2010年7月19日 東京飯田橋「飯田橋ギンレイホール」で「月に囚われた男」を観た。

監督・原案:ダンカン・ジョーンズ
脚本:ネイサン・パーカー
出演:サム・ロックウェル(サム・ベル)、ドミニク・マケリゴット(テス・ベル)
声の出演:ケヴィン・スペイシー(ガーティ)

近未来。
エネルギーの枯渇した地球は、新たな燃料源が存在する月へその希望を求めた。
そして、宇宙飛行士のサム・ベルが世界最大の燃料生産会社ルナ産業との3年契約により、エネルギー源ヘリウム3を採掘して地球へ送るという仕事のため月へたった独り派遣される。
以来、彼は月面基地サラングを拠点として、人工知能を搭載したロボット、ガーティを相棒に月面での作業に取り組むが・・・・


本作「月に囚われた男」は先ずは大変おもしろい作品に仕上がっていた。

一番印象に残ったのは、2010年になっても未だスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」の呪縛から脱出できていない点であった。

冒頭のランニングマシンのカットや繰り返される食事のシークエンス、テレビ電話と娘の誕生日、アンテナの故障、車輌の数、基地のインテリア、そしてガーティ・・・・、枚挙に暇がないほど「2001年宇宙の旅」の亡霊が見え隠れしている。

しかしながら、HAL9000の役をふられたガーティ(ケヴィン・スペイシー)のアンチテーゼ振りは良かった。
ケヴィン・スペイシーのおかげもあって、ガーティは、HAL9000(ダグラス・レイン)もびっくりの観客の印象に残るキャラクターになっている。

アンチテーゼと言う点で、ガーティを考えると、例えるならば「エイリアン」のアッシュが「エイリアン2」でビショップになったように、また「ターミネーター」のT-800が「ターミネーター2」のT-800になったように、観客の期待と言うか不安を見事に裏切るあたりが非常に小気味良い。

余談だが、例えた作品全てがジェームズ・キャメロンの作品だと言うのも興味深いでしょうね。
キャメロンの、観客の過去の作品の記憶(映画的記憶)を逆手に取る手法(発想)はすばらしいと思う。
具体的には、悪い奴だと思わせといて実は良い奴とか、またはその逆とか。

従って、前述の「2001年宇宙の旅」の呪縛から逃れられていない、と言う点はガーティに関しては、脚本上、非常に優れたミスデレクションとして機能している、とも言える。つまり、「2001年宇宙の旅」の呪縛から逃れられていない点を逆手に取っている、と言う意味でね。

物語の本筋は前述の通りなのだが、ご多分にもれず、SF映画にありがちな利益を最優先する非人道的企業(ルナ産業)が登場する。
名称は失念したが、「エイリアン」のアッシュ(イアン・ホルム)の会社(乗組員の生死や鉱物の運搬なんかより、知的生命体の検体を持ち帰れ)もびっくりですな。

その辺を考えると、テレビ電話の映像を録画する奥さんの気持ちはどうだったのだろうと考えてしまう。
そう考えるともしかしたら、最初のミッションでは・・・・、とかも考えてしまうね。

ところで、ラストの暴露については、実は複数の解釈が可能になっている。
片方の解釈は非常に辛い解釈なのだが、冷徹なSFとしてはそちらを推したいと思う。

余談だけど、月とサムの事を考えると本作「月に囚われた男」は、「新世紀エヴァンゲリオン」の月と綾波レイの影響下にある、とも妄想できる。

更に余談だけど、本作は美術とミニチュアワークが非常に良かった。

☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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tkr

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