2005/10/24 東京六本木「VIRGIN TOHO CIMENAS 六本木ヒルズ」で「第18回東京国際映画祭」特別招待作品「春の雪」を観た。
舞台挨拶は監督の行定勲、出演の妻夫木聡、高岡蒼佑。
会場には主題歌を提供した宇多田ヒカルもきていた。
幼なじみのふたり、侯爵家の子息・松枝清顕(妻夫木聡)と伯爵家の令嬢・綾倉聡子(竹内結子)。いつからか聡子は清顕を恋い慕うようになっていた。清顕は聡子の想いに気づきながらも、不器用な愛情表現でしか想いを伝えられないでいた。
そんな綾倉家では、宮家の王子・洞院宮治典王と聡子の縁談が進められていた。没落寸前の綾倉家にとって、宮家との縁談は家名復興のまたとない機会であったが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:行定勲
原作:三島由紀夫 『春の雪 豊饒の海(一)』(新潮文庫刊)
撮影:リー・ピンビン
美術:山口修
衣裳デザイン:伊藤佐智子
照明:中村裕樹
出演:妻夫木聡(松枝清顕)、竹内結子(綾倉聡子)、高岡蒼佑(本多繁邦)、スウィニット・パンジャマワット(パッタナディド殿下)、アヌチット・サパンポン(クリッサダ殿下)、及川光博(洞院宮治典王殿下)、田口トモロヲ(松枝家執事山田)、高畑淳子(洞院宮妃)、石丸謙二郎(綾倉伯爵)、宮崎美子(綾倉伯爵夫人)、山本圭(洞院宮治久王殿下)、真野響子(松枝侯爵夫人)、榎木孝明(松枝侯爵)、大楠道代(蓼科)、岸田今日子(清顕の祖母)、若尾文子(月修寺門跡)
本作「春の雪」は、はっきり言って驚くほど面白かった。
行定勲の前作「北の零年」が霞んでしまうほどの作品に仕上がっていた。おそらく行定勲の代表作になってしまうのではないか、と思えるほどの作品だと思う。
まずは美術(山口修)と撮影(リー・ピンビン)が凄い。
こんなきれいな日本映画は久しぶりのような気がした。
美術と衣装デザイン(伊藤佐智子)とが構築する世界観は一分の隙も無く、見事な統一的世界観をかもし出している。
そして、リー・ピンビンのカメラが構図といい色彩といい驚くべきほど美しいのだ。
繰り返しになるが、大正時代を再現する美術やセット、そして衣装も素晴らしいし、そこから見事に構築された世界観も凄い。
そしてその世界の中、俳優達が繰り広げる、時代がかった芝居が本当に楽しい。
尤も冒頭からしばらくの中(うち)は、時代がかった文語調にも似たセリフに違和感とユーモアを感じるが、そのうちに観客は、そんな事も気にしなくなり、その世界に没頭してしまうのだ。
また音楽(スコア/岩代太郎)についても、卓越した世界観と調和する見事なものだった。
物語は勿論、運命的で悲劇的なラブ・ストーリーの体裁を取っているのだが、わたしには見事なクライム・サスペンスに見て取れてしまった。
そんなわたしの目には本作「春の雪」は、ふたりの男女が恋愛と言う完全犯罪をもくろみ、一時は成功しかけるが、ほんの些細な瑕からその完全犯罪が崩壊していく様を描いているように見えたのだのだ。
まるでスタンリー・キューブリックの「現金に体を張れ」(1956)のような印象を受けたのだ。
ところで役者は役者でみんな良かった。
個人的には特に岸田今日子と大楠道代が素晴らしかった。
また存在感から言うと及川光博が良かった。
及川光博がこの時代に存在する事に、多くの映画人は感謝しなければならないと本気で思ってしまう。
余談だが市川崑が「本陣殺人事件」を撮る、といううわさが出ているが、本作「春の雪」を見て、是非岸田今日子をキャスティングして欲しいと思った。ついでに、金田一耕助はやはり石坂浩二に演って欲しいと本気で思う。
いやぁ、本当に市川崑の凄い新作が観たいと、切に思うね。
ところで、今回の上映は日本で観客を入れてのはじめての上映と言うことでもあり、本作「春の雪」上映前に監督の行定勲とキャストの妻夫木聡、高岡蒼佑の舞台挨拶があった。
妻夫木聡はやはり華があるな、と思った。
高岡蒼佑は舞台挨拶ではパっとしなかったが、本編での演技は良かった。
行定勲は珍しく、スーツっぽい格好をしていた。
余談だが、今年の1月に「東映試写室」で「北の零年」のティーチ・イン試写を見た際もそうだったのだが、行定勲は映画の上映後、観客がいなくなるまで、密かに観客を見送ることにしているようなのだが、今回も「VIRGIN TOHO CIMENAS 六本木ヒルズ」の2Fのロビーの隅で観客を密かに見送っていた。
頭が下がる思いがする。
ところで、客席には宇多田ヒカルも来ていたのだが、エンディング・クレジットでかかる宇多田の楽曲は、ついさっきまで観ていた映画の感動の全てをぶち壊しにしてしまっていた。
エンド・クレジットは、ストリングスでテーマを3〜5分位流し、余韻に浸らせてから、歌ものへのオーバー・ラップが良かったのではないかと思う。
勿論、大人の事情をわかった上で、だ。
聞くところによると、竹内結子が「春の雪」のプロモーションに一切協力しない、と言うことから宇多田ヒカルが「東京国際映画祭」にかりだされた、と言ううわさである。
もちろんあくまでもうわさである。
周辺の話題はともかく、本作「春の雪」は非常にすばらしい作品であることは、紛れもない事実である。
出来ることなら、多くの方々に劇場に足を運んでいただきたいと思う。
☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
余談だけど、行定勲の「春の雪」とあわせて原田眞人の「自由戀愛」を見てみると非常に面白いと思うよ。
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舞台挨拶は監督の行定勲、出演の妻夫木聡、高岡蒼佑。
会場には主題歌を提供した宇多田ヒカルもきていた。
幼なじみのふたり、侯爵家の子息・松枝清顕(妻夫木聡)と伯爵家の令嬢・綾倉聡子(竹内結子)。いつからか聡子は清顕を恋い慕うようになっていた。清顕は聡子の想いに気づきながらも、不器用な愛情表現でしか想いを伝えられないでいた。
そんな綾倉家では、宮家の王子・洞院宮治典王と聡子の縁談が進められていた。没落寸前の綾倉家にとって、宮家との縁談は家名復興のまたとない機会であったが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:行定勲
原作:三島由紀夫 『春の雪 豊饒の海(一)』(新潮文庫刊)
撮影:リー・ピンビン
美術:山口修
衣裳デザイン:伊藤佐智子
照明:中村裕樹
出演:妻夫木聡(松枝清顕)、竹内結子(綾倉聡子)、高岡蒼佑(本多繁邦)、スウィニット・パンジャマワット(パッタナディド殿下)、アヌチット・サパンポン(クリッサダ殿下)、及川光博(洞院宮治典王殿下)、田口トモロヲ(松枝家執事山田)、高畑淳子(洞院宮妃)、石丸謙二郎(綾倉伯爵)、宮崎美子(綾倉伯爵夫人)、山本圭(洞院宮治久王殿下)、真野響子(松枝侯爵夫人)、榎木孝明(松枝侯爵)、大楠道代(蓼科)、岸田今日子(清顕の祖母)、若尾文子(月修寺門跡)
本作「春の雪」は、はっきり言って驚くほど面白かった。
行定勲の前作「北の零年」が霞んでしまうほどの作品に仕上がっていた。おそらく行定勲の代表作になってしまうのではないか、と思えるほどの作品だと思う。
まずは美術(山口修)と撮影(リー・ピンビン)が凄い。
こんなきれいな日本映画は久しぶりのような気がした。
美術と衣装デザイン(伊藤佐智子)とが構築する世界観は一分の隙も無く、見事な統一的世界観をかもし出している。
そして、リー・ピンビンのカメラが構図といい色彩といい驚くべきほど美しいのだ。
繰り返しになるが、大正時代を再現する美術やセット、そして衣装も素晴らしいし、そこから見事に構築された世界観も凄い。
そしてその世界の中、俳優達が繰り広げる、時代がかった芝居が本当に楽しい。
尤も冒頭からしばらくの中(うち)は、時代がかった文語調にも似たセリフに違和感とユーモアを感じるが、そのうちに観客は、そんな事も気にしなくなり、その世界に没頭してしまうのだ。
また音楽(スコア/岩代太郎)についても、卓越した世界観と調和する見事なものだった。
物語は勿論、運命的で悲劇的なラブ・ストーリーの体裁を取っているのだが、わたしには見事なクライム・サスペンスに見て取れてしまった。
そんなわたしの目には本作「春の雪」は、ふたりの男女が恋愛と言う完全犯罪をもくろみ、一時は成功しかけるが、ほんの些細な瑕からその完全犯罪が崩壊していく様を描いているように見えたのだのだ。
まるでスタンリー・キューブリックの「現金に体を張れ」(1956)のような印象を受けたのだ。
ところで役者は役者でみんな良かった。
個人的には特に岸田今日子と大楠道代が素晴らしかった。
また存在感から言うと及川光博が良かった。
及川光博がこの時代に存在する事に、多くの映画人は感謝しなければならないと本気で思ってしまう。
余談だが市川崑が「本陣殺人事件」を撮る、といううわさが出ているが、本作「春の雪」を見て、是非岸田今日子をキャスティングして欲しいと思った。ついでに、金田一耕助はやはり石坂浩二に演って欲しいと本気で思う。
いやぁ、本当に市川崑の凄い新作が観たいと、切に思うね。
ところで、今回の上映は日本で観客を入れてのはじめての上映と言うことでもあり、本作「春の雪」上映前に監督の行定勲とキャストの妻夫木聡、高岡蒼佑の舞台挨拶があった。
妻夫木聡はやはり華があるな、と思った。
高岡蒼佑は舞台挨拶ではパっとしなかったが、本編での演技は良かった。
行定勲は珍しく、スーツっぽい格好をしていた。
余談だが、今年の1月に「東映試写室」で「北の零年」のティーチ・イン試写を見た際もそうだったのだが、行定勲は映画の上映後、観客がいなくなるまで、密かに観客を見送ることにしているようなのだが、今回も「VIRGIN TOHO CIMENAS 六本木ヒルズ」の2Fのロビーの隅で観客を密かに見送っていた。
頭が下がる思いがする。
ところで、客席には宇多田ヒカルも来ていたのだが、エンディング・クレジットでかかる宇多田の楽曲は、ついさっきまで観ていた映画の感動の全てをぶち壊しにしてしまっていた。
エンド・クレジットは、ストリングスでテーマを3〜5分位流し、余韻に浸らせてから、歌ものへのオーバー・ラップが良かったのではないかと思う。
勿論、大人の事情をわかった上で、だ。
聞くところによると、竹内結子が「春の雪」のプロモーションに一切協力しない、と言うことから宇多田ヒカルが「東京国際映画祭」にかりだされた、と言ううわさである。
もちろんあくまでもうわさである。
周辺の話題はともかく、本作「春の雪」は非常にすばらしい作品であることは、紛れもない事実である。
出来ることなら、多くの方々に劇場に足を運んでいただきたいと思う。
☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
余談だけど、行定勲の「春の雪」とあわせて原田眞人の「自由戀愛」を見てみると非常に面白いと思うよ。
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