「フラガール」

2006年8月3日 映画
2006/08/03 東京九段下「九段会館」で「フラガール」の試写を観た。

昭和40年、福島県いわき市の炭鉱町。

『求む、ハワイアンダンサー』
掲示板に貼られたポスターを見た早苗(徳永えり)は紀美子(蒼井優)にこう告白する。
これは「ここから抜け出す最初で最後のチャンス」だと。

いわき市の男たちは、数世代前から炭坑夫として、女たちも選炭婦として、働いてきた。
だが今や石炭から石油へとエネルギーの担い手は変革し、炭鉱の閉山が相次いでいる。

この危機を救うために炭鉱会社が構想したのが、レジャー施設『常磐ハワイアンセンター』だった。

紀美子の母・千代(富司純子)も兄・洋二朗(豊川悦司)も炭鉱で働いている。
紀美子の父は落盤事故で亡くなった。母は「百年も続いたウヂの炭鉱は天皇陛下までご視察にいらしたヤマだぞ」と自慢し、炭鉱を閉じて『ハワイ』を作る話に大反対。

それでも紀美子と早苗はフラダンサーの説明会に出かけるが、ほかの娘たちは、初めて見るフラダンスの映像に、「ケツ振れねえ」「ヘソ丸見えでねえか」と、逃げ出してしまう。

残ったのは、紀美子と早苗、それに会社の庶務係で子持ちの初子(池津祥子)、そして父親に連れてこられた一際大柄な女の子、小百合(山崎静代/南海キャンディーズ・しずちゃん)だけだった。(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:李相日
脚本:李相日、羽原大介
出演:松雪泰子(平山まどか)、豊川悦司(谷川洋二朗)、蒼井優(谷川紀美子)、山崎静代(熊野小百合/南海キャンディーズ・しずちゃん)、池津祥子、徳永えり、三宅弘城、寺島進、志賀勝、高橋克実、岸部一徳(吉本紀夫)、富司純子(谷川千代)
 
 
いきなりで恐縮だが、皆さんは、南海キャンディーズのしずちゃんが踊りまくる「フラガール」の予告編を見たことがあるだろうか。
その予告編を見た多くの人々は、しずちゃんの踊りに目が釘付けになってしまったのではないか、と思う。

かく言うわたしも件のしずちゃんが踊る予告編で「フラガール」と言う作品に大きな関心を持った一人の映画ファンなのだ。
 
 
さて、本作「フラガール」についてだが、物語は、不景気な町の再建を図るべく、フラダンス未経験の少女たちが、鬼コーチの下、フラダンスを学びながら、様々な障害を乗り越えて、初ステージを踏む、と言うありがちな物語である。

脚本はベタだし、展開も想像通り、本作の物語には決して予想外の出来事は起きない。
とは言うものの、本作は奇をてらったプロットや演出がない直球ど真ん中勝負の脚本と順当な演出が非常に心地よい、ツボを押さえた大変すばらしい作品に仕上がっていた。

と言うのも、本作「フラガール」は、気になる点が若干あるものの、悪い点が全く存在しない作品なのだ。
減点法で本作を評価したような場合、非常に高得点が狙える作品に仕上がっているのだ。

おそらく、現在のところ「フラガール」をマークしていない映画ファンの皆さんも多々いらっしゃると思うのだが、出来れば是非劇場で「フラガール」を体験して欲しいと、本心から思う。

ところで、今回の試写では、本編終了後暗転直後に松雪泰子のクレジットが最初に出るのだが、そのクレジットが出た瞬間、観客席から爆発的な拍手が起こったのが非常に印象的であった。

お約束のおざなりな拍手ではなく、観客の本心からの突発的な拍手が自然発生的に起きたのである。

さて、キャストだが、先ずはフラダンスのコーチ役・平山まどかを演じた松雪泰子が大変すばらしかった。
本作の平山まどか役は、松雪泰子のフィルモグラフィーの中でも最高に輝いている役柄だと思うし、彼女のフィルモグラフィーの中でも代表作に数えられる作品に仕上がっていると思う。
年齢を重ね、わざと美しくなく撮影された松雪泰子の表情が最高に格好良く、魅力的で、そして何と言っても美しいのだ。

また、フラガールのリーダー役・谷川紀美子を演じた蒼井優もすばらしい。
冒頭部分、昭和40年の田舎娘だった彼女がフラダンスを練習するうちに、成長していく様が最高にすばらしい。

松雪泰子と蒼井優は物語の中で同じダンスを踊るのだが、その対比が非常に効果的である。

蒼井優的には「花とアリス」もびっくりなのだ。

そして重鎮・富司純子(谷川千代役)も強烈である。
頑迷な昭和の女性と言うベタなキャラクターではあるのだが、彼女の存在が本作に見事な格調を付与している。

やはり、松雪泰子、蒼井優、富司純子の三人の絡みは最高にすばらしい。

俳優については、豊川悦司(谷川洋二朗役)にしても、岸部一徳(吉本紀夫役)にしても、良い仕事をしているのだが、女優陣の活躍の前では、残念ながら演技が霞んでしまう。

フラダンスのシーンも非常にすばらしく、ラストのダンスのシークエンスは、演技後のフラガールたちの表情が最高に輝いている。
これはほとんど素の表情だと思う。
涙を流しながら笑顔を見せる彼女らの表情は最高である。

昭和40年の寂れた炭鉱町を再現した美術(種田陽平)は非常に良い仕事をしていたと思う。
CGIなのかも知れないが、炭鉱町の官舎の造形は凄いと思った。

余談だが、本作「フラガール」は、寂れた炭鉱町の物語、と言う観点からは「ブラス!」(1996)や「リトル・ダンサー」(2000)との対比も面白いと思う。
会社とリストラ、ストと子供たちの世代のダンスや音楽と言う普遍的な物語が興味深い。

とにかく、観て!
本作「フラガール」は、そんなすばらしい作品なのだ。

☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

「フラガール」をめぐる冒険
http://diarynote.jp/d/29346/20060921.html

■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。

参考になったら、クリック!(現在のランキングがわかります)
http://blog.with2.net/link.php?29604

コメント

tkr

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索