「明日、君がいない」
2007年4月23日 映画
2007/04/10 東京丸の内「東商ホール」で「明日、君がいない」の試写を観た。
「明日、君がいない」の原題は「2:37」。
「2:37」は、昨年(2006年)開催された「第19回東京国際映画祭」のコンペティション部門に出品されていた。
当時のわたしは話題の「2:37」が観たくて観たくて仕方がなかったのだが、特別招待作品「パフューム」と上映時間が重なってしまっており、やむなく見逃してしまった、と言う作品である。
ところで、その話題の「2:37」と言う作品は元々、2006年の「カンヌ国際映画祭」の「ある視点」部門で絶賛され、続く「トロント国際映画祭」、「メルボルン国際映画祭」でも続々と絶賛された作品なのだが、驚くべきことに、その作品を制作(監督/脚本/共同編集/プロデューサー)したのが、なんと弱冠19歳(2005年当時)の青年だったのだ。
監督/脚本/共同編集/プロデューサー:ムラーリ・K・タルリ
撮影監督/共同編集/プロデューサー:ニック・マシューズ
音響デザイン:レスリー・シャッツ
出演:テレサ・パルマー(メロディ)、フランク・スウィート(マーカス)、サム・ハリス(ルーク)、チャールズ・ベアード(スティーヴン)、ジョエル・マッケンジー(ショーン)、マルニ・スパイレイン(サラ)
先ずは、脚本と構成が見事である。
脚本と構成は、現在の時制、過去の時制、インタビュー映像(高校で自主制作されている作品の一部と言う設定と思われる)が巧みにモンタージュされている。
そして意味ありげに挿入される樹木の枝葉。
また興味深いのは、同じ事象を複数の視点から撮影する、と言う撮影手法。
例えるならば「パルプ・フィクション」(1994)の冒頭とラストのシークエンス(冒頭のパンプキンのシークエンスのカメラにビンセントとジュールスがちらっと写っている)のような手法が、全編で行われている、と言うことである。
そして前述のインタビュー映像は、それを挿入することにより、作品自体に対するリアリティの付与に非常に貢献している。
また、本作「明日、君がいない」は、映画の冒頭部分で、誰かが自殺をしてしまい、その日の朝に物語が巻き戻る、と言うような構成を持っているのだが、その自殺をした人が一体誰なのかが分からない構成も、ありきたりな手法ではあるものの、観客をより一層登場人物の一挙手一投足に集中させる、と言った良い効果を与えている。
また、撮影だが本作は、低予算映画ではありながら、美術・照明のすばらしい仕事も相まって、通常の商業映画以上の風格や格調を持つ作品に仕上がっている。
これを19歳の青年が撮ったとは、本当に驚きである。
さらに撮影のコンセプトとして、カメラは、登場人物や周辺にいる学生たちの視点を代弁し、観客をただの観客ではなく、物語の傍観者としてその出来事を実際に体験しているような臨場感や印象を与えることに成功している。
そして一番驚いたのは、ラスト近辺に描かれる自殺のシークエンスである。
カメラは冷徹に、全く臆することなく逃げずにその事象を撮り続ける。
年間300本以上映画を観ているわたしだが、こんな直球勝負で、ワンカット勝負の映画は沢山は観たことがない。
また、多くの作品で、自殺を美化し美しいものとして描くことが多いような印象をわたしは持っているのだが、本作「明日、君がいない」での自殺のシークエンスは非常にエモーショナルでありながら、大変恐ろしく、大変痛々しい。
正に正視できない映像なのだ。
物語は高校の同級生が自殺をしてしまう、と言うセンセーショナルであり、かつ残念なことに最近増加してしまっている事象を題材にしている。
個人的には是非若年層の皆さんに観ていただきたいと思う作品である。
軽々しく言える話ではないが、もしかしたら本作「明日、君がいない」と言う作品は、自殺を考える人が自殺を思いとどまるひとつの契機となりうる作品かも知れない、とわたしは思う。
☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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「明日、君がいない」の原題は「2:37」。
「2:37」は、昨年(2006年)開催された「第19回東京国際映画祭」のコンペティション部門に出品されていた。
当時のわたしは話題の「2:37」が観たくて観たくて仕方がなかったのだが、特別招待作品「パフューム」と上映時間が重なってしまっており、やむなく見逃してしまった、と言う作品である。
ところで、その話題の「2:37」と言う作品は元々、2006年の「カンヌ国際映画祭」の「ある視点」部門で絶賛され、続く「トロント国際映画祭」、「メルボルン国際映画祭」でも続々と絶賛された作品なのだが、驚くべきことに、その作品を制作(監督/脚本/共同編集/プロデューサー)したのが、なんと弱冠19歳(2005年当時)の青年だったのだ。
監督/脚本/共同編集/プロデューサー:ムラーリ・K・タルリ
撮影監督/共同編集/プロデューサー:ニック・マシューズ
音響デザイン:レスリー・シャッツ
出演:テレサ・パルマー(メロディ)、フランク・スウィート(マーカス)、サム・ハリス(ルーク)、チャールズ・ベアード(スティーヴン)、ジョエル・マッケンジー(ショーン)、マルニ・スパイレイン(サラ)
先ずは、脚本と構成が見事である。
脚本と構成は、現在の時制、過去の時制、インタビュー映像(高校で自主制作されている作品の一部と言う設定と思われる)が巧みにモンタージュされている。
そして意味ありげに挿入される樹木の枝葉。
また興味深いのは、同じ事象を複数の視点から撮影する、と言う撮影手法。
例えるならば「パルプ・フィクション」(1994)の冒頭とラストのシークエンス(冒頭のパンプキンのシークエンスのカメラにビンセントとジュールスがちらっと写っている)のような手法が、全編で行われている、と言うことである。
そして前述のインタビュー映像は、それを挿入することにより、作品自体に対するリアリティの付与に非常に貢献している。
また、本作「明日、君がいない」は、映画の冒頭部分で、誰かが自殺をしてしまい、その日の朝に物語が巻き戻る、と言うような構成を持っているのだが、その自殺をした人が一体誰なのかが分からない構成も、ありきたりな手法ではあるものの、観客をより一層登場人物の一挙手一投足に集中させる、と言った良い効果を与えている。
また、撮影だが本作は、低予算映画ではありながら、美術・照明のすばらしい仕事も相まって、通常の商業映画以上の風格や格調を持つ作品に仕上がっている。
これを19歳の青年が撮ったとは、本当に驚きである。
さらに撮影のコンセプトとして、カメラは、登場人物や周辺にいる学生たちの視点を代弁し、観客をただの観客ではなく、物語の傍観者としてその出来事を実際に体験しているような臨場感や印象を与えることに成功している。
そして一番驚いたのは、ラスト近辺に描かれる自殺のシークエンスである。
カメラは冷徹に、全く臆することなく逃げずにその事象を撮り続ける。
年間300本以上映画を観ているわたしだが、こんな直球勝負で、ワンカット勝負の映画は沢山は観たことがない。
また、多くの作品で、自殺を美化し美しいものとして描くことが多いような印象をわたしは持っているのだが、本作「明日、君がいない」での自殺のシークエンスは非常にエモーショナルでありながら、大変恐ろしく、大変痛々しい。
正に正視できない映像なのだ。
物語は高校の同級生が自殺をしてしまう、と言うセンセーショナルであり、かつ残念なことに最近増加してしまっている事象を題材にしている。
個人的には是非若年層の皆さんに観ていただきたいと思う作品である。
軽々しく言える話ではないが、もしかしたら本作「明日、君がいない」と言う作品は、自殺を考える人が自殺を思いとどまるひとつの契機となりうる作品かも知れない、とわたしは思う。
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