「サイレン」

2006年1月19日 映画
2006/01/18 東京六本木「VIRGIN TOHO シネマズ 六本木ヒルズ」で「サイレン」の完成披露試写を観た。

舞台挨拶は監督の堤幸彦、出演の市川由衣、高橋真唯、森本レオ、西山潤。

1976年、日本・夜美島(やみじま)。
嵐の夜、海は赤く染まり、謎のサイレンの音とともに全島民が突如消失した。
発見されたのは正気を失った一人の男・土田圭(阿部寛)のみ。
男は狂ったように同じ言葉を繰り返し唱えた。
「サイレンが鳴ったら外に出てはならない」

未曾有の怪事件の舞台となった夜美島だったが、年月と共に事件は闇に葬り去られ、再び新しい入居者を迎え平穏を取り戻しつつあった。

事件から29年後。
天本由貴(市川由衣)はフリーライターをつとめる父・真一(森本レオ)と弟・英夫(西山潤)と愛犬オスメントとともに夜美島に引っ越してくる。病気がちの英夫の転地療養のためだ。

島に到着した由貴たちを出迎えたのは、英夫の担当医になる青年医師・南田豊(田中直樹)だった。
由貴たちは南田の案内で島を巡り、新しい住まいにたどり着くが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:堤幸彦
脚本:高山直也
出演:市川由衣(天本由貴)、森本レオ(天本真一)、田中直樹(南田豊)、阿部寛(土田圭)、西田尚美(里美)、松尾スズキ(東)、嶋田久作(山中巡査)、高橋真唯(赤い服の少女)、西山潤(天本英夫)

本作「サイレン」は、演出や美術、世界観は評価できると思うし、ホラー的な描写も水準以上だと思う。
しかし、物語については、表層を見るとなんとなく奥が深そうに思えるのだが、実際のところは決して奥が深いわけではなく、まるで深みのある脚本に見せかけた物語の表層をなぞる、勢いだけのサイコ・サスペンス娯楽作品のような印象を受ける。

本作「サイレン」はもともとはビデオゲームだったと言うから、面白ければ、深みを感じさせるためには、パクリでも引用でも何でもあり、と言う様に様々な面白みや意外なプロットを盛り込んでいるのだが、突き詰めていくとそのプロットに一貫性が無く、脚本的にも大人の鑑賞に堪えうる納得の行くものではない。

大風呂敷を広げたは良いが、実際のところはどうなのよ、と言う感じである。

とは言うものの、ハリウッドの多くの娯楽作品同様、内容はイマイチだが勢いがあって楽しくて面白い、と言うような一般の娯楽作品と同程度には面白い作品に仕上がってはいる、と思う。
少なくても、一般の観客が、あぁ面白かったね、と言える水準は保っていると思う。

しかし、本作は「ロアノーク島」の事件をはじめとするいくつかの住民消失事件を枕詞にしている以上、脚本は住民消失事件についての論理的な回答と言う、ある程度の責任を果たさなければならない、と思うのは観客の当然の思いだと思うのだが、その論理的な回答が提示されない脚本は作品のスタンスとして、どうかと思う。

言い換えるならば、本作は「ロアノーク島」や「マリー・セレスト号」を引き合いに出している以上、「夜美島」事件と「ロアノーク島」や「マリー・セレスト号」事件の原因や謎になんらかの共通点や事件の同一性の根拠を提示するのは、製作者としての義務だと思う。
出来ないのならば「ロアノーク島」云々の枕詞を使わないで欲しいと思う。

あと松尾スズキが演じたキャラクターが、脚本全体の一貫性に影を投げかけている。(もちろん論理的な解釈は可能なのだが、観客に対してフェアではないような印象を受けた)

キャストは皆さん可もなく不可もなく、与えられた役柄を見事にこなしている。

余談だが、冒頭で「ロアノーク島」や「マリー・セレスト号」の消失事件が引用されるのだが、わたしはそれを見て笑いそうになってしまった。これらの事件の原因(謎)を突き止めるのかよ、または一つの解釈法を提示するのかよ、と。

また更に余談だが、天本家が飼っている犬の名前がオスメントと言うのにも笑わせていただいた。
てことは・・・・。と。

興行的にはおそらく堤幸彦と阿部寛との「トリック」路線と、堤幸彦のかつての作品もちろんビデオゲーム路線で広告宣伝を行うと思うのだが、いかんせんノンスター・ムービーであるから興行的には難しいのではないかと思う。

市川由衣や高橋真唯では客を呼べないだろう。

また作品のコンセプトはM・ナイト・シャマランの「ヴィレッジ」に似ているのも、興行的な面ではマイナス・ポイントになってしまうのではないかと個人的には思う。
わたしは「ヴィレッジ」は大好きな映画だが、多くの人々は「ヴィレッジ」を嫌っているようなので・・・・。

また本作は、脚本とプロットだけで観客を動員できる作品だとは、残念ながら思えない。

ホラー系の美術や演出に水準以上のものを感じるだけに、非常に残念な気がする。きちんと寒気が起きる演出がされていた。

こういった作品には先ずは論理的なプロットが必要なのだと思うのだ。

☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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