッフとして、漫画という作品にかかわることになる訳です。
そんな例は身の回りに沢山ありますよね。
映像作品もその辺は同じです。

まず、監督には実現すべきビジョンが必要、という訳です。

ひとりで出来る自主制作映画 その6
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ひとりで出来る自主制作映画 その1
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ひとりで出来る自主制作映画

その4 「暇と金があるならフィルムだぜ!」(miniDV規格ノススメ)

前回、前々回と、映像メディアである8mmフィルムとminiDVについて、制作工程を基に費用面の比較を行いました。

繰り返しになりますが、も一度ご紹介しましょう。

1.8mmフィルムによる自主制作映画のコスト

1)イニシャル・コスト
200,000円 カメラ
50,000円 スプライサーとビュワーエディター
150,000円 映写機
400,000円 合計

2)ランニング・コスト (15分のショート・フィルム制作費用として)
 30,000円 フィルム及び現像代10本分
 12,000円 マグネコーティング
 10,000円 リール、スプライシング・テープ等雑費
 52,000円 合計

2.miniDVによる自主制作映像作品のコスト

1)イニシャル・コスト
 100,000円 ビデオカメラ
 200,000円 パソコン
 10,000円 映像編集ソフト
 10,000円 ケーブル等雑費
 320,000円 合計

2)ランニング・コスト (15分のショート・フィルム制作費用として)
 800円 miniDVテープ(60分×2)
 800円 合計

さて、当コンテンツ「ひとりで出来る自主制作映画」の基本コンセプトは、文字通り、「たったひとりで自主制作映画(映像作品)を作ってしまおう。」というものであり、その方向性としては、「映像制作未経験者でも、撮りたい素材や企画があるんだったら、とりあえず作っちゃえ!」というものです。
勿論、「グループで自主制作映画を製作する前に、自分ひとりで全工程を経験してみよう。」というものでも構いません。

そこで、当コンテンツでは、ひとりで映像作品を制作する上での最大の問題点は、コストである。と捉え、コストの面から、miniDV規格による自主制作をオススメします。

このminiDV規格を利用することにより、ランニングコストは事実上0円に限りなく近づくため、フィルムだったら勿体無くて撮れないような、無駄になってしまうようなカットや、とりあえず失敗を恐れず撮ってみよう的な手法、または複数のカメラを同時に回す、といった贅沢な手法が可能になってくるのです。

映像作家初心者の皆さんは、多分カメラを回す前に、撮影プランや画面構成等の考察と若干の決心が必要だと思うのですが、わたし的にはその辺も勿論重要だと思いますが、結局のところ撮影は反射神経だと思います。撮るべきかどうか頭の中で考えてる暇があったら、カメラを被写体に向けファインダーものぞかずに、シャッターを切っている位がちょうど良いと思います。
撮り逃した被写体はもう永遠に戻ってこないのですから。
で、そういう手法が取れるのは、ランニングコストが低廉なminiDV規格等の映像メディアなのです。

しかしながら、財力や時間に大いに余裕がある方には、フィルムで自主制作映画を撮ることをオススメします。

はっきり言って、フィルムの編集には、大きな魅力があります。
最大の魅力はなんと言っても、撮影されたただの単なるカットが、編集という工程を行うことにより、自分の手の中で、意味のあるシーンに、そして重要なシークエンスに姿を変え、変貌していく様は、フィルムの編集を通じてでしか体験できないのではないかと思います。

ひとりで出来る自主制作映画 その5
http://diarynote.jp/d/29346/20030819.html

ひとりで出来る自主制作映画 その1
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「ハルク」

2003年8月17日
ここ数年続いているアメコミの映画化作品最新作であり、アン・リーの新作でもある「ハルク」を観た。

物語は、ホラー映画の王道パターンである忌嫌われる存在(異能者や化物)の人類からの迫害と悲哀を描いたもので、分類的には超能力を持ったが上の悲劇を描いた「デッドゾーン」系の作品と考えられる。

また本作「ハルク」は、別の観点からは、人類の敵であった時代の「ゴジラ」とも言えるのではないだろうか、事実ハルクを産んだのは放射線(と遺伝子工学)であるのだから。

まず、本編の特徴としての第一印象は、コミックのコマ割をイメージするシーンやカットのトランジション効果や、スプリット・スクリーンのが多用、また舞台の展開におけるキャプションは、コミック調手書き風フォントを使用しているのが興味深い。
コミック調といえば、「クリープショー」や「ディック・トレイシー」等があるが、本来ならば編集でつなぐべく複数のカットを同一のスクリーンに並列的に配置する手法は非常に効果的な描写であろう。

本編の第一印象は、長くて退屈である。ということだ。
アメコミの映画化作品に対して一般の観客が求めているのは、アクションの爽快感とラストのカタルシスだと思うが、本作は前述のように異能者である主人公の悲哀がメインの主題となっており、かつ明確な敵キャラの存在が無いため、アメコミ・ヒーロー者の映画化としては、素材自体に困難な点が多く、消化不足ではないのではなかろうか。

これが、映画としての方向性を鈍らせ、退屈な描写に終始することになっているのではないだろうか。

また、ハルクの父親であるニック・ノルティの描き方も不明瞭であり、ラスト近辺のハルクとの対決は演技合戦はともかく、どうかと思うのだ。

また、根本的な問題として、ヒーローに変身した後のほとんどのカットがCGIである。というのは、映画自体の方向性として、また演技者としてのエリック・バナ、またはアン・リーの演出として、どうかな、と思うのだ。

アン・リーは前作「グリーン・ディスティニー」が大変素晴らしい反面、中だるみを否めないのであるが、その中だるみが本作「ハルク」でも見られ、また2時間18分と言う尺を考えると、もっとシェイプアップできるのではないかと思うのだね。

音楽はダニー・エルフマン節全開ですね。
遅ればせながら、「ターミネーター3」("TERMINATOR 4 RISE OF THE MACHINES")を観た。
一作目の「ターミネーター」は1984年、二作目の「ターミネーター2」は1991年作品ですから、前作から12年、一作目からはなんと19年目の三作目ということです。

この映画は、監督がどうとか、俳優がどうとか言う映画ではなく、結局は、脚本に前作と矛盾があるかどうか、生身のアクションがどうか、という観点で観るべき映画だと思いますが、わたし的には満足出来る一本でした。

「ターミネーター2」ファンにとっては、2でやめておけば良かったのに、という意見を多々聞くことがありますが、本作「ターミネーター3」はある意味、一作目「ターミネーター」の直系の続編と考えることが出来るプロットになっており、「ターミネーター」ファンが観たかった本来の意味での「ターミネーター2」と言えるのではないでしょうか。
ですから、考え方によっては「ターミネーター2」はいらない。という考えすらもてます。

例えるならば「エクソシスト」>「エクソシスト3」であり、「エクソシスト2」が番外編みたいな感じですね。
そいえば、「エクソシスト0」にあたるエピソードの製作が進んでいるようですね。若き日のメリル神父の活躍みたいな話ですが。


リアルタイムで三作品を体験できる世代にとっては、当時「ターミネーター2」が製作される際の、最大の関心事は、おそらく人類と機械の戦いがどう始まり、どう進むのかだったと思います。

そういった観点から言うと、「ターミネーター2」は方向性的に決して満足できるものではありませんでした。勿論ジェームズ・キャメロンはファンを裏切った上で満足させるという「エイリアン2」の監督でもある訳ですから、決して映画「ターミネーター2」に納得が行かない訳ではありません。

「ターミネーター3」のB級テイストも、「ターミネーター」を髣髴とさせるし、「ターミネーター3」はホント本来の「ターミネーター2」のような気がします。

脚本については、とんとん拍子で安易な印象を受けますが、基本コンセプトは良いと思います。

アクションは、CG満載の映画ばかりの昨今の中、久しぶりに生身のぶん回し&銃撃アクションだったので、非常に楽しかったです。
CGの使いどころがわかっているような印象を受けます。

脚本的にやって欲しかったのは、やはり悪のターミネーター(シュワルツェネッガー)をやって欲しかったですね。

ちとネタバレですが、前段の再起動プロセスをカットして、ヘリコプターでやってくるのは、シュワルツェネッガーだけにして、人間(コナーら)と機械(T−850)が戦うと、映画のコンセプトが非常に明確で良くなると思うんですがね。
なんなら、いろんなところから無線が入ってくる中、上半身のフレームだけの(T−850)がコナー達と対峙する画面で映画を終わらせる位でも良かったかな。と思います。
ひとりで出来る自主制作映画

その3 やっぱりフィルムで撮りたいんだけど・・・・

前回は、8mmフィルムでの自主制作映画の制作工程について考えてみましたが、今回はいよいよminiDVでの自主制作映画(映像作品)の製作工程について考えて見ましょう。

その前に、わたしが何故miniDVでの自主制作映画(映像作品)をおすすめするのかを簡単に紹介しましょう。
一番のポイントは、パソコンを映像編集機器として利用することにより、ノンリニア編集環境を自宅に整えることが容易になり、その制作物のクオリティは放送局レベルに達している。という点です。

ここでは、ノンリニア編集とリニア編集の違いについてくどくどと説明はしません。その辺りについてご関心のある方は、検索エンジンかなにかで検索してみてください。

それでは、miniDV環境における映像作品の自主制作について考えて見ましょう。

0.事前準備

映像メディアが異なっても、事前準備でやらなければならないことには、差が無いので詳細は今回も割愛します。

1.撮影

撮影には、撮影機材として、当然miniDVカメラが必要です。
ここで言うminiDVカメラとは、一般的にデジタルビデオカメラと呼ばれるものですが、最近のビデオカメラのほとんどがデジタルビデオカメラとなっていますので、ビデオカメラといえば、miniDVカメラを指す、と言っても良いでしょう。
実売価格は、10〜20万円程度です。

撮影には、勿論ビデオテープが必要です。
最近では、コンビニエンスストアでもminiDVテープを簡単に購入することが出来るようになりました。
実売価格は、60分テープで、400円程度じゃないでしょうか。

2.編集

編集には、パソコンと映像編集ソフトが必要です。
パソコンは、ここ2〜3年の発売モデルだったら概ね大丈夫です。
現在の実売価格だと、デスクトップなら20万円、ノートブックなら25万円も出せば充分だと思います。

映像編集ソフトは、好みが分かれるところですが、安価で良いものを、と考えると、わたし的には、Adobe Premiere LE をおすすめします。
自主制作映画(映像作品)に必要な機能は全てそろっています。
定価:9,800円

Adobe Premiere LE の必要システム構成は、
・ Intel; Pentium; III 500MHz以上のプロセッサを搭載したパーソナルコンピュータ(Pentium III 700MHz以上のプロセッサを推奨)
・ Microsoft Windows 2000日本語版、Windows Me 日本語版、またはWindows XP日本語版
・ 128MB以上のRAM(256MB以上を推奨)
・ Microsoft 社で認証されているOHCI IEEE1394インタフェイス
・ Microsoft Direct X 準拠のビデオディスプレイアダプタ
・ DVデータ保存用に7200回転/分のUltra DMA/66 IDEドライブ、SCSIハードディスク、またはディスクアレイシステム
・ サウンドカード

2003年8月、Adobe Premiere Proが、Premiereフル・バージョンの最新版(?)として発表されましたが、定価:88,000円と高額ですので、わたし的に、いきなりの購入はオススメしません。

3.録音

Adobe Premiere LE 等の映像編集ソフトがあれば大丈夫です。
パソコンに最初から入っている映像編集ソフトには、録音機能が無いものがありますので、注意が必要です。

4.映写(上映)

テレビがあれば大丈夫です。

それでは、コストを計算してみましょう。

イニシャル・コスト
100,000円 ビデオカメラ
200,000円 パソコン
10,000円 映像編集ソフト
10,000円 ケーブル等雑費
320,000円 合計

ランニング・コスト (15分のショート・フィルム制作費用として)
800円 miniDVテープ(60分×2)
800円 合計

いかがでしょう。
実質的には、30万円程度で、映像作品の自主制作環境が整い、かつランニング・コストは無料に近い、という状況なのです。

しかも、ここのサイトを訪れているということは、おそらくパソコンは所有しているだろうし、身の回りを探せば、ビデオカメラの1台や2台は見つかるでしょう。

ひとりで出来る自主制作映画 その4
http://diarynote.jp/d/29346/20030818.html

ひとりで出来る自主制作映画 その1
http://diarynote.jp/d/29346/20030806.html
 
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