今日の「東京フィルメックス」2005/11/23
2005/11/19から始まった「東京フィルメックス」だが、本日(2005/11/23)で会期は5日目である。

実は、本日上映される作品のチケットは「チケットぴあ」で完売だったため、一枚も持っていなかったのだが、若干枚数だけ発売されると言う当日券狙いで(実際のところ)ドキドキしながら会場(「有楽町朝日ホール」)へ向かった。
因みに、本日のラインナップの中で、一番観たかったのは廣木隆一の「やわらかい生活」。
 
 
2005/11/23
■「落ちる人」
監督:フレッド・ケレメン
出演: エゴンス・ドンブロフスキス、ニコライ・コロボフ

橋から身投げする女を見たマティスは、彼女の足跡を探り始める……ラトヴィアの首都リガを舞台に、独特な風景を活かしつつ、人間の潜在的な心理を描いた秀作。東京国際映画祭で上映された「アーベントランド」(99)のケレメンの新作。
(「第6回東京フィルメックス」オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

長回しを多用したモノクロのDV撮影作品。
ディテクティブ・ストーリーとしても、贖罪の物語としても、どんでん返しを楽しむ作品としても楽しめる非常にシニカルな作品。

モノクロのDV撮影作品と言う形態だが、上映は35フィルムで行われていた。
DVの粒子やモアレは見えるものの、作品自体はモノクロと言う事もあってか、比較的フィルム・ライクに仕上がっていた。
色はモノクロではなく、完全な白黒だが・・・・。

わたし的には、本作「落ちる人」を騎士道精神に則ったディテクティブ・ストーリーとして楽しんだ。

これだけ長回しが多い作品を観ると、一体編集って何なんだろうと思ったりしてしまう。

監督のフレッド・ケレメンは、「第6回東京フィルメックス」のコンペティションの審査員を務めている関係で、ほとんどの作品の上映時に会場にいる。
その関係で、何度かサインをもらったり、映画の話を2〜3したりした。「落ちる人」は、先入観や想像していた以上に面白い作品に仕上がっていた。半分知り合いの気分なので安心した。
 
 
■「やわらかい生活」
監督:廣木隆一
出演:寺島しのぶ、豊川悦司、松岡俊介、田口トモロヲ、妻夫木聡

第96回文學界新人賞を受賞した絲山秋子の「イッツ・オンリー・トーク」を映画化。35歳、無職、独身のヒロインとその周囲の4人の男たちとの不思議な関係を軽妙につづる。寺島しのぶの演技が堪能できる作品。
(「第6回東京フィルメックス」オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

先日も「バッシング」の際に書いたが、ハリウッドの娯楽作品や、日本映画でも、CF(CM)ばかりやっているつまらない娯楽作品を観ている場合ではないな、と思わせるすばらしい作品であった。

主演の寺島しのぶはもちろん良いのだが、共演の豊川悦司や妻夫木聡らにも驚かされた。特に豊川悦司のキャラクター造形はすばらしい。

物語の構成としては躁うつ病の女性が蒲田という街で出会った様々な男たちとの出会いと別れを描いているのだが、まずはすばらしいロケーション効果に驚かされる。

35mmで鈴木一博が切り取る画のすばらしいことすばらしいこと。
蒲田の街が凄まじいほど魅力的に見えるのだ。
なんということもない蒲田の風景を撮った引きの画だけで十分涙が出ちゃうぜ。
電車のある風景も良いし、デジカメで広角気味にとったスチールも泣けるぞ。

ちょっと余談だが、カラオケ・シーンに驚かされてしまった。
なんと一曲丸ごと歌いきってしまうのだ。しかもカメラはフィックスだぞ。

そのシークエンスでは、カラオケの曲がどんどん続き、この状況でどこでフェード・アウトするんだよ、と手に汗握りハラハラしながら見ていたら、なんと一曲を最後まで歌いきってしまった。こんなことをやる映画をはじめて観たような気がした。

あと、全くの余談だが、豊川悦司の車は1970年型のフォード・フェアレーンなのだろうか。
ボンネットには"fairlane"のロゴがあり、ナンバー・プレートは、1970だった。
レニー・ハーリンの「フォード・フェアレーンの冒険」を思い出してしまった。
  
 
■「サグァ」
監督:カン・イグァン
出演:ムン・ソリ、キム・テウ、イ・ソンギュン

7年間つき合った恋人に突然ふられたOLのヒョンジュンは、別の男と結婚するが、結婚生活も冷え切ってきた頃、かつての恋人に再会し……2人の男の間で揺れる女をムン・ソリが体現。細やかな心理描写が素晴らしい監督デビュー作。
(「第6回東京フィルメックス」オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

ムン・ソリはすばらしいし、その表情のとらえ方も的確である。
カン・イグァンの監督デビュー作さ言う事なのだが、演出的にはソツなく、見事にこなしている、と思う。

とは言うものの女優の表情だけで2時間もたせるのは非常に困難な訳で、と言うのも物語が物足りない、と言う事なのだ。

もちろん市井の人々を等身大に描いた、と言われればそれまでなのだが、映画として考えた場合、この物語は映画に取り上げるほどドラマチックな物語ではなかったのではないか、と言う印象を受けざるを得ない。

もちろん、市井の人々を等身大に描いた、と言うのならば、十分ドラマチックな物語ではあるのだが・・・・。

物語は結婚直前の状況で、理由もなく男に振られた女性が、しつこくアタックし続ける男と恋に落ち、なし崩しに結婚。
子どもが出来、だんなが単身赴任している間に、かつての恋人に出会って・・・・。と言う普遍的で定番的な物語である。

物語のアクセントとしては、ムン・ソリ演じる主人公の家族、特に母親がキャラクターとしてたっている。
家族を背景に、二人の男性の間を揺れ動く一人の女性の贖罪のものがたりなのだろう。

タイトルの「サグァ」とは韓国語で、「リンゴ」と「贖罪」の発音だと言うことである。 
 
 
□「日本映画のいま 廣木隆一の映画術」
「やわらかい生活」の監督である廣木隆一と映画評論家:塩田時敏の対談形式のトークイベント。

ピンク映画から、現在の文芸作品にいたる廣木隆一のキャリアを笑を取りながら振り返るような漢字のトークイベントであった。

会場は席が30席位の小さな部屋にすし詰め状態で行われた。

また、スペシャル・ゲストと言うことで「やわらかい生活」の主演女優である寺島しのぶも登場。軽妙なトークが楽しめた。

わたしはあろう事か、席の選択を間違え、当初の予定だった廣木隆一と寺島しのぶのサインをもらうことに失敗したのが、今回の「東京フィルメックス」の最大の失策であった。
非常に悔やまれる出来事だった。
状況的に席が正しければ、完全に二人のサインをもらえる状況だったのが、非常に悔やまれる。
 
 
■今日のサイン
□「フル・アオ・エンプティ」
監督:アボルファズル・ジャリリ

□「落ちる人」
監督:フレッド・ケレメン

□「春の雪」
監督:行定勲
※ 行定勲がたまたま「サグァ」を観に来ていたので、2F下の「日劇3」まで降り「春の雪」のパンフレットを購入し、サインをもらった。(「東京フィルメックス」のメイン会場の「有楽町朝日ホール」は、有楽町のマリオンの11Fにある。)

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