「パンズ・ラビリンス」
2007年10月9日 映画
22007/10/08 東京恵比寿「恵比寿ガーデンシネマ」で「パンズ・ラビリンス」を観た。
1944年のスペイン。
内戦終結後もゲリラたちはフランコ将軍の圧政に反発。この山奥でも血なまぐさい戦いが繰り広げられていた。
おとぎ話が大好きなオフェリアは、臨月を迎えた母親カルメンとともに、その山奥へと向かっていた。仕立屋だった父亡きあと、山奥の駐屯地に就くフランコ軍のビダル将軍と母が再婚したからだ。
ビダル将軍の元へ向かう途中、オフェリアは彫刻を施された石を見つける。それは朽ち果てた石塚の破片だったが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
撮影:ギレルモ・ナヴァロ
プロダクションデザイン:エウヘニオ・カバイェーロ
衣装デザイン:ララ・ウエテ
出演:イバナ・バケロ(オフェリア)、セルジ・ロペス(ビダル)、マリベル・ベルドゥ(メルセデス)、ダグ・ジョーンズ(パン/ペイルマン)、アリアドナ・ヒル(カルメン)
先ずは、本作「パンズ・ラビリンスが、良質のダーク・ファンタジー作品に仕上がっていたことを喜びたい。
とは言うものの、本作を手放しで賞賛できるか、と言うとそこまでの作品だとは言い難い。
と言うのも、本作はスペインの内戦終結後のゲリラ掃討戦を描く部分と、オフェリアのファンタジー世界での冒険を描く部分が交互に描写される、と言う構成をとっているのだが、先ず本作自体の尺があまりにも短すぎ、その関係で、肝心のオフェリアのファンタジー世界での冒険部分の尺が圧倒的に短く、観客が望むオフェリアの冒険があまり描かれていないのだ。
プロダクションデザインや衣装により、素晴らしい世界観が構築されているだけに、非常に残念な印象を受ける。
とは言うものの、本作のビジュアル面でのスタンスは非常にダークであり、従来の所謂ファンタジー作品と比較し、ダーク・ファンタジーの面目躍如的な観点から、個人的には心躍る部分が多々ある。
あと30分でも良いからオフェリアの冒険を描いて欲しいと思うし、タイトルにもなっているラビリンスをもっともっと描いて欲しかった、と思う。
クリーチャーの登場シーンも少ないし・・・・。
例えば、「レジェンド/光と闇の伝説」(1985)、「ラビリンス/魔王の迷宮」(1986)、「ダーク・クリスタル」(1982)等のダークな方向性をもう少しふくらませて欲しかったと思った。
現実部分については、ハードなバイオレンス描写が印象的で、特にセルジ・ロペス(ビダル役)から強烈な印象を受けた。
魔王が存在しない本作における悪のメタファーとも言えるキャラクターであるし、現実世界の独裁者的なイメージをも醸し出している。
また、ビダルの言動から、実はパンと表裏のキャラクターとも取れる非常に重要なキャラクターであった。
一方、レジスタンスの闘士メルセデスを演じたマリベル・ベルドゥも大変素晴らしく、人間の善の部分のメタファーとも取れるキャラクター設定となっていた。
かぶり物俳優としてのキャリアが多いダグ・ジョーンズは特徴的な動きでパンやペイルマンを強烈なキャラクターとして観客の記憶に残すことに成功している。
が、逆関節のパンをもう少し動かして欲しかったと思う。
余談だけど「ナルニア国物語/ライオンと魔女」(2005)で、兄弟をナルニア国にいざなうことになるキャラクターも牧神パーンである。
そして、何と言ってもイバナ・バケロ(オフェリア役)の好演が光っていた。
脚本の重要な部分と言えるのは、「パンズ・ラビリンス」の世界ははたして物理的に存在する世界だったのか、はたまたオフェリアの精神世界にのみ存在する世界だったのか、と言う点である。
観客の多くはおそらく、「パンズ・ラビリンス」の世界は物理的に存在していた、と解釈するのだろうが、物語として美しい解釈は「パンズ・ラビリンス」の世界はオフェリアの精神世界の中のみに存在していた、と言う解釈だと思える。
もちろん、「パンズ・ラビリンス」の世界が存在する証拠と思えるいくつかの描写があるのは否定しないが、逆に「パンズ・ラビリンス」の世界が物理的に存在しない、と解釈できる証拠もいくつか描写されており、その辺の解釈は観客に委ねられている。
そして「パンズ・ラビリンス」の世界が物理的に存在しない、と言う解釈をした場合、地底の魔法の王国の王はオフェリアの父、そして女王はオフェリアの母だと言う事が出来、またオフェリアがその王国のプリンセスである、と言うのは物語の構成としては非常に美しい予定調和的な印象を観客に与える事ができる。
その予定調和的で非常に悲しいエンディングは、当然ながら「未来世紀ブラジル」(1985)との見事な親和性が感じられる。
とにかく本作「パンズ・ラビリンス」は、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ(2001-2003)や「ナルニア国物語」シリーズ(2005-)のような作品群と一線を画する、素晴らしいダーク・ファンタジーに仕上がっている事は間違いない。
是非劇場で体験して欲しい、と思うのだ。
☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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1944年のスペイン。
内戦終結後もゲリラたちはフランコ将軍の圧政に反発。この山奥でも血なまぐさい戦いが繰り広げられていた。
おとぎ話が大好きなオフェリアは、臨月を迎えた母親カルメンとともに、その山奥へと向かっていた。仕立屋だった父亡きあと、山奥の駐屯地に就くフランコ軍のビダル将軍と母が再婚したからだ。
ビダル将軍の元へ向かう途中、オフェリアは彫刻を施された石を見つける。それは朽ち果てた石塚の破片だったが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
撮影:ギレルモ・ナヴァロ
プロダクションデザイン:エウヘニオ・カバイェーロ
衣装デザイン:ララ・ウエテ
出演:イバナ・バケロ(オフェリア)、セルジ・ロペス(ビダル)、マリベル・ベルドゥ(メルセデス)、ダグ・ジョーンズ(パン/ペイルマン)、アリアドナ・ヒル(カルメン)
先ずは、本作「パンズ・ラビリンスが、良質のダーク・ファンタジー作品に仕上がっていたことを喜びたい。
とは言うものの、本作を手放しで賞賛できるか、と言うとそこまでの作品だとは言い難い。
と言うのも、本作はスペインの内戦終結後のゲリラ掃討戦を描く部分と、オフェリアのファンタジー世界での冒険を描く部分が交互に描写される、と言う構成をとっているのだが、先ず本作自体の尺があまりにも短すぎ、その関係で、肝心のオフェリアのファンタジー世界での冒険部分の尺が圧倒的に短く、観客が望むオフェリアの冒険があまり描かれていないのだ。
プロダクションデザインや衣装により、素晴らしい世界観が構築されているだけに、非常に残念な印象を受ける。
とは言うものの、本作のビジュアル面でのスタンスは非常にダークであり、従来の所謂ファンタジー作品と比較し、ダーク・ファンタジーの面目躍如的な観点から、個人的には心躍る部分が多々ある。
あと30分でも良いからオフェリアの冒険を描いて欲しいと思うし、タイトルにもなっているラビリンスをもっともっと描いて欲しかった、と思う。
クリーチャーの登場シーンも少ないし・・・・。
例えば、「レジェンド/光と闇の伝説」(1985)、「ラビリンス/魔王の迷宮」(1986)、「ダーク・クリスタル」(1982)等のダークな方向性をもう少しふくらませて欲しかったと思った。
現実部分については、ハードなバイオレンス描写が印象的で、特にセルジ・ロペス(ビダル役)から強烈な印象を受けた。
魔王が存在しない本作における悪のメタファーとも言えるキャラクターであるし、現実世界の独裁者的なイメージをも醸し出している。
また、ビダルの言動から、実はパンと表裏のキャラクターとも取れる非常に重要なキャラクターであった。
一方、レジスタンスの闘士メルセデスを演じたマリベル・ベルドゥも大変素晴らしく、人間の善の部分のメタファーとも取れるキャラクター設定となっていた。
かぶり物俳優としてのキャリアが多いダグ・ジョーンズは特徴的な動きでパンやペイルマンを強烈なキャラクターとして観客の記憶に残すことに成功している。
が、逆関節のパンをもう少し動かして欲しかったと思う。
余談だけど「ナルニア国物語/ライオンと魔女」(2005)で、兄弟をナルニア国にいざなうことになるキャラクターも牧神パーンである。
そして、何と言ってもイバナ・バケロ(オフェリア役)の好演が光っていた。
脚本の重要な部分と言えるのは、「パンズ・ラビリンス」の世界ははたして物理的に存在する世界だったのか、はたまたオフェリアの精神世界にのみ存在する世界だったのか、と言う点である。
観客の多くはおそらく、「パンズ・ラビリンス」の世界は物理的に存在していた、と解釈するのだろうが、物語として美しい解釈は「パンズ・ラビリンス」の世界はオフェリアの精神世界の中のみに存在していた、と言う解釈だと思える。
もちろん、「パンズ・ラビリンス」の世界が存在する証拠と思えるいくつかの描写があるのは否定しないが、逆に「パンズ・ラビリンス」の世界が物理的に存在しない、と解釈できる証拠もいくつか描写されており、その辺の解釈は観客に委ねられている。
そして「パンズ・ラビリンス」の世界が物理的に存在しない、と言う解釈をした場合、地底の魔法の王国の王はオフェリアの父、そして女王はオフェリアの母だと言う事が出来、またオフェリアがその王国のプリンセスである、と言うのは物語の構成としては非常に美しい予定調和的な印象を観客に与える事ができる。
その予定調和的で非常に悲しいエンディングは、当然ながら「未来世紀ブラジル」(1985)との見事な親和性が感じられる。
とにかく本作「パンズ・ラビリンス」は、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ(2001-2003)や「ナルニア国物語」シリーズ(2005-)のような作品群と一線を画する、素晴らしいダーク・ファンタジーに仕上がっている事は間違いない。
是非劇場で体験して欲しい、と思うのだ。
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