2007/07/02 東京新橋「ヤクルトホール」で「レミーのおいしいレストラン」の試写を観た。
同時上映は「LIFTED(短編)」。

料理が大好きなレミーは、一流レストランのシェフになることを夢見ていた。
ある嵐の日、レミーは家族とはぐれてしまい、ひとりぼっちでパリの一軒のレストランにたどり着く。
そこはレミーが尊敬するフレンチ料理人、グストーのレストランだった。
そのキッチンでは、シェフ見習いのリングイニがヘマをして、スープを台無しにしてしまう。沸き上がる情熱を抑えきれず、キッチンに足を踏み入れたレミーは・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督・原案・脚本:ブラッド・バード
製作総指揮:ジョン・ラセター、アンドリュー・スタントン
製作:ブラッド・ルイス
音楽:マイケル・ジアッキノ
料理監修:トーマス・ケラー
声の出演:パットン・オズワルド(レミー)、ルー・ロマーノ(リングイニ)、ジャニーン・ガロファロー(コレット)、イアン・ホルム(スキナー)、ピーター・オトゥール(イーゴ)、ピーター・ソーン(
エミール)、ブライアン・デネヒー(ジャンゴ)、ブラッド・ギャレット(グストー)

さて、早速だが、本作「レミーのおいしいレストラン」は、大変素晴らしい作品に仕上がっていた。
私見だが、ピクサー・アニメーション・スタジオ作品の最高傑作と言っても過言ではないだろう。

何しろ泣けるのである。
ピクサーにこんなに泣かされるとは思わなかった。

※ 「カーズ」(http://diarynote.jp/d/29346/20060619.html)の時にも書いたけど、「モンスターズ・インク」(2001)の時も「ファインディング・ニモ」(2003)の時も「カーズ」(2006)の時も、わたしはピクサーの最高傑作だと思っていた。念の為。

ところで、本作で監督・原案・脚本を務めたブラッド・バードだが、彼のピクサーでの前作「Mr.インクレディブル」(2004)については個人的にイマイチだと感じていたこともあり、わざわざ外部から監督を招聘するピクサーのやり方に若干の不安を感じていたのだが、本作「レミーのおいしいレストラン」を見る限り、それは全くの杞憂に過ぎなかったことを感じた。

と言うのも、ブラッド・バードは本作では原案・脚本・監督と大活躍で、本当に自分が撮りたい作品を、ピクサーの技術を良い意味で利用して作っているのだと思うからである。
つまり、アニメーション・スタジオは、映像作家のビジョンを実現するための道具として機能するのが重要なことなのだ。

さて、話は戻るが、ブラッド・バードはピクサーとのコラボレーションのテスト作品とも言える「Mr.インクレディブル」を経て、自分の好きな事をピクサーの技術を通じてできるようになったのだろうと思う。

それも個人的に好きな作品を自己満足的に作っているのではなく、もちろん観客を意識した大変素晴らしい仕事をしているのだ。

さて、脚本についてだが、本作の物語については明言は避けるが、脚本的には、伏線がよく生かされている素敵な脚本に仕上がっていた。
小粋な伏線が、些細なセリフが、グストーの言葉が、そして伏線の回収の仕方が、涙腺を刺激するのだ。

その脚本の根底にあるのは、理想であったり、生き様であったり、物事に対する考え方なのである。
登場人物の孤高な生き様が感動を誘う訳である。

キャストだが、キャストはなんと言っても、アントン・イーゴを演じたピーター・オトゥールだろう。
彼のシークエンスでわたしは3度も泣かされてしまった。

特にグストーのレストランでイーゴが料理を食べるシークエンスには強烈な2カットがある。
たった2カットで全てを語る演出手腕には驚かされる。

また、その後の自戒的なモノローグも強烈に素晴らしい。
人生を変える料理に出会った男が心情を吐露する心意気に感涙なのだ。
そして彼のラストのセリフも素晴らしい。

ピーター・オトゥールをキャスティングできたことは、この作品にとって素晴らしい幸運だったのだと思う。

また、スキナーを演じたイアン・ホルムは「未来世紀ブラジル」(1985)のカーツマンと「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで、ガンダルフに甘えるの陽気で甘えん坊のビルボを足して壊したようなキャラクターを楽しげに演じている。

イアン・ホルムの今後は、ロビン・ウィリアムズの方向性を狙っても行けるのではないか、と思った。

一方、当然ながらアニメーションの技術も凄いものがあった。

例えば、冒頭近く、レミーが建物を駆け上がりエッフェル塔を見つけるカットがあるのだが、その際レミーが、まるで流れる水の様に建物の壁を駆け上がる姿が素晴らしく、わたしはその姿、ネズミが壁を駆け上がる姿で泣かされてしまった。

アニメーションとは、animate(命を与えるの意)から派生した言葉であり、命がないモノをあたかも命があるかのように見せる事が肝要なのである。

重力と質量が感じられるキャラクターの動作には驚かされる。

人間のキャラクター・デザインは、ブラッド・バードの前作「Mr.インクレディブル」のキャラクター・デザインを踏襲している。

また、前述のイーゴは、ティム・バートンの世界観とブラッド・バードの世界観との境界に位置するようなデザインが用いられているのが興味深い。

ネズミのデザインは、毛並みの表現が美しく、乾いた状態、濡れた状態の質感がすばらしい。

ネズミの集団の描写は、私見だが「ガンバの冒険」(1975)の影響が感じられる。
特に冒頭の旅立ちのシークエンスや、中盤以降のパーティのシークエンスに色濃い影響が感じられる。

また、「ウィラード」(1971)や「ベン」(1972)的な描写もあるのが嬉しい。

余談だが、本作でのネズミは、mouse(ハツカネズミ)ではなくrat(ドブネズミ)である。

また、自動車等乗物のデザインも秀逸で、特にシトロエンDSが最高にキュートである。

つづく・・・・
一時保存です。

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