世は芸術の秋、今年も国際映画祭の秋が近づいてきた。

とりあえず、こちらを見ていただきたい。

『「第19回東京国際映画祭」チケット争奪戦をめぐる冒険 その1』
http://diarynote.jp/d/29346/20060926.html

さて、今日のお話は前回の続き、9月29日に結果が出た「@ぴあ」のプレリザーブについてのお話である。

○:アタリ
×:ハズレ

×2006/10/21 11:20-13:05「パプリカ」(animecsTIFF)
○2006/10/21 16:00-19:27「父親たちの星条旗」(特別招待作品/オープニング)
×2006/10/21 19:10-23:32「王の男」(特別招待作品/オープニング・ナイト)
○2006/10/22 12:00-13:37「ファウンテン」(特別招待作品)
○2006/10/22 13:50-15:57「世界最速のインディアン」(特別招待作品)
○2006/10/24 14:00-15:51「鉄コン筋クリート」(特別招待作品)
○2006/10/24 21:20-22:56「不都合な真実」(特別招待作品)
○2006/10/25 19:20-21:10「プラダを着た悪魔」(特別招待作品)
○2006/10/26 18:15-20:08「ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド」(特別招待作品)
○2006/10/27 18:20-21:07「パフューム」(特別招待作品)

ということで、「特別招待作品」を10作品申し込んで、なんと8作品もあたってしまった。

こんな事だったら「武士の一分」もプレリザーブして、オークションで売り飛ばしてやれば良かった。(と言うか、観れば良かった)

とは言うものの、「パプリカ」がハズレたのが非常に痛い。
ハズレたことにより、どうしても欲しくなってしまうのが人情というものである。
オークションで入手するか、前日深夜の当日券に賭けるか・・・・

ここでお願いコーナーです。
「パプリカ」のチケットあまっていたら、ください。

あとは10月24日(火)の「鉄コン筋クリート」があたってしまったので、わたしは24日は会社を休む事になった。

ところで余談だが、現在ヤフオクでは「武士の一分」のチケットが大高騰である。
1枚1,800円のチケットが100,000円超えとは困ったものである。

またまた余談だが、オンラインでのチケット販売が当然の現在、実は田舎のチケットぴあが狙い目だったりする。

誰も並ばない田舎のチケットぴあで、東京のチケットを購入し、東京の客に売る、と言う美味しい商売が成り立つ、すばらしきオンライン社会なのだ。

ムリをしなくても1番でチケットが購入できるチケットぴあ万歳なのだ。

更に余談だが、2004年の「東京国際映画祭」の「誰にでも秘密がある」(ゲスト:イ・ビョンホン、チェ・ジウ、チャン・ヒョンス)の1,500円のチケットは、なんと300,000円を超え、「LOVERS」のジャパン・プレミア(ゲスト:監督:チャン・イーモウ、アクション監督:チン・シウトン、アンディ・ラウ、チャン・ツィイー、金城武、衣裳デザイン:ワダ・エミ、音楽:梅林茂、製作:ビル・コン)の招待券は240,000円を超えていたのを思い出す。

ところで、先日わたしが騒いでいたのでご存知の方はご存知だと思うのだが「東京国際映画祭」のちらしが配布されていない件なのだが、結果的に10月2日に都内のチケットぴあに納品されたらしい。

まあ、9月30日がチケットの一般発売日なので、10月2日に出てきても、最早意味がない、と言う印象を受けざるを得ないが、例えば空き時間に当日券でいろいろ観たり、ゲストのサインをもらったりするのには(ティーチインや舞台挨拶の時系列的な情報を得るため)、必要だったりするのだが・・・・。

次回は9月30日の一般発売のお話の予定。

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さて、早速ですが2006年の目標の中間発表その9です。

とりあえず目標の再確認を・・・・

目標第一弾 「映画を300本観るぞ!!」(DVD等含む)
目標第二弾 「本を100冊読むぞ!!」
 
 
1.映画

#054「王と鳥」シネマ・アンジェリカ 2006/09/01
#055「スーパーマン リターンズ」メルシャン品川アイマックス・シアター 2006/09/01
#056「手紙」イイノホール 2006/09/07
#057「ジェネレーションズ/STAR TREK」TOHOシネマズ六本木ヒルズ 2006/09/22
#058「ファースト・コンタクト/STAR TREK」TOHOシネマズ六本木ヒルズ 2006/09/22
#059「スタートレック/叛乱」TOHOシネマズ六本木ヒルズ 2006/09/22
#060「ネメシス/S.T.X」TOHOシネマズ六本木ヒルズ 2006/09/22
#061「トンマッコルへようこそ」新宿明治安田生命ホール 2006/09/27
#062「寝ずの番」新文芸坐 2006/09/28
#063「かもめ食堂」新文芸坐 2006/09/28
#064「マーダーボール」有楽町朝日ホール 2006/09/30
 
 
2.DVD、CATV等

#148「犬猫」HDD 2006/09/02
#149「恍惚」HDD 2006/09/03
#150「機動警察パトレイバー2 the Movie」HDD 2006/09/04
#151「ターンレフト・ターンライト」HDD 2006/09/06
#152「用心棒」CATV 2006/09/06
#153「ラブドガン」HDD 2006/09/08
#154「模倣犯」HDD 2006/09/09
#155「オペレッタ狸御殿」HDD 2006/09/09
#156「カンフーハッスル」HDD 2006/09/13
#157「バタフライ・エフェクト」CATV 2006/09/13
#158「鉄人28号」HDD 2006/09/14
#159「ロボッツ」CATV 2006/09/16
#160「ファントム・オブ・パラダイス」HDD 2006/09/16
#161「トリプルX ネクスト・レベル」CATV 2006/09/24
#162「ソウ」CATV 2006/09/24
 
 
3.読書

#017「ブレイブ・ストーリー(上)」宮部みゆき著 角川文庫 2006/09/11
#018「ブレイブ・ストーリー(中)」宮部みゆき著 角川文庫 2006/09/22
 
 
映画は、劇場11本(累計64本)、DVD等16本(累計163本)で、計27本(累計227本)。
このままのペースで、年間303本(劇場85本)です。

読書は2冊(累計18冊)で、このままのペースでは、年間24冊です。
 
映画はプラスに転じました。
ということで、10月以降も月間25本をキープすれば目標達成です。
10月以降は映画祭が目白押しなので、劇場本数は増えると思いますが、DVD等での鑑賞は減るのではないか、と思います。

読書は全く厳しい状況です。
 
 
■映画(9月末日現在)
2006年 227本(劇場64本)
2005年 203本(劇場80本)
2004年 236本(劇場87本)
2003年 229本(劇場60本)

■読書(9月末日現在)
2006年 18冊
2005年 29冊
2004年 28冊
2003年 42冊

映画については、2003年以降、きちんと300本以上観ているので、おそらく映画300本は大丈夫だと思います。
但し、例年と比較すると劇場で観る本数が減少しています。

読書は、例年減少しており、惨憺たる状況です。
非常によろしくない状況です。心を入れ替える方向で頑張ります。

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2006/09/27 東京新宿「新宿明治安田生命保険ホール」で「トンマッコルへようこそ」を観た。

驚いた事に、本作「トンマッコルへようこそ」で描かれる世界観は宮崎アニメのそれと酷似していた。

先ずは、本作で描かれた桃源郷でありユートピア「トンマッコル」という名の村は、宮崎アニメで何度も描かれている平和で実直、自然と共存し、自己完結している環境サイクルを備えた集落を髣髴とさせる。

例えば「トンマッコル」は、「風の谷」であり「ハイハーバー」であり「たたら場」なのだ。

ついでに、「トンマッコル」にたくさんある「提灯」とか、コナンとジムシーによるイノブタ捕獲にも似たシークエンスだとか、浮遊感溢れる飛行機の描写だとか、どう考えても宮崎駿に影響を受けている、と思われる描写が目白押しである。

そして極めつけは何と言っても、その平和な「トンマッコル」村の情景を、そして世界観を完結させているのは、なんと久石譲のスコアであった。

作品を観ている最中、本作のスコアが久石譲だと知らなかったわたしは、スコアがやたらと久石譲っぽいな、と言うか、まさか久石譲じゃないだろうと思っていたわたしは、完全にパクられているんじゃねーの、と思っていた。

中盤のトランペットのソロはジェリー・ゴールドスミスそっくりだったので、やっぱ久石譲じゃないよな、と思って、エンド・クレジットで確認したら、案の定久石譲だった、と言う結末であった。

更に本作で描かれる前半部分は言わば「山の一日」とも言える「トンマッコル」村の描写である。
邪気のない、疑う事を知らない、ピュアで真面目で、美しい村人たち。

もしかしたら、ただ単に「山の一日」とも言える村の日常を描いた、物語らしい物語など存在しない超然とした孤高な作品になるのではないか、と言う仄かな期待を覚えた。

しかし、残念ながら物語りは動いてしまった。

わたしは、トンマッコル村の自給自足の環境サイクルを丹念に描くだけの、ただそれだけの作品が観たかった、と思う。

つづく・・・・
一時保存です。

☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

「フラガール」をめぐる冒険
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世は芸術の秋、今年も国際映画祭の秋が近づいてきた。

「東京国際ファンタスティック映画祭」が休止となった2006年。
わたし的最初の国際映画祭は「第19回東京国際映画祭」(2006/10/21-29)になる見込みである。

その「東京国際映画祭」だが、上映作品のラインナップも出揃い、チケットの発売日も9/30に決定。「@ぴあ」では先行発売「プレリザーブ(抽選発売)」が9/22から始まった。

しかしながら、驚いた事に「東京国際映画祭」のちらしがまだ出回っていないのだ。

わたしが知る限りで恐縮だが「チケットぴあ」にも「TOHOシネマズ六本木ヒルズ」にも「東京国際映画祭」のちらしが置かれていないところを見ると、まだちらしは出来ていないのかも知れない。

9/30のチケット一般発売までにちらしがないとチケットが購入できないではないか。
と言うのも、現段階では、上映作品のタイム・スケジュールがわかりづらいのだ。

今年の「東京国際映画祭」のサイトでは上映スケジュール自体は公開されているものの、スケジュールが一覧表になっていないので、作品と作品をはしごできるかのかどうか、この作品とこの作品の上映時間が重なっているのかどうか、一々開映・終映時刻を調べなければならないのだ!

とは言うものの、わたしはなんだかんだと言いながら、次の作品のプレリザーブを申し込んだ。

2006/10/21 11:20「パプリカ」(animecsTIFF)
2006/10/21 16:00「父親たちの星条旗」(特別招待作品/オープニング)
2006/10/21 19:10「王の男」(特別招待作品/オープニング・ナイト)
2006/10/22 12:00「ファウンテン」(特別招待作品)
2006/10/22 13:50「世界最速のインディアン」(特別招待作品)
2006/10/24 14:00「鉄コン筋クリート」(特別招待作品)
2006/10/24 21:20「不都合な真実」(特別招待作品)
2006/10/25 19:20「プラダを着た悪魔」(特別招待作品)
2006/10/26 18:15「ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド」(特別招待作品)
2006/10/27 18:20「パフューム」(特別招待作品)

本当のところは何としても10/29の「犬神家の一族」(特別招待作品/クロージング)が観たいのだが、10/28-29は旅行に行く予定のためわたしは東京に居ないのだよ!

どうするオレ! 旅行早退か?

ついでに今気づいたのだが、−−もちろん捕らぬ狸のなんとやらなのだが−−、「父親たちの星条旗」(16:00〜20:05/レッドカーペット含む)と「王の男」(19:10〜21:12)の上映時間が見事に重なっているじゃないか。
両方当たったらどうするつもりだ。

ダメじゃん、オレ!

と言うのも、実のところ、わたしはさっきまでプレリザーブした「王の男」は、六本木の21:30からの回だと思っていたのだ。

だから〜!
時系列的に上映スケジュールが掲載されている「ちらし」が欲しいのだよ!

因みに、今回「アジアの風」とか「コンペティション」をプレリザーブしていないのも、「ちらし」がないのでスケジュールを立てるのがあまりにも複雑すぎるせいなのだよ。

まあ、自分で上映スケジュールを一覧表にすれば良いのだが、そこまではやりたくない、と言うわがままなボクだったりする。

10/29の夜にプレリザーブの結果が出るので、その結果を見て10/30の朝、チケットの一般発売に並ぶ、と言う感じのチケット争奪スケジュールで頑張ってみたいと思う。

それでは、諸君!
チケット争奪戦での健闘を期待しているよ。

もし、あまったチケットがあれば、声をかけてほしいところのものである。

『「第19回東京国際映画祭」チケット争奪戦をめぐる冒険 その2』へつづく・・・・
http://diarynote.jp/d/29346/20061002.html

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「フラガール」が米アカデミー賞の外国語映画賞に日本代表として出品されるらしい。

余談だが、米アカデミー賞の外国語映画賞についてちょっと調べたのだが、各国から出品された作品の中からノミネート作品が決定する、と言うことなので、ノミネートされた訳ではない、と言うことだと思われる。

まだ、米アカデミー協会は「フラガール」に食いついていない、と言うことだ。
 
 
フィシャル・サイトによると、

『フラガール』米アカデミー賞日本代表作品に決定!

皆さんビッグニュースです!『フラガール』なんと米アカデミー賞最優秀外国語映画賞部門に日本代表として出品されることが決定しました!2005年10月1日から2006年9月30日までの間に初公開され連続7日間以上公開されていなければならない、という条件の中、『フラガール』は選考基準ギリギリでしかも並み居るライバル映画を抑えての選出!(オフィシャル・サイトより引用)

とのことである。
 
 
さて、今日のお話だが、先ずはこちらをご覧いただきたい。

「フラガール」レビュー
http://diarynote.jp/d/29346/20060803.html

以前のエントリーで既にご紹介している通り、確かに「フラガール」は大変すばらしい作品なのだが、米アカデミー賞外国語映画賞の器かと言うとそうでもないような気がする。

何しろ、語弊はあるが、今から40年程前の貧乏臭い炭鉱町の物語が、果たして米アカデミー協会会員の胸に響くかどうかと考えると、日本国民として非常に不安を感じてしまう。
と同時に、日本の40年前の姿が、現在の姿だと思われてしまうのではないか、と言う危惧も同時に感じてしまう。

もちろん、本作は、極東の島国の観客の胸には十二分に響く作品だとは思うのだが、ワールド・ワイドな戦略を持った作品だとは思えないのだ。

ところで、炭鉱町の物語と言えば、炭鉱夫たちのブラスバンドが、病院の窓の外で、ヘルメットのライトで譜面を照らしながら「ダニー・ボーイ」を演奏する映画[「ブラス!」(1996)]とか、少年が跳躍したらアダム・クーパーになっちゃう映画[「リトル・ダンサー」(2000)]等の作品を思い出しちゃうけど、「フラガール」はその方向を狙ってるのかな?

それとも、仕事がなくて男性ストリップをやっちゃう映画[「フル・モンティ」(1997)]とか、会社がつぶれそうで仕方がなく変態ブーツを作っちゃう映画[「キンキーブーツ」(2005)]等の作品の路線を狙っているのかな?

で、そこまで考えて気が付いたのは、例に挙げた4本の作品が全てイギリス映画である、ということ。

実際「フラガール」を観た際に思ったのは、舞台は40年前の純然たる日本だし、美術、風物も当時の日本そのものなのだが、寂れた炭鉱町が地元住民の反対を押し切って起死回生を狙うと言う作品としてのコンセプトと言うかプロットというかは、何故かイギリス映画のテイストを感じさせていた。

米アカデミー協会的にはどんな腹積もりがあるのかわからないが、イギリス・コメディのノリで「フラガール」を評価するのかどうか、期待と不安が同居する気分である。

まあ、とにかく「フラガール」には頑張っていただきたいと思うのだ。

とりあえずは、9月23日(土)から公開ということなので、是非劇場に足を運んでいただきたいと思う。

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「Weeklyぴあ」(9.21号)によると、「東京国際ファンタスティック映画祭」が中止となった2006年、「東京ファンタ」が2005年まで開催されていた新宿において新たな映画祭が開催される事が決定した模様。

概要は次の通り。

「東京国際シネシティ フェスティバル2006」
会期:2006/11/23(木)〜26(日)
会場:「新宿ミラノ1」
オープニング作品:「007/カジノ・ロワイヤル」
クロージング作品:「ディバーテッド」(ハリウッド版リメイク「インファナル・アフェア」)
その他の上映作品:「めぐみ−引き裂かれた家族の30年」、「幸福な食卓」、「国境の南(原題)」、「モンスター・ハウス(吹替版)」、「パフューム」、「名犬ラッシー(吹替版)」、「LOVEDEATH」、「フレディ・マーキュリー没後15年メモリアル・フィルム・コンサート」、「プレイ」、「鉄コン筋クリート」

会期は、11/23〜26と、「東京国際映画祭」(10/21〜29)のほぼ一ヵ月後、「東京フィルメックス」(11/17〜26)の後半と被ると言うちょっと微妙な時期。

上映作品は、「東京国際映画祭」の特別招待作品にもれたような超話題作と、邦画ヤアジア映画のコラボレーションのような傾向で、まあ面白いと言えば面白いのだが、カラーに一貫性がなく、また上質な作品を上映する、と言うよりは話題先行の商業主義的な印象を受ける。

また、同時期に、世界の映画人を招いて、上質な作品を、また将来の映画作家の作品を連続上映し、様々なシンポジウムが開催される「東京フィルメックス」と会期が重なるのが非常に悩ましい。

秋の映画祭シーズンに新たな台風の目が登場、ということなのだろうか。期待と不安が入り混じる状況である。

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今日は「天空の城ラピュタ」の話。

前提は先日のエントリー
「宮崎アニメをめぐる冒険 その1」
http://diarynote.jp/d/29346/20060913.html

1.悪人は、兵器を欲している。
2.悪人は、兵器を手に入れるために、その兵器のキーとなる少女を探している。

ムスカは伝説の王国ラピュタを探索しているが、その目的はラピュタの巨大な力を得る事である。
ムスカは、ラピュタを見つけるため、ラピュタ王国の末裔シータを捜索する。

3.少年が少女を助ける。

パズーがシータを助ける。

4.悪人が改心する。

空中海賊ドーラ一家は、パズーとシータに触れ合うにつれ最終的には改心にいたる。

余談だが、わたしの記憶が正しければ、「天空の城ラピュタ」の元々の企画はNHKのテレビ・シリーズとして企画されたものだったのだが、なんらかの理由でボツになり、その後練り直され「天空の城ラピュタ」(1986)として公開された。

NHKに提出された企画書はその後、原案が翻案され庵野秀明の下で「ふしぎの海のナディア」(1990-1991)として日の目を見ている。

「天空の城ラピュタ」と「ふしぎの海のナディア」の根本的なプロット(失われた文明の末裔の少女が持つ石を、敵味方が奪い合い、少年がそれを助け、悪人の一部が改心する)が非常に似通っているのは、そんな事由があった、という事である。
 
 
さて、「天空の城ラピュタ」は、いくつかの作品の影響下にあるものの基本的に宮崎駿のオリジナル企画である。

気になるのは、先日お話した「未来少年コナン」(1978)と根本的なプロットが酷似していること。

■冒頭
ラピュタ:捕えられていた少女・シータが逃げ出し、空から少年・パズーのもとへ降りてくる。

コナン:捕えられていた少女・ラナが、少年・コナンが住む島に流れ着く。

■前半
ラピュタ:少年・パズーは、悪人・ムスカに再び捕えられた少女・シータを、悪人・ドーラの船・タイガーモス号で救出に向かう。

コナン:少年・コナンは、悪人・レプカに再び捕えられた少女・ラナを、悪人・ダイスの船・バラクーダ号で救出に向かう。

■後半
ラピュタ:少女・シータを救出した少年・パズーらは、改心した悪人・ドーラ一家と共に、失われた王国・ラピュタに向かう。
一方、悪人・ムスカも同時に失われた王国・ラピュタに到着し、ラピュタの失われた強大な兵器・神の雷を手に入れる。

コナン:少女・ラナを救出した少年・コナンらは、改心した悪人・ダイスやモンスリーらと協力し、少女・ラナの祖父・ラオ博士のメッセージを聞き、失われた技術・太陽塔(三角塔)に向かう。
一方、悪人・レプカは復活した太陽エネルギーを利用し、失われた巨大な兵器・ギガントを手に入れる。
 
 
基本的に「未来少年コナン」も「天空の城ラピュタ」も宮崎駿が好き勝手にやった作品、と言う位置付けだと思うので、好きなことが重なってしまっているのは、仕方がないのかも知れないが、ココまでの酷似はいかがなものか、と思ってしまう。

とは言うものの、藤子不二雄の作品群を見ると、そんな話しはどうでもよくなってしまうのが不思議だ。

宮崎アニメをめぐる冒険 その3
へつづく・・・

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最近、宮崎駿のことを考えている。

と言うのも、「ゲド戦記」
http://diarynote.jp/d/29346/20060802.html
とか「王と鳥」
http://diarynote.jp/d/29346/20060910.html
とかを観て、過去の宮崎駿作品(所謂宮崎アニメ)のことがいろいろ思い浮かんでしまうのだ。

で、思ったのは、いくつかの宮崎アニメには、大きな共通点があるのではないか、と言う事。

その気になる共通点は次の通りである。

1.悪人は、兵器を欲している。
2.悪人は、兵器を手に入れるために、その兵器のキーとなる少女を探している。
3.少年が少女を助ける。
4.悪人が改心する。

今日は「未来少年コナン」(1978)で、その共通点を考えてみようと思う。
何分、結構昔に見たっきりなので、記憶が定かではない部分が多々あるが、その辺はご容赦願いたい。

1.悪人は、兵器を欲している。
2.悪人は、兵器を手に入れるために、その兵器のキーとなる少女を探している。

レプカは、インダストリアの三角塔(太陽塔)のエネルギーを復活させギカントを飛ばそうと考えている。
そこで、太陽塔にエネルギーを注入する方法を知るラオ博士を探すため、ラオ博士と精神感応で繋がっている孫娘ラナを、配下のモンスリーとダイスを使って探させている。

3.少年が少女を助ける。

残され島に流れ着いたラナをコナンが助ける。

余談「千の顔を持つ英雄」の話挿入

4.悪人が改心する。

先ずは、ダイスが、そして遂にはモンスリーさえもコナンとラナに感化され、改心し、善人としての行動を起こす。

今日は第一回と言うこともあり、宮崎アニメに関する共通点を論じるところまでは行けないのだが、前述の4つの共通点を見ていただければ、なんとなくでも宮崎アニメの多くが、これらの共通点を持っている、と思えるのではないか、とわたしは思う。

余談だが「未来少年コナン」の世界では、プラスチップ(プラスチック製品)から石油を精製する技術が残っており、また太陽エネルギー復活後は、太陽塔(三角塔)の動力や様々なギミックの全てを太陽エネルギーで賄うと言う、エコロジカルでミニマムな環境サイクルが描かれている。

この環境サイクルは、後に「風の谷のナウシカ」(1984)や「もののけ姫」(1997)でも描かれているのが興味深い。
このあたりも後々考察して行きたいと考えている。
 
 
「宮崎アニメをめぐる冒険 その2」
http://diarynote.jp/d/29346/20060915.html
に、つづく・・・・

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「王と鳥」

2006年9月10日 映画
2006/09/01 東京渋谷「シネマ・アンジェリカ」で「王と鳥」を観た。同時上映は「かかし(短編)」

タキカルディ王国。
暴君として名高い国王・シャルル5+3+8=16世は、納得の行く肖像画を求め、何度も画家を換え描き直させていた。

と言うのも、王は天高くそびえる宮殿の最上階にある秘密の部屋に飾られた美しい羊飼いの娘の絵画に恋をしていたのだ。

しかし、その羊飼いの娘は隣りに飾られている煙突掃除の青年と恋に落ちていた。

羊飼いの娘と煙突掃除の青年は、2人の仲を引き裂こうとする王から逃れるため、絵画から抜け出してしまう。
それを見た肖像画の王は、2人を追い絵画から飛び出してくるが・・・・。

監督:ポール・グリモー
原作:アンデルセン 「羊飼い娘と煙突掃除人」
脚本:ジャック・プレヴェール、ポール・グリモー
台詞:ジャック・プレヴェール
音楽:ヴォイチェフ・キラール、ジョセフ・コズマ
声の出演:パスカル・マゾッティ(王)、ジャン・マルタン(鳥)、レイモン・ビュシエール(警官長)、アニネス・ヴィアラ(羊飼いの娘)、ルノー・マルクス(煙突掃除の青年)、ユベール・デシャン(助言者)、ロジェ・ブラン(盲人)、フィリップ・デレーズ(エレベーターとスピーカーの声)、アルベール・メディナ(猛獣使い)、クロード・ピエプリュ(宮殿の長)
 
 
本作「王と鳥」を観て最初に思ったのは、宮崎駿の事であった。

その思いは、わたしは宮崎駿に騙されていたのではないか、と言う事。

宮崎駿のオリジナルの発想だと思っていたプロットやギミックの多くは、なんと「王と鳥」で既に描かれていたのである。

例えば「未来少年コナン」(1978)の三角塔や三角塔の地下に拡がるコアブロックの造形、またはフライング・マシンや復活した太陽塔で描写されるつなぎ目のない壁に突如現れるドア、または「カリオストロの城」(1979)におけるカリオストロ城の造形や、つなぎ目のない床に突如現れる落とし穴や、落とし穴の部屋、エレベータの造形、階段を駆け降りるキャラクター等々、多くの点で、宮崎駿作品の発送の原典が感じられる。

宮崎駿はあるインタビューで「僕らの仕事は、前の世代からもらったバトンを、次の世代に渡すことだと思っています」と語っているが、だとしても、「王と鳥」と宮崎駿が関わった作品におけるイマジネーションの同一性は甚だしい、と言わざるを得ない。

また、高畑勲が「特に『カリオストロの城』は、この映画(「王と鳥」)の半分パクリみたいな・・・・」と語った、と言うのも頷ける。

わたし達が愛した宮崎駿とは一体何者だったのだろうか、わたしは宮崎駿に騙されていたのだろうか、と。
 
 
さて本作「王と鳥」についてだが、物語は、煙突掃除の青年が宮殿の最上階に巣を作る鳥の助けを得て、天高くそびえる宮殿の最上階の王の秘密の部屋から、無理矢理王の嫁にさせられそうになってしまう羊飼いの少女を救出する物語だと言える。

そうして見ると、物語自体も「カリオストロの城」に酷似していると言える。

そして、羊飼いの少女の絵画を愛する王は、非常にキレやすい性格で、意に沿わぬ家来は即座に落とし穴へ落としてしまうし、また、秘密の部屋まで王を案内するためエレベータを操作した家来も、そこが秘密の部屋だと言う理由で落とし穴に落としてしまう。

王のキャラクター設定は、時空を超え、近代日本におけるキレやすい若者、または偏愛する対象を二次元に求める人々の象徴としてもとらえる事ができるのが、強烈なシンクロニシティを体現しているのだ。

そんな王も肖像画から出てきた肖像画の王に落とし穴に落とされ、肖像画の王は実の王に化け、羊飼いの少女との結婚を望み、脱出した2人を国をあげて追いかける、と言う行動を起こす。

そんな中で、非常に印象に残ったシークエンスが二つある。

ひとつは、煙突掃除の青年が羊飼いの少女を助けるシークエンスで、もうひとつは、青年と少女が手をつなぎながらものすごい速さで階段を駆け降りるシークエンスである。

ひとつめのシークエンスは、壁に飾られた絵画から青年が梯子を使って床に降り、その梯子を少女が描かれている絵画に立て掛け、梯子を使って少女を絵画から助け出すのだが、その動きだけで涙が出てしまう。

アニメーションが持つダイナミズムのひとつの頂点なのかも知れない。

そして、その手の動きは「カリオストロの城」でルパンがクラリスに万国旗を手渡すシークエンスを髣髴とさせる。(と言うか、逆なのだが・・・・)

ふたつめのシークエンスは、セルアニメの限界を遥かに超えた超絶技法が要求されるシークエンスである。

青年と少女は手を取りあったまま、背景として描かれた百段以上の階段をものすごい速さで一段一段駆け降りて行く。
それを描くその圧倒的な技術には、目を瞠るどころか、涙がこぼれてしまう。

ただ単に階段を駆け降りて行くだけの映像で泣けるのである。

そのふたつのシークエンスが劇場のスクリーンで見られただけで、わたしは幸せな気分になってしまった。

まさに、アニメーションの語源、animate(生命を与える)である。

本作「王と鳥」は、アニメーションに関心を持つ者、映像に関心がある者必見のすばらしい作品である。

是非劇場で観て欲しいと思うし、本作で描かれる独創的なイマジネーションの奔流に身を任せていただきたい、と思う。

☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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2006/08/25 東京銀座「丸の内TOEI 1」で「アキハバラ@DEEP」の試写を観た。

世界の電脳中心地<アキハバラ>。
そこは、最新AV機器から胡散臭いジャンク商品までが揃う、世界最大にして最強のエレクトリック・マーケット。

ユイ(板谷由夏)の引き合わせで偶然出会ったページ(成宮寛貴)、アキラ(山田優)、ボックス(忍成修吾)、タイコ(荒川良々)、イズム(三浦春馬)の若者5人。
社会からドロップアウトした彼らは、一緒に小さなベンチャー会社『アキハバラ@DEEP』を設立するが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:源孝志
原作:石田衣良 「アキハバラ@DEEP」(文藝春秋刊)
脚本:源孝志、成田はじめ
撮影:袴一喜、足立真仁
音楽:小西康陽
出演:成宮寛貴(ページ)、山田優(アキラ)、忍成修吾(ボックス)、荒川良々(タイコ)、三浦春馬(イズム)、板谷由夏(ユイ)、ユセフ・ロットフィ(アジタ)、松尾政寿(加藤則之)、今井朋彦(平井)、寺島しのぶ(渡会藤子)、萩原聖人(遠坂直樹)、佐々木蔵之介(中込威)

本作「アキハバラ@DEEP」は普通に面白い娯楽作品に仕上がっていた。
しかし、個人的には物語として非常に残念な印象を受けた。

と言うのも本作の物語は、ページ(成宮寛貴)、アキラ(山田優)、ボックス(忍成修吾)、タイコ(荒川良々)、イズム(三浦春馬)らが立ち上げたベンチャー企業『アキハバラ@DEEP』が独自のコンセプトで開発した画期的な検索エンジン『クルーク』の争奪戦を描いているのだが、中込威(佐々木蔵之介)率いる巨大IT企業デジタル・キャピタル社(通称:デジキャピ)は、ベンチャー企業『アキハバラ@DEEP』に侵入し、暴力をもって『クルーク』を強奪する。
『目には目を』と言う言葉があるが、非常に残念な事にページらが強奪された『クルーク』を取り戻す手段が、デジキャピ社と同様に暴力による強奪なのだ。

暴力で『クルーク』を強奪するデジキャピ社と暴力をもって『クルーク』を取り戻す『アキハバラ@DEEP』。

「アキハバラ@DEEP」と言う物語の文法として、暴力で奪われたからと言って、暴力で『クルーク』を取り戻してはいけない、と言わざるを得ない。
彼らのような純粋で正直で清純な存在には、暴力は似合わないのだ。

暴力と言う手段を使った時点で、『アキハバラ@DEEP』の高邁な精神は地に落ち、デジキャピ社の中込らと『同じ穴の狢(むじな)』になってしまう。

暴力を使う悪の組織デジキャピに対抗する手段は暴力ではなく知性であって欲しかった。

これでは同工異曲の「七人のおたく cult seven」(1992)の方がコンセプトは良かったのではないか、と思えてしまう。

仮にデジキャピの暴力に対し『アキハバラ@DEEP』が知性で立ち向かったならば、非常に面白いコン・ゲームの映画になったのではないか、と思えてならない。

例えばジェフリー・アーチャーの小説「百万ドルをとり返せ!」とか、名作「スティング」(1973)のような、「やられた〜」と思わせるような作品にして欲しかったと思う。

脚本は、ITベンチャー企業の台頭と、ネット社会、監禁飼育、アキバ系、メイド・カフェ、地下格闘技、アニメ等様々でキャッチーなキーワードを散りばめ、テンポよく構成されている点は評価できるが、やはり最大の問題点は、暴力に暴力で対抗してしまっている点だろう。

ラストのシークエンスで、折角の5人の特殊なスキルを持った設定が生かされていないような印象を受けるのだ。

撮影はなんだか知らないが、映像が非常に暗く。イライラさせられた。

美術は基本的に良い仕事をしているとは思うのだが、その反面、東京国際フォーラムのガラス棟を使ったロケについては、セットを作る予算がなかったのか、近未来的な建物でゲリラ撮影をしているような自主制作映画、まるで学生映画のような印象を受けてしまった。

キャストは何と言っても佐々木蔵之介(中込威役)が良かった。
エキセントリックで逝っちゃってるキャラクターを見事に、そして楽しげに演じている。
最近引っ張りダコの佐々木蔵之介だが、新たな方向性を見つけたのではないかと思える。

また山田優(アキラ役)も良かった。
山田祐のファンにとっては、彼女の様々なコスプレが楽しめる非常に魅力的な作品なのかもしれない。

さらに主演の成宮寛貴(ページ役)は吃音の演技が若干やりすぎの感が否めないが、その分表情や動きで特徴を出していたような印象を受けた。

個人的には、ページの拷問の際に吃音の治療のための言葉、例えば「カレハコブシヲグイグイトハシラヲオシユウレイガミエルトシツコクイイハル」みたいに言葉を執拗に繰返すシークエンスが欲しかったと思う。

本作の成宮寛貴はいつもよりちょっと幼いような印象も受けた。

あとは、寺島しのぶ(渡会藤子役)には驚かされた。
アクションとは・・・・、彼女の新境地なのだろうか。

そしてもちろん、荒川良々(タイコ役)はすばらしかった。
本当に荒川良々は良い役者だと思う。

まあ本作「アキハバラ@DEEP」は、前述の問題点に目をつぶれば、普通に楽しめる娯楽作品だと思う。
結構苦戦している噂を聞くが、関心があるのならば、是非劇場で観て欲しい作品ではある。

☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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2006/09/07 東京内幸町「イイノホール」で「手紙」の試写を観た。

川崎のリサイクル工場への送迎バス。最後部座席に、野球帽を目深に被った青年の姿がある。

武島直貴(山田孝之)、20歳。
誰とも打ち解けない、暗い目をしたこの青年には、人目を避ける理由があった。

兄・剛志(玉山鉄二)が、直貴を大学にやるための学費欲しさに盗みに入った邸宅で、誤って人を殺してしまったのだ。

人殺しの弟。近所の人々の差別や嫌がらせにあった直貴は、数度にわたる引越しと転職で、川崎のリサイクル工場にたどり着くが・・・・。
(ちらしからほぼ引用)

監督:生野慈朗
原作:東野圭吾 「手紙」(毎日新聞社刊/文春文庫近刊)
出演:山田孝之(武島直貴)、玉山鉄二(武島剛志)、沢尻エリカ(白石由美子)、吹石一恵(中条朝美)、尾上寛之(寺尾祐輔)、吹越満(緒方忠夫/被害者の息子)、風間杜夫(朝美の父)、杉浦直樹(平野/電器会社会長)

新たな涙腺破壊兵器の誕生である。

本作「手紙」は非常にエモーショナルな、と言うか、観客の感情を無遠慮に鷲掴みでぐいぐいと揺り動かす、そんな感じの作品だった。

物語の大きなテーマは、差別の是非である。

武島直貴(山田孝之)は、強盗殺人の罪で服役中の兄・剛志(玉山鉄二)の弟であるがために、差別・迫害を受け、アパートを、そして職場を追われ、転居に転職を重ねることを余儀なくされている。

当然ながら、弟・直貴に感情移入した観客は、直貴に対する様々な差別、迫害に怒りを覚える訳だ。

しかし、ここで考えなければならないのは、直貴を差別し迫害しているのは、誰か、と言うこと。
言うまでも無く、それはもちろんわれわれ一般大衆のメタファーなのだ。

つまり、観客の怒りの矛先は、回りまわって自分たちに向いている、ということなのだ。

そんな中、電器会社の会長・平野(杉浦直樹)が吐くセリフが全くもってすばらしい。

「差別は当然だ、犯罪者やそれに近い人間を排除し、遠ざけようとするのは、当然の行為なんだ」

平野はこんなセリフを吐きながらも、実は直貴に限りない愛情を持って接している。
わたし達はあまりにも正直な、良識やモラルではなく真実を語る平野に泣かされてしまうのだ。

キャストはなんだか知らないが、旬の俳優が顔を揃え、豪華な印象を受ける。

非常に印象的だったのは、剛志に殺された老女の息子・緒方忠夫(吹越満)がラストの直前に、激昂している感情を抑え込み、深々と深呼吸をしながら平然と語る姿がすばらしかった。

憔悴しきった表情の中、激昂している姿を、見せないようにする、自分の感情を隠そうとする姿に感動してしまう。

弟・直貴を演じた山田孝之はやはり上手いと思う。
山田孝之は本作で尾上寛之(寺尾祐輔役)と漫才コンビを組むのだが、脚本(ネタ)が良いのか、漫才シークエンスは結構楽しめた。何しろ普通に面白いのだ。

そして普段の直貴の姿と、ステージ上のはじけた直貴の姿のギャップ、また、由美子の前で激昂する姿と、平野の前でしなだれる姿のギャップも演技としては多面性を持ったキャラクターを見事に演じていると思う。

ステージ上の笑顔は最高である。

そして、後半部分の漫才シークエンスの山田孝之は、冗談抜きに絶品だと思う。

また、直貴を支える由美子を演じた沢尻エリカは、現在最も売れている女優のひとりだと思うし、2006年は映画だけで5本も出演作品があり、それらが全て主演・助演レベルだと言うのは凄いと思う。

本作では、テレビ・シリーズ「タイヨウのうた」(2006)に続く山田孝之との共演ということもあるのか、良いコンビネーションが楽しめた。

彼女の陶器のようなルックスが様々な表情を見せる非常に多感な表現はすばらしいと思う。

余談だが、後半部分、ちょっとした老け役が良かったと思う。

玉山鉄二(武島剛志役)は、残念ながら地味な役柄だったが、後半部分の見せ場には泣かされた。
イケメン俳優とは思えぬ、ある仕草に役者魂を感じた。

更に、若手の頑張りに、曲者の中高年の役者たち、−−吹越満(緒方忠夫/被害者の息子)、風間杜夫(朝美の父)、杉浦直樹(平野/電器会社会長)−−、 が格調を与えているという感じだろうか。

監督の生野慈朗はテレビあがりの演出家なのだが、奇をてらわない演出は順当で素直。物語の邪魔をしない素直な部分に好感を覚えた。

ただ、回想のシークエンスではビデオの粗い映像が使われているのだが、効果よりは、物語から観客の目をそらす、あまりよくない効果が出ているような気がした。
映像が粗すぎるのだ。

本作の公開は2006年11月と、まだ少し先だが、是非劇場で堪能して欲しいすばらしい作品だと思う。

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なんとも驚いた話だが、なんとジョン・ウーが三国志映画を撮るらしい。

もともとジョン・ウーは中国広州の出身なので「三国志」の物語についてなみなみならない関心があったのかも知れない。

だがね、ちょっと気になるのは、ジョン・ウーの作風と「三国志」の物語の方向性に大きなギャップを感じるのだよ。わたしは。わたしだけかな。

なにしろ、二挺拳銃も、教会も、白い鳩も「三国志」にゃー出せないぞ。
 
 
ジョン・ウー監督の三国志映画で渡辺謙とチョウ・ユンファが共演
2006/09/06

ジョン・ウー監督の三国志映画『ザ・バトル・オブ・レッド・クリフ(赤壁之戦)』(原題)に、渡辺謙とチョウ・ユンファ、トニー・レオンが出演することが決まった。映画は、日本でも高い人気を持つ三国志の大きな見せ場のひとつである赤壁の戦いにスポット当てた作品となり、渡辺は魏の曹操役にふんする予定だ。蜀の劉備役にユンファが、蜀を支えた軍師の諸葛亮孔明役にレオンがふんし、呉の軍師であった周瑜役にはアンディ・ラウやジェット・リーが候補に挙がっている。モデルのリン・チーリンも出演し、脚本は『グリーン・デスティニー』のワン・ホリエンが手掛け、撮影は来年3月から開始される予定だ。
(シネマトゥディ/最近のニュースより引用)

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2006/08/31 東京池袋「テアトル池袋」で「時をかける少女」(2006)を観た。

当日は「テアトル池袋」の閉館に伴う楽日(らくび)。
監督の細田守とプロデューサーの渡邊隆史の舞台挨拶と「テアトル池袋」の閉館イベントがあり、立見が100名程出ていた。

高校2年生の紺野真琴(仲里依紗)は、故障した自転車で遭遇した踏切事故の瞬間、時間を跳躍する不思議な体験をする。
叔母の芳山和子(原沙知絵)にその能力のことを相談すると、それは「タイムリープ」といい、年頃の女の子にはよくあることだというが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:細田守
原作:筒井康隆 「時をかける少女」(角川文庫刊)
脚本:奥寺佐渡子
美術監督:山本二三
キャラクターデザイン:貞本義行
制作:マッドハウス
声の出演:仲里依紗(紺野真琴)、石田卓也(間宮千昭)、板倉光隆(津田功介)、原沙知絵(芳山和子)、谷村美月(藤谷果穂)、垣内彩未(早川友梨)、関戸優希(紺野美雪)

本作「時をかける少女」(2006)は大変素晴らしい作品に仕上がっていた。

物語の構成は、大林宣彦監督、原田知世主演の「時をかける少女」(1983)の続編と言う前提ではありながら、同作の見事な正統リメイク作品として、はたまた筒井康隆の原作の見事な映画化作品として機能する非常にすばらしい構成を持っていた。

アニメーション制作はマッドハウス。
マッドハウスと言えば、同じく筒井康隆原作で、ヴェネチア国際映画祭で上映され絶賛をあびている今敏の「パプリカ」(2007)や、今敏の前作「東京ゴッドファーザーズ」(2003)、「千年女優」(2001)、「PERFECT BLUE」(1998)等々、クオリティの高い作品が思い出される。

本作は、一連の今敏監督作品同様、先ずは背景がすばらしい。
その背景の一翼を担うのは、テレビ・シリーズ「未来少年コナン」(1978)時代からの宮崎駿の盟友山本二三。

細かい街並みはもちろん、「スーパーマン リターンズ」(2006)に足りない見事な、そして圧倒的な青空が楽しめる。
山本二三の強烈な写実的な背景が確固とした世界観の構築に、そして物語へのリアリティの付与に大きく貢献している。

動画は前述の今敏作品の動き、例えば「東京ゴッドファーザーズ」等には及ばないものの、人間が動いている様を見事に表現し、また恐ろしいほどに表情が豊かなキャラクターを生き生きと活写している。
本さくのキャラクターは、口先、小手先だけの演技ではなく、身体全体で感情を表現しているのだ。

ところで、2006年の夏は、GONZO制作の「ブレイブ ストーリー」(2006)、スタジオ・ジブリ制作の「ゲド戦記」(2006)、そしてマッドハウス制作の本作「時をかける少女」(2006)と、奇しくも日本が誇る三大アニメーション・スタジオの三つ巴の争いが展開されていたのだが、全ての点において本作は他を圧倒的に凌駕している、と言う印象を受けた。

そして「ブレイブ ストーリー」と「ゲド戦記」がダメなせいか、はたまた本作が優れているせいか、「時をかける少女」は、当初は単館系作品だったのだが、現在では順次全国拡大ロードショーに拡大していくようである。

優れた作品に多くのスクリーンが割り当てられる。
当たり前と言えば当たり前なのだが、いろいろな大人の事情で、なかなか出来ない事なのである。
そんな中、良質な作品に多くのスクリーンが割り当てられるのは、非常に嬉しいものである。

良質な作品は、きちんとプロモーションを行い、きちんとヒットさせなければならないのだ。

余談だか、興業収入のお話しだが、興収第1位になる作品と言うのは、観客が集まった結果、1位になるのではなく、(誰かが)1位にしようとしたいくつかの作品のうち、一番観客が集まった作品が結果的に1位になるのである。

と言うのも、逆説的に言うと、1位になった作品に、結果的に日本中の数多くのスクリーンが割り当てられていた、と言うことなのである。

いくら良質の作品であってもスクリーンの数が少なければ、満員で4回転、5回転しようが、所詮はスクリーンの数が興収に対しモノを言う訳である。

だから、くだらない莫迦な大作映画が興収第一位を掻っ攫ってしまう訳なのだ。

物語の前半は、タイムリープ能力を得た真琴が大喜びで繰り広げるドタバタ・コメディ。
後半はドタバタ・コメディの延長上に恋愛模様を絡め、そして恐ろしくも静かなラストへと物語りは進む。

物語の論理構成としては、パラレルワールド的な世界観ではなく、一つの時間軸を持つ世界観を貫いているため、ラストの決着のつけ方に、若干イロジカルな部分があるのは否定できないが、それはそれ、本作のすばらしい脚本の前には、少しも気にならないのだ。

キャストは、説明的なセリフに難があるキャラクターもいたが、マンガ映画のようなセリフの発声に、また有名俳優や話題性と言った観点や、大人の事情で声優(声の出演)を決定したと思われる「ブレイブ ストーリー」や「ゲド戦記」なんかよりも、素直でプレーンな演技に好感を覚えた。

とにかく、本作「時をかける少女」(2006)は2006年の夏に劇場で観るべきアニメーション作品だと本気で思う。

夏休みと言う祭の後の寂しさを是非味わっていただきたい。

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さて、早速ですが2006年の目標の中間発表その8です。

とりあえず目標の再確認を・・・・

目標第一弾 「映画を300本観るぞ!!」(DVD等含む)
目標第二弾 「本を100冊読むぞ!!」
 
 
1.映画

#040「ゲド戦記」ワーナーマイカル・シネマズ板橋 2006/08/01
#041「フラガール」九段会館 2006/08/03
#042「ユナイテッド93」スペースFS汐留 2006/08/04
#043「マイアミ・バイス」よみうりホール 2006/08/07
#044「X-MEN ファイナル ディシジョン」イイノホール 2006/08/09
#045「キンキーブーツ」イイノホール 2006/08/10
#046「ハウス・オブ・D」イイノホール 2006/08/12
#047「ラフ」東証ホール 2006/08/19
#048「UDON/うどん」一ツ橋ホール 2006/08/20
#049「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」東京国際フォーラム 2006/08/22
#050「アキハバラ@DEEP」丸の内TOEI 1 2006/08/25
#051「ナイロビの蜂」新文芸坐 2006/08/31
#052「グッドナイト&グッドラック」新文芸坐 2006/08/31
#053「時をかける少女」テアトル池袋 2006/08/31
 
 
2.DVD、CATV等

#126「もののけ姫」DVD 2006/08/02
#127「リンダ リンダ リンダ」HDD 2006/08/04
#128「スター・ウォーズ/エピソードIV/新たなる希望」CATV 2006/08/06
#129「スター・ウォーズ/エピソードV/帝国の逆襲」CATV 2006/08/06
#130「スター・ウォーズ/エピソードVI/ジェダイの帰還」CATV 2006/08/06
#131「スター・ウォーズ/エピソードI/ファントム・メナス」CATV 2006/08/06
#132「スター・ウォーズ/エピソードII/クローンの攻撃」CATV 2006/08/06
#133「スター・ウォーズ/エピソードIII/シスの復讐」CATV 2006/08/06
#134「大統領の理髪師」HDD 2006/08/15
#135「未来警察」CATV 2006/08/19
#136「ツバサ・クロニクル/鳥カゴの国の姫君」HDD 2006/08/19
#137「スター・ウォーズ/エピソードVI/ジェダイの帰還」CATV 2006/08/19
#138「ドッジボール」CATV 2006/08/19
#139「xxxHOLiC 真夏ノ夜ノ夢」HDD 2006/08/19
#140「機動警察パトレイバー2 the Movie」HDD 2006/08/19
#141「クローサー」HDD 2006/08/23
#142「サマータイムマシン・ブルース」CATV 2006/08/23
#143「フロム・ダスク・ティル・ドーン3」HDD 2006/08/26
#144「NANA」HDD 2006/08/26
#145「レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード」HDD 2006/08/28
#146「50回目のファースト・キス」HDD 2006/08/30
#147「愛についてのキンゼイ・レポート」CATV 2006/08/30
 
 
3.読書

#013「新地下鉄の友(上り)」泉麻人著 産経新聞社 2006/08/04
#014「ブラック・ダリア」ジェイムズ・エルロイ著 吉野美恵子訳 2006/08/12
#015「ダーク・タワーVI −スザンナの歌(上)−」スティーヴン・キング著 風間賢二訳 新潮文庫 2006/08/20
#016「ダーク・タワーVI −スザンナの歌(下)−」スティーヴン・キング著 風間賢二訳 新潮文庫 2006/08/30
 
 
映画は、劇場14本(累計53本)、DVD等22本(累計147本)で、計36本(累計200本)。
このままのペースで、年間300本(劇場78本)です。

読書は4冊(累計16冊)で、このままのペースでは、年間24冊です。
 
映画は良いところまで持ち直しました。
ということで、9月以降は月間25本をキープすれば目標達成です。
読書は全く厳しい状況です。
 
 
■映画(8月末日現在)
2006年 200本(劇場53本)
2005年 178本(劇場75本)
2004年 207本(劇場79本)
2003年 206本(劇場53本)

■読書(8月末日現在)
2006年 16冊
2005年 26冊
2004年 25冊
2003年 38冊

映画については、2003年以降、きちんと300本以上観ているので、おそらく映画300本は大丈夫だと思います。
但し、劇場で観る本数が減少しています。

読書は、例年減少しており、惨憺たる状況です。
非常によろしくない状況です。心を入れ替える方向で頑張ります。

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2006/08/22 東京有楽町「東京国際フォーラム」で、「ワイルドスピードX3 TOKYO DRIFT」を観た。
当日は、監督:ジャスティン・リン、キャスト:ナタリー・ケリー、北川景子、土屋圭市らのゲストを迎えた「ジャパン・プレミア」だった。司会は襟川クロ。

カリフォルニアで閉鎖的な毎日を過ごしている高校生ショーン・ボズウェル(ルーカス・ブラック)にとって、車は唯一の心の拠りどころ。

ある日、ハイスクールの花形アメフト選手クレイ(ザカリー・タイ・ブライアン)に因縁をつけられた彼は、ストリート・レーシングの勝負を受けて立つ。

愛車の古いムスタングを駆って、チューンアップされたダッジバイパーを操るライバルに競り勝つショーンだったが、建設現場を荒らしたあげく衝突事故を起こして補導される。
これが車がらみの3度目の逮捕で、少年院行きは逃れられない。

自由を奪われるか、街を出るかの選択に迫られ、ショーンは軍人である父(ブライアン・グッドマン)を頼って日本へ飛ぶが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:ジャスティン・リン
出演:ルーカス・ブラック(ショーン・ボズウェル)、バウ・ワウ(トウィンキー)、サン・カン(ハン)、ナタリー・ケリー(ニーラ)、ブライアン・ティー(D.K.)、レオナルド・ナム (モリモト)、北川景子(レイコ)、妻夫木聡(カメオ)、土屋圭市(釣り人1)、千葉真一(カマタ/JJサニー千葉)

さて、本作「ワイルドスピードX3 TOKYO DRIFT」についてだが、結論としては、まあ面白いんだけど・・・・。と言う印象。

ドリフトが主要なテクニックと言う事と、日本が舞台と言う事を考えると、否応なく「頭文字<イニシャル>D THE MOVIE」(2005)と比較されてしまうと思うのだが、撮影テクニックにしろ見せ方にしろ、「頭文字D」に遥かに及ばない。

ハリウッド特有のアップで何が起こっているかわからない、と言うアクション・シークエンスの目白押しである。

ところで、物語のコンセプトとして興味深いのが、アメリカ人が日本に来て、日本車で日本人(アジア人)に一旦は負けるが、最終的には、アメリカ車で日本車に勝つ、と言うもの。

で、そのアメリカ車がフォード・ムスタング’67にニッサン・スカイラインGT-RのRB26エンジンを移植したもの。
ショーンがRB26のこのプラグが悪いとか言って日本のエンジンに文句をたれる所が興味深い。

さて、ムスタング’67と言えば、どうしても考えなければならないのは「ブリット」(1968)でスティーヴ・マックィーンが乗ったムスタング’68。
どう考えても「ブリット」を意識していると思うよ、本作は。

とは言うものの、2006年の最新技術をもってしても残念ながら、「ブリット」(1968)や「フレンチ・コネクション」(1971)、「カプリコン・1」(1977)、「マッドマックス」(1979)等の珠玉のカースタントには遠く及ばない。
何しろ興奮しないし、印象に残らないのだ。
強いて言えば、冒頭のマッスルなカースタントの方が面白いと言うのは、どう言う事なのだ、と思ってしまう。

物語としてはキャストを一新しているのだが、三作目をはじめて観た観客に対しても、主人公ショーン・ボズウェル(ルーカス・ブラック)が自動車の無謀運転で2度捕まっている、と言う冒頭部分のプロットから、あぁ、1作目と2作目でショーンが捕まって、今度は3度目なのだな、と訳わからないミス・デレクション的プロットが非常に興味深い。

実際のところは、キャスト一新なのだが、そんな見方も出来る楽しいプロットが楽しめる。

とは言うものの、全く解せないのは、主人公がクルマを壊しまくること。
冒頭のカースタントからはじまって、日本上陸後の最初のレースにしろ、めちゃくちゃクルマを壊しまくる。

主人公のショーンはクルマが好きでたまらない設定のハズだと思うのだが、そのショーンのクルマに対する愛情が一切感じられない、と言う作品として致命的な印象を受ける。

特に日本国内最初のドリフトレースの際のめちゃくちゃ感は、クルマ好きの神経逆撫でシークエンスではないのか、と思ってしまう。

余談だが、妻夫木聡のフッテージを効果的に使った予告編、CF(CM)には頭が下がる、と言うかちょっとまずいんじゃないか、と思う。

当初から本編に妻夫木聡が1〜2カットしか出てこないと知っている観客ならまだしも、あんな予告編やCF(CM)を見せられた妻夫木聡ファンはたまらないと思うぞ。

日本が舞台とはいえ、日本人キャストが少ないのも面白い。
と言うか、ワールドワイドな作品に出演できる俳優が日本には居ない、ということなのだろうと思う。

まあ本作「ワイルドスピードX3 TOKYO DRIFT」は、そこそこ楽しいカースタント映画だが、残念ながら記憶には残らない作品だと言わざるを得ない。

☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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「ラフ/ROUGH」

2006年8月22日 映画
2006/08/20 東京有楽町「東証ホール」で「ラフ/ROUGH」の試写を観た。

水泳日本選手権、自由形決勝。

精神統一を図る大和圭介(速水もこみち)の隣には、自由形日本チャンピオンを目される仲西弘樹(阿部力)がいた。

レースで仲西は日本新記録をただきだし、大和はレース中に足をいため、最下位になってしまう。

応急措置を受けた大和は、偶然一人の少女とすれ違う。
彼女はすれ違いざまに大和に声をかける。

「ひとごろし」と。

監督:大谷健太郎
原作:あだち充 「ラフ」(小学館/少年サンデーコミックス)
脚本:金子ありさ
出演:長澤まさみ(二ノ宮亜美)、速水もこみち(大和圭介)、阿部力(仲西弘樹)、石田卓也(緒形剛)、高橋真唯(木下理恵子)、黒瀬真奈美(東海林緑/寮母の娘)、市川由衣(小柳かおり)、八嶋智人(古屋先生)、田丸麻紀(咲山先生)、徳井優(チロリンのマスター)、松重豊(亜美の父)、渡辺えり子(東海林さん/寮母)
 
 
本作「ラフ/ROUGH」は「タッチ」(2005)に続く、原作:あだち充×主演:長澤まさみコンビの作品であり、また「涙そうそう」(2006)とほぼ同時期に公開される長澤まさみ主演作品である。

監督は「約三十の嘘」(2004)、「NANA」(2005)、そして次回作はなんと「NANA2」と話題作が続く大谷健太郎。

さて、本作「ラフ/ROUGH」についてだが、先ずは、なんとも真直ぐで真っ当なアイドル映画に仕上がっている事に驚いてしまった。
と言うのも、「NANA」のような作品の後に、言わば前時代的なアイドル映画を普通に撮ってしまう大谷健太郎に驚かされてしまった、という事である。

脚本は、テレビ・ムービーのコメディを数多く手がけ、「電車男」(2005)でブレイクした金子ありさ。

いきなり余談で恐縮だが、本作「ラフ/ROUGH」においては、長澤まさみが惜しげもなく水着を、特にプールサイドのシークエンスではハイレグの競泳水着を披露している点に好感を覚えた。

アイドル女優が主演する作品では多くの場合、水着やヌード・シーン等肌の露出が高いシーンを演じるのは主演女優(アイドル女優)ではなく、共演女優であることが多い。

例えば、脇役がきちんとビキニを着ているのに、主役が水着の上にTシャツなんかを着ているような作品を観た事があるのではないだろうか。

そんな状況の中、本作「ラフ/ROUGH」では長澤まさみの水着を、−−しかもなんと数種類の水着を−−、きちんと見せているのだ。

この辺については、アイドル女優の所属事務所からの物言いとか様々な大人の事情により、水着のシーンが増えたり減ったりする事があるのだが、さすが「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004)で、長澤まさみの丸坊主を許した事務所。太っ腹というところだろうか。

つまり「ラフ/ROUGH」と言う作品に真摯に取り組む制作者サイドに頭が下がる思いがする、という事なのだ。

※ ここで言いたいのは、長澤まさみの水着姿が見たいとか見たくないとかそういう次元のことではなく、本作は大人の事情より作品の質を高めることを優先させている作品だ、と言うこと。

ところで、物語はマンガが原作、と言う事もあるのか、ベタでお約束の想像通りの展開が続くのだが、細かい脚本が良く出来ているせいか、全く鼻につかず、気が付いたら作品に集中してしまっている、と言う作品だったような印象を受けた。

長澤まさみ×あだち充コンビの前作「タッチ」(2005)と比較すると、20倍くらい面白い作品に仕上がっていると思う。

あと驚いたのは、水中撮影が驚くほど綺麗な点。
日本映画史に残るくらいの綺麗な水中シーンが楽しめる。

尤も、水中シーンのほとんどが室内プールでのシークエンスなので、撮影時において照明等がきちんとコントロールできる環境下での撮影であるから、水中シーンが綺麗だ、と言うのはあたりまえなのかも知れない。

また水泳のシークエンスでは、普段の競泳の中継で見る映像ではなく、ある意味斬新で革新的なカメラ・ワークが楽しめる。

特に、日本選手権時のスタート時、飛び込んでしばらく水中を泳ぐ仲西と大和が、微妙なタイミングの差(日本チャンピオンと日本第2位の差)で水面に上がってくる際のカメラ・ワークは感動的だし、「シービスケット」(2003)において、騎手の目線で競馬場を疾駆するカメラの感動にもにた、水中の一人称カメラにも感動させられる。

また、速水もこみち(大和圭介)、阿部力(仲西弘樹)、長澤まさみ(二ノ宮亜美)、市川由衣(小柳かおり)の水泳、高飛び込みシークエンスでは、水泳・飛込みの吹替えで4人の男女がクレジットされているのだが、俳優から吹替に変わる切れ目がわからないのだ。
文字通りシームレスですばらしい水泳、高飛び込みシークエンスが楽しめる。(主演4人が本当に泳いでいるように見える、と言う事)

キャストは、大和圭介役を演じた速水もこみちは、独り言やナレーションみたいな部分に問題があったが、ソツなくこなしていると思う。

また、二ノ宮亜美役の長澤まさみは、特に問題なく良い印象を受けた。

まあとにかく、アイドル映画としては及第点だと思えるし、ベタでありながら突拍子も無い設定やプロットに問題を感じなければ大変楽しい作品だと思う。

☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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2006/08/20 東京神保町「一ツ橋ホール」で「UDON」の試写を観た。

スタンダップ・コメディアンになって世界中を笑わせたい、そんな夢を持って讃岐からニューヨークへ飛び出した松井香助(ユースケ・サンタマリア)。

しかし夢半ばで挫折し、借金を背負って実家に帰る香助に、製麺所を営む頑固な父親・松井拓富(木場勝己)は一喝する。
「何しに帰ってきた!」と。

借金返済のため、親友・鈴木庄介(トータス松本/ウルフルズ)の紹介で地元のタウン誌の編集部で働くことになった香助だったが・・・・。
(オフィシャル・サイトより少々引用)

監督:本広克行
製作:亀山千広
脚本:戸田山雅司
撮影:佐光朗
出演:ユースケ・サンタマリア(松井香助)、小西真奈美(宮川恭子)、トータス松本(鈴木庄介/ウルフルズ)、鈴木京香(藤元万里)、升毅(大谷昌徳)、片桐仁(三島憲治郎/ラーメンズ)、要潤(青木和哉)、小日向文世(藤元良一)、木場勝己(松井拓富)、江守徹(綾部哲人)、二宮さよ子(馬渕嘉代)、明星真由美(淳子)、森崎博之(牧野)、中野英樹(中西)、永野宗典(水原宗典)、池松壮亮(水沢翔太)、ムロツヨシ(石松)、与座嘉秋(新美/ホームチーム)、川岡大次郎(小泉)
 
 
本作「UDON/うどん」は、「サマータイムマシン・ブルース」(2005)に続く、ヒットメイカー本広克行の監督最新作である。

常々お話しているように、わたしは一映画ファンとして「踊る大捜査線」シリーズを一切評価していない。

しかし、本広克行が舞台劇を映画化した2作品、「スペース・トラベラーズ」(2000)と「サマータイムマシン・ブルース」(2005)は大いに買わせていただいている。

とは言うものの、実際問題として、これらの2作は好評だった舞台劇の映画化である、と言う前提条件を考えると、「スペース・トラベラーズ」にしろ「サマータイムマシン・ブルース」にしろ、映画として面白いのか、それともそもそも舞台劇そのものが面白かったのか、そして本広克行の映像制作者としての手腕ははたしてどうだったのか、と言う疑問を感じていたのだ。

そんな中、映画オリジナル企画「UDON」が製作された訳である。
本作「UDON」は、テレビ・シリーズの映画化でも、舞台劇の映画化でもない、本広克行がオリジナル映画で勝負、と言う背景を持った作品なのだ。

本作「UDON/うどん」は、「踊る大捜査線」シリーズのように、テレビ・シリーズのファンだけを劇場に呼ぶための作品ではなく、日本中、否世界中の映画ファン全てを劇場に呼ぶための作品なのだ。

本広克行の監督としての勝負のときなのだ。
 
 
さて、脚本だが、物語は非常にベタで、観客の想像通りに物語りは進む。

そんな中で非常に好感が持てたのは、メディアによって作られた「讃岐うどんブーム」が頂点から失速し、そして終焉をむかえるところまでを明確に描いているところである。

物語で登場人物はそれを「まつり」と表現している。

そして自分達が起こしたブームにより、押し寄せる客のために、店のレベルが落ち、周辺住民との確執から店をたたむところが明確に描写されている。

制作にフジテレビと言う巨大メディアがかんでいる作品で、いわばメディア批判ともなりかねないプロットの採用に正直感心した。

ちょっと余談だが、ここで比較してみたいのは最近日本でも公開されたピクサー・アニメーション・スタジオの「カーズ」(2006)である。

「カーズ」の物語は、地図から忘れ去られた街ラジエーター・スプリングスの復興で幕を閉じる。

だが、その後のラジエーター・スプリングスはどうなるのだろうか。街の賑わいはいつまで続くのか、また再び地図から忘れ去られてしまうのではないだろうか。

街の賑わいは一瞬の出来事だったのではないだろうか。

一方、本作「UDON/うどん」では、物語の前半部分で讃岐地方の地元タウン誌「タウン情報さぬき」により讃岐うどんブームが巻き起こり、それを受けて首都圏のメディアも讃岐うどんブームをどんどん取り上げ、ブームは頂点を迎える。
頂点を迎えたブームに残されているのは、衰退の一途である。

そして物語の後半部分、讃岐うどんブームが去った後、本当の物語が始まる訳なのだ。

キャストは基本的にダメな人はいなかった。
みんな良くやっていると思う。

また、数多く登場するカメオも全くと言って良いほど鼻につかない。

キャストで印象的だったのは前作「サマータイムマシン・ブルース」のキャストが顔を揃えている点である。しかも同じ役柄だ、と言っても良い役柄に好感を覚える。

とにかく本作「UDON/うどん」は、「踊る大捜査線」シリーズのことなんか知らないよ、と言う多くの普通の映画ファンに観て欲しい作品だと思う。

☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

余談だけど、予習のため「サマータイムマシン・ブルース」を観ておくと良いと思うよ。
予告編で出てくるけど、「ブレードランナー」(1982)も観といた方が良いかも。

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「ロンゲスト・ヤード」(2005)
2005/08/14 東京内幸町「イイノホール」で開催された「GTFトーキョーシネマショー」で「ロンゲスト・ヤード」の試写を観た。

八百長疑惑でNFLを追われた元トップ・プレイヤーのポール・クルー(アダム・サンドラー)。自堕落な生活を送るポールは、ある日、飲酒運転の上、警官とカーチェイスを繰り広げ、懲役3年の刑で刑務所へ。

そこで彼は、大のアメフトファンのヘイズン刑務所長(ジェームズ・クロムウェル)に、看守たちのアメフト・チームの当馬に、囚人たちのチーム結成を強要される。

チーム結成を渋々引き受けたポールのもとへ、看守に恨みを抱くネイト・スカボロー(バート・レイノルズ)、ケアテイカー(クリス・ロック)をはじめとして個性的な面々が集まってきた。

対抗戦が決定するが、だんだんと強くなっていく、囚人チームに不安をおぼえた刑務所長は、様々な嫌がらせを行う。

そして、ついにはポールに非情な指示を出す。
看守チームとの戦いにワザと負けるようにと・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:ピーター・シーガル
原案:アルバート・S・ラディ
脚本:シェルダン・ターナー
オリジナル脚本:トレイシー・キーナン・ウィン
出演:アダム・サンドラー(ポール・クルー)、クリス・ロック(ケアテイカー)、バート・レイノルズ(ネイト・スカボロー)、ジェームズ・クロムウェル(ヘイズン刑務所長)、ネリー(メゲット)、ボブ・サップ(スウィトウスキ)

本作「ロンゲスト・ヤード」は、1974年版「ロンゲスト・ヤード」(監督:ロバート・アルドリッチ、主演:バート・レイノルズ)のリメイクである。
1974年版「ロンゲスト・ヤード」は傑作の呼び声も高く、2001年には「ミーン・マシーン」(監督:バリー・スコルニック、主演:ヴィニー・ジョーンズ)としてもリメイクされているが、今回、74年版のバート・レイノルズを向かえ、正統リメイクの運びとなった。

物語の基本プロットは、看守チームに負けるために結成された囚人チームが、数々の嫌がらせに耐え、対抗戦に臨む、と言うもの。
もちろんそのプロットに、かつてのNFLでのポールの八百長疑惑がからみ、それを知った囚人チームの中に、ポールへの信頼が揺らぐ、と言うお約束と言えばお約束のプロットが続く。

とは言うものの、そのベタな展開は、普遍的で予定調和的、そして運命的な盛り上がりを見せ、観客は知らず知らずのうちに、握りこぶしを作りながら、画面に食い入ってしまう、と言うタイプの作品に仕上がっている。

また、今回のリメイクには、74年版でポール・クルーを演じたバート・レイノルズが出演し、自らの映画的記憶を利用したすばらしい効果を作品に付与している。

これは作品の質はともかく「ドリヴン」(2001)で、車椅子で出演したバート・レイノルズの登場と同様の効果を作品に与えている。

キャストは、なんと言ってもバート・レイノルズが良かったのだが、主演のアダム・サンドラーは、従来のコメディで演じているキャラクターとは一線を画したリアルで人間的なキャラクターを見事に演じ、俳優としての今後の方向性において良い転機となるキャラクターだったのではないか、と思える。

今回のアダム・サンドラーの抑制された表情が、八百長に関して何を考えているかわからない、と言った効果を付与することに成功している。

また日本でおなじみのボブ・サップだが、「エレクトラ」(2005)と比較すると、役柄も設定もしっかりしているし、しっかりと演出され、非常に良い印象を受けた。

とにかく、本作「ロンゲスト・ヤード」(2005)は、1974年版の正統リメイク作品として、非常に好感が持てる楽しい作品に仕上がっている。

2006年8月23日(水)に国内版DVDがリリースされるので、これを機会に是非観ていただきたい作品である。

この作品から、アダム・サンドラーのコメディに入っていただくのも、面白いと思う。

ソニー・ピクチャーズの「ロンゲスト・ヤード」(2005)のページ
http://sonypictures.jp/movies/thelongestyard/index.html

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2006/08/07 東京有楽町「よみうりホール」で「マイアミ・バイス」の試写を観た。

フロリダ州の楽園マイアミ。アメリカ合衆国で最も南米に近い都市であることから、巨大犯罪組織による密輸の重大な中継地になっている危険地帯だ。昼夜を問わず潜入調査に挑む、マイアミ警察特捜課(バイス)の刑事コンビ、ソニー・クロケット(コリレン・ファレル)とリカルド・タブス(ジェイミー・フォックス)。

ある日、2人が使っている情報屋が家族を殺され、自分もフリーウェイに身を投げて自殺するという悲劇的事件が発生。さらにFBIの潜入捜査官2人も囮捜査の現場で殺される。

どうやら、南米と北米を結ぶ巨大なドラッグの密輸コネクションに、アメリカ司法機関の合同捜査情報が漏洩しているらしい。

FBIのフジマ(キアラン・ハインズ)は状況を打破すべく、合同捜査と関係がないマイアミ=デイド郡警察に協力を要請する。
それは麻薬の運び屋として組織に潜入、情報漏洩ルートを見つけ出す、と言うもの。
あまりにも危険な任務に上司カステロ(パリー・シャバカ・ヘンリー)は反対するが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督・製作・脚本:マイケル・マン
製作総指揮・オリジナル脚本:アンソニー・ヤーコヴィック
出演:コリン・ファレル(ソニー・クロケット)、ジェイミー・フォックス(リカルド・タブス)、コン・リー(イザベラ)、ルイス・トサル(モントーヤ)、ナオミ・ハリス(トルーディ・ジョプリン)、ジョン・オーティス(ホセ・イエロ)、ジャスティン・セロー(ジトー)、エリザベス・ロドリゲス(ジーナ)、キアラン・ハインズ(フジマ)、バリー・シャバカ・ヘンリー(マーティン・カステロ)

本作「マイアミ・バイス」は、キャリアの大半をポリス・アクションとクライム・アクションに捧げてきたマイケル・マンの集大成的な作品だと言える。

もちろん、「ラスト・オブ・モヒカン」(1992)や「ALI アリ」(2001)等、若干方向性が異なる作品もいくつか手がけてはいるのだが、彼が描く題材は一貫して、刑事警察または犯罪だと言えるだろう。

と言った訳で、本作「マイアミ・バイス」は、テレビ・シリーズ「特捜刑事マイアミ・バイス」(1984-89)の製作総指揮を努めていた、マイケル・マンが満を持して世に問う、ポリス・アクション、クライム・アクションの集大成的な作品なのだ。
 
 
物語は、FBI主導のドラッグ密輸コネクションの合同捜査チームからの情報漏洩源を探るべく、2人の刑事が麻薬組織に潜入する、と言うもの。

物語自体は大して新しいものではないのだが、マイアミを中心とした北米と南米をまたにかける、大規模な作戦行動が印象的であった。

その中で特に印象に残ったのは、ルシアン・ネイハムの小説「シャドー81」もびっくりのジェット機をレーダーから消す方法を実際の映像で見られた点である。
(「シャドー81」とは、V/STOL機を使って、旅客機を外部からハイジャックする話)

また、件(くだん)のジェット機のシークエンスをはじめとして、複数のジェット機やパワーボート、フェラーリ等々を捜査(?)のために自由に利用するマイアミ警察の資金力と言うか、機動力には驚かされた。
まあ、実際のところは、潜入捜査の為、押収品を使用している設定だと言うのだが、プライベート・ジェットと言うのは凄いな、と思う。

更に、印象に残るのは、2人の刑事が活躍すると言う前提はあるものの、マイアミ警察のチーム・プレーがきちんと描かれている点である。

最近ではチーム・プレーに回帰したと言われている「M:i:III」(2006)なんかがあったが、スパイ・アクションとポリス・アクションと言う違いがあるが、それ以上にきっちりとしたチーム・プレーによる作戦が楽しめる。

また、チーム・プレーを前提とすると、優秀で部下思いの上司カステロ(バリー・シャバカ・ヘンリー)の存在がすばらしい。

独断専行型のヒーローが上司の制止を振り切って大活躍する、と言うスタンスの物語が多い中、上司を尊敬する主人公に好感が持てるし、カステロが無能な上司ではないところも好印象である。

また銃撃シーン等アクション・シークエンスは、銃声、着弾音等の音響がすばらしいせいもあるのだが、リアリティあふれ、かつ、痛みをも感じられるようなアクション・シークエンスが楽しめる。

キャラクターについては、刑事サイドはもちろん、麻薬組織サイドのキャラクターも丁寧に描かれており、物語の説得力、またリアリティの付与に貢献している。

麻薬組織サイドの所謂悪役が三者三様にきちんと描かれている点が良かった。

特に、イエロ(ジョン・オーティス)と、イザベラ(コン・リー)等の心情が明確に描かれているため、物語にふくらみが感じられた。

また、ジトー(ジャスティン・セロー)にしろジーナ(エリザベス・ロドリゲス)にしろ、きちんとした見せ場があり、警察組織の中での立場やスタンスと言う背景まで感じられるほどキャラクターが描かれていた、と思う。

ソニー役のコリン・ファレルは、バート・レイノルズ、ドン・ジョンソン系のセクシーな俳優の路線だと思うのだが、個人的にはちょっと方向性が違うような印象を受けた。

タブス役のジェイミー・フォックスはあのり目立たず、コリン・ファレルの引き立て役に回り、マイケル・マンの前作「コラテラル」(2004)で、主役のトム・クルーズを喰ってしまったジェイミー・フォックスだが、今回は抑制された感じが良かったと思う。

本作「マイアミ・バイス」は、前述の「M:i:III」同様に、身内を救出すると言うプロットが採用されている。

本作をポリス・アクション作品として考えた場合、作戦に私情を交えないと言う立場から、常々身内救出のプロットには否定的なスタンスを取るわたしだが、今回の身内救出プロットは、作戦の一部と言うこともあり、許容範囲という事でよしとする。

とにかく本作「マイアミ・バイス」は、往年のテレビ・シリーズファンもそうでない人にも結構オススメのプロットがしっかりしたポリス・アクションだと思う。

Tシャツにジャケットじゃないけどね。

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2006/08/10 東京内幸町「イイノホール」で開催されている「GTFトーキョーシネマショー」で「キンキーブーツ」の試写を観た。

突然の父親の死で、倒産秒読み寸前の靴工場を相続したチャーリー(ジョエル・エドガートン)。工場は救いたいが、優柔不断で八方塞がりの彼の前に現われた、救いの女神は・・・・ロンドンはSOHOに君臨する美のカリスマ、ドラッグクイーンのローラ(キウェテル・イジョフォー)だった!
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:ジュリアン・ジャロルド
脚本:ジェフ・ディーン、ティム・ファース
プロダクションデザイン:アラン・マクドナルド
衣装デザイン: サミー・シェルドン
音楽:エイドリアン・ジョンストン
出演:ジョエル・エドガートン(チャーリー・プライス)、キウェテル・イジョフォー(ローラ)、サラ=ジェーン・ポッツ(ローレン)、ジェミマ・ルーパー(ニコラ)、ユアン・フーパー(ジョージ)、リンダ・バセット(メル)、ニック・フロスト(ドン)、ロバート・パフ(ハロルド・プライス)

kinky(形容詞)
1.変態の、性的に倒錯した
2.奇妙な、変わり者の

本作「キンキーブーツ」は、苦境に立った老舗の紳士靴工場が、「キンキーブーツ」をミラノ国際見本市に出品し、起死回生を図る、と言う単純明快なもの。

しかし、この「キンキーブーツ」騒動が実際の出来事だった、と言うから驚きである。

さすが「フル・モンティ」(1997)や、「カレンダー・ガールズ」(2003)の題材となった出来事が実際に起こった国イギリスである。
今回の「キンキーブーツ」騒動も、「フル・モンティ」騒動、「カレンダー・ガールズ」騒動と同様に、伝統と近代的感性が融合したすばらしい出来事だと思う。

脚本はある意味ベタな展開が続くのだが、その観客の期待を裏切らない安心感溢れる展開が、作品を普遍的な、誰でも楽しめる存在へと昇華することに成功している、と思う。

特筆すべき点は、冒頭の少年のダンスを脚本に入れる発想が凄いと思った。
本作を2回観た人は、冒頭の少年のダンスで泣くぞ、多分。
 
 
キャストだが、先ずは何と言ってもドラッグ・クイーンのローラを演じたキウェテル・イジョフォーが最高にすばらしかった。

例えるならば、「RENT/レント」(2005)のウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア(エンジェル役)、「ロッキー・ホラー・ショー」(1975)のティム・カリー(フランクン・フルター博士役)、「リトルショップ・オブ・ホラーズ」(1986)のリーヴァイ・スタッブス(オードリーIIの声)らに匹敵するほどの怪演振りだった。

ステージを所狭しと暴れまくるローラ(キウェテル・イジョフォー)の格好良さといったらありません。

性的な嗜好はともかく、ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア(エンジェル)にしろ、リーヴァイ・スタッブス(オードリーII)にしろ、キウェテル・イジョフォー(ローラ)にしろ、テッィム・カリー(フランクン・フルター博士)にしろ、スタイルだけではなく、圧倒的な力があるヴォーカルを持つドラッグ・クイーン(?)に、大きな拍手を送りたい。

多分、このあたりの感情というのは、クィーンのフレディ・マーキュリーに惹かれるのと同じなのかもしれない。

また主人公チャーリー・プライスを演じたジョエル・エドガートンは、特に優柔不断振りがすばらしく、またラストのミラノのショーのシークエンスの七転八倒振りは最高に格好良いし、あれが演出に見えてしまう構成も最高だと思う。

そして、工場の古株マッチョなドンを演じたニック・フロストも良かった。彼とローラの奇妙な友情には涙を誘われてしまう。

本作「キンキーブーツ」は、「フル・モンティ」(1997)や、「カレンダー・ガールズ」(2003)、「リトル・ダンサー」(2000)や「ブラス!」(1996)と言った、苦境の中からの起死回生を、コミカルなタッチで描いた近代イギリス映画の伝統を踏襲したすばらしい作品だと思うし、音楽ファンにもたまらない作品に仕上がっていると思う。

この夏、是非劇場で「キンキーブーツ」を体験してほしいと、本心から思う。

☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

本作のモデルとなった会社のサイト「キンキーブーツ・ファクトリー」
http://www.divine.co.uk/

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