2008/07/09 東京新宿「東京厚生年金会館」で「崖の上のポニョ」の試写を観た。

監督・原作・脚本:宮崎駿    
プロデューサー:鈴木敏夫    
美術監督:吉田昇    
編集:瀬山武司    
音楽:久石譲    
作画監督:近藤勝也    
色彩設計:保田道世    
制作:スタジオジブリ        
声の出演:山口智子(リサ)、長嶋一茂(耕一)、天海祐希(グランマンマーレ)、所ジョージ(フジモト)、土井洋輝(宗介)、奈良柚莉愛    (ポニョ)、柊瑠美(婦人)、矢野顕子(ポニョのいもうと達)、吉行和子(トキ)、奈良岡朋子(ヨシエ)

実はわたし、「崖の上のポニョ」にはあまり期待していなかった。
と言うのも、宮崎駿は既に枯れているのではないか、と思っていたからである。
しかしながら、わたしは驚いた。

冒頭のシークエンスでわたしは既に泣いていた。
物語やセリフではなく、絵と音楽の力だけで作品は雄弁に語りかけてくる。

「崖の上のポニョ」と言う作品は、久石譲のスコアをフィーチャーした「ファンタジア」に他ならない。

本作「崖の上のポニョ」は、アニメーションの持つダイナミズムと、アニメーション作家の奔放なイマジネーションと、そして久石譲のスコアが見事に結実した、大変すばらしい作品だと言える。

冒頭のシークエンス、ビビッドで総天然色でテクニカラーの海の中、煌びやかで雑多な生物たちが蠢く様は圧倒的にすばらしい。

フジモトの船・ウバザメ号のレトロ・フューチャーなデザインも強烈にすばらしいし、フジモトがやっていることもすばらしい。

この感覚は、ジュール・ヴェルヌとか、ジョルジュ・メリエスとか、メビウスとか、−−なぜか全員フランス人だが−−、彼らの作品群を髣髴とさせる。

わかりやすく言えば「海底二万マイル」のような感じ。

また中盤の嵐のシークエンスの波の描写は正に圧倒的である。
こんな波を手書きで描ける人が居るなんて、どんな頭の構造をしているのか不思議に思えてならない。

その波のシークエンスではテリー・ギリアムの「バロン」の冒頭、舞台のシークエンスや、またジョルジュ・メリエスの影響を垣間見ることが出来る。

また、本作「崖の上のポニョ」には「月」が印象的に登場するのだが、これも「バロン」とジョルジュ・メリエスに関係しているのではないかな、と勘ぐってしまうのはわたしだけではないはずだ。

前述のように、宮崎駿は既に枯れているのではないか、と言う先入観を持って本作を観た訳だが、素直な感想としては、「宮崎駿は枯れているどころか、成長しているじゃないか!」と言うもの。

アニメーション作家の奔放でダイナミックなイマジネーションは「ハウルの動く城」を遥かに凌駕している。

唯一残念なのが、ポニョが走るシークエンスで、ポニョがアラレちゃんに見えてしまう、と言う事。
小さな女の子が全力疾走すると、アラレちゃんになってしまうのか、と思ってしまう。

物語自体はよく言われるように、アンデルセンの「人魚姫」をフィーチャーしている。
「人魚姫」をフィーチャーした作品と言えば「ジョゼと虎と魚たち」の印象が強いが、「人魚姫」はご存知のように悲劇的な物語だが、「崖の上のポニョ」は、果たしてどんな物語に仕上がっているのか。劇場で確かめていただきたい。

また、本作「崖の上のポニョ」は、多くの宮崎駿作品と同様に、ヒーローとヒロインが出会った瞬間に相違相愛になり、相思相愛になったヒーローとヒロインが互いに相手を信頼しながら様々な状況で様々な行動を取る、と言う原則に従っている。

本作のヒーローとヒロインは5歳と言う設定であるから、「未来少年コナン」とか「天空の城ラピュタ」とか、主人公がいきなり相思相愛になる従来の宮崎駿作品とは異なっていると思うし、宗介とポニョが別離し、それぞれ異なった行動を相手を信じながら行動する、と言う部分が少ないと思うが、根底に流れるスピリッツは、従来の宮崎駿作品と共通している。

音楽は久石譲によるものなのだが、嵐のシークエンスでワーグナーっぽい旋律が使用されているのは微妙だ。
ブライアン・デ・パルマの「ファム・ファタール」で坂本龍一がデ・パルマの意向でラヴェルっぽい旋律を使用しているのと同じような感覚で、出来るならばオリジナルの旋律を使用して欲しかった。

ところで、気になったのは、本作の時代背景である。
宗介の母リサが飲む缶ビールのリングプルが外れる時代だし、宗介のオモチャの船がポンポン船である。
昭和40年代位なのかな、とも思ってしまう。

とにかく、本作「崖の上のポニョ」は大変素晴らしいアニメーション作品である。是非劇場で堪能していただきたい。

☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。

参考になったら、クリック!(現在のランキングがわかります)
http://blog.with2.net/link.php?29604

コメント

tkr

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索