「ポセイドン」

2006年5月18日 映画
2006/05/17 東京九段下「日本武道館」で「ポセイドン」を観た。
当日は、監督のウォルフガング・ペーターゼン、出演のカート・ラッセル、ジョシュ・ルーカス、エミー・ロッサムを迎えた『「ポセイドン」ジャパン・プレミア』であった。

大晦日の夜。北大西洋を航海中の豪華客船ポセイドン号ではカウントダウン・パーティーが始まっていた。同等クラスでは世界最高の客船のひとつであるポセイドン号は、高さが20階を超え、客室800、パッセンジャー・デッキ13を備える。

今夜、乗客の多くは新年を迎えるために着飾り、壮麗なダンスホールに集っている。ブラッドフォード船長(アンドレ・ブラウアー)の乾杯の音頭で彼らはシャンパン・グラスを上げ、グロリア(ステーシー・ファーガソン/ブラック・アイド・ビーズ)のバンドは「蛍の光」を奏で始め、宴は最高潮の盛り上がりを見せていた。

その頃、ブリッジでは、一等航海士が異変を感じ取っていた。水平線を調べていた彼は、ローグ・ウェーブ(異常波浪)を発見するが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:ウォルフガング・ペーターゼン
脚本:マーク・プロトセヴィッチ
原作:ポール・ギャリコ
出演:ジョシュ・ルーカス(ディラン・ジョーンズ)、カート・ラッセル(ロバート・ラムジー)、リチャード・ドレイファス(リチャード・ネルソン)、ジャシンダ・バレット(マギー・ジェームズ)、エミー・ロッサム(ジェニファー・ラムジー)、マイク・ボーゲル(クリスチャン)、ミア・マエストロ(エレナ)、ジミー・ベネット(コナー・ジェームズ)、アンドレ・ブラウアー(ブラッドフォード船長)、フレディー・ロドリゲス(マルコ・バレンティン)、ケビン・ディロン(ラッキー・ラリー)、ステーシー・ファーガソン(グロリア)

さて、本作「ポセイドン」についてだが、先ずはファーストカットが素晴らしかった。
海中のカメラが海上に出て、上空に上がり、豪華客船ポセイドン号の周りを鳥の視線で飛び回ると言うカットなのだが、広角レンズで撮影され、遠近感が適度にゆがんだポセイドン号の船体がスコープ・サイズのスクリーンに映し出される様は、素晴らしい映像体験のひとつであろう。

メインのプロットは、オリジナルの「ポセイドン・アドベンチャー」(1972)とほぼ同じなのだが、キャラクターの設定が全く異なり、さらにオリジナル版では、人間ドラマに重きを置き、歩いて船底へ向かう感じだったのだが、本作は水や危機に追いまくられて、走って船底へ向かう、と言う印象。

オリジナル版は117分だったのだが、本作は98分と非常にタイトで、パニック・アクション映画として、不必要なものを極限まで削ぎ落とした点に好感が持てる。
手に汗握るパニック・アクション映画としては、十分に及第点が付けられると思う。

しかるに、オリジナル版の人間ドラマがほとんど割愛されてしまったため、おそらく批判的な意見を持つ人が多いのではないか、と思った。

感覚的には、ホラー映画の「エイリアン」(1979)が、アクション映画の「エイリアン2」(1986)になったような、作品としてのベクトルの変更が行われており、個人的にはその辺りは評価したいと思う。

キャストは、リチャード・ドレイファス(リチャード・ネルソン)が大きな役で出ていたのには驚かされた。カメオ的な顔見世だけだと思っていたのだが、メインのプロットに絡む大役だったのには驚いた。しかし、キャラクターの背景が不明瞭で、消化不良である。

また、ケヴィン・ディロン(ラッキー・ラリー)の役柄とその見せ場にも驚かされた。兄のマット・ディロンが「クラッシュ」(2004)で評価されている状況の中、この役はまずいだろう、と言う感じである。

カート・ラッセル(ロバート・ラムジー)は、おそらく「バック・ドラフト」(1991)の映画的記憶を利用した元消防士で元ニューヨーク市長と言う背景を持つキャラクターを演じており、ともすれば911テロをもキャラクターの背景とさせてしまっているような印象を受けた。
「エグゼクティブ・デシジョン」(1996)バリの見せ場の連続で、往年のスネークファンも大満足と言ったところだろうか。

ジョシュ・ルーカスは、賭博師と言う設定で、個人的には「タワーリング・インフェルノ」(1974)の詐欺師を演じたフレッド・アステア的な印象を受けた。大活躍である。

アンドレ・ブラウアー(ブラッドフォード船長)だが、黒人が豪華客船の船長を演じる、と言うのは珍しいのではないか、と思った。冒頭の登場シークエンスでは、船長ではなく、楽団のリーダー的な役回りに見えてしまう。
が、スコープ感を念頭に置いた、両腕を広げるカットは画的に素晴らしかった。

脚本は、残念ながら人間ドラマが希薄な印象が否定できないのだが、その反面、追いまくられるスピード感や緊迫感は迫力十分であるし、脱出の成否にからむ伏線の張り方が見事である。

美術はセットとしてはよく頑張っているのだが、逆さになった豪華客船の見せ方はイマイチだといわざるを得ない。

あと驚いたのは、物語上、船体の中は死体の山なのだが、死体のデザインと製作のクレジットが大きめに入っていたのには驚いた。死体専門のクリエイターがいる、という事である。

演出(編集含む)は、アクションの緊迫感は凄かった。
論理的に構築された危機とアクションとの構成が見事である。
例えば「アビス」(1989)の冒頭近く、クレーンが落ちてくるシークエンスの構成が素晴らしいのと同じような印象であった。
 
 
とにかく、本作「ポセイドン」は手に汗握るパニック・アクション映画としては大変面白い作品に仕上がっている。

また、冒頭のポセイドン号の勇姿にしろ、アクション・シークエンスにしろ、スコープ感を念頭に置いた画面構成と演出がすばらしい。是非劇場で楽しんでいただきたい作品である。

☆☆☆★ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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