2006/07/28 東京板橋「ワーナー・マイカル・シネマズ板橋」で「日本沈没」(2006)を観た。

潜水艇《わだつみ6500》のパイロット・小野寺俊夫(草なぎ剛)は、地球科学博士・田所雄介(豊川悦司)の指揮の下、同僚パイロットの結城(及川光博)と共に深海調査に参加していた。その結果、小野寺は驚愕の事実を知る−−海底プレートの急速な沈降で、日本列島はわずか1年後に沈没する。

日本の危機を訴える田所に、ほかの科学者たちは『聞くに値しない妄言』と一蹴する。しかし、内閣総理大臣・山本尚之(石坂浩二)は、事態を重く受け止め、危機管理担当大臣として鷹森沙織(大地真央)を任命する。鷹森はかつての田所の妻でもあった。山本総理は避難民の海外受け入れ要請のために旅立った。

一方、小野寺は災害の中で、ハイパーレスキュー隊員の阿部玲子(柴咲コウ)と共に、家族を失った少女・倉木美咲(福田麻由子)を救出する。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:樋口真嗣
原作:小松左京
脚本:加藤正人
音楽:岩代太郎
特技監督:神谷誠
出演:草なぎ剛(小野寺俊夫)、柴咲コウ(阿部玲子)、豊川悦司(田所雄介)、大地真央(鷹森沙織)、及川光博(結城慎司)、福田麻由子(倉木美咲)、吉田日出子(田野倉珠江)、柄本明(福原教授)、國村隼(野崎亨介)、石坂浩二(山本尚之)

先ずは脚本が酷かった。
と言うか少なくても「日本沈没」ではない。

本作「日本沈没」(2006)は、かつての名作「日本沈没」(1973)を下敷にしていたかどうかは知らないが、旧作と比較して恐ろしく酷い作品に仕上がっている。

あらゆる点で類似点や相違点があるので、少なくても2006年版スタッフは、1973年版を意識している事は意識しているのだろうが、同じことをやっているところも、異なったことをやろうとしている点も残念ながら一々酷い。

余談だけど、1973年版の人間ドラマに2006年版の特撮カットを入れたら良い映画が出来るんじゃないのかな、と本気で思ってしまう。

残念な事に、2006年版には小林桂樹の田所博士がいなかったり、丹波哲郎の山本総理がいないだけではなく、根本的に脚本がおかしいのである。

言うならば、こんなシークエンスが欲しいから、こんな映像が欲しいから、と言う感じで脚本が出来ているような気がした。

監督の樋口真嗣は一体何を描きたかったのか、物語の進行と矛盾しまくりの天変地異の映像なのか、それとも上っ面だけの薄っぺらい人間ドラマなのか。
それとも「ローレライ」(2005)もびっくりのキャラクターの無駄死になのか、訳がわからない自己犠牲精神なのか。
ただ、観客を泣かせる事を目的としているのか。しかも根本的な次元ではなく、表層的な次元で。

そして、もしかしたら、2006年版「犬神家の一族」のせいなのか、石坂浩二(山本総理)の途中退場により、脚本に直しが入ったのか、そのために撮影済・CGI発注済のシークエンスが否応なしに前後してしまったのか、例えば日本中で大惨事が起きているのにも関わらず観光旅行をしている人が居たり、−−これはおそらく当初は、日本が沈没することが明確になっていない時点での異常気象のシークエンスの映像だと思う−−、5月のシークエンスのはずなのに冬用のコートを着ている大勢の人々が国外脱出のために並んでいたり、−−これもシーンの入れ替えの問題だろう−−、日本が沈み始めていると言うのに普通の生活をしていたりする。

ついでに「さよならジュピター」(1984)もびっくりの瞬間移動振りを、冒頭では田所教授(豊川悦司)が、または後半では小野寺俊夫(草なぎ剛)が見せている。
前半では、世界をまたにかけて船舶(?)で移動する田所教授の神出鬼没な行動力には驚かされるし、後半では日本が分断され交通が遮断されているのにも関わらず日本中に出没する小野寺には驚かされる。

また、驚かされると言えば、ハイパーレスキュー隊員阿部玲子(柴咲コウ)と彼女が乗るヘリコプターも神出鬼没も驚きだった。
圧倒的な位のピンポイントへのヘリコプターの出現振りには、驚きを越えあきれてしまう。

ピエール瀧の死様にも驚くし、富野由悠季が演じたキャラクターは結構良かったが、富野由悠季や庵野秀明、安野モヨコ、福井晴敏の登場もいただけない。

また及川光博の奥さん役が佐藤江梨子だったりするところが、樋口真嗣は楽しんでいるのだろうと思うが、なんともいやらしい。

また石坂浩二と加藤武の共演にも作為が感じられる。

こんなこと(意味のないカメオ)をやっていて、観客が喜ぶと思っているのか、と思ってしまう。

まあ元々物語が希薄なので、観客の意識を物語から逆に遠ざけ、物語の表層だけを楽しませる、と言うミスデレクションの効果がある、と言えばあると思うのだが・・・・。

一方、長山藍子の起用は良かったと思う。
本作「日本沈没」(2006)で唯一俳優(女優)の演技を見たような気がした。

あとは柴咲コウのシークエンスにはがっかりさせられる。
彼女のキャラクターは「日本沈没」(2006)には不必要なシークエンスなのだ。
もちろん「日本沈没」(1973)のいしだあゆみのキャラクターの存在も微妙だが、「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004)にしろ本作にしろ不必要なキャラクターを演じるのはどう言うことだろうか、と思ってしまう。

まあ、本作「日本沈没」(2006)は、わたしが観る限りは現在のところ「文春きいちご賞」の最有力候補だと言わざるを得ない。
話題性、キャスト共に「文春きいちご賞」の風格は充分だと思う。

とりあえず1973年版「日本沈没」を観た後で、2006年版「日本沈没」を観て欲しいと思う。
まあ逆でも良いんだけど、丹波哲郎と小林桂樹に酔って欲しいと思う。

☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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