2010年11月27日 東京有楽町「有楽町朝日ホール」で「第11回東京フィルメックス」特別招待作品「冷たい熱帯魚」を観た。
当日は、監督:園子温、キャスト:吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵、梶原ひかり、渡辺哲を迎えたジャパン・プレミアだった。
「冷たい熱帯魚」
監督:園子温
出演:吹越満(社本信行)、でんでん(村田幸雄)、黒沢あすか(村田愛子)、神楽坂恵(社本妙子)、梶原ひかり(社本美津子)、渡辺哲(筒井高康)
2009年1月14日水曜日 午後9時11分——どしゃぶりの雨の中を一台の車が走っていた。車内には、小さな熱帯魚屋を経営する社本信行(吹越満)とその妻、妙子(神楽坂恵)の2 人。娘の美津子(梶原ひかり)がスーパーマーケットで万引きしたため、店に呼び出されたのだ。
その場を救ってくれたのは、スーパーの店長と知り合いの男、村田幸雄(でんでん)。村田は同業の巨大熱帯魚屋、アマゾンゴールドのオーナーだった。帰り道、強引に誘われ、村田の店へと寄る3人。そこには村田の妻・愛子(黒沢あすか)がいた。
村田は言った。
「ひとつ、どうです。美津子ちゃんがここで働くってアイデアは?」
(オフィシャル・サイトより引用)
2010年7月に公開された「冷たい熱帯魚」の予告編( http://bit.ly/gZjmvm )を初めて観たときの、わたしの感想は「もう、邦画じゃないね」( http://bit.ly/hCpAAF )だった。
はっきり言って予告編だけで興奮した。
はやく本編を見せろ!と。
そんな中、世界中の映画祭で次々と上映される「冷たい熱帯魚」のニュースを聞き、切歯扼腕するわたしは、日本での上映は一体どうなってんだよ!と思っていた。
そして、2010年10月、11月20日から東京有楽町で開催される「第11回東京フィルメックス」の上映ラインナップが発表された。
なんと、「冷たい熱帯魚」が特別招待作品として上映されるのだ( http://bit.ly/9mN7uM )。
余談だが、「東京国際ファンタスティック映画祭」無き後、わたしが一番楽しみにしている映画祭は「東京フィルメックス」である。
「東京フィルメックス」は日本最高の映画祭だと言うことになっている「東京国際映画祭」をはるかに凌駕する、東京で行われている映画祭の中で最高の映画祭だとわたしは思っている。
さて、本作「冷たい熱帯魚」についてだが、「冷たい熱帯魚」の一般公開は2011年1月29日公開なので、内容にはあまり触れないようにしたいと思う。
でもさ、オフィシャル・サイトで書いている程度は書くよ。
先ずは、「冷たい熱帯魚」が素晴らしい作品に仕上がっていたことを喜びたい。
そりゃあ、7月から見たくて見たくて堪らなかった作品だから、傑作だったんで一安心と言う気持ちが大きい。
脚本や演出はもちろん、俳優たちも一世一代の演技をフィルムに定着させようとしているし、それは見事に結実しているのだ。
彼らの、良い映画を作ろう、良い仕事をしよう、という気持ちや気概、そしてその本気感がスクリーンに溢れていた。
ところで、予告編を見てわたしが前述のように「もう、邦画じゃないね」と思ったのは園子温の映像スタイルからであった。
上映後のQ&Aで監督の園子温は「自分の映画はアクション映画だと思っている」と発言していたが、仰るとおりスピード感溢れるカッティングが堪能できるし、カット割がいちいち格好良い。長回しも訳者の力量がビンビン感じられる緊迫感溢れる仕上がりである。
もう画だけ見てても楽しい気分になってしまうカットの連続なのだ。
また、そんな監督のビジョンを現実化する美術や衣装もすばらしかった。
もちろん2軒の熱帯魚屋は当然ながら、社本家のリビング、そして村田の実家(?)の実在感は大変すばらしかった。
特に印象に残ったのは、冒頭、スーパーの冷凍食品の買物から食事に繋がるシークエンスにおける、電子レンジや食器洗い乾燥機の生活感には驚かされた。
具体的に紹介すると電子レンジのトレイ部分の汚れに驚愕した。
しかしながら、このいかれた食事、と言うか調理風景が世界に流れていると思うとちょっと複雑な気がする。
また、美術と言うか衣装だけど、アマゾンゴールドの制服はフーターズ( http://bit.ly/i14Nu1 )じゃないですかね。
ちょっと余談だけど、園子温はおっぱい星人なのかな。
女優人の衣装がやたらと胸を強調する仕様になっていたよ。
キャストは皆凄かったんだけど、なんと言ってもでんでん(村田幸雄)だった。
最初は、吹越満の演技を見るつもりで劇場に足を運んだのだが、実際のところ、吹越満に惹かれて劇場に行き、でんでんの演技を見せられて帰って来た感である。
でんでんは見事に全部食ってたね。
そんなでんでんの演じた村田幸雄と言うキャラクターは日本映画史に残るすばらしいモンスターだと思う。まあオフィシャル・サイトにも書いてあるけど、「羊たちの沈黙」におけるレクター博士とか「ノーカントリー」のアントン・シガーに匹敵するんじゃないのかな。
あとは村田の妻愛子を演じた黒沢あすかも凄かった。
先日「東京フィルメックス」で観た「ビー・デビル」のソ・ヨンヒも凄かったけど、黒沢あすかも凄い。
もう目玉が飛び出すくらい凄いです。
もちろん吹越満は期待通り。
ある意味、吹越満が演じた社本と言うキャラクターは物語の構成上、成長する(察してね)キャラクターとして設定されているのだが、成長前と成長後のギャップがすばらしい。
前半部分のダメな父親像が変貌する姿が心地よいのだ。
手放しで褒めているけど、気になる部分も若干あった。
脚本上、村田が何を求めているのかが明確ではなかったし、ラストの決着のつけ方も、若干釈然としない。
あとは、日本版の予告編が饒舌すぎる。
先ほど紹介した国際版の予告編(ティーザー)のように、もう少し煙に巻いた方がサプライズがあってよいと思った。
本作のような良質な作品は是非ともヒットさせなければならないと思うし、ヒットさせるのはわれわれ客の義務なのかも知れない。
しかしながら、現在の日本国内の配給システムでは本作「冷たい熱帯魚」はあまりヒットしない可能性が高いと思う。
わたしは、本心から本作「冷たい熱帯魚」のヒットを願う。
映画ファン必見、と言うか本作「冷たい熱帯魚」は、日本の映画ファンとして鑑賞が義務だと言っても良い程の素晴らしい作品だと思うので、来年の一般公開時には、是非劇場に駆けつけて欲しい。
本作はある意味日本映画のひとつの頂点を占める作品だと思う。
頂点が何個あるかは謎ですが・・・・
ところで、こんな良質な作品に出会う際、映画ファンとして嬉しい瞬間がある。
例えば、上映終了後、舞台に監督やキャストが登場し、彼らの誇らしげな姿に心からの拍手を送るような瞬間である。
舞台に登場するキャストやスタッフは既に観客がその作品に満足しているのを感じている。
そう、舞台劇で言うところのカーテンコールのような瞬間である。
例えば「第6回東京国際映画祭」で「さらば、わが愛/覇王別姫」の上映後、舞台に登場したレスリー・チャンに対する会場が一体となった圧倒的な拍手。
映画をレスリー・チャンを愛する気持ちで会場が一体となった瞬間である。
今日の「有楽町朝日ホール」の観客は「冷たい熱帯魚」を、そしてこの作品に関わった全てのスタッフをそして全てのキャストを愛していた。
素晴らしい作品の誕生にわたしたちは居合わせたのだ。
☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
当日は、監督:園子温、キャスト:吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵、梶原ひかり、渡辺哲を迎えたジャパン・プレミアだった。
「冷たい熱帯魚」
監督:園子温
出演:吹越満(社本信行)、でんでん(村田幸雄)、黒沢あすか(村田愛子)、神楽坂恵(社本妙子)、梶原ひかり(社本美津子)、渡辺哲(筒井高康)
2009年1月14日水曜日 午後9時11分——どしゃぶりの雨の中を一台の車が走っていた。車内には、小さな熱帯魚屋を経営する社本信行(吹越満)とその妻、妙子(神楽坂恵)の2 人。娘の美津子(梶原ひかり)がスーパーマーケットで万引きしたため、店に呼び出されたのだ。
その場を救ってくれたのは、スーパーの店長と知り合いの男、村田幸雄(でんでん)。村田は同業の巨大熱帯魚屋、アマゾンゴールドのオーナーだった。帰り道、強引に誘われ、村田の店へと寄る3人。そこには村田の妻・愛子(黒沢あすか)がいた。
村田は言った。
「ひとつ、どうです。美津子ちゃんがここで働くってアイデアは?」
(オフィシャル・サイトより引用)
2010年7月に公開された「冷たい熱帯魚」の予告編( http://bit.ly/gZjmvm )を初めて観たときの、わたしの感想は「もう、邦画じゃないね」( http://bit.ly/hCpAAF )だった。
はっきり言って予告編だけで興奮した。
はやく本編を見せろ!と。
そんな中、世界中の映画祭で次々と上映される「冷たい熱帯魚」のニュースを聞き、切歯扼腕するわたしは、日本での上映は一体どうなってんだよ!と思っていた。
そして、2010年10月、11月20日から東京有楽町で開催される「第11回東京フィルメックス」の上映ラインナップが発表された。
なんと、「冷たい熱帯魚」が特別招待作品として上映されるのだ( http://bit.ly/9mN7uM )。
余談だが、「東京国際ファンタスティック映画祭」無き後、わたしが一番楽しみにしている映画祭は「東京フィルメックス」である。
「東京フィルメックス」は日本最高の映画祭だと言うことになっている「東京国際映画祭」をはるかに凌駕する、東京で行われている映画祭の中で最高の映画祭だとわたしは思っている。
さて、本作「冷たい熱帯魚」についてだが、「冷たい熱帯魚」の一般公開は2011年1月29日公開なので、内容にはあまり触れないようにしたいと思う。
でもさ、オフィシャル・サイトで書いている程度は書くよ。
先ずは、「冷たい熱帯魚」が素晴らしい作品に仕上がっていたことを喜びたい。
そりゃあ、7月から見たくて見たくて堪らなかった作品だから、傑作だったんで一安心と言う気持ちが大きい。
脚本や演出はもちろん、俳優たちも一世一代の演技をフィルムに定着させようとしているし、それは見事に結実しているのだ。
彼らの、良い映画を作ろう、良い仕事をしよう、という気持ちや気概、そしてその本気感がスクリーンに溢れていた。
ところで、予告編を見てわたしが前述のように「もう、邦画じゃないね」と思ったのは園子温の映像スタイルからであった。
上映後のQ&Aで監督の園子温は「自分の映画はアクション映画だと思っている」と発言していたが、仰るとおりスピード感溢れるカッティングが堪能できるし、カット割がいちいち格好良い。長回しも訳者の力量がビンビン感じられる緊迫感溢れる仕上がりである。
もう画だけ見てても楽しい気分になってしまうカットの連続なのだ。
また、そんな監督のビジョンを現実化する美術や衣装もすばらしかった。
もちろん2軒の熱帯魚屋は当然ながら、社本家のリビング、そして村田の実家(?)の実在感は大変すばらしかった。
特に印象に残ったのは、冒頭、スーパーの冷凍食品の買物から食事に繋がるシークエンスにおける、電子レンジや食器洗い乾燥機の生活感には驚かされた。
具体的に紹介すると電子レンジのトレイ部分の汚れに驚愕した。
しかしながら、このいかれた食事、と言うか調理風景が世界に流れていると思うとちょっと複雑な気がする。
また、美術と言うか衣装だけど、アマゾンゴールドの制服はフーターズ( http://bit.ly/i14Nu1 )じゃないですかね。
ちょっと余談だけど、園子温はおっぱい星人なのかな。
女優人の衣装がやたらと胸を強調する仕様になっていたよ。
キャストは皆凄かったんだけど、なんと言ってもでんでん(村田幸雄)だった。
最初は、吹越満の演技を見るつもりで劇場に足を運んだのだが、実際のところ、吹越満に惹かれて劇場に行き、でんでんの演技を見せられて帰って来た感である。
でんでんは見事に全部食ってたね。
そんなでんでんの演じた村田幸雄と言うキャラクターは日本映画史に残るすばらしいモンスターだと思う。まあオフィシャル・サイトにも書いてあるけど、「羊たちの沈黙」におけるレクター博士とか「ノーカントリー」のアントン・シガーに匹敵するんじゃないのかな。
あとは村田の妻愛子を演じた黒沢あすかも凄かった。
先日「東京フィルメックス」で観た「ビー・デビル」のソ・ヨンヒも凄かったけど、黒沢あすかも凄い。
もう目玉が飛び出すくらい凄いです。
もちろん吹越満は期待通り。
ある意味、吹越満が演じた社本と言うキャラクターは物語の構成上、成長する(察してね)キャラクターとして設定されているのだが、成長前と成長後のギャップがすばらしい。
前半部分のダメな父親像が変貌する姿が心地よいのだ。
手放しで褒めているけど、気になる部分も若干あった。
脚本上、村田が何を求めているのかが明確ではなかったし、ラストの決着のつけ方も、若干釈然としない。
あとは、日本版の予告編が饒舌すぎる。
先ほど紹介した国際版の予告編(ティーザー)のように、もう少し煙に巻いた方がサプライズがあってよいと思った。
本作のような良質な作品は是非ともヒットさせなければならないと思うし、ヒットさせるのはわれわれ客の義務なのかも知れない。
しかしながら、現在の日本国内の配給システムでは本作「冷たい熱帯魚」はあまりヒットしない可能性が高いと思う。
わたしは、本心から本作「冷たい熱帯魚」のヒットを願う。
映画ファン必見、と言うか本作「冷たい熱帯魚」は、日本の映画ファンとして鑑賞が義務だと言っても良い程の素晴らしい作品だと思うので、来年の一般公開時には、是非劇場に駆けつけて欲しい。
本作はある意味日本映画のひとつの頂点を占める作品だと思う。
頂点が何個あるかは謎ですが・・・・
ところで、こんな良質な作品に出会う際、映画ファンとして嬉しい瞬間がある。
例えば、上映終了後、舞台に監督やキャストが登場し、彼らの誇らしげな姿に心からの拍手を送るような瞬間である。
舞台に登場するキャストやスタッフは既に観客がその作品に満足しているのを感じている。
そう、舞台劇で言うところのカーテンコールのような瞬間である。
例えば「第6回東京国際映画祭」で「さらば、わが愛/覇王別姫」の上映後、舞台に登場したレスリー・チャンに対する会場が一体となった圧倒的な拍手。
映画をレスリー・チャンを愛する気持ちで会場が一体となった瞬間である。
今日の「有楽町朝日ホール」の観客は「冷たい熱帯魚」を、そしてこの作品に関わった全てのスタッフをそして全てのキャストを愛していた。
素晴らしい作品の誕生にわたしたちは居合わせたのだ。
☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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