「ティム・バートンのコープスブライド」
2005年11月3日 映画
2005/11/01 東京六本木「VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ」で、「ティム・バートンのコープスブライド」を観た。
むかしむかし、19世紀のヨーロッパの片隅に、ある小さな村がありました。この村の人々はみんな活気がなく、村全体が暗く重苦しい雰囲気に沈んでいます。
そんな村で、明日、一組の内気なカップルが結婚式を挙げようとしていました。といってもこの二人、またただの一度も会ったことがないのですが・・・・。
男の名はビクター(ジョニー・デップ)。魚の缶詰業で大儲けして成り上がったネル(トレイシー・ウーマン)とウィリアム(ポール・ホワイトハウス)のバン・ドート夫妻の息子です。夫妻の夢は上流階級への仲間入り。そのためのお金は余るほどありますが、哀しいかな、彼らには”品格”というものが痛ましいくらい欠けていました。
一方、女の名はビクトリア(エミリー・ワトソン)。由緒ある貴族、モーデリン(ジョアナ・ラムリー)とフィニス(アルバート・フィニー)のエバーグロット夫妻の娘です。こちらの夫婦は品格はあるのですが、お金がまったくなく、すっからかんの金庫にクモが巣を作っているような有り様。財産といえば家名と貴族という身分、そして娘のビクトリアだけ・・・・、そう、夫婦にとって娘は、いわば最後の切り札なのです。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:ティム・バートン、マイク・ジョンソン
撮影:ピート・コザチク
プロダクションデザイン:アレックス・マクダウェル
音楽:ダニー・エルフマン
声の出演:ジョニー・デップ(ビクター・バン・ドート)、ヘレナ・ボナム=カーター(コープス・ブライド)、エミリー・ワトソン(ビクトリア・エバーグロット)、トレイシー・ウルマン(ネル・バン・ドート)、ポール・ホワイトハウス(ウィリアム・バン・ドート/メイヒュー/ポール)、アルバート・フィニー(フィニス・エバーグロット)、ジョアンナ・ラムレイ(モーデリン・エバーグロット)、リチャード・E・グラント(バーキス・ビターン)、クリストファー・リー(ゴールズウェルズシ牧師)、マイケル・ガフ(グートネクト長老)、ジェーン・ホロックス(クロゴケグモ/ミセス・プラム)、エン・ラテイン(マゴット)、ディープ・ロイ(ちび将軍)、ダニー・エルフマン(ボーンジャングルズ)
本作「ティム・バートンのコープスブライド」は、ティム・バートンファンとしては、また「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」、「ジャイアント・ピーチ」ファンとしても残念な印象を受ける。なにしろ退屈なのだ。
とは言うものの、ストップ・モーション・アニメーションの技術や、素晴らしいカメラ・ワーク等技巧には見るべきところは多々あるのだが、肝心の物語がつまらないのだ。
シーン毎のクオリティは高いのだが、全体として見るとつまらない。と言う感じなのだ。
そして、「ナイトメア・・」、「ジャイアント・・」、そして本作「コープスブライド」を考えた場合、本作に欠けているものは何かと考えた場合、一番に挙がってくるのはヘンリー・セリックの存在ではないだろうか。
わたしは常々「ナイトメア・・」の成功はヘンリー・セリックのおかげではないか、そして「ナイトメア・・」はティム・バートン作品ではなく、セリック作品として評価すべき作品ではないか、と言ってきた。
事実「コープスブライド」を観てみると、やはりヘンリー・セリックの存在がいかに大きかったのか、を再確認する事が出来るのではないだろうか。
今回の共同監督はマイク・ジョンソン。
彼のキャリアは、ストップモーションのアニメーターとしてのキャリアが長いためか、映画全体を見渡す事よりは、シーン毎のクオリティを高める事に腐心しているような印象を受ける。つまり全体を構成する力が弱いのではないか、と思えてならない。
そう考えた場合、本来全体の構成を行うべきティム・バートンが実際のところ、どこまで本作の製作に関わっていたのか、疑問に感じてしまう。「ナイトメア・・」や「ジャイアント・・」同様、製作に退いているのではないか、と勘ぐってしまう。
ところで、物語の前提として、本作は東洋の死生観に基づいた設定が使われている。つまり「悔いを残した死者は成仏できない」「今生の未練を払拭してはじめて成仏できる」と言うものである。
例えば、清水崇の「THE JUON/呪怨」では、東洋的死生観を観客に理解させるため、作品の冒頭に東洋的死生観説明のためのテロップが挿入されていたのを思い出す。
そう考えた場合、本作「コープスブライド」は、キリスト教的世界観を持つ欧米社会の観客に、−−例えばラストの蝶のシークエンスや、天国でも地獄でもない死者の世界の存在−−、が理解、そして共感できるのかどうか疑問である。
さて、ストップモーションについてだが、「ナイトメア・・」や「ジャイアント・・」と比較して格段の進歩を感じる。
特にピアノ連弾のシークエンスや、衣装や髪の動きには大いに驚かされる。
「ナイトメア・・」や「ジャイアント・・」では衣装がほとんど動かない比較的硬質なマペットが使用されていたのだが、本作のマペットは硬質なものではなく、やわらかい素材で出来ているのが印象的である。
また「ナイトメア・・」のマペットの表情は、基本的に差し替えで描写していたのだが、本作はフォーム・ラテックス(のような材質)でクレイ・アニメーション的に動かしているようだ。
そして、本作のようなマペットを利用したマペット・アニメーションと、「ウォレスとグルミット」シリーズのようなクレイを利用したクレイ・アニメーションの境界がここにきてほとんどなくなっている事に気付かされてしまった。
ストップモーションの世界は、最早、マペットだからどうこう、クレイだからどうこうと言ったカテゴライズは無意味な次元に突入しているのかも知れない。
物語は、普遍的で神話的、寓話的と言うことが出来る単純なもの。と言うか物語はあってないもののような印象を受ける。
ストップモーションを見せるために物語が構成されているような印象が否定できない。
強いて言うならば、CGIの研究発表のような「マトリックス」シリーズのような印象を受けてしまうのだ。
キャラクターや世界観のデザインはティム・バートンワールド全開と言う感じで、非常に楽しい。
キャラクターや世界観がディープでマニアックなだけに、物語の希薄さが残念だ。
音楽のダニー・エルフマンについては、良い仕事をしているのだと思うが、記憶に残る(劇場を出た後、口ずさめる)曲ではなかった。「ナイトメア・・」の楽曲は即、歌える曲ばかりだった。
また「タラのテーマ」が使われていたのには驚いた。
キャストは何と言ってもクリストファー・リーだろう。
あとはダニー・エルフマンのミュージカルとか。
これはブギー・ウギーのシークエンスに匹敵するだろう。
また、ポール・ホワイトハウスの芸達者ぶりも楽しかった。
本作「ティム・バートンのコープスブライド」は、普通に面白い作品なのだが、「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」や「ジャイアント・ピーチ」の方が良い作品のような気がする。
これを期にかつての作品(特に「ジャイアント・・」)を再評価して欲しいものだ。
☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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むかしむかし、19世紀のヨーロッパの片隅に、ある小さな村がありました。この村の人々はみんな活気がなく、村全体が暗く重苦しい雰囲気に沈んでいます。
そんな村で、明日、一組の内気なカップルが結婚式を挙げようとしていました。といってもこの二人、またただの一度も会ったことがないのですが・・・・。
男の名はビクター(ジョニー・デップ)。魚の缶詰業で大儲けして成り上がったネル(トレイシー・ウーマン)とウィリアム(ポール・ホワイトハウス)のバン・ドート夫妻の息子です。夫妻の夢は上流階級への仲間入り。そのためのお金は余るほどありますが、哀しいかな、彼らには”品格”というものが痛ましいくらい欠けていました。
一方、女の名はビクトリア(エミリー・ワトソン)。由緒ある貴族、モーデリン(ジョアナ・ラムリー)とフィニス(アルバート・フィニー)のエバーグロット夫妻の娘です。こちらの夫婦は品格はあるのですが、お金がまったくなく、すっからかんの金庫にクモが巣を作っているような有り様。財産といえば家名と貴族という身分、そして娘のビクトリアだけ・・・・、そう、夫婦にとって娘は、いわば最後の切り札なのです。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:ティム・バートン、マイク・ジョンソン
撮影:ピート・コザチク
プロダクションデザイン:アレックス・マクダウェル
音楽:ダニー・エルフマン
声の出演:ジョニー・デップ(ビクター・バン・ドート)、ヘレナ・ボナム=カーター(コープス・ブライド)、エミリー・ワトソン(ビクトリア・エバーグロット)、トレイシー・ウルマン(ネル・バン・ドート)、ポール・ホワイトハウス(ウィリアム・バン・ドート/メイヒュー/ポール)、アルバート・フィニー(フィニス・エバーグロット)、ジョアンナ・ラムレイ(モーデリン・エバーグロット)、リチャード・E・グラント(バーキス・ビターン)、クリストファー・リー(ゴールズウェルズシ牧師)、マイケル・ガフ(グートネクト長老)、ジェーン・ホロックス(クロゴケグモ/ミセス・プラム)、エン・ラテイン(マゴット)、ディープ・ロイ(ちび将軍)、ダニー・エルフマン(ボーンジャングルズ)
本作「ティム・バートンのコープスブライド」は、ティム・バートンファンとしては、また「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」、「ジャイアント・ピーチ」ファンとしても残念な印象を受ける。なにしろ退屈なのだ。
とは言うものの、ストップ・モーション・アニメーションの技術や、素晴らしいカメラ・ワーク等技巧には見るべきところは多々あるのだが、肝心の物語がつまらないのだ。
シーン毎のクオリティは高いのだが、全体として見るとつまらない。と言う感じなのだ。
そして、「ナイトメア・・」、「ジャイアント・・」、そして本作「コープスブライド」を考えた場合、本作に欠けているものは何かと考えた場合、一番に挙がってくるのはヘンリー・セリックの存在ではないだろうか。
わたしは常々「ナイトメア・・」の成功はヘンリー・セリックのおかげではないか、そして「ナイトメア・・」はティム・バートン作品ではなく、セリック作品として評価すべき作品ではないか、と言ってきた。
事実「コープスブライド」を観てみると、やはりヘンリー・セリックの存在がいかに大きかったのか、を再確認する事が出来るのではないだろうか。
今回の共同監督はマイク・ジョンソン。
彼のキャリアは、ストップモーションのアニメーターとしてのキャリアが長いためか、映画全体を見渡す事よりは、シーン毎のクオリティを高める事に腐心しているような印象を受ける。つまり全体を構成する力が弱いのではないか、と思えてならない。
そう考えた場合、本来全体の構成を行うべきティム・バートンが実際のところ、どこまで本作の製作に関わっていたのか、疑問に感じてしまう。「ナイトメア・・」や「ジャイアント・・」同様、製作に退いているのではないか、と勘ぐってしまう。
ところで、物語の前提として、本作は東洋の死生観に基づいた設定が使われている。つまり「悔いを残した死者は成仏できない」「今生の未練を払拭してはじめて成仏できる」と言うものである。
例えば、清水崇の「THE JUON/呪怨」では、東洋的死生観を観客に理解させるため、作品の冒頭に東洋的死生観説明のためのテロップが挿入されていたのを思い出す。
そう考えた場合、本作「コープスブライド」は、キリスト教的世界観を持つ欧米社会の観客に、−−例えばラストの蝶のシークエンスや、天国でも地獄でもない死者の世界の存在−−、が理解、そして共感できるのかどうか疑問である。
さて、ストップモーションについてだが、「ナイトメア・・」や「ジャイアント・・」と比較して格段の進歩を感じる。
特にピアノ連弾のシークエンスや、衣装や髪の動きには大いに驚かされる。
「ナイトメア・・」や「ジャイアント・・」では衣装がほとんど動かない比較的硬質なマペットが使用されていたのだが、本作のマペットは硬質なものではなく、やわらかい素材で出来ているのが印象的である。
また「ナイトメア・・」のマペットの表情は、基本的に差し替えで描写していたのだが、本作はフォーム・ラテックス(のような材質)でクレイ・アニメーション的に動かしているようだ。
そして、本作のようなマペットを利用したマペット・アニメーションと、「ウォレスとグルミット」シリーズのようなクレイを利用したクレイ・アニメーションの境界がここにきてほとんどなくなっている事に気付かされてしまった。
ストップモーションの世界は、最早、マペットだからどうこう、クレイだからどうこうと言ったカテゴライズは無意味な次元に突入しているのかも知れない。
物語は、普遍的で神話的、寓話的と言うことが出来る単純なもの。と言うか物語はあってないもののような印象を受ける。
ストップモーションを見せるために物語が構成されているような印象が否定できない。
強いて言うならば、CGIの研究発表のような「マトリックス」シリーズのような印象を受けてしまうのだ。
キャラクターや世界観のデザインはティム・バートンワールド全開と言う感じで、非常に楽しい。
キャラクターや世界観がディープでマニアックなだけに、物語の希薄さが残念だ。
音楽のダニー・エルフマンについては、良い仕事をしているのだと思うが、記憶に残る(劇場を出た後、口ずさめる)曲ではなかった。「ナイトメア・・」の楽曲は即、歌える曲ばかりだった。
また「タラのテーマ」が使われていたのには驚いた。
キャストは何と言ってもクリストファー・リーだろう。
あとはダニー・エルフマンのミュージカルとか。
これはブギー・ウギーのシークエンスに匹敵するだろう。
また、ポール・ホワイトハウスの芸達者ぶりも楽しかった。
本作「ティム・バートンのコープスブライド」は、普通に面白い作品なのだが、「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」や「ジャイアント・ピーチ」の方が良い作品のような気がする。
これを期にかつての作品(特に「ジャイアント・・」)を再評価して欲しいものだ。
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