「エリザベスタウン」
2005年10月13日 映画
2005/10/13 東京銀座「ヤマハホール」で「エリザベスタウン」の試写を観た。
長い年月をかけて情熱を傾けてきた、新しいシューズ開発のプロジェクトが失敗。
商品の返品が相次ぎ、デザイナーのドリュー(オーランド・ブルーム)は解雇される。しかも6日後には、彼ひとりの責任として、企業の損失がビジネス誌で公表される事に・・・・。
夢に破れ、生きる気力を失ったドリューは、世間の失笑をかう前に人生を終わらせる覚悟をする。そこに、追い討ちをかけるように知らされる父の死・・・・・。
失意の中、父の故郷であるケンタッキー州の小さな街、エリザベスタウンへと出発するが・・・・・。
(ちらしよりほぼ引用)
監督・脚本:キャメロン・クロウ
製作:キャメロン・クロウ、トム・クルーズ、ポーラ・ワグナー
出演:オーランド・ブルーム(ドリュー)、キルステン・ダンスト(クレア)、スーザン・サランドン(ホリー)、アレック・ボールドウィン(フィル)、ブルース・マッギル(ビル)、ジュディ・グリア(ヘザー)、ジェシカ・ビール(エレン)、ポール・シュナイダー(ジェシー)、ポーラ・ディーン(ドーラ)、ジェド・リース(チャック)
オーランド・ブルームとキルステン・ダンストなんかには騙されないぞと、お前らのラヴ・ストーリーなんかじゃ泣かないぞと、そういう反抗的な気持ちで本作「エリザベスタウン」を観たわたしだった。
しかし、そこには一抹の不安があったのも事実である。
何しろわたしはキャメロン・クロウの作品が大好きなのである。
「初体験 リッジモント・ハイ」(1982/原案・脚本)、「セイ・エニシング」(1989/監督・脚本)、「シングルス」(1992/監督・政策・脚本)、「バニラ・スカイ」(2001/監督・脚本)から、かの名作「あの頃ペニー・レインと」(2000/監督・製作・脚本)にいたる傑作の数々。
特にわたしにとって「あの頃ペニー・レインと」は、好きで好きでたまらない正に愛すべき作品だと言えるのだ。
そんなわたしは案の定、キャメロン・クロウの脚本と演出、そして音楽の力の前に力なく崩れ落ち、文字通り泣かされてしまったのだ。
さて、本作「エリザベスタウン」についてだが、先ずは音楽と言うか選曲が凄い。
勿論、元「ローリングストーン」誌の音楽ライターだったキャメロン・クロウが選曲をしているのだろうと思うが、シーンやシークエンスを構成する上での楽曲の選曲が身悶えするほど素晴らしい。
それらの楽曲は、勿論シーンを効果的に見せると言う一般的な相乗効果的手法もあるのだが、一見ミスマッチに見せながら、もしかしてアンチテーゼ的手法と思わせ、その実、最終的にはシーンの効果を抜群に高めている、というような使い方をもされた珠玉の名曲の数々が、涙腺破壊的な凄まじい効果をあげている。
キャストはなんと言ってもドリューの母ホリーを演じたスーザン・サランドンであろう。
本作のスーザン・サランドンは大変素晴らしく、脚本上も一番美味しい所をさらってしまっている。
彼女のここ10年位のキャリアの中で、最高の感動的な演技を見せてくれている。
彼女のスピーチから始まるシークエンスは、号泣必須の素晴らしいものに仕上がっている、と言えよう。
これは本当に素晴らしい。
私見だが、「テルマ&ルイーズ」(1991)のスーザン・サランドンに匹敵すると思うよ。
また、ドリュー(オーランド・ブルーム)のいとこのジェシーを演じたポール・シュナイダーも良かった。
勿論、主演のふたり、オーランド・ブルーム(ドリュー)とキルステン・ダンスト(クレア)も良かった。
特にキルステン・ダンストは若干押しが強すぎるきらいは否定できないが、非常にキュートであった。
オーランド・ブルームはコスチューム・プレイ(本来の意味は史劇のように、時代がかった衣装を付けて行う劇のこと)ではない作品をはじめて見たような印象を受けるが、普通で良かったと思う。
脚本は挫折からの再生を見事な愛情を持って描いたもので、また父と子の関係を考えるとティム・バートンの「ビッグ・フィッシュ」をも髣髴とさせる。
そして「ビッグ・フイッシュ」同様本作の葬式のシークエンスは非常に感動的である。更にこの感覚はローレンス・カスダンの「再会の時」の冒頭の葬式のシークエンスにもダブる印象を受ける。
本作を挫折からの再生の物語だと考えた場合、父の故郷「エリザベスタウン」は死と再生のメタファーであり、鯨の胎内のメタファーとなっている。
時間に取り残された愛すべき街「エリザベスタウン」。全ての人々の故郷たりうる「エリザベスタウン」の存在が、悲しくも嬉しい。
ところで、予告編からの印象から、わたしは本作がオーランド・ブルームのドライブ・シークエンスに過去の回想が挿入される物語だと思っていたのだが、それは完全にわたしの思い違いだった。
ドライブ・シークエンスが非常に短い事にわたしは驚かされた。
本作「エリザベスタウン」は、ラブ・ストーリー好きの人たちだけに見せるのはもったいない、素晴らしい音楽映画とも言える傑作である。
キャメロン・クロウの新たな傑作の誕生に拍手を贈りたい。
☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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長い年月をかけて情熱を傾けてきた、新しいシューズ開発のプロジェクトが失敗。
商品の返品が相次ぎ、デザイナーのドリュー(オーランド・ブルーム)は解雇される。しかも6日後には、彼ひとりの責任として、企業の損失がビジネス誌で公表される事に・・・・。
夢に破れ、生きる気力を失ったドリューは、世間の失笑をかう前に人生を終わらせる覚悟をする。そこに、追い討ちをかけるように知らされる父の死・・・・・。
失意の中、父の故郷であるケンタッキー州の小さな街、エリザベスタウンへと出発するが・・・・・。
(ちらしよりほぼ引用)
監督・脚本:キャメロン・クロウ
製作:キャメロン・クロウ、トム・クルーズ、ポーラ・ワグナー
出演:オーランド・ブルーム(ドリュー)、キルステン・ダンスト(クレア)、スーザン・サランドン(ホリー)、アレック・ボールドウィン(フィル)、ブルース・マッギル(ビル)、ジュディ・グリア(ヘザー)、ジェシカ・ビール(エレン)、ポール・シュナイダー(ジェシー)、ポーラ・ディーン(ドーラ)、ジェド・リース(チャック)
オーランド・ブルームとキルステン・ダンストなんかには騙されないぞと、お前らのラヴ・ストーリーなんかじゃ泣かないぞと、そういう反抗的な気持ちで本作「エリザベスタウン」を観たわたしだった。
しかし、そこには一抹の不安があったのも事実である。
何しろわたしはキャメロン・クロウの作品が大好きなのである。
「初体験 リッジモント・ハイ」(1982/原案・脚本)、「セイ・エニシング」(1989/監督・脚本)、「シングルス」(1992/監督・政策・脚本)、「バニラ・スカイ」(2001/監督・脚本)から、かの名作「あの頃ペニー・レインと」(2000/監督・製作・脚本)にいたる傑作の数々。
特にわたしにとって「あの頃ペニー・レインと」は、好きで好きでたまらない正に愛すべき作品だと言えるのだ。
そんなわたしは案の定、キャメロン・クロウの脚本と演出、そして音楽の力の前に力なく崩れ落ち、文字通り泣かされてしまったのだ。
さて、本作「エリザベスタウン」についてだが、先ずは音楽と言うか選曲が凄い。
勿論、元「ローリングストーン」誌の音楽ライターだったキャメロン・クロウが選曲をしているのだろうと思うが、シーンやシークエンスを構成する上での楽曲の選曲が身悶えするほど素晴らしい。
それらの楽曲は、勿論シーンを効果的に見せると言う一般的な相乗効果的手法もあるのだが、一見ミスマッチに見せながら、もしかしてアンチテーゼ的手法と思わせ、その実、最終的にはシーンの効果を抜群に高めている、というような使い方をもされた珠玉の名曲の数々が、涙腺破壊的な凄まじい効果をあげている。
キャストはなんと言ってもドリューの母ホリーを演じたスーザン・サランドンであろう。
本作のスーザン・サランドンは大変素晴らしく、脚本上も一番美味しい所をさらってしまっている。
彼女のここ10年位のキャリアの中で、最高の感動的な演技を見せてくれている。
彼女のスピーチから始まるシークエンスは、号泣必須の素晴らしいものに仕上がっている、と言えよう。
これは本当に素晴らしい。
私見だが、「テルマ&ルイーズ」(1991)のスーザン・サランドンに匹敵すると思うよ。
また、ドリュー(オーランド・ブルーム)のいとこのジェシーを演じたポール・シュナイダーも良かった。
勿論、主演のふたり、オーランド・ブルーム(ドリュー)とキルステン・ダンスト(クレア)も良かった。
特にキルステン・ダンストは若干押しが強すぎるきらいは否定できないが、非常にキュートであった。
オーランド・ブルームはコスチューム・プレイ(本来の意味は史劇のように、時代がかった衣装を付けて行う劇のこと)ではない作品をはじめて見たような印象を受けるが、普通で良かったと思う。
脚本は挫折からの再生を見事な愛情を持って描いたもので、また父と子の関係を考えるとティム・バートンの「ビッグ・フィッシュ」をも髣髴とさせる。
そして「ビッグ・フイッシュ」同様本作の葬式のシークエンスは非常に感動的である。更にこの感覚はローレンス・カスダンの「再会の時」の冒頭の葬式のシークエンスにもダブる印象を受ける。
本作を挫折からの再生の物語だと考えた場合、父の故郷「エリザベスタウン」は死と再生のメタファーであり、鯨の胎内のメタファーとなっている。
時間に取り残された愛すべき街「エリザベスタウン」。全ての人々の故郷たりうる「エリザベスタウン」の存在が、悲しくも嬉しい。
ところで、予告編からの印象から、わたしは本作がオーランド・ブルームのドライブ・シークエンスに過去の回想が挿入される物語だと思っていたのだが、それは完全にわたしの思い違いだった。
ドライブ・シークエンスが非常に短い事にわたしは驚かされた。
本作「エリザベスタウン」は、ラブ・ストーリー好きの人たちだけに見せるのはもったいない、素晴らしい音楽映画とも言える傑作である。
キャメロン・クロウの新たな傑作の誕生に拍手を贈りたい。
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