2010年12月1日 東京板橋「ワーナーマイカルシネマズ板橋」で「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」を観た。

と言う話は書きましたね。
でも今日も書いてみようと思います。だって、語り甲斐がある作品なんだもん。

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」をめぐる冒険
http://29346.diarynote.jp/201012012009113939/

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」をめぐる冒険 その2
http://29346.diarynote.jp/201012040039316354/

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」をめぐる冒険 その3
http://29346.diarynote.jp/201012040202165809/

3.脚本

今日は脚本について考えていきたいと思います。
しかしながら本作公開されてからまだ10日位なので、メインプロットや大きなネタバレについてはまだ書かないことにしたいと思います。
従って、重箱の隅をつつくような、細部のプロットについて考えていきたいと思います。
まあ、神は細部に宿る、って言う言葉もありますけどね。

さて、本作「SPACE BATTLESHIP ヤマト」の脚本は佐藤嗣麻子です。
ご存知の方はご存知だと思いますが、彼女は本作の監督である山崎貴の奥さんです。

だからどうこうと言う話ではありませんが、監督と脚本が夫婦という事になりますと、一般の映画と比較すると、監督の意向が脚本に生かされている可能性が高い、と考えるのが一般的だと思いますよね。

因みに、佐藤嗣麻子が脚本を務めた最近の映画をあげてみましょう。

2010「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(脚本)
2010「ゴースト もういちど抱きしめたい」(脚本)
2009「BALLAD 名もなき恋のうた」(脚本協力/脚本は山崎貴)
2008「K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝」(監督、脚本)
2007「アンフェア the movie」(脚本)

いかがでしょう。結構話題作が並んでいますね。多分佐藤嗣麻子は一般的に、売れっ子脚本家と言う評価なのだと思います。
因みに、上記以外のキャリアはテレビムービーが多く、またテレビムービーの監督(演出)も結構やっていますね。

さて、今日の本題ですが、本作「SPACE BATTLESHIP ヤマト」の脚本について、気になる部分をあげていきたいと思います。
先ほどお話ししたように細部についてのお話ですので、「ヤマト」と言う重箱の隅をちょこちょことつついていきたいと思います。

1)日本の皆さん

ヤマトのイスカンダル星への派遣が決定した後、橋爪功演じる地球防衛軍司令長官はテレビでその事を発表するのですが、その演説の際、驚いた事に「日本の皆さん!」と語りかけるのです。

ということは、地球防衛軍は日本の組織だと言う事なのでしょうか。
それとも、日本以外の国はガミラスの遊星爆弾により壊滅してしまったのでしょうか。
一気に夢から醒める瞬間でした。

2)14万8千光年

ヤマトは14万8千光年の彼方のイスカンダル星へ向かっているはずなのですが、脚本上、地球とイスカンダル星との距離が明確に語られるのは物語の終盤なのです。

あまりにも遠い、絶望的な旅だという事が明示されないまま物語がすすみます。

また、その絶望的に遠い距離のはずなのに、あっと言う間にイスカンダル星に到着してしまうのも問題だと思います。

先日お話ししたようにワープが簡単にできてしまうためなのか、またどの辺を航宙しているのかが明確に描写されていないせいか、脚本からは時間経過が全く感じられません。

また、宇宙空間を航宙しているのにも関わらず、宇宙空間の描写に乏しく、艦内だけの描写に終始しているのは何故なんでしょう。
絶望的な旅である感じが伝わってきません。

3)古代、波動砲のマニュアルは読んであるな

新造戦艦宇宙戦艦ヤマトの艦橋にやってきた古代進(木村拓哉)に対し、沖田艦長が波動砲を撃つように指示をするシークエンスで、真田さん(柳葉敏郎)が「古代、波動砲のマニュアルは読んであるな」と念をおすのですが、新造戦艦の必殺兵器の発射シークエンスだと言うのに、あまりにもリアリティが欠如していると言わざるを得ません。

そのシークエンスでは、ヤマト発進時にガミラスの惑星間ミサイルがヤマト目がけて飛んでくるのですが、古代はそれを波動砲で撃ち落とそうとする訳です。

しかも大気圏内、と言うか地表近くで。

オリジナルの「ヤマト」では主砲で大型ミサイルを撃ち落とすシークエンスが描かれ、ミサイルのヤマト直撃寸前でミサイルを落とす素晴らしいシークエンスなのですが、先日お話ししたように約70キロ先の惑星間ミサイルを波動砲で撃つ、しかもマニュアルしか読んだ事が無い戦闘班班長の古代がはじめて訪れたブリッジで、見よう見まねで撃っちゃうんですよ。びっくりですよね。

あと脚本と言うか、盛り上がりを考えると、いきなり必殺技(波動砲)じゃなくて、軽いジャブ(主砲)を見せて欲しいですよね。

4)あれは嘘だ

あるプロットと言うか設定について、登場人物があれは嘘だったんだ、と言うのですが、そりゃ無いぜ、と思ってしまう。
まあ嘘なら嘘でも良いのですが、脚本上、もうすこし上手に処理できたのではないか、と思います。

何のために、何を目的としてそんなプロットを採用したのか理解に苦しむ次第です。

5)エピソードの取捨選択が意味不明

冒頭の戦闘が、冥王星から火星になり、古代がカプセルを見つけるのが火星から地球になったのは良いとしても、初波動砲と初ワープのシークエンスが急ぎ過ぎです。

あと、反射衛星砲はやろうよ、と思った。
地球との最後の通信のシークエンスをやる位だったら反射衛星砲を実写化しろよ、と。

地球との最後の通信により、古代の過去やクルーのお涙頂戴的なシーンは排除して良かったんじゃないかと思う。
それより描くべきシーンがあったのではないか、と。

今回のガミラスの設定上、敵の存在感が希薄なのは仕方がないのかも知れないが、ヤマトが地球以上のオーバーテクノロジーを誇る敵対宇宙人の攻撃にさらされているようには全く思えないのだ。

通り一遍の攻撃を繰り返すガミラスに失望してしまう。

また、ドリルミサイルの脚本上の処理もおかしい。
先ほどの通り、ガミラスの設定があれなので、ドメル艦隊をだせ、とは言わないが、ドリルミサイルに関するシークエンスについて、脚本を適当にでっちあげた感が否めない。

これについては、全般的に古代の活躍が多くなる反面、他のクルーの見せ場が減っているのだが、例えば中盤までに真田さんの活躍がないため、ラスト付近の真田さんの活躍の説得力がない。
伏線がないまま、活躍する流れになっているのだ。

そして何より、真田さんのワープの説明がないのは致命的だと思う。
あの緑の照明の暗い作戦室で、床の大型スクリーンでワープの説明をしたり、ヤマトの航路の説明をして欲しかった。

「ヤマト」好きの柳葉敏郎もやりたかったと思うよ。

また驚いちゃうのは、「宇宙戦艦ヤマト」の映画化なんだから、「ヤマト」だけ描いていれば良いのに、「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」のエピソードやプロットを突っ込むのはいかがなものかと思った。

ただでさえ2時間しかないのに、映画2本のプロットをぶち込んだ挙げ句、ファンが重要だと思うようなシークエンスをポコポコと落とすのはどう考えてもおかしいと言わざるを得ない。

本作に、「さらば宇宙戦艦ヤマト」で登場するはずの斉藤始(池内博之)が出て来たんで、こりゃ「さらば・・」の仁王立をやらせたいんだな、と思ったけど、そんなのやらなくて良かった、と言うかそのエピソードは「ヤマト」にはいらないたろう、と思った。

6)ラストのキャラクターは何よ

ラストに出てくるキャラクターとその舞台(風景の意)は、多分「GALACTICA/ギャラクティカ」のラスト付近を意識している、と言うか影響を受けているんだと思うけど、そんな暇あったのかよ、と思った。

まあ、途中でフェードアウトするカットがあるので、普通の映画ファンなら想像できるラストだと思うけど、いかがなものかと思ったね。

7)志願兵って何よ

地球は壊滅状態で、最後の希望としてヤマトのクルーを地球全土から募集しているはずなのに、残される人類の暴動も起きないし、クルー選抜の描写もないのは何故。

想像力がなさ過ぎると思う。
地球防衛軍指令長官の演説が「日本の皆さん」だから、ヤマトのクルーは日本人ばかりなのは仕方ないけど。(本当は仕方なくはないんだけど)

もう少し、背景を描写して欲しいと思ったね。

8)大和は希望の戦艦だったのか

古代は「大和は最後の希望のために戦った戦艦だ」的な発言をするのだけど、第二次世界大戦の戦艦大和は、一億総特攻のさきがけだったのではないかな。

この辺りに日本人が「ヤマト」を描く難しさがあるのだと思うのだが、脚本上クリアできない問題ではないと思った。

9)ガミラスの処理

おそらく、大人の事情で人類が人型ヒューマノイドと戦争する映画を作る事が出来なかったため、ガミラス人やイスカンダル人があんな処理になってしまったのだと思うが、それならそれで、ガミラスとかイスカンダルとか言う名詞や人類の事を、イスカンダルやガミラスが理解している理由が不明確で納得性に欠ける。

プロットを変えるのなら変えるで、多くの人が納得する合理的なルール作りを心がけて欲しい。

ガミラスにもガミラスの理由があり、ガミラスも地球と同様の人類である、と言う観点から勧善懲悪ではない物語が期待されているのではないか、と思う。

10)ガミラス艦の強度が以前のデータと異なっています

これは、冒頭の火星域での戦闘の際の相原のセリフ。

これも多分「GALACTICA/ギャラクティカ」の影響だと思うんだけど、そんなの想像できるでしょ。何しろガミラスは超オーバーテクノロジーの存在なんだよ。

このセリフは、ガミラスの描き方のひとつの伏線になっているんだけどね。

一時保存です。

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tkr

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