2006/05/04 東京板橋「ワーナーマイカル・シネマズ板橋」で「ブロークン・フラワーズ」を観た。

独身をつらぬくドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)は、一緒に暮らしていたシェリー(ジュリー・デルピー)にフラレたばかり。かつて多くの女たちと恋をし、しかも一つも実ることのなかったドンにとって、勝手気ままな独身生活は長年の習い性になっていた。シェリーはそんなドンに愛想をつかし、家を出てしまう。その時、一通のピンク色の封筒がドンのもとに配達される。封筒の中には、ピンク色の便箋。タイプライターの赤い印字はこう告げていた。

人生ってフシギないたずらをするものね。
あなたと別れて20年が経ちました。
息子はもうすぐ19歳になります。
あなたの子です。
別れたあと、妊娠に気づいたの。
現実を受け入れ、ひとりで育てました。
内気で秘密主義の子だけど、想像力は豊かです。
彼は二日前、急に旅に出ました。
きっと父親を探すつもりでしょう・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
撮影:フレデリック・エルムズ
出演:ビル・マーレイ(ドン・ジョンストン)、ジェフリー・ライト(ウィンストン)、シャロン・ストーン(ローラ)、フランセス・コンロイ(ドーラ)、ジェシカ・ラング(カルメン)、ティルダ・スウィントン(ペニー)、ジュリー・デルピー(シェリー)、クロエ・セヴィニー(カルメンのアシスタント)、アレクシス・ジーナ(ロリータ)、マーク・ウェバー(ザ・キッド)、ホーマー・マーレイ(ギッド・イン・カー)

賛否両論の「ブロークン・フラワーズ」だが、わたし的には、大変良い映画を観た、と言う気持ちでいっぱいである。

余談だが、わたしの近くにいた女性客たちは、映画が終わった瞬間にドンの息子が誰だったのか、と言う激論を交わしていた。
と言うのも、本作には意味ありげに登場する青年がたくさんいるのだ。
余計なお世話だが、このような作品を楽しむには、映像と音楽に身を任せるのが一番である。

ドンの息子なんて誰でも良いのだ。
ドンの息子が誰だったかと考える事が無意味に思える、そんな素晴らしい作品に仕上がっている。

先ずはオープニング・タイトルが最高に良い。
女性の手がポストにピンクの手紙を落とし込み、そのピンクの手紙が、集配され、分類され、長い長い旅をして、ドンの許に届くまでを丹念に描写している。
ベクトルは異なるのだが、「サンダーバード」の発進シークエンスもびっくりの出来である。

そして、ビル・マーレイ(ドン・ジョンストン)の仕草が最高にキュートである。最近ノリに乗っているビル・マーレイのキュートな姿を満喫なのである。
また、ジェフリー・ライト(ウィンストン)からの指示に対するリアクションと言うか、何もしない間と言うか、そんなレスポンスのタイミングも最高だし、ドンが旅に出てからの音楽(「エリザベスタウン」と同じ趣向でウィンストンがドンに送ったCD)も良いし、旅の途中のちょっとしたカットも素晴らしい。
また、例えば飛行機の中の出来事や、レンタカーをかりる際の出来事のように、エピソードが中途半端な状態で切れる短いシークエンスも余韻が楽しめてよろしい。

また、謎の青年達の登場も良いし、勿論作品を彩る古今東西の女優たちも素晴らしい。
ルックスが若干微妙な状況の方も中にはいらっしゃるが、スクリーンで彼女ら往年の女優たちを見る事が出来るのは、素晴らしい体験でもある。
また、それに対して若手女優たちの魅力的なシークエンスも色とりどりである。

ところで、監督についてだが、本作「ブロークン・フラワーズ」を眺めてみると、ジム・ジャームッシュの作品の中で非常にストレートで非常にわかりやすい作品に仕上がっているような印象を受ける。ジャームッシュの作品の中で本作は、誰でも楽しめるような娯楽性が高い作品だと思う。

とは言うものの、やはり本作は、観客を選ぶ作品である事は、賛否両論の状況を見ると、明らかであるだろう。

ハリウッドの大作娯楽作品に飽きた人には、是非劇場で観ていただきたい作品の一本である。

☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

余談ですけど、ラスト近辺の車からドンを見る青年は、なんとビル・マーレイの実の息子ホーマー・マーレイである。

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