志村喬のヴォーカル。

♪「い〜のち〜みじ〜か〜し〜 こいせよ〜〜〜おとめ〜」

映画ファンの多くの皆さんが思い出すのは、黒澤明の「生きる」(1952)で、雪が降りしきる公園のブランコに揺られながら歌う「ゴンドラの唄」ではないだろうか。

志村喬の「ゴンドラの唄」の一連のシークエンスは、映画史に残る素晴らしいシークエンスだと思う。

しかし、ヴォーカリスト志村喬を語る上で決して忘れてはならない作品がある。

その作品はマキノ正博の「鴛鴦歌合戰」(1939)である。

わたしが最初にこの作品を観たのは、北海道のある大学の学園祭でオールナイト上映された際だったと思う。

わたしの記憶によると、そのオールナイト企画では、黒澤の「野良犬」(1973)とマキノの「鴛鴦歌合戰」(1939)とあと何本かの日本映画が上映されたのではないか、と思う。

オールナイト企画でもあったためか、「鴛鴦歌合戰」の上映の際、会場は爆笑の渦に飲み込まれていた。

オールナイトだったので会場まで車で行っていたわたし達は帰りの車の中で、志村喬のナンバーを口ずさんでいた。

♪「さ〜てさてさてこのちゃわん〜 ちゃんちゃん茶碗と音がひびく〜」

もしくは、三船敏郎の「泥だらけの靴 泥だらけの靴」だったかも知れない。

その後、札幌市内の小さな劇場で和製オペレッタ特集で「鴛鴦歌合戰」と「初春狸御殿」(1959)が同時上映された際も、劇場で大笑いした記憶がある。

余談だが、「踊る!さんま御殿」は、「歌ふ狸御殿」(1942)へのリスペクトだろう。

その後「鴛鴦歌合戰」のLDがリリースされ、件のオールナイトに一緒に行った友人がそのLDを購入した訳だが、LDで観ると何故だかそれほど面白くなくなってしまっていた。

学園祭のオールナイトと言う一種異様な空間で初めて楽しんだ「鴛鴦歌合戰」。

場末の小さな劇場で、映画を愛する人たちと場を共有した「鴛鴦歌合戰」。

LDを購入し、わくわくどきどきしながら観た「鴛鴦歌合戰」。

そして、先日WOWOWで放映された「鴛鴦歌合戰」。

それはみんな同じ「鴛鴦歌合戰」なのだが、観る度になんだか違う映画のように感じてしまう作品だと思った。

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