2007/05/13 東京渋谷「シネマライズ」で「恋愛睡眠のすすめ」を観た。

引っ込み思案でシャイなステファンは、仕事も恋愛も失敗ばかりの冴えない人生を送ってきた。そんな現実から、眠っている間だけでも幸せになるため都合のいい夢ばかり見ている。
ある時、メキシコで一緒に暮らしていた父親が死んでしまい、パリに戻ることに。母親が大家をしているアパートに移り住み、ついでに就職先も見つけてもらう。これでパッとしない生活も良くなると思っていたが・・・・。(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:ミシェル・ゴンドリー     
脚本:ミシェル・ゴンドリー     
芸術監督:ピエール・ペル、ステファン・ローザンボーム
衣装デザイン:フロランス・フォンテーヌ         
音楽:ジャン=ミシェル・ベルナール
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル(ステファン)、シャルロット・ゲンズブール(ステファニー)、ミュウ=ミュウ(母クリスチーヌ)、アラン・シャバ(ギィ)、エマ・ドゥ・コーヌ(ゾーイ/ゾエ)、ピエール・ヴァネック(プシェ氏)、オレリア・プティ(マルチーヌ)、サッシャ・ブルド(セルジュ)

本作「恋愛睡眠のすすめ」は、ご存知「エターナル・サンシャイン」(2004)のミシェル・ゴンドリーの新作である。

ところで、いきなり私見で恐縮だが、ミシェル・ゴンドリーの嗜好は、テリー・ギリアムのそれと非常に近いものがあるとわたしは思っている。

テリー・ギリアムが創造する世界観は、ダークでグロテスクだとすると、ミシェル・ゴンドリーが創造する世界観はライトでキュートだと思える。

物語を描くテイストは異なるものの、両者の作品の根底に流れている根本的なスピリッツは非常に似通っているような印象を受けている。

さらに言えることは、本作「恋愛睡眠のすすめ」の物語は、夢の女を執拗に追い続ける主人公が自我崩壊にいたる、と言うテリー・ギリアムの「未来世紀ブラジル」(1985)によく似た構成を持っている、と言える。

「恋愛睡眠のすすめ」と言う作品は、ミシェル・ゴンドリーによる「未来世紀ブラジル」のリメイクと言うか、リ・イマジネーションのような作品なのかも知れない。

また、作品全体を捉えた場合、多くの観客は、この作品を否定せず、あそこが良かった、ここが良かった、と枝葉の部分を好意的に評価するが作品全体としては微妙、と言った類いの、言わば「裸の王様」的な作品だったような印象を受ける。

枝葉の部分はキュートでキャッチーなのだが、作品全体として評価できるか、と言うと、若干厳しいのではないか、と思えるし、スタイル先行で集まった観客にとっては、若干敷居が高い作品なのかもしれない。
尤も、本作「恋愛睡眠のすすめ」は単館ロードショー作品なので、その辺については杞憂かも知れないが・・・・。

と言うのも、ミシェル・ゴンドリーの前作「エターナル・サンシャイン」は、世界中の映画ファンに愛された作品であるだけに、ちょっと惜しい気がする。

キャストは、何と言ってもガエル・ガルシア・ベルナルが芸達者振りを見せているのが印象的であった。

「モーターサイクル・ダイアリーズ」(2003)で一躍スターダムに名乗りをあげたガエル・ガルシア・ベルナルは、最近では「バベル」(2006)の好演も光っているが、本作「恋愛睡眠のすすめ」では見事なコメディアン振りを見せてくれている。今後の幅広い活躍に期待が持てる。

脚本は、非常に複雑で、登場人物は勿論、わたし達観客にも今描かれている部分が現実なのかそれとも夢なのかの判断が難しく、それと同時にステファンが開発した様々なふしぎ道具も実在のものなのか、それとも夢の中のものなのかが判然としない。

そのあたりは、前述のように、物語の表層を楽しむ観客にとっては、ひとつの難関にあたるのではないか、と思える。

世界観は大変素晴らしく、特にステファンの夢の中や頭の中を描いたシークエンスの美術は一見チーブでありながら、その世界観から創出されるファンタジックな空間は非常に素晴らしい。

ダンボールを多用したステファンTVのセットの造形もすばらしい。

自宅のテレビにダンボールの枠でもつけようかと思った。

とにかく本作「恋愛睡眠のすすめ」は、観客を選ぶ作品かもしれないが、機会があれば是非観ていただきたい作品だと思う。

特に「未来世紀ブラジル」好きに観ていただきたいな、と個人的に思う。

☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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