2006/08/20 東京神保町「一ツ橋ホール」で「UDON」の試写を観た。

スタンダップ・コメディアンになって世界中を笑わせたい、そんな夢を持って讃岐からニューヨークへ飛び出した松井香助(ユースケ・サンタマリア)。

しかし夢半ばで挫折し、借金を背負って実家に帰る香助に、製麺所を営む頑固な父親・松井拓富(木場勝己)は一喝する。
「何しに帰ってきた!」と。

借金返済のため、親友・鈴木庄介(トータス松本/ウルフルズ)の紹介で地元のタウン誌の編集部で働くことになった香助だったが・・・・。
(オフィシャル・サイトより少々引用)

監督:本広克行
製作:亀山千広
脚本:戸田山雅司
撮影:佐光朗
出演:ユースケ・サンタマリア(松井香助)、小西真奈美(宮川恭子)、トータス松本(鈴木庄介/ウルフルズ)、鈴木京香(藤元万里)、升毅(大谷昌徳)、片桐仁(三島憲治郎/ラーメンズ)、要潤(青木和哉)、小日向文世(藤元良一)、木場勝己(松井拓富)、江守徹(綾部哲人)、二宮さよ子(馬渕嘉代)、明星真由美(淳子)、森崎博之(牧野)、中野英樹(中西)、永野宗典(水原宗典)、池松壮亮(水沢翔太)、ムロツヨシ(石松)、与座嘉秋(新美/ホームチーム)、川岡大次郎(小泉)
 
 
本作「UDON/うどん」は、「サマータイムマシン・ブルース」(2005)に続く、ヒットメイカー本広克行の監督最新作である。

常々お話しているように、わたしは一映画ファンとして「踊る大捜査線」シリーズを一切評価していない。

しかし、本広克行が舞台劇を映画化した2作品、「スペース・トラベラーズ」(2000)と「サマータイムマシン・ブルース」(2005)は大いに買わせていただいている。

とは言うものの、実際問題として、これらの2作は好評だった舞台劇の映画化である、と言う前提条件を考えると、「スペース・トラベラーズ」にしろ「サマータイムマシン・ブルース」にしろ、映画として面白いのか、それともそもそも舞台劇そのものが面白かったのか、そして本広克行の映像制作者としての手腕ははたしてどうだったのか、と言う疑問を感じていたのだ。

そんな中、映画オリジナル企画「UDON」が製作された訳である。
本作「UDON」は、テレビ・シリーズの映画化でも、舞台劇の映画化でもない、本広克行がオリジナル映画で勝負、と言う背景を持った作品なのだ。

本作「UDON/うどん」は、「踊る大捜査線」シリーズのように、テレビ・シリーズのファンだけを劇場に呼ぶための作品ではなく、日本中、否世界中の映画ファン全てを劇場に呼ぶための作品なのだ。

本広克行の監督としての勝負のときなのだ。
 
 
さて、脚本だが、物語は非常にベタで、観客の想像通りに物語りは進む。

そんな中で非常に好感が持てたのは、メディアによって作られた「讃岐うどんブーム」が頂点から失速し、そして終焉をむかえるところまでを明確に描いているところである。

物語で登場人物はそれを「まつり」と表現している。

そして自分達が起こしたブームにより、押し寄せる客のために、店のレベルが落ち、周辺住民との確執から店をたたむところが明確に描写されている。

制作にフジテレビと言う巨大メディアがかんでいる作品で、いわばメディア批判ともなりかねないプロットの採用に正直感心した。

ちょっと余談だが、ここで比較してみたいのは最近日本でも公開されたピクサー・アニメーション・スタジオの「カーズ」(2006)である。

「カーズ」の物語は、地図から忘れ去られた街ラジエーター・スプリングスの復興で幕を閉じる。

だが、その後のラジエーター・スプリングスはどうなるのだろうか。街の賑わいはいつまで続くのか、また再び地図から忘れ去られてしまうのではないだろうか。

街の賑わいは一瞬の出来事だったのではないだろうか。

一方、本作「UDON/うどん」では、物語の前半部分で讃岐地方の地元タウン誌「タウン情報さぬき」により讃岐うどんブームが巻き起こり、それを受けて首都圏のメディアも讃岐うどんブームをどんどん取り上げ、ブームは頂点を迎える。
頂点を迎えたブームに残されているのは、衰退の一途である。

そして物語の後半部分、讃岐うどんブームが去った後、本当の物語が始まる訳なのだ。

キャストは基本的にダメな人はいなかった。
みんな良くやっていると思う。

また、数多く登場するカメオも全くと言って良いほど鼻につかない。

キャストで印象的だったのは前作「サマータイムマシン・ブルース」のキャストが顔を揃えている点である。しかも同じ役柄だ、と言っても良い役柄に好感を覚える。

とにかく本作「UDON/うどん」は、「踊る大捜査線」シリーズのことなんか知らないよ、と言う多くの普通の映画ファンに観て欲しい作品だと思う。

☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

余談だけど、予習のため「サマータイムマシン・ブルース」を観ておくと良いと思うよ。
予告編で出てくるけど、「ブレードランナー」(1982)も観といた方が良いかも。

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コメント

nophoto
yosihisa
2006年9月13日14:11

昨日、UDONをみました。
私は香川の人間で前回のサマータイムはレンタルで見ましたが、47歳の私にはストーリーがいまいち理解しがたく、今回のUDONはどうなんだろうと、期待していましたが、10年前のUDONブームより以前からうどんになれしたんでた私にはタウン情報香川に田尾さんのコラムがでたときから、そのうどん店を休みの日に
まわっていました、そのときは、まだ今のような行列はまだなく、純粋においしい うどんが食べれましたが、最近そのうどん店にいくと前のようなおいしさはありませんでした、
香川のうどんが有名になるのはうれしいですが、おいしい うどんが食べれなくなるのは、さみしいです。
今回の映画の影響が香川県にどうゆう影響をあたえるのか
逆に心配です。
なお 映画は前半の場面より後半の方が私的にはよかったと
思います。

tkr
tkr
2006年9月14日20:43

yosihisaさんこんにちは。コメントありがとうございました。

わたしも本作の良かった点は、中盤から後半だと思います。
メディアが作ったブームが終焉を迎え、美味しいうどん屋の多くが味を落とし、いくつかのうどん屋が店をたたむ。

そこまで明確に描くことは、テレビ局が資本を出している作品として、非常に勇気がいることだったと思います。

しかしながら、だと言っても本作の影響でyosihisaさんの仰る危惧的な事象が起きるであろう事は否定できません。
と言うか、おそらくyosihisaさんの危惧通りのことが起きるのではないかと思えてなりません。

本作「UDON」は、その影響力を考えると、全国拡大ロードショーではなく、単館でひっそり公開されるべき作品だったのかも知れませんね。
tkr

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