2007/04/30 東京新宿「テアトルタイムズスクエア」で「ブラックブック」を観た。
1944年9月、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。
美しいユダヤ人女性歌手ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は、ナチスから逃れるため一家で南部へ向かう。
しかし、ドイツ軍の執拗な追跡にあい、ついには彼女を除く家族全員が殺されてしまう。
その後、レジスタンスに救われたラヘルは、ユダヤ人であることを隠すため髪をブロンドに染め、名前をエリスと変えて彼らの活動に参加するが・・・・。
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
原案:ジェラルド・ソエトマン
脚本:ジェラルド・ソエトマン、ポール・ヴァーホーヴェン
撮影:カール・ウォルター・リンデンローブ
プロダクションデザイン:ウィルバート・ファン・ドープ
衣装デザイン:ヤン・タックス
音楽:アン・ダッドリー
出演:カリス・ファン・ハウテン(ラヘル・シュタイン/エリス・デ・フリース)、トム・ホフマン(ハンス・アッカーマン)、セバスチャン・コッホ(ルドウィグ・ムンツェ)、デレク・デ・リント(ヘルベン・カイパース)、ハリナ・ライン(ロニー)、ワルデマー・コブス(ギュンター・フランケン)、ミヒル・ホイスマン(ロブ)、ドルフ・デ・ヴリーズ(公証人スマール)、ピーター・ブロック(ファン・ハイン)、ディアーナ・ドーベルマン(スマール夫人)、クリスチャン・ベルケル(カウトナー将軍)
本作「ブラックブック」は、もちろん娯楽作品として素晴らしい作品に仕上がっているのだが、それ以上にポール・ヴァーホーヴェンと言う映像作家にとって非常に重要な意味を持つ作品だと言える。
と言うのも、オランダ出身の映像作家であるポール・ヴァーホーヴェンが、ハリウッドからオランダに戻り、自らのアイデンティティに関わる祖国オランダのナチス・ドイツ占領時を舞台とした作品をオランダのスタッフと共に撮り上げた作品なのだ。
そして興味深いのは、本作のテイストがハリウッド時代の悪趣味な悪ふざけ的テイストではなく、もちろんヴァーホーヴェンお得意のエログロ描写はあるものの、ハリウッド時代の作品と一線を画した、非常に真摯に作品に取り組んだ印象を受ける。
1938年に生まれたヴァーホーヴェンにとって、ナチス・ドイツ占領時のオランダでの思い出は、彼にとって原初的でかつ強烈な印象となって残っていることは想像に難くない。
つまり、今までハリウッドでちょっとふざけて映画を撮っていた監督が、祖国で祖国のスタッフのために、本気で映画を撮った。
と言うような印象を受ける。
とは言う物の、日本の配給会社が本作「ブラックブック」を「シンドラーのリスト」(1993)や「戦場のピアニスト」(2002)と並べて売ろうとする愚挙的な広告戦略を取っているが、本作は実はそんな文芸作品ではなく、ヴァーホーヴェンの嗜好を充分に備え持った娯楽作品に仕上がっている。
「シンドラーのリスト」(1993)や「戦場のピアニスト」(2002)の感動をもとめて劇場に行った観客はちょっと困った事になるかも知れない、と思う。
さて、本作「ブラックブック」についてだが、先ずは脚本が非常に良かった。
伏線とは何か、と言うのが非常に明確に描かれており、特に印象的だったのは、チョコレートの使い方である。
そのチョコレートの伏線の使い方に、わたしは思わず膝を叩くところだった。
これこそ伏線であり、伏線のお手本のような脚本に仕上がっているのだ。
また、もう一点印象に残ったのは、ナチス・ドイツの占領から解放されたオランダの戦後処理の部分があったのが良かった。
と言うか実際は、連合軍がやって来た後の部分が本作の肝(キモ)なのだが、そういった構成になっている脚本に感心した。
大抵の映画では、連合軍がナチス・ドイツを蹴散らして、めでたしめでたしで終わる事が多いのだが、本作「ブラックブック」では、そこから物語が始まっているのだ。
キャストは先ずは、カリス・ファン・ハウテン(ラヘル・シュタイン/エリス・デ・フリース)が良かった。
彼女はとっても頑張りました。
噂ではカリス・ファン・ハウテンは、次回作のボンドガールになるとかならないとか言われているらしいのだが、北米での「ブラックブック」の公開は4月からなで、その影響(「ブラックブック」での演技や描写から来るイメージ)がどうでるのかが興味深いところである。
また、俳優陣も全てが全て良かったし、美術も良い仕事をしていたし、撮影もスコアも良かった。
本作「ブラックブック」は、もう本当に、悪いところが一切ない、と言って良いほど素晴らしい作品に仕上がっていた。
強いて言えば、尺(144分)が短すぎるということだろう。
もっともっと長い間観ていたい作品だった。
とにかく本作「ブラックブック」は、若干観客を選ぶ作品なのかもしれないが、是非劇場でポール・ヴァーホーヴェンの美学と真摯な仕事を堪能していただきたいと思うのだ。
☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったら、クリック!(現在のランキングがわかります)
http://blog.with2.net/link.php?29604
1944年9月、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。
美しいユダヤ人女性歌手ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は、ナチスから逃れるため一家で南部へ向かう。
しかし、ドイツ軍の執拗な追跡にあい、ついには彼女を除く家族全員が殺されてしまう。
その後、レジスタンスに救われたラヘルは、ユダヤ人であることを隠すため髪をブロンドに染め、名前をエリスと変えて彼らの活動に参加するが・・・・。
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
原案:ジェラルド・ソエトマン
脚本:ジェラルド・ソエトマン、ポール・ヴァーホーヴェン
撮影:カール・ウォルター・リンデンローブ
プロダクションデザイン:ウィルバート・ファン・ドープ
衣装デザイン:ヤン・タックス
音楽:アン・ダッドリー
出演:カリス・ファン・ハウテン(ラヘル・シュタイン/エリス・デ・フリース)、トム・ホフマン(ハンス・アッカーマン)、セバスチャン・コッホ(ルドウィグ・ムンツェ)、デレク・デ・リント(ヘルベン・カイパース)、ハリナ・ライン(ロニー)、ワルデマー・コブス(ギュンター・フランケン)、ミヒル・ホイスマン(ロブ)、ドルフ・デ・ヴリーズ(公証人スマール)、ピーター・ブロック(ファン・ハイン)、ディアーナ・ドーベルマン(スマール夫人)、クリスチャン・ベルケル(カウトナー将軍)
本作「ブラックブック」は、もちろん娯楽作品として素晴らしい作品に仕上がっているのだが、それ以上にポール・ヴァーホーヴェンと言う映像作家にとって非常に重要な意味を持つ作品だと言える。
と言うのも、オランダ出身の映像作家であるポール・ヴァーホーヴェンが、ハリウッドからオランダに戻り、自らのアイデンティティに関わる祖国オランダのナチス・ドイツ占領時を舞台とした作品をオランダのスタッフと共に撮り上げた作品なのだ。
そして興味深いのは、本作のテイストがハリウッド時代の悪趣味な悪ふざけ的テイストではなく、もちろんヴァーホーヴェンお得意のエログロ描写はあるものの、ハリウッド時代の作品と一線を画した、非常に真摯に作品に取り組んだ印象を受ける。
1938年に生まれたヴァーホーヴェンにとって、ナチス・ドイツ占領時のオランダでの思い出は、彼にとって原初的でかつ強烈な印象となって残っていることは想像に難くない。
つまり、今までハリウッドでちょっとふざけて映画を撮っていた監督が、祖国で祖国のスタッフのために、本気で映画を撮った。
と言うような印象を受ける。
とは言う物の、日本の配給会社が本作「ブラックブック」を「シンドラーのリスト」(1993)や「戦場のピアニスト」(2002)と並べて売ろうとする愚挙的な広告戦略を取っているが、本作は実はそんな文芸作品ではなく、ヴァーホーヴェンの嗜好を充分に備え持った娯楽作品に仕上がっている。
「シンドラーのリスト」(1993)や「戦場のピアニスト」(2002)の感動をもとめて劇場に行った観客はちょっと困った事になるかも知れない、と思う。
さて、本作「ブラックブック」についてだが、先ずは脚本が非常に良かった。
伏線とは何か、と言うのが非常に明確に描かれており、特に印象的だったのは、チョコレートの使い方である。
そのチョコレートの伏線の使い方に、わたしは思わず膝を叩くところだった。
これこそ伏線であり、伏線のお手本のような脚本に仕上がっているのだ。
また、もう一点印象に残ったのは、ナチス・ドイツの占領から解放されたオランダの戦後処理の部分があったのが良かった。
と言うか実際は、連合軍がやって来た後の部分が本作の肝(キモ)なのだが、そういった構成になっている脚本に感心した。
大抵の映画では、連合軍がナチス・ドイツを蹴散らして、めでたしめでたしで終わる事が多いのだが、本作「ブラックブック」では、そこから物語が始まっているのだ。
キャストは先ずは、カリス・ファン・ハウテン(ラヘル・シュタイン/エリス・デ・フリース)が良かった。
彼女はとっても頑張りました。
噂ではカリス・ファン・ハウテンは、次回作のボンドガールになるとかならないとか言われているらしいのだが、北米での「ブラックブック」の公開は4月からなで、その影響(「ブラックブック」での演技や描写から来るイメージ)がどうでるのかが興味深いところである。
また、俳優陣も全てが全て良かったし、美術も良い仕事をしていたし、撮影もスコアも良かった。
本作「ブラックブック」は、もう本当に、悪いところが一切ない、と言って良いほど素晴らしい作品に仕上がっていた。
強いて言えば、尺(144分)が短すぎるということだろう。
もっともっと長い間観ていたい作品だった。
とにかく本作「ブラックブック」は、若干観客を選ぶ作品なのかもしれないが、是非劇場でポール・ヴァーホーヴェンの美学と真摯な仕事を堪能していただきたいと思うのだ。
☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったら、クリック!(現在のランキングがわかります)
http://blog.with2.net/link.php?29604
コメント