「69 sixty nine」
2004年6月9日 映画
2004/06/09 東京厚生年金会館で行なわれた「69 sixty nine」の試写会に行ってきた。
6月9日は「69 sixty nine」の日、ということで、各地で試写会が行なわれたようである。
スタッフ&キャストの皆さんは、朝から取材に、舞台挨拶に大忙しだったようである。
因みに、ここ東京では、16:30から目白学園高等学校で舞台挨拶付き試写会が、18:30から有楽町よみうりホールで舞台挨拶付き試写会が、18:45から東京厚生年金会館で舞台挨拶付き試写会が行われた。
よみうりホールでは試写前に舞台挨拶が、厚生年金会館では試写後に舞台挨拶が行なわれたのだ。
さて、とりあえず舞台挨拶についてだが、東京厚生年金会館の舞台挨拶は、総勢11名のスタッフ&キャストが集結した。
東京厚生年金会館の舞台挨拶に登場したのは、次の皆さん。
監督:李相日
キャスト:妻夫木聡、安藤政信、太田莉菜、水川あさみ、星野源、三浦哲郁、柄本佑、与座嘉秋、澤田俊輔、三浦誠己
因みに、有楽町よみうりホールの舞台挨拶に登場したのは、次の皆さん。
監督:李相日
キャスト:妻夫木聡、安藤政信、太田莉菜
因みに、目白学園高等学校の舞台挨拶に登場したのは、次の皆さん。
監督:李相日
キャスト:妻夫木聡、星野源、与座嘉秋、三浦哲郁
結果的にわたしは東京厚生年金会館の試写会に行って、正解だったようだ。
1969年・・・世界中で、フラワーチルドレンと呼ばれるロックとマリワナの紫煙に包まれた若者達が、ベトナム戦争にラヴアンドピースで反対していた年。日本は太平洋戦争で失われたプライドを、円(¥)の回復で取り戻そうと必死だった。まさに高度成長タケナワである。
そんな中、マジな学生たちはヘルメットと角材で武装し、機動隊との熱いガチンコでフィーバーしていた。またその一方では、お色気番組「11PM」が高視聴率を記録し、「平凡パンチ」は創刊と共に若者たちのバイブルと化し、マサに文化闇鍋状態。そう!ナウなヤングはストーンズを聞き、奥村チヨにヨクジョーし、暇つぶしにデモに出かけたのだ!(多分)。舞台はそんな無茶苦茶な年の長崎は佐世保。一般的な高校生の日常から、日本における69年の政治的側面とポップカルチャーのアンビバレントな相関関係を考証する映画だ・・・というのは嘘で、一発目立ってモテたいが為に学校をバリケード封鎖しちゃうケンと、彼のフザけた尻馬にノリノリのハジけた仲間達が繰り広げる、デタラメでチャーミングな青春を描いたのが、この「69 sixty nine」だ!!
(「69 sixty nine」INTRODUCTIONコピーより引用)
一言で言うと、「祭り」のような映画である。
本作「69 sixty nine」は、高校時代のある種原因不明の熱病のような高揚感と、祭のあとの例え様の無い寂寥感が味わえる作品である。
方向性はともかく相米慎二「台風クラブ」を観終わった後の寂寥感に似た印象を受けた。
物語の演出、描写手法は、1969年の暗い世相を反映しつつも、底抜けに明るく、楽しい映像が続いている。
しかも脚本が最高に面白いのだ。(脚本は最近話題の宮藤官九郎)
映像のスタンスや手法は、最近の作品では、これまた方向性が異なるが「下妻物語」のように真摯に作りこまれたコメディ作品的な印象を受けた。
とは言うものの、その明るい描写の中に、社会や世相に対する批判や反骨精神が顔をもたげ、言わばロックな映画に仕上がっているのだ。
その辺りは、妻夫木聡演じる矢崎剣介=ケンと、嶋田久作演じる相原先生の関係が、当時の社会情勢の縮図として見事に機能している。
また手法的には、現実と妄想、そして嘘が表現されているのだが、違うシークエンスで同じカットが使われたり、同じシークエンスなのに違うカットが使われたり、あるシークエンスで登場人物が喋ったセリフが違うシークエンスでの同じセリフが違う意味を持ったりと、トリッキーな脚本と編集が見事であり楽しい。
脚本と言えば、名脚本家ウィリアム・ゴールドマンが書いた「明日に向って撃て」に対するオマージュのシーンが2シーンあった。
機会があれば、「明日に向って撃て」を観た上で、「69 sixty nine」を観て欲しいのだ。
また、オープニング・クレジットが素晴らしかった。
フラッシュ・アニメーション的手法をフィーチャーした形式のクレジットは、ソウル・バスが生きていたら、こんな感じのクレジットを創るのではないか、と思わせる素晴らしい出来だった。
方向性としては「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」に近いが、洗練度は本作「69 sixty nine」の方が上である。
さらに、本編中に挿入される8mmフィルムの、粒子が粗くそれでいて芸術的な編集がされた映像も、本編をノスタルジックで寂寥感を煽る効果を高めている。
今更ながらであるが、8mmフィルムの画質は素晴らしいな、と思ってしまう。
1969年を再現する美術は種田陽平。セット内はともかく、セット外特に屋外を1969年に見せる手腕は素晴らしいものがあった。
キャストはみんな良い仕事をしている。
主演の妻夫木聡(矢崎剣介=ケン)と安藤政信(山田正=アダマ)については、いつものイメージ通りで期待通りの感じだったが、三人目の男
岩瀬学=イワセを演じた金井勇太や、中村譲役の星野源、工業の番長役の新井浩文等、この作品で忘れられない存在感を醸し出している若手の台頭が嬉しかった。
また、本作がデビュー作となるヒロイン松井和子=レディ・ジェーン役の太田莉菜については、好き嫌いはあると思うが、見事なヒロイン像を創り上げている。
また、妻夫木聡(矢崎剣介=ケン)の父親役の柴田恭兵や、ケンの父親の教え子で極道の村上淳、佐々木刑事役の國村隼、そして相原先生役の嶋田久作、松永先生役の岸部一徳等の俳優達も良い仕事をしている。
彼等も忘れ得ぬ印象を観客に与えている。
つづく
6月9日は「69 sixty nine」の日、ということで、各地で試写会が行なわれたようである。
スタッフ&キャストの皆さんは、朝から取材に、舞台挨拶に大忙しだったようである。
因みに、ここ東京では、16:30から目白学園高等学校で舞台挨拶付き試写会が、18:30から有楽町よみうりホールで舞台挨拶付き試写会が、18:45から東京厚生年金会館で舞台挨拶付き試写会が行われた。
よみうりホールでは試写前に舞台挨拶が、厚生年金会館では試写後に舞台挨拶が行なわれたのだ。
さて、とりあえず舞台挨拶についてだが、東京厚生年金会館の舞台挨拶は、総勢11名のスタッフ&キャストが集結した。
東京厚生年金会館の舞台挨拶に登場したのは、次の皆さん。
監督:李相日
キャスト:妻夫木聡、安藤政信、太田莉菜、水川あさみ、星野源、三浦哲郁、柄本佑、与座嘉秋、澤田俊輔、三浦誠己
因みに、有楽町よみうりホールの舞台挨拶に登場したのは、次の皆さん。
監督:李相日
キャスト:妻夫木聡、安藤政信、太田莉菜
因みに、目白学園高等学校の舞台挨拶に登場したのは、次の皆さん。
監督:李相日
キャスト:妻夫木聡、星野源、与座嘉秋、三浦哲郁
結果的にわたしは東京厚生年金会館の試写会に行って、正解だったようだ。
1969年・・・世界中で、フラワーチルドレンと呼ばれるロックとマリワナの紫煙に包まれた若者達が、ベトナム戦争にラヴアンドピースで反対していた年。日本は太平洋戦争で失われたプライドを、円(¥)の回復で取り戻そうと必死だった。まさに高度成長タケナワである。
そんな中、マジな学生たちはヘルメットと角材で武装し、機動隊との熱いガチンコでフィーバーしていた。またその一方では、お色気番組「11PM」が高視聴率を記録し、「平凡パンチ」は創刊と共に若者たちのバイブルと化し、マサに文化闇鍋状態。そう!ナウなヤングはストーンズを聞き、奥村チヨにヨクジョーし、暇つぶしにデモに出かけたのだ!(多分)。舞台はそんな無茶苦茶な年の長崎は佐世保。一般的な高校生の日常から、日本における69年の政治的側面とポップカルチャーのアンビバレントな相関関係を考証する映画だ・・・というのは嘘で、一発目立ってモテたいが為に学校をバリケード封鎖しちゃうケンと、彼のフザけた尻馬にノリノリのハジけた仲間達が繰り広げる、デタラメでチャーミングな青春を描いたのが、この「69 sixty nine」だ!!
(「69 sixty nine」INTRODUCTIONコピーより引用)
一言で言うと、「祭り」のような映画である。
本作「69 sixty nine」は、高校時代のある種原因不明の熱病のような高揚感と、祭のあとの例え様の無い寂寥感が味わえる作品である。
方向性はともかく相米慎二「台風クラブ」を観終わった後の寂寥感に似た印象を受けた。
物語の演出、描写手法は、1969年の暗い世相を反映しつつも、底抜けに明るく、楽しい映像が続いている。
しかも脚本が最高に面白いのだ。(脚本は最近話題の宮藤官九郎)
映像のスタンスや手法は、最近の作品では、これまた方向性が異なるが「下妻物語」のように真摯に作りこまれたコメディ作品的な印象を受けた。
とは言うものの、その明るい描写の中に、社会や世相に対する批判や反骨精神が顔をもたげ、言わばロックな映画に仕上がっているのだ。
その辺りは、妻夫木聡演じる矢崎剣介=ケンと、嶋田久作演じる相原先生の関係が、当時の社会情勢の縮図として見事に機能している。
また手法的には、現実と妄想、そして嘘が表現されているのだが、違うシークエンスで同じカットが使われたり、同じシークエンスなのに違うカットが使われたり、あるシークエンスで登場人物が喋ったセリフが違うシークエンスでの同じセリフが違う意味を持ったりと、トリッキーな脚本と編集が見事であり楽しい。
脚本と言えば、名脚本家ウィリアム・ゴールドマンが書いた「明日に向って撃て」に対するオマージュのシーンが2シーンあった。
機会があれば、「明日に向って撃て」を観た上で、「69 sixty nine」を観て欲しいのだ。
また、オープニング・クレジットが素晴らしかった。
フラッシュ・アニメーション的手法をフィーチャーした形式のクレジットは、ソウル・バスが生きていたら、こんな感じのクレジットを創るのではないか、と思わせる素晴らしい出来だった。
方向性としては「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」に近いが、洗練度は本作「69 sixty nine」の方が上である。
さらに、本編中に挿入される8mmフィルムの、粒子が粗くそれでいて芸術的な編集がされた映像も、本編をノスタルジックで寂寥感を煽る効果を高めている。
今更ながらであるが、8mmフィルムの画質は素晴らしいな、と思ってしまう。
1969年を再現する美術は種田陽平。セット内はともかく、セット外特に屋外を1969年に見せる手腕は素晴らしいものがあった。
キャストはみんな良い仕事をしている。
主演の妻夫木聡(矢崎剣介=ケン)と安藤政信(山田正=アダマ)については、いつものイメージ通りで期待通りの感じだったが、三人目の男
岩瀬学=イワセを演じた金井勇太や、中村譲役の星野源、工業の番長役の新井浩文等、この作品で忘れられない存在感を醸し出している若手の台頭が嬉しかった。
また、本作がデビュー作となるヒロイン松井和子=レディ・ジェーン役の太田莉菜については、好き嫌いはあると思うが、見事なヒロイン像を創り上げている。
また、妻夫木聡(矢崎剣介=ケン)の父親役の柴田恭兵や、ケンの父親の教え子で極道の村上淳、佐々木刑事役の國村隼、そして相原先生役の嶋田久作、松永先生役の岸部一徳等の俳優達も良い仕事をしている。
彼等も忘れ得ぬ印象を観客に与えている。
つづく