2006/10/06 東京板橋「ワーナー・マイカル・シネマズ板橋」で「レディ・イン・ザ・ウォーター」を観た。

M.ナイト・シャマランの観客に対する問いかけはこうだ。
「お前たちはストーリーを信じる事が出来るのか?」

わたしはこう答える。
「もちろんわたしはストーリーを信じている。いままでもそうだったし、これからもずっと、命ある限りストーリーを信じるだろう」
 
 
アパートの管理人クリーブランド・ヒープ(ポール・ジアマッティ)は、なりをひそめるように暮らしてきた。コープ・アパートに住み込み、電球を交換し、空調を修理する単純な毎日。
しかし、ある晩を境に彼の人生は劇的に変わる。その晩、いちものように雑用を片づけていたクリーブランドはアパートの敷地内に何者かが潜んでいるのを発見した。

それはストーリー(ブライス・ダラス・ハワード)と名乗る謎めいた娘だった・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
 
 
監督・脚本・製作:M・ナイト・シャマラン
撮影:クリストファー・ドイル
プロダクションデザイン:マーティン・チャイルズ
衣装デザイン:ベッツィ・ハイマン
編集:バーバラ・タリヴァー
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演:ポール・ジアマッティ(クリーブランド・ヒープ)、ブライス・ダラス・ハワード(ストーリー)、ジェフリー・ライト(デュリー氏)、ボブ・バラバン(ハリー・ファーバー)、サリタ・チョウドリー(アナ・ラン)、シンディ・チャン(スン・チョイ)、M・ナイト・シャマラン(ヴィク・ラン)、フレディ・ロドリゲス(レジー)、ビル・アーウィン(リーズ氏)、メアリー・ベス・ハート(ベル夫人)、ノア・グレイ=ケイビー(ジョーイ・デュリー)、ジョセフ・D・ライトマン(長髪のスモーカー)、ジャレッド・ハリス(あこびげのスモーカー)、グラント・モナハン(やせ衰えたスモーカー)、ジョン・ボイド(眉が片方だけのスモーカー)
 
 
本作「レディ・イン・ザ・ウォーター」の基本プロットは、物語(ストーリー)が、ある作家に物語を書くように(間接的に)要請する、と言うもの。

物語を愛する人々にとって、この物語は圧倒的に魅惑的で、圧倒的に感動的なものである。

そしてもうひとつの基本プロットは、物語の登場人物はその物語に絶対的に必要である。と言うもの。
そうとは知らずにたまたま取った行動が、実は世界のどこかで何かを動かしているのだ。

これまた強烈に感動的で魅惑的、運命的で魅力的なプロットである。

また、物語の中と外の境界が曖昧になって行く感覚は、例えば「ネバー・エンディング・ストーリー」(1984)で、本の中の登場人物が時分に助けを求めていたり、−−「パスチャン、プリーズ!」−−、「カイロの紫のバラ」(1985)で映画の登場人物が観客に話しかけたりするのに近いかもしれない。

また、最近邦訳が出たスティーヴン・キングの小説「ダーク・タワーVI/スザンナの歌」の感覚(小説の登場人物が作者に会いに行く)にも似ているかも知れない。

更に、物語の構造としては、過去に戻った登場人物が、過去の人物に対し、その人物が将来成し遂げるであろう何かを説得し、やり遂げさせようとする感覚にも似ているのではないか、と思える。

とは言うものの本作を、娯楽作品として考えた場合、そんな運命的で魅力的で感動的な物語とは思えなくなってしまうような、問題がいくつかあると言わざるを得ない。

先ず冒頭の神話部分の挿入である。
これは、観客に取ってその神話部分の知識が誰もが持っている普遍的な物語の情報にしておかないと、物語の運命的な部分が斟酌されない、と言う問題を抱えてしまうので、仕方がないと言えば仕方がないのだが、もう少し上手いやり方があったのではないか、と思えてならない。

また、基本的にアパートの住人がそのストーリーの物語に対して疑問を一切感じない、と言う点にも問題を感じる。
登場人物の心情、つまり、疑問を持ちながらも心のどこかではストーリーを信じつつ、そのうちに起きる圧倒的な事象を体験した上で、絶対的にストーリーを信じる、と言う物語の一般的な過程が割愛されてしまっているのだ。

尤も、ストーリーを信じる観客に取っては、アパートの住人が疑義をはさむ必要など一切必要ないのだが、はたして一般の観客に取ってはどうか、と言うと若干の違和感を感じるのではないか、と思える。

そしてM.ナイト・シャマランの登場である。
シャマランのメタファーのとうじょうではなく、本人自ら登場というのが、果たして良かったのかどうか、意見が分かれると思うのだが、本作をシャマランの決意表明だと考えると、シャマラン以上のキャスティングは考えられないし、したり顔の映画評論家が喰われてしまうのも、そのあたりに説得力を付与しているのではないか、と思える。

そして、そこから考えられるのは、何と言っても、M.ナイト・シャマランの決意表明がすばらしい。
彼は自分が描く物語が、世界のどこかで何かを成し遂げることを信じている。
同時に彼は、世界のどこかで、見ず知らずの誰かが、その何かを成し遂げるために、自分の物語が絶対的に必要だ、と信じているのだ。

その崇高な使命感に突き動かされ、多くの観客に支持されない物語を語り続けるM.ナイト・シャマランは最高にすばらしい。

そんなM.ナイト・シャマランの物語をわたしはこれからも楽しみにし続けるであろう。

☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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