エンキ・ビラルの新作「ゴッド・ディーバ」を観た。

前作の「ティコ・ムーン」を見逃したわたしにとっては、「東京国際ファンタスティック映画祭」で「バンカー・パレス・ホテル」を観て以来のエンキ・ビラル作品である。

海外のコミック・シーンについては、「HEAVY METAL」やなんかの海外雑誌を立ち読みしていた時期もあり、メビウスやビラル、フラゼッタ等のビジュアルや世界観には驚かされていたし、ビラルについては「ブレード・ランナー」や「フィフス・エレメント」等の数々の映画のビジュアル・コンセプトに影響を与えている事でも著名なビラルの自作の映画化ということで、わたしは期待していたのだ。

西暦2095年、人間、ミュータント、エイリアンが共存する混沌とした街ニューヨーク。
セントラルパークには雪と氷で覆われた「侵入口」と呼ばれる謎の空間があり、上空には浮遊する巨大なピラミッドが出現した。

古代エジプトの神々が宿るそのピラミッドの中。鷹の頭とヒトの体を持つ古代エジプトの神ホルスは、他の神アヌビスとバステトから反逆罪による死刑宣告を受けた。
だが、7日間の猶予を与えられたホルスは“ある目的”のため下界に降り、政治犯ニコポル(トーマス・クレッチマン)の体に乗り移って青い髪をした謎の美女ジル・ビオスコップ(リンダ・アルディ)を探し始める・・・・。
ジルを助ける医者エルマ・ターナーにシャーロット・ランプリングが扮する。

とにかく驚いたのは、人間の俳優は3人しか出てこず、後はCGIのキャラクターと生身の俳優との競演と言う凄い手法なのだ。
CGIについては、その表現に若干問題があるが、ビジュアル・コンセプトや美術、発想、イメージが凄いので、まあ良しだと思う。

しかし、そうは言うものの残念なことに、CGIシークエンスはビデオ・ゲームのムービー部分を見ているような気になってしまう感があった。
とは言うものの、本作は編集をきちんとやっているので、繋ぎが上手く行っていないビデオ・ゲームのムービーなんかよりは、カットやシーンだけではなく、きちんと映画として機能するCGIのシークエンスに仕上がっている。

例えば、アニメーション「メトロポリス」がカットやシーンのクオリティは高いのだが、シークエンスとして、または映画としては、ディゾルブの連続で、映画としての一体感が無く、前述のようにディゾルブで繋ぐことしか出来ずに、映画としてのリズムが狂ってしまっているのだが、本作はそんなことはなく、きちんと映画となっている。

そして、ビラルが創出する世界観は予想通りビラル節全開で雰囲気としては『明るく雨が降らない「ブレードランナー」』や『「フィフス・エレメント」冒頭のブルース・ウィリスの家やタクシー』を彷彿とさせる。

また、近未来の技術や描写は、サイバー・パンク系(スチーム・パンクではないがスチーム・パンク系かも)やレトロ・フューチャー的な印象を受けた。

物語については決して大衆受けするものではなく、既にカルトの風格を持っている。
おそらく将来は一種のカルト・ムービーとなってしまうのではないだろうか。

おそらく本作は「CASSHERN」や「アヴァロン」と比較されるのではないだろうか。と思うのだ。
tkr

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