ボクの本棚 #005 「天使と宇宙船」

わたしは小学5年生の頃から英語の塾に通うようになった。

英語の塾といっても、いろいろあると思うが、わたしが通っていた塾は、その名称に「米会話」という言葉が入っていた。
従って、一般の英語や英会話ではなく、アメリカ英語の会話スキルの習得を目指した塾だったのだろうとわたしは思っている。
しかしながら、当時のわたしにとっては、英語だろうが、英会話だろうが、米会話だろうが、全く区別がつかす、ただ単に英語の塾に通っていた、という認識だった。

ところで、塾というものは小学生にとっては新たな社会の一つであり、普段一緒に遊んだり勉強したりしている同じ学校の児童ではなく、他校の児童と触れ合うことが出来る場、というなかなか得難い経験の場だったりするのだ。

そんな状況もあってか、普段一緒にドタバタしているような同じクラスの女子と比べて、他の小学校の女子が魅力的に見えたりするのは当然のことだと思う。何しろ新鮮なのだ。

わたしもご多分にもれず、他校の女子にほのかな恋心を抱いちゃったりする始末である。
わたしがそんな恋心を抱いていた女子はKと言い、Mと言う子と仲が良かった。

わたしはMと比較的仲が良かったので、そのうちKと話をする機会が増えてきた。

そうこうしているうちに、Kは読書好きだと言う事がわかってくる。
それを利用しない手はない。わたしは自らが読書好きである、と言う点をKにアピールした。

「何かおもしろい本があったら貸してよ」

おもしろい本を借りて読むのが目的ではなく、Kと継続的な関係を築くのが目的のセリフであった。

次の日、彼女が貸してくれた本はフレドリック・ブラウンの「天使と宇宙船」だった。

今思えば、小学生の女子が小学生の男子に貸す本とは思えぬ選択に悶絶である。

わたしはその後フレドリック・ブラウンを集め始めることになる。

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tkr

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