2008/03/21 東京板橋「ワーナー・マイカル・シネマズ板橋」で「ノーカントリー」を観た。

狩りをしていたベトナム帰還兵のルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)は、偶然死体の山に囲まれたピックアップ・トラックを発見する。そのトラックの荷台には大量のヘロインが残されていた。

さらにモスは、木陰で死んでいる一人の男を発見する。
その男は、全ての男たちを皆殺しにした生き残りの男(Last Man Standing)で、彼のそばには200万ドルの現金が入ったアタッシェケースが残されていたが・・・・。(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
原作:コーマック・マッカーシー 「血と暴力の国」(扶桑社刊)
脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:トミー・リー・ジョーンズ(エド・トム・ベル保安官)、ハビエル・バルデム(アントン・シガー)、ジョシュ・ブローリン(ルウェリン・モス)、ウディ・ハレルソン(カーソン・ウェルズ)、ケリー・マクドナルド(カーラ・ジーン)、ギャレット・ディラハント(ウェンデル)、テス・ハーパー(ロレッタ・ベル)、バリー・コービン(エリス)、スティーヴン・ルート(ウェルズの雇い主)

大満足である。

本作「ノーカントリー」は、近年稀に見るほどの、悪い点が全く無い、と言う位のすばらしい作品に仕上がっていた。

先ずは脚本がすばらしい。

たまたま主人公が犯罪絡みの大金を見つけてしまう事に端を発する物語は、残念ながらスコット・スミスの「シンプル・プラン」のような印象を与えてしまうきらいは否定できないが、その大金を持って逃げる男と追う男の、そして観客の視点とも言える一人の保安官との対比が非常に見事である。

またタイトルの「No Country for Old Men」が意味するところが、物語の中で言うところ、Old Menとなってしまったわたし自身にも突き刺さる。

キャストとしては、先ず、エド・トム・ベル保安官を演じたトミー・リー・ジョーンズだが、このキャラクターは「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」(2005)のピートを髣髴とさせるキャラクターであり、若者の行動が理解(共感)できない、われわれOld Menの視点を代弁するキャラクターを見事に演じている。

「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」と言う作品は、トミー・リー・ジョーンズにとっての「許されざる者」(1992)であり、今後、クリント・イースドウッドが「許されざる者」以降にたどった道をトミー・リー・ジョーンズにも通って欲しいと思っているわたしにとっては、本作のキャラクターは出番や見せ場に乏しい印象を受けた。

と言うのも、わたしはトミー・リー・ジョーンズのキャラクターは「ファーゴ」(1996)におけるマージ・ガンダーソン役(フランシス・マクドーマンド)のようなキャラクターだと想像していたのだ。

また、各方面から絶賛のアントン・シガー役のハビエル・バルデムも大変すばらしかった。
俳優としても十二分に良い仕事をしたと思うのだが、彼の場合はコーエン兄弟の冷徹な演出のおかげだと言っても良いのではないかと思った。

冒頭、作品で描かれる最初の殺人のシークエンスで、画面の右端でピンボケの状態で動いている姿や、その殺人後のリノリウムに残った靴の跡、中盤移行の自分で手当をする様、そして何度も描かれる他人の血を嫌う演出等々、俳優の力はもとより、数々のすばらしい演出が、アントン・シガーを非常に恐ろしくも悲しい映画史に残るキャラクターとして描ききっている。

ハビエル・バルデム演じるアントン・シガーと言うキャラクターは、すばらしいキャラクターなだけに、安易なスピン・オフ企画なんかが出てこないことを真剣に祈る。

逃げる男ルウェリン・モスを好演したジョシュ・ブローリンは、ルックスが若い頃のニック・ノルティのような感じで、想像以上にタフなモスの姿に「ダブルボーダー」(1987)のニック・ノルティを思い出した。

モスの逃亡劇としてこの作品をとらえると、スティーヴン・キングは本作を「ゲッタウェイ」(1972)になぞらえているが、わたし的にはサム・ペキンパーつながりで言うと、「ガルシアの首」(1974)あたりのテイストに近い印象を受けた。

そう考えてみると、コーエン兄弟は、サム・ペキンパーや、ウォルター・ヒルを継ぐ者としての方向性もあるのではないか、と思えてならない。

とにかく、本作「ノーカントリー」は、バイオレンス描写が苦手な方以外の映画ファン必見のすばらしい作品である。

この春、是非劇場に足を運んで欲しいと思う。

☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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