「太陽 The Sun」
2006年10月10日 映画2006/10/01 東京板橋「ワーナー・マイカル・シネマズ板橋」で「太陽 The Sun」を観た。
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリー・アラボフ
出演:イッセー尾形(昭和天皇)、ロバート・ドーソン(マッカーサー将軍)、佐野史郎(侍従長)、桃井かおり(香淳皇后)、つじしんめい(老僕)、田村泰二郎(研究所所長)、ゲオルギイ・ピツケラウリ(マッカーサー将軍の副官)、守田比呂也(鈴木貫太郎総理大臣)、西沢利明(米内光政海軍大臣)、六平直政(阿南惟幾陸軍大臣)、戸沢佑介(木戸幸一内大臣)、草薙幸二郎(東郷茂徳外務大臣)、津野哲郎(梅津美治郎陸軍大将)、阿部六郎(豊田貞次郎海軍大将)、灰地順(安倍源基内務大臣)、伊藤幸純(平沼騏一郎枢密院議長)、品川徹(迫水久常書記官長)
以前「オールド・ボーイ」(2003)の際にもお話したのだが、本作「太陽」を観て最初に思ったのは、「日本の映画人は一体何をしているのだ!」と言う事。
例えば、前述の「オールド・ボーイ」のように、日本の劇画を題材にしたすばらしい作品を韓国人の映画人に作られてしまったり、本作「太陽」のように日本の象徴を題材にしたすばらしい作品をロシア人の映画人に作られてしまったりして、こんなにすばらしい作品が出来てしまう題材に気が付かないとは、日本人として恥ずかしいとは思わないのかよ、とわたしは思えてならないのだ。
もちろん本作「太陽」は、アレクサンドル・ソクーロフの近代史上の人物を描く4部作の第3作目であるのだから、ヒトラーを題材にした「モレク神」(1999)、レーニンを題材とした「牡牛座」(2001)を観たドイツ人、ロシア人の感想も聞きたいと思うが、「太陽」を観た日本人としては、その的確な脚本と的確な演出、的確な描写に驚かされてしまう。
(尤も「牡牛座」を観てロシア人が驚く、と言うのはソクーロフがロシア人監督である以上、意味がないのだが・・・・)
おそらく本作の正確な描写は、日本人スタッフや日本人キャストの協力があってのことだとは思うのだが、ロシア人監督が作ったとは思えないほどに見事な日本を描いている作品だと思う。
更に、本作は、日本の企画に海外の映画監督がオファーされた作品ではなく、海外の監督の純粋な企画であることが重要だと思う。
余談だが、本作に出てくる舞台が、非常に限定されているのも、その適格な描写の効果を高めているのかも知れない。
話は元に戻るが、そう考えながら日本の映画人を考えてみると、果たして、現在の日本人映画監督に、他国を他国の人々を驚かせるほど的確に描く作品を制作できるのだろうか、と思えてならない。
さて、本作の内容についてだが、先ずは、圧倒的な世界観を構築した美術(エレナ・ズーコワ)がすばらしかった。
特に舞台の中心となる防空壕のイメージがすばらしく、その防空壕の中での天皇の生活が悲しい。
そして誰もが語るように、本作のイッセー尾形の、例えば「都市生活カタログ」や「とまらない生活」をも髣髴とさせるような一人芝居が最高である。
誰も見たことがない人々を演じているだけでも面白いのに、知っている人物を演じている以上、もっと面白い訳だ。
そして、それにしても天皇と外の世界との隔絶感が圧倒的に美しくも悲しい。
こんな素敵で、こんな切ない脚本を、日本人ではなくロシア人が書いているのだ。
ところで、本作で興味深かったのは、アメリカ人の描き方に若干の悪意を感じられた点である。
観客は、本作をみながら必然的に天皇に感情移入する訳だが、その中で描かれているアメリカ人が非常に野蛮で粗忽な存在として描かれている。
特に、天皇の撮影シークエンスでのアメリカ人兵士の粗忽ぶりに多くの観客は激怒することになる訳だ。
いくら敗戦国の天皇だからといって、アメリカ軍兵士のあの態度はいただけない。
また、東京大空襲のシークエンスだが、これは「ハウルの動く城」(2004)の空襲シークエンスをも髣髴とさせるすばらしいイメージで描かれている。
実写の作品で、こんなすばらしいイマジネーションを具現化している作品にわたしは出会ったことがないのではないだろうか。
これは全くもって圧倒的にすばらしい。
とにかく、機会があれば是非観てほしいと心から思う。
☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリー・アラボフ
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以前「オールド・ボーイ」(2003)の際にもお話したのだが、本作「太陽」を観て最初に思ったのは、「日本の映画人は一体何をしているのだ!」と言う事。
例えば、前述の「オールド・ボーイ」のように、日本の劇画を題材にしたすばらしい作品を韓国人の映画人に作られてしまったり、本作「太陽」のように日本の象徴を題材にしたすばらしい作品をロシア人の映画人に作られてしまったりして、こんなにすばらしい作品が出来てしまう題材に気が付かないとは、日本人として恥ずかしいとは思わないのかよ、とわたしは思えてならないのだ。
もちろん本作「太陽」は、アレクサンドル・ソクーロフの近代史上の人物を描く4部作の第3作目であるのだから、ヒトラーを題材にした「モレク神」(1999)、レーニンを題材とした「牡牛座」(2001)を観たドイツ人、ロシア人の感想も聞きたいと思うが、「太陽」を観た日本人としては、その的確な脚本と的確な演出、的確な描写に驚かされてしまう。
(尤も「牡牛座」を観てロシア人が驚く、と言うのはソクーロフがロシア人監督である以上、意味がないのだが・・・・)
おそらく本作の正確な描写は、日本人スタッフや日本人キャストの協力があってのことだとは思うのだが、ロシア人監督が作ったとは思えないほどに見事な日本を描いている作品だと思う。
更に、本作は、日本の企画に海外の映画監督がオファーされた作品ではなく、海外の監督の純粋な企画であることが重要だと思う。
余談だが、本作に出てくる舞台が、非常に限定されているのも、その適格な描写の効果を高めているのかも知れない。
話は元に戻るが、そう考えながら日本の映画人を考えてみると、果たして、現在の日本人映画監督に、他国を他国の人々を驚かせるほど的確に描く作品を制作できるのだろうか、と思えてならない。
さて、本作の内容についてだが、先ずは、圧倒的な世界観を構築した美術(エレナ・ズーコワ)がすばらしかった。
特に舞台の中心となる防空壕のイメージがすばらしく、その防空壕の中での天皇の生活が悲しい。
そして誰もが語るように、本作のイッセー尾形の、例えば「都市生活カタログ」や「とまらない生活」をも髣髴とさせるような一人芝居が最高である。
誰も見たことがない人々を演じているだけでも面白いのに、知っている人物を演じている以上、もっと面白い訳だ。
そして、それにしても天皇と外の世界との隔絶感が圧倒的に美しくも悲しい。
こんな素敵で、こんな切ない脚本を、日本人ではなくロシア人が書いているのだ。
ところで、本作で興味深かったのは、アメリカ人の描き方に若干の悪意を感じられた点である。
観客は、本作をみながら必然的に天皇に感情移入する訳だが、その中で描かれているアメリカ人が非常に野蛮で粗忽な存在として描かれている。
特に、天皇の撮影シークエンスでのアメリカ人兵士の粗忽ぶりに多くの観客は激怒することになる訳だ。
いくら敗戦国の天皇だからといって、アメリカ軍兵士のあの態度はいただけない。
また、東京大空襲のシークエンスだが、これは「ハウルの動く城」(2004)の空襲シークエンスをも髣髴とさせるすばらしいイメージで描かれている。
実写の作品で、こんなすばらしいイマジネーションを具現化している作品にわたしは出会ったことがないのではないだろうか。
これは全くもって圧倒的にすばらしい。
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