「キサラギ」

2007年7月16日 映画
2007/07/13 東京池袋「シネ・リーブル池袋」で「キサラギ」を観た。

マイナーなグラビアアイドル、如月ミキが焼身自殺を遂げてから1年が過ぎた。彼女のファンサイトでは一周忌のオフ会を開催することに。
集まったのは、サイト管理人の家元(小栗旬)とサイトの常連、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)、スネーク(小出恵介)、安男(塚地武雅)、いちご娘(香川照之)という5人の男たち。初めて直に顔を合わせた彼らは、ミキの思い出に浸り、自慢話で盛り上がるが・・・・。

監督:佐藤祐市
原作・脚本:古沢良太
出演:小栗旬(家元)、ユースケ・サンタマリア(オダ・ユージ)、小出恵介(スネーク)、塚地武雅(安男/ドランクドラゴン)、香川照之(いちご娘)

本作「キサラギ」は、若干の問題はあるものの、大変素晴らしい作品に仕上がっていた。

本作を観て先ず感じたのは、本作の二転三転するプロットは、アガサ・クリスティの戯曲、特に「招かれざる客」のテイストに似ているのではないか、と言う事。

そんな本作「キサラギ」は、映画作品ではなく舞台作品だったら、最高に面白い作品になっていたのではないか、と思えてならない。

特に、塚地武雅の何度も行われる退場が、舞台上での演出を想定しているような印象を受ける。

しかしながら、ラスト近辺にあるシークエンスは、舞台では不可能な映像表現が使用され、映画ならではの印象を観客に与えている。

一方、その後のDVDのシークエンスは、舞台だったら最高の体験になったのではないか、と思える。

そのシークエンスでの5人の動きのタイミングが微妙に異なっているのが興味深かった。
キャラクターの設定毎に、微妙な動きのタイミングのズレまでを演出しているのだろうか。
だとすると、佐藤祐市は凄いな、と思った。

さて、脚本だが、古沢良太の脚本は、充分に良く出来ているとは思うのだが、伏線好きの観客にとっては、伏線があまりにもわかりやすく、すぐに最終的な画が見えてしまう、と言う難点があった。

と言うのも、伏線が非常にわかりやすく、登場人物が謎を解くより早く、多くの観客が謎を解いてしまっている、と思えるのだ。
つまり、観客の思考の速度と作品の進行速度が食い違っているのではないか、と言う印象を受けてしまう。

例えば、観終わった後に、あぁそうだったのか、なるほど〜、と言う感じの作品になっていたら良かったのに、と思ってしまう。
少なくとも、登場人物が気づいて、あぁそうだったのか、そういえばあそこが伏線になっていたんだな、と言う感じにして欲しかった。

あと、ラストのシーンだが、あれは蛇足だと言わざるを得ない。
ラストのシーンは、2通りの解釈が出来るのだが、演出サイドとしてはおそらく、観客の多くが許さないであろう方向性を持った演出意図を感じてしまう。

と言うのも、観客が感情移入した最終的な画を反故にする可能性がある、と言う演出手法は、ある意味観客を裏切り、折角の今までの感動を無にしてしまう可能性を秘めているからだ。

余談だけど、ラストのシークエンスに本当の意味での演出意図があるとしたら、本作で語られた今までの断片的な状況証拠から、本作で語られなかった最終的な結論について、可能性を絞れる観客、つまりあの結末には論理的な瑕があり、5人の登場人物の言動に偽りや矛盾を感じている観客向けの、映画の外に向かう伏線である、ととらえることが出来ます。

しかし、おそらく80%以上の観客は、そんなこと(新たな結論)を導き出せないのではないか、と個人的には思います。

ところで、キャストは、5人は5人とも良かったが、例によってユースケ・サンタマリアのセリフまわしは残念な結果に終わっている。

香川照之は相変わらず上手い。
よくもあのキャラクターのオファーを受けてくれたと思ってしまう。

また、小栗旬の高低の差も良かった。天国と地獄を味わう美味しいキャラクターだと言えるのではないだろうか。

否定的な事をいくつか書いたが、本作「キサラギ」は、観るべきところが沢山ある、素晴らしい作品だと言える。

出来る事ならば、是非劇場で多くの観客に堪能していただきたいと思った。

☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

ところで、「キサラギ」を楽しんだ後は「運命じゃない人」(2004)もオススメです。

「運命じゃない人」
http://diarynote.jp/d/29346/20050705.html

余談だけど、いつも思うんだけど「シネ・リーブル池袋」って、映写機の光量が足りないんじゃないかな。

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