2008/04/27 東京板橋「ワーナー・マイカル・シネマズ板橋」で「クローバーフィールド/HAKAISHA」を観た。

監督:マット・リーヴス    
製作:J・J・エイブラムス、ブライアン・バーク    
脚本:ドリュー・ゴダード    
撮影:マイケル・ボンヴィレイン    
編集:ケヴィン・スティット    
出演:マイケル・スタール=デヴィッド(ロブ)、マイク・ヴォーゲル(ジェイソン)、オデット・ユーストマン(ベス)、ジェシカ・ルーカス(リリー)、リジー・キャプラン(マレーナ)、T・J・ミラー(ハッド)、ベン・フェルドマン(トラヴィス)、ライザ・ラピラ(ヘザー)、クリス・マルケイ(グラフ)

本作「クローバーフィールド/HAKAISHA」は先ずは大変面白い作品に仕上がっていた。

そしてわたしは、本作が想像以上に作品として成立している事に驚いた。

と言うのも本作は『かつて「セントラル・パーク」と呼ばれたU.S.447地区で回収された「クローバーフィールド事件」を記録した未編集のビデオ映像』と言う設定であり、原則的に本作は「撮影しっぱなしの未編集のビデオ映像」と言う事になる。

従って、この設定上、このビデオ映像の撮影者は、おそらく死んでしまっているだろうし、本作を映画として考えた場合、本作は作品として成立していないのではないか、と言う事が容易に想像することができる。
また、『かつて「セントラル・パーク」と呼ばれたU.S.447地区』と言う表現から、もしかしたらアメリカは、また人類は既に滅んでいるかも知れないとすら思えてしまう。

人類の破滅云々は置いておいての話だが、前述のような作品としての問題点は想像できるが、本作は完全な娯楽作品として成立しているのだ。
と言うのも、本作には、本作の構成に非常に素晴らしい影響を与える手法(設定)が投入されている。

その手法(設定)と言うのは、本作が記録されているビデオテープは、ロブとベスがデートした際に撮影したビデオテープに重ね撮りされている、と言うもの。

この手法(設定)により、本作は、完全に異なった2つの時系列(時制)を持った作品となり、その手法(設定)のおかげで、製作者は本作に、プロローグとエピローグを挿入することが可能になるのだ。

わかりやすく言うと、例えば「シザーハンズ」や「タイタニック」のように、現在の時制の登場人物が、過去の時制の出来事を語る、と言う物語上の構成を導入する事が可能になる訳である。

この「現在の時制の登場人物が、過去の時制の出来事を語る」と言う手法(設定)は、作品の物語に、深みとリアリティを付与する効果を持っている。

ところで本作「クローバーフィールド/HAKAISHA」で行われている手法(設定)では、作品に深みを与えているのは勿論、日常の延長上に、本作で描かれるような出来事が起こりうる、と言うことを表現している。

もちろん、本作で描かれる怪異は「アメリカ同時多発テロ事件」のメタファーであり、同事件を体験したアメリカをはじめとした全世界の人々は、本作の観客になることにより、想像を絶する悲惨な出来事や、想像を絶する怪異も、日常の延長線上に起こりうる、と言うことを如実に感じることになる。
 
 
ところで、本作には、皆さんご承知のようにクリーチャーが登場する。
製作のJ・J・エイブラムスは「W:I:III」のプロモーションのために来日した際、原宿のキデイランドで「ゴジラ」のフィギュアを観て本作の着想を得たらしい。

そんな訳で「ゴジラ」的なクリーチャーを想像していたわたしには、想像を超えたクリーチャー・デザインだったが、実際のところは特に意表を突くデザインではなく、比較的ありがちな印象を受けた。

ついでに、余談だが2008/05/10に公開される「ミスト」の原作者スティーヴン・キングは、ジョークで「クローバーフィールド/HAKAISHA」は「ミスト」のプリクェールだ、と発言しているが、実際にその通りと言うか、「クローバーフィールド/HAKAISHA」と「ミスト」は、お互いに外伝的な作品に仕上がっている、と言えるかも知れない。

つまりは、怪異が大都市に起きたのか、それとも片田舎に起こったのか、と言う違いだけかも知れない。

ところで、図らずも本作で描かれた怪異を記録する立場になってしまったハッドだが、彼は本当に良い仕事をしたと思う。

彼が置かれた状況は、語弊はあるものの、カメラを持つ人々にとって、夢のような出来事なのだと思う。

今回の出来事が実際に起きたと仮定すると、ハッドが撮影したビデオテープは、例えばケネディ大統領暗殺の瞬間を撮影した「ザプルーター・フィルム」のように、撮影者と映像が後世に伝えられるに違いない。

ハッドはカメラマンとして後世に残る偉大な仕事をした、と言わざるを得ない。不謹慎な話だが、うらやましい限りである。

ビデオ撮影の下手さ加減もリアリティに溢れていて良かった。

ところで、一緒の回を観た他の観客は、冒頭のパーティ・シーンが退屈で仕方がなかった、と言うような話をしていたが、パーティ以前のアパートのシーンのや、パーティでのゴタゴタが非常に重要な伏線となっているし、わたし的にはパーティの部分も楽しくて仕方がなかった。

とにかく、本作「クローバーフィールド/HAKAISHA」は、非常に優れた作品に仕上がった素晴らしい映画である。是非劇場でHAKAISHAの跫を堪能していただきたい。

☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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