「時をかける少女」(2006)
2006年9月4日 映画 コメント (2)
2006/08/31 東京池袋「テアトル池袋」で「時をかける少女」(2006)を観た。
当日は「テアトル池袋」の閉館に伴う楽日(らくび)。
監督の細田守とプロデューサーの渡邊隆史の舞台挨拶と「テアトル池袋」の閉館イベントがあり、立見が100名程出ていた。
高校2年生の紺野真琴(仲里依紗)は、故障した自転車で遭遇した踏切事故の瞬間、時間を跳躍する不思議な体験をする。
叔母の芳山和子(原沙知絵)にその能力のことを相談すると、それは「タイムリープ」といい、年頃の女の子にはよくあることだというが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:細田守
原作:筒井康隆 「時をかける少女」(角川文庫刊)
脚本:奥寺佐渡子
美術監督:山本二三
キャラクターデザイン:貞本義行
制作:マッドハウス
声の出演:仲里依紗(紺野真琴)、石田卓也(間宮千昭)、板倉光隆(津田功介)、原沙知絵(芳山和子)、谷村美月(藤谷果穂)、垣内彩未(早川友梨)、関戸優希(紺野美雪)
本作「時をかける少女」(2006)は大変素晴らしい作品に仕上がっていた。
物語の構成は、大林宣彦監督、原田知世主演の「時をかける少女」(1983)の続編と言う前提ではありながら、同作の見事な正統リメイク作品として、はたまた筒井康隆の原作の見事な映画化作品として機能する非常にすばらしい構成を持っていた。
アニメーション制作はマッドハウス。
マッドハウスと言えば、同じく筒井康隆原作で、ヴェネチア国際映画祭で上映され絶賛をあびている今敏の「パプリカ」(2007)や、今敏の前作「東京ゴッドファーザーズ」(2003)、「千年女優」(2001)、「PERFECT BLUE」(1998)等々、クオリティの高い作品が思い出される。
本作は、一連の今敏監督作品同様、先ずは背景がすばらしい。
その背景の一翼を担うのは、テレビ・シリーズ「未来少年コナン」(1978)時代からの宮崎駿の盟友山本二三。
細かい街並みはもちろん、「スーパーマン リターンズ」(2006)に足りない見事な、そして圧倒的な青空が楽しめる。
山本二三の強烈な写実的な背景が確固とした世界観の構築に、そして物語へのリアリティの付与に大きく貢献している。
動画は前述の今敏作品の動き、例えば「東京ゴッドファーザーズ」等には及ばないものの、人間が動いている様を見事に表現し、また恐ろしいほどに表情が豊かなキャラクターを生き生きと活写している。
本さくのキャラクターは、口先、小手先だけの演技ではなく、身体全体で感情を表現しているのだ。
ところで、2006年の夏は、GONZO制作の「ブレイブ ストーリー」(2006)、スタジオ・ジブリ制作の「ゲド戦記」(2006)、そしてマッドハウス制作の本作「時をかける少女」(2006)と、奇しくも日本が誇る三大アニメーション・スタジオの三つ巴の争いが展開されていたのだが、全ての点において本作は他を圧倒的に凌駕している、と言う印象を受けた。
そして「ブレイブ ストーリー」と「ゲド戦記」がダメなせいか、はたまた本作が優れているせいか、「時をかける少女」は、当初は単館系作品だったのだが、現在では順次全国拡大ロードショーに拡大していくようである。
優れた作品に多くのスクリーンが割り当てられる。
当たり前と言えば当たり前なのだが、いろいろな大人の事情で、なかなか出来ない事なのである。
そんな中、良質な作品に多くのスクリーンが割り当てられるのは、非常に嬉しいものである。
良質な作品は、きちんとプロモーションを行い、きちんとヒットさせなければならないのだ。
余談だか、興業収入のお話しだが、興収第1位になる作品と言うのは、観客が集まった結果、1位になるのではなく、(誰かが)1位にしようとしたいくつかの作品のうち、一番観客が集まった作品が結果的に1位になるのである。
と言うのも、逆説的に言うと、1位になった作品に、結果的に日本中の数多くのスクリーンが割り当てられていた、と言うことなのである。
いくら良質の作品であってもスクリーンの数が少なければ、満員で4回転、5回転しようが、所詮はスクリーンの数が興収に対しモノを言う訳である。
だから、くだらない莫迦な大作映画が興収第一位を掻っ攫ってしまう訳なのだ。
物語の前半は、タイムリープ能力を得た真琴が大喜びで繰り広げるドタバタ・コメディ。
後半はドタバタ・コメディの延長上に恋愛模様を絡め、そして恐ろしくも静かなラストへと物語りは進む。
物語の論理構成としては、パラレルワールド的な世界観ではなく、一つの時間軸を持つ世界観を貫いているため、ラストの決着のつけ方に、若干イロジカルな部分があるのは否定できないが、それはそれ、本作のすばらしい脚本の前には、少しも気にならないのだ。
キャストは、説明的なセリフに難があるキャラクターもいたが、マンガ映画のようなセリフの発声に、また有名俳優や話題性と言った観点や、大人の事情で声優(声の出演)を決定したと思われる「ブレイブ ストーリー」や「ゲド戦記」なんかよりも、素直でプレーンな演技に好感を覚えた。
とにかく、本作「時をかける少女」(2006)は2006年の夏に劇場で観るべきアニメーション作品だと本気で思う。
夏休みと言う祭の後の寂しさを是非味わっていただきたい。
☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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当日は「テアトル池袋」の閉館に伴う楽日(らくび)。
監督の細田守とプロデューサーの渡邊隆史の舞台挨拶と「テアトル池袋」の閉館イベントがあり、立見が100名程出ていた。
高校2年生の紺野真琴(仲里依紗)は、故障した自転車で遭遇した踏切事故の瞬間、時間を跳躍する不思議な体験をする。
叔母の芳山和子(原沙知絵)にその能力のことを相談すると、それは「タイムリープ」といい、年頃の女の子にはよくあることだというが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:細田守
原作:筒井康隆 「時をかける少女」(角川文庫刊)
脚本:奥寺佐渡子
美術監督:山本二三
キャラクターデザイン:貞本義行
制作:マッドハウス
声の出演:仲里依紗(紺野真琴)、石田卓也(間宮千昭)、板倉光隆(津田功介)、原沙知絵(芳山和子)、谷村美月(藤谷果穂)、垣内彩未(早川友梨)、関戸優希(紺野美雪)
本作「時をかける少女」(2006)は大変素晴らしい作品に仕上がっていた。
物語の構成は、大林宣彦監督、原田知世主演の「時をかける少女」(1983)の続編と言う前提ではありながら、同作の見事な正統リメイク作品として、はたまた筒井康隆の原作の見事な映画化作品として機能する非常にすばらしい構成を持っていた。
アニメーション制作はマッドハウス。
マッドハウスと言えば、同じく筒井康隆原作で、ヴェネチア国際映画祭で上映され絶賛をあびている今敏の「パプリカ」(2007)や、今敏の前作「東京ゴッドファーザーズ」(2003)、「千年女優」(2001)、「PERFECT BLUE」(1998)等々、クオリティの高い作品が思い出される。
本作は、一連の今敏監督作品同様、先ずは背景がすばらしい。
その背景の一翼を担うのは、テレビ・シリーズ「未来少年コナン」(1978)時代からの宮崎駿の盟友山本二三。
細かい街並みはもちろん、「スーパーマン リターンズ」(2006)に足りない見事な、そして圧倒的な青空が楽しめる。
山本二三の強烈な写実的な背景が確固とした世界観の構築に、そして物語へのリアリティの付与に大きく貢献している。
動画は前述の今敏作品の動き、例えば「東京ゴッドファーザーズ」等には及ばないものの、人間が動いている様を見事に表現し、また恐ろしいほどに表情が豊かなキャラクターを生き生きと活写している。
本さくのキャラクターは、口先、小手先だけの演技ではなく、身体全体で感情を表現しているのだ。
ところで、2006年の夏は、GONZO制作の「ブレイブ ストーリー」(2006)、スタジオ・ジブリ制作の「ゲド戦記」(2006)、そしてマッドハウス制作の本作「時をかける少女」(2006)と、奇しくも日本が誇る三大アニメーション・スタジオの三つ巴の争いが展開されていたのだが、全ての点において本作は他を圧倒的に凌駕している、と言う印象を受けた。
そして「ブレイブ ストーリー」と「ゲド戦記」がダメなせいか、はたまた本作が優れているせいか、「時をかける少女」は、当初は単館系作品だったのだが、現在では順次全国拡大ロードショーに拡大していくようである。
優れた作品に多くのスクリーンが割り当てられる。
当たり前と言えば当たり前なのだが、いろいろな大人の事情で、なかなか出来ない事なのである。
そんな中、良質な作品に多くのスクリーンが割り当てられるのは、非常に嬉しいものである。
良質な作品は、きちんとプロモーションを行い、きちんとヒットさせなければならないのだ。
余談だか、興業収入のお話しだが、興収第1位になる作品と言うのは、観客が集まった結果、1位になるのではなく、(誰かが)1位にしようとしたいくつかの作品のうち、一番観客が集まった作品が結果的に1位になるのである。
と言うのも、逆説的に言うと、1位になった作品に、結果的に日本中の数多くのスクリーンが割り当てられていた、と言うことなのである。
いくら良質の作品であってもスクリーンの数が少なければ、満員で4回転、5回転しようが、所詮はスクリーンの数が興収に対しモノを言う訳である。
だから、くだらない莫迦な大作映画が興収第一位を掻っ攫ってしまう訳なのだ。
物語の前半は、タイムリープ能力を得た真琴が大喜びで繰り広げるドタバタ・コメディ。
後半はドタバタ・コメディの延長上に恋愛模様を絡め、そして恐ろしくも静かなラストへと物語りは進む。
物語の論理構成としては、パラレルワールド的な世界観ではなく、一つの時間軸を持つ世界観を貫いているため、ラストの決着のつけ方に、若干イロジカルな部分があるのは否定できないが、それはそれ、本作のすばらしい脚本の前には、少しも気にならないのだ。
キャストは、説明的なセリフに難があるキャラクターもいたが、マンガ映画のようなセリフの発声に、また有名俳優や話題性と言った観点や、大人の事情で声優(声の出演)を決定したと思われる「ブレイブ ストーリー」や「ゲド戦記」なんかよりも、素直でプレーンな演技に好感を覚えた。
とにかく、本作「時をかける少女」(2006)は2006年の夏に劇場で観るべきアニメーション作品だと本気で思う。
夏休みと言う祭の後の寂しさを是非味わっていただきたい。
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コメント
「青空のゆくえ」も良かったですね。
噂では「青空のゆくえ」は同キャストで何年かに1本ずつ映画を撮る、と言う話だったと思うのですが、どうなったのでしょうかね。彼らがだんだん大人になって行く姿が描かれると思ってましたが・・・・。