ボクの本棚 #006 「二次元の世界/平面の国の不思議な物語」

わたしは小学5年生の頃から英語の塾に通うようになった。

塾というものは小学生にとっては新たな社会の一つであり、普段一緒に遊んだり勉強したりしている同じ学校の児童ではなく、他校の児童と触れ合うことが出来る場、というなかなか得難い経験の場だったりする。

そして、普段一緒にドタバタしているような同じクラスの女子と比べて、他の小学校の女子が魅力的に見えていたわたしは読書好きのKに恋心をいだいていた。

「何かおもしろい本があったら貸してよ」

おもしろい本を借りて読むのが目的ではなく、Kと継続的な関係を築くのが目的のセリフである。

彼女が最初に貸してくれた本は、先日紹介したとおりフレドリック・ブラウンの「天使と宇宙船」だった。

次の週、既に「天使と宇宙船」を読了し、フレドリック・ブラウンのSFを何冊か買い始めていたわたしに彼女が差し出した本はなんと「二次元の世界/平面の国の不思議な物語 」であった。

王様の顔が描かれた変な表紙で、おもしろい本には全然見えなかった。
一読後、評価は一変する。なんて面白いんだ!

と何なったわたしは、彼女の超絶センスに驚愕する。

小学生の女子が小学生の男子に貸す本をブルーバックスから選ぶとは・・・・。

しかも「二次元の世界/平面の国の不思議な物語 」とは・・・・。

わたしの人生が変わった瞬間である。

余談だけど、ブルーバックスとは、オフィシャルサイトによると「自然科学をやさしく紹介するシリーズとして、35年以上も親しまれている」ようである。

しかしながら「二次元の世界/平面の国の不思議な物語」は絶版のようである。
すばらしい作品なのに、非常に残念である。
ボクの本棚 #005 「天使と宇宙船」

わたしは小学5年生の頃から英語の塾に通うようになった。

英語の塾といっても、いろいろあると思うが、わたしが通っていた塾は、その名称に「米会話」という言葉が入っていた。
従って、一般の英語や英会話ではなく、アメリカ英語の会話スキルの習得を目指した塾だったのだろうとわたしは思っている。
しかしながら、当時のわたしにとっては、英語だろうが、英会話だろうが、米会話だろうが、全く区別がつかす、ただ単に英語の塾に通っていた、という認識だった。

ところで、塾というものは小学生にとっては新たな社会の一つであり、普段一緒に遊んだり勉強したりしている同じ学校の児童ではなく、他校の児童と触れ合うことが出来る場、というなかなか得難い経験の場だったりするのだ。

そんな状況もあってか、普段一緒にドタバタしているような同じクラスの女子と比べて、他の小学校の女子が魅力的に見えたりするのは当然のことだと思う。何しろ新鮮なのだ。

わたしもご多分にもれず、他校の女子にほのかな恋心を抱いちゃったりする始末である。
わたしがそんな恋心を抱いていた女子はKと言い、Mと言う子と仲が良かった。

わたしはMと比較的仲が良かったので、そのうちKと話をする機会が増えてきた。

そうこうしているうちに、Kは読書好きだと言う事がわかってくる。
それを利用しない手はない。わたしは自らが読書好きである、と言う点をKにアピールした。

「何かおもしろい本があったら貸してよ」

おもしろい本を借りて読むのが目的ではなく、Kと継続的な関係を築くのが目的のセリフであった。

次の日、彼女が貸してくれた本はフレドリック・ブラウンの「天使と宇宙船」だった。

今思えば、小学生の女子が小学生の男子に貸す本とは思えぬ選択に悶絶である。

わたしはその後フレドリック・ブラウンを集め始めることになる。
ボクの本棚 #004 「宇宙の戦士」

小学生時代からの友人にOと言う女子がいた。
彼女は漫画やアニメが大好きで、当然ながら、彼女の夢は漫画家になること。
クラスのみんなも彼女はきっと漫画家になるに違いないと思っていた。

中学生時代、そんな彼女から「機動戦士ガンダム」というアニメーションが面白いので、見るように、と言われた。

と、言うのも「サイボーグ009」事件(参照: http://29346.diarynote.jp/201002251656322473/)以降、面白いマンガやアニメがあると、彼女はわたしに教えてくれるようになっていたのだ。

それまでのわたしは、「機動戦士ガンダム」を、時々見ていた程度だったのだが、彼女に「ガンダムみるように!」と言われた後は毎週きちんと見るようになった。

そして、「ガンダムを見るように!」と言う指示と同時に貸してくれたのが、ガンダム同人誌の「ガンサイト」だった。
「ガンサイト」は、現在では伝説のガンダム同人誌と言われているようだが、わたしにとっては人生初の同人誌であった。

今でこそ、同人誌の市場は圧倒的な規模に成長発展しているが、1979年当時、地方の中学生が同人誌を購入するのは結構大変だったのではないかと思う。
多分カタログを請求し、郵送で注文、しばらくすると自宅に同人誌が届く、と言う流れであろう。

さて、そんな「ガンサイト」だが、「ガンサイト」は非常にアカデミックで、得るものが多い同人誌だった。
勿論「機動戦士ガンダム」と言う作品が優れたアニメーション作品であることもあるのだが、それ以上に「ガンサイト」から得るものが多かった、と言うことである。

例えば「機動戦士ガンダム」に登場するスペース・コロニーはオニールの「島3号」から来ているとか、サイド7やサイド3があるラグランジュ・ポイントって一体何なのか、とか、モビルスーツの元ネタはハインラインの「宇宙の戦士」だとか・・・・。

そんな訳でわたしはロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士」を手に取ることになる。
ボクの本棚 #003「シャドー81」

中学生時代は吹奏楽部に所属していた。
平日は、朝練、昼練、そして部活。休日は朝から練習のため学校に詰めていた。

ある休日のことである。
菓子パンの朝食をとり、当然の如く練習のため学校に向かう。

練習開始後、急激に体調が悪くなった。圧倒的な下痢と嘔吐。

意識が朦朧となり、立って歩けなくなったわたしは、女子に両脇を支えられ、吹奏楽部の顧問の先生の車で自宅に送ってもらった。

自宅で倒れ込むように休養に入るが、下痢と嘔吐でトイレに行くため、立ち上がるがそのまま意識を失い倒れ、気がつくとトイレに行く途中だと思い出し、また立ち上がるがそのまま意識を失う、そんなことを繰り返すのを見た母親はわたしを病院に連れていき、そのまま入院することになった。

診断は食中毒であった。
菓子パンめ!
しかしながら、家族全員同じ食事をして入院したのはわたしだけだった。

以来、点滴づけのわたしの友達は、病室に持ちこんだラジオだった。

ある夜のことである。
就寝後、いつものようにラジオを聞いていたわたしの耳に野沢那智の声が飛び込んでくる。
それは「シャドー81」のラジオドラマだった。

ロサンゼルスからハワイに向かう747ジャンボ旅客機PGA81便が無線で驚くべき通告を受ける。
たった今、この旅客機が乗っ取られたというのだ。犯人は最新鋭戦闘爆撃機TX75Eのパイロット。
だがその機は旅客機の死角に入り、決して姿を見せなかった。犯人は二百余名の人命と引き換えに巨額の金塊を要求するが・・・・。

圧倒的に、強烈に、そして滅法面白いラジオドラマだった。

それから、2週間。
退院後、わたしが最初に向かったのは書店だった。
ボクの本棚 #002「地底世界ペルシダー」

中学高校時代は映画に明け暮れていた。

金銭的な理由もあり、なかなか劇場に足を運べないわたしは、テレビで映画を見ることを日課にしていた。
毎日まいにち新聞のラテ欄をチェックし、放送される映画は全部見る、そんな心意気の少年だった訳だ。

ある夜のわたしは深夜の映画番組で「地底王国」(1976)を見ていた。
「地底王国」と言う映画には、マハールと呼ばれるでかいトカゲに羽をつけたようなクリーチャーが出てくるのだが、
そいつらはテレパシーで人間を自由に操り、その上人間を食べたりするのだ。

ちょっと待てよ、このマハールってザッタンじゃねぇの。

ザッタンとは、「サイボーグ009」の「地底帝国ヨミ編」に出てくるクリーチャーで、でかいトカゲに羽をつけたような外見を持ち、テレパシーで人間を操ったり、食べたりするのだ。

因みに、「地底帝国ヨミ編」は「サイボーグ009」屈指のエピソードで、わたしも大好きなエピソードのひとつである。
「地底帝国ヨミ編」のラストに漫画史に残る素晴らしいセリフがあるので、ご存知の方も多いと思う。


ははぁ、石森章太郎(当時/現・石ノ森章太郎)め、「地底王国」の影響を受けてるな。

翌日、図書館に向かったわたしは映画「地底王国」について調べ始めることになる。
念の為だが、当時はインターネットなんてものは兆候すらない。

その結果、わかったのは「地底王国」はエドガー・ライス・バローズの「地底世界ペルシダー」の映画化作品だと言うこと。

ペルシダーと言えば、お子様の頃、子ども向けに翻案された「地底の世界ペルシダー」を読んでいた。(と言う記憶がよみがえって来た。)
また、「ウルトラマン」に出てきた科学特捜隊の新兵器:地底戦車ペルシダーのことは、一般知識として知っていたが、その名前がバローズの「地底世界ペルシダー」から取られていたことは知らなかった。

石森章太郎に影響を与えたエドガー・ライス・バローズとは何者だ!
わたしはエドガー・ライス・バローズの「ペルシダー・シリーズ」「火星シリーズ」をかため読みすることになる。

ボクの本棚 #001「サイボーグ009」

小学生時代の友人にOと言う女子がいた。
彼女は漫画やアニメが大好きで、特に石ノ森章太郎(当時、石森章太郎)を敬愛していた。
当然ながら、彼女の夢は漫画家になることで、クラスのみんなも彼女はきっと漫画家になるに違いないと思っていた。

小学生高学年にもなると女子の方が発育がよくなってきて、彼女もご多分にもれず、ニョキニョキと身長が伸び、それと比例するかのようにクラスでの発言力も増してしまい、当時、体育の授業を休むような虚弱なもやしっ子だったわたしにとって、彼女はある意味恐怖の存在でもあった。

そんなもやしっ子でも男の子は男の子なわけで、わたしは体力で敵わないのなら知力で勝負だ的発想で、例えば女子が好きなものを貶すようなことをしたりしていた。気になる女子をいじめる。男子の悪い癖ですな。

そんなある日のこと。
止せば良いのにOさんが大好きな石森章太郎の「サイボーグ009」をわたしたちは貶してしまったのです。

そんなわたしは「サイボーグ009」が大好きでサンデーコミックス(秋田書店)版全10巻(当時は「天使編」の冒頭で中断していた)を愛読してました。
そんなわけでわたしは自分の好きな漫画をなんだか知らないうちに貶すことになってしまったのです。

男子全員に「009」について、ある事ない事いろいろ言われた彼女は、なんと言っても女の子、半べそ状態になってしまったのですが、次の授業のチャイムがなり、ゴングに救われた体で、自席に戻っていきました。

わたしが言った言葉で覚えているのは「009なんてどこから見てもおんなじ顔じゃん」と言う言葉。

授業が終わった次の休み時間、鼻息を荒げたOさんがいきなりわたしのところにやって来て、わたしにノートの切れっ端を突き出しました。

そのノートの切れっ端には、島村ジョーの顔がたくさん並んでいました。
いろいろな角度から丁寧に描かれたジョーの顔、顔、顔。

彼女は授業中にその絵を描いたのでしょう。
そしてそのジョーの顔に一言添えられていました。

「どこが同じなんだよ!ボケ!!」

わたしはそのノートの切れっ端のおかげでとっても楽しい気分になり、その日はその絵を眺めながらニコニコ過ごしたのを覚えています。
tkr

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