「チャーリーとチョコレート工場」
2005年10月9日 映画
2005/08/12 東京霞ヶ関「イイノホール」で「チャーリーとチョコレート工場」の試写を観た。
チャーリー・バケット少年(フレディー・ハイモア)の家の貧しさといったら、それはもう大変なものでした。大きな町のはずれにある、左に30度くらい傾いた今にも壊れそうな小さな家に、一家7人で暮らすバケット家。失業中の父(ノア・テイラー)と、母(ヘレナ・ボナム=カーター)と、チャーリー、それに合計年齢381歳の祖父母がふた組。夕食と言えば限りなく水に近いキャベツのスープだけ。しかも、日曜以外はお代わりもできません・・・・!
それでもチャーリーは幸せでした。誕生日のときにだけ買ってもらえる大好きなチョコレート。そのたった1枚の小さな板チョコを、チャーリーは1か月かけて少しずつ少しずつちびちびと食べるのです。ああ、なんとけなげなチャーリー少年!そんなチャーリーの家のすぐそばに大きなチョコレート工場がありました。ここ15年間というもの工場の門は閉ざされ、中に入った人も出てきた人もいないのに、世界的ヒット商品を毎日出荷し続ける謎のチョコレート工場。チャーリーは思います。あの工場の中に入って、どんなふうになっているのか見られたらいいのに。
そんなある日、驚くべきニュースが世界中を駆け巡りました。
「ウォンカの工場ついに公開!幸運な5人の子供たちに見学を許可」
ウォンカ製のチョコレートに入った”ゴールデン・チケット”を引き当てた5人の子供とその保護者を特別に工場に招待する、と工場主のウィリー・ウォンカ氏(ジョニー・デップ)が異例の声明を発表したのです。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:ティム・バートン
原作:ロアルド・ダール『チョコレート工場の秘密』
脚本:ジョン・オーガスト
撮影:フィリップ・ルースロ
美術:アレックス・マクダウェル
衣装:ガブリエラ・ペスクッチ
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ジョニー・デップ(ウィリー・ウォンカ)、フレディ・ハイモア(チャーリー・バケット)、デヴィッド・ケリー(ジョーじいちゃん)、ヘレナ・ボナム=カーター(バケット夫人)、ノア・テイラー(バケット氏)、ミッシー・パイル(ボーレカード夫人)、ジェームズ・フォックス(ソルト氏)、ディープ・ロイ(ウンパ・ルンパ)、クリストファー・リー(ドクター・ウォンカ)、アダム・ゴドレー(ティービー氏)、アンナソフィア・ロブ(バイオレット)、ジュリア・ウィンター(ベルーカ)、ジョーダン・フライ(マイク)、フィリップ・ウィーグラッツ(オーガスタス)
わたしはティム・バートンが大好きである。
「ピーウィーの大冒険(未公開)」も「ビートル・ジュース」も勿論「バットマン」も良かったのだが、わたしのティム・バートン好きを決定させたのはなんと言っても「シザーハンズ」である。
当時わたしは、銀座で「シザーハンズ」を観て、あまりにも素晴らしい作品だったので、その足で渋谷の輸入レーザーディスク屋に行き、"EDWARD SCISSORHANDS"の北米版LDを購入した。
当時、わたしはLDプレーヤーを持っていなかった、というのに。
そんなティム・バートンの魅力は何なのか、と考えると、先ずは緻密に構築された世界観であり、そして、その世界観に見合うフリーキーな登場人物であり、そのフリーキーなキャラクターに対する限りない愛情なのだろうと思う。
何しろティム・バートンは、かの「バットマン」のブルース・ウェインをジョーカーに匹敵する程のフリークとして描き、スーパーヒーローを描いた作品であるにも関わらず、その実態「バットマン」をフリークス同士の対決として描いてしまっているのだ。
以来、ティム・バートンの作品の主要キャラクターはフリークスが占め、緻密に構築された世界観と、その卓越した演出と構成により、一般的には迫害される存在とも言えるフリークスに光明をあて、愛すべき存在に昇華させることに成功している。
そしてその戦略的方法論は大変素晴らしく、観客は既に彼等フリークスを愛してしまい、彼等フリークスを迫害しようとする観客は既に皆無だといえる程なのだ。
そんな背景の下、本作「チャーリーとチョコレート工場」を観た0訳だ。
緻密に構築された世界観は素晴らしいし、美術も勿論良い仕事をしている。CGIについては、セットや美術との乖離が感じられるシークエンスもあったが、おおむね良好である。
また、ティム・バートンの盟友ダニー・エルフマンがつむぎだす楽曲は、美術や世界観を壊すことなく、むしろ構築に一役買っている。
キャストはなんと言ってもディープ・ロイ(ウンパ・ルンパ)であろう。正に映画史に残る素晴らしい怪演を見た気がする。
しかも、ウンパ・ルンパは、CGIで増やされたのではなく、全員分を1人で何度も何度も演じたと言うのだから、頭が下がってしまう。
また、デヴィッド・ケリー(ジョーじいちゃん)、ヘレナ・ボナム=カーター(バケット夫人)、ノア・テイラー(バケット氏)等のバケット家のフリーキーな皆さんが非常に印象的だった。
更に、ウィリー・ウォンカの父親ドクター・ウォンカを演じたクリストファー・リーも良かった。最近大作付いているクリストファー・リーだが、本作では「シザー・ハンズ」のヴィンセント・プライスの役柄を髣髴とさせる役柄を楽しげに演じていた。
もし、ティム・バートンが敬愛してやまないヴィンセント・プライスが存命だったとしたら、このドクター・ウォンカの役は、おそらくヴィンセント・プライスが演じた役柄なのだろう。
物語は、ロアルド・ダールの原作「チョコレート工場の秘密」とほぼ一緒だし、オリジナル版の「夢のチョコレート工場」(1971)とほぼ一緒である。
が、原作やオリジナル版にあった、そこはかとない恐怖感と言うか、童話が持つ残酷性と言うか、子ども達が見たらトラウマになっちまうぞ感が、残念ながらあまりなかったような気がする。
ティム・バートン好きとしては、子ども達が見たら泣き出してしまうくらいの作品を期待していたようだ。
また興味深かったのは、様々な映画、特にSF・ファンタジー映画への言及が多かった点だ。
例えば、「2001年宇宙の旅」や「ザ・フライ」と「蝿男の恐怖」、「スタートレック」シリーズや「未来世紀ブラジル」、「シザーハンズ」・・・・という具合だ。
本作「チャーリーとチョコレート工場」は、「ビッグ・フィッシュ」の次にこんな映画かよ、という軽い失望感を感じるが、ファンタジー映画としては、傑作の部類に入る作品だし、子どもに見せても決して怖い夢など見ない、人畜無害な作品に仕上がっている。
そのあたりが賛否の分かれる点だと思うのだが、大変面白い作品であることは間違いない。
この秋、是非劇場で観ていただきたい作品なのだ。
☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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チャーリー・バケット少年(フレディー・ハイモア)の家の貧しさといったら、それはもう大変なものでした。大きな町のはずれにある、左に30度くらい傾いた今にも壊れそうな小さな家に、一家7人で暮らすバケット家。失業中の父(ノア・テイラー)と、母(ヘレナ・ボナム=カーター)と、チャーリー、それに合計年齢381歳の祖父母がふた組。夕食と言えば限りなく水に近いキャベツのスープだけ。しかも、日曜以外はお代わりもできません・・・・!
それでもチャーリーは幸せでした。誕生日のときにだけ買ってもらえる大好きなチョコレート。そのたった1枚の小さな板チョコを、チャーリーは1か月かけて少しずつ少しずつちびちびと食べるのです。ああ、なんとけなげなチャーリー少年!そんなチャーリーの家のすぐそばに大きなチョコレート工場がありました。ここ15年間というもの工場の門は閉ざされ、中に入った人も出てきた人もいないのに、世界的ヒット商品を毎日出荷し続ける謎のチョコレート工場。チャーリーは思います。あの工場の中に入って、どんなふうになっているのか見られたらいいのに。
そんなある日、驚くべきニュースが世界中を駆け巡りました。
「ウォンカの工場ついに公開!幸運な5人の子供たちに見学を許可」
ウォンカ製のチョコレートに入った”ゴールデン・チケット”を引き当てた5人の子供とその保護者を特別に工場に招待する、と工場主のウィリー・ウォンカ氏(ジョニー・デップ)が異例の声明を発表したのです。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:ティム・バートン
原作:ロアルド・ダール『チョコレート工場の秘密』
脚本:ジョン・オーガスト
撮影:フィリップ・ルースロ
美術:アレックス・マクダウェル
衣装:ガブリエラ・ペスクッチ
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ジョニー・デップ(ウィリー・ウォンカ)、フレディ・ハイモア(チャーリー・バケット)、デヴィッド・ケリー(ジョーじいちゃん)、ヘレナ・ボナム=カーター(バケット夫人)、ノア・テイラー(バケット氏)、ミッシー・パイル(ボーレカード夫人)、ジェームズ・フォックス(ソルト氏)、ディープ・ロイ(ウンパ・ルンパ)、クリストファー・リー(ドクター・ウォンカ)、アダム・ゴドレー(ティービー氏)、アンナソフィア・ロブ(バイオレット)、ジュリア・ウィンター(ベルーカ)、ジョーダン・フライ(マイク)、フィリップ・ウィーグラッツ(オーガスタス)
わたしはティム・バートンが大好きである。
「ピーウィーの大冒険(未公開)」も「ビートル・ジュース」も勿論「バットマン」も良かったのだが、わたしのティム・バートン好きを決定させたのはなんと言っても「シザーハンズ」である。
当時わたしは、銀座で「シザーハンズ」を観て、あまりにも素晴らしい作品だったので、その足で渋谷の輸入レーザーディスク屋に行き、"EDWARD SCISSORHANDS"の北米版LDを購入した。
当時、わたしはLDプレーヤーを持っていなかった、というのに。
そんなティム・バートンの魅力は何なのか、と考えると、先ずは緻密に構築された世界観であり、そして、その世界観に見合うフリーキーな登場人物であり、そのフリーキーなキャラクターに対する限りない愛情なのだろうと思う。
何しろティム・バートンは、かの「バットマン」のブルース・ウェインをジョーカーに匹敵する程のフリークとして描き、スーパーヒーローを描いた作品であるにも関わらず、その実態「バットマン」をフリークス同士の対決として描いてしまっているのだ。
以来、ティム・バートンの作品の主要キャラクターはフリークスが占め、緻密に構築された世界観と、その卓越した演出と構成により、一般的には迫害される存在とも言えるフリークスに光明をあて、愛すべき存在に昇華させることに成功している。
そしてその戦略的方法論は大変素晴らしく、観客は既に彼等フリークスを愛してしまい、彼等フリークスを迫害しようとする観客は既に皆無だといえる程なのだ。
そんな背景の下、本作「チャーリーとチョコレート工場」を観た0訳だ。
緻密に構築された世界観は素晴らしいし、美術も勿論良い仕事をしている。CGIについては、セットや美術との乖離が感じられるシークエンスもあったが、おおむね良好である。
また、ティム・バートンの盟友ダニー・エルフマンがつむぎだす楽曲は、美術や世界観を壊すことなく、むしろ構築に一役買っている。
キャストはなんと言ってもディープ・ロイ(ウンパ・ルンパ)であろう。正に映画史に残る素晴らしい怪演を見た気がする。
しかも、ウンパ・ルンパは、CGIで増やされたのではなく、全員分を1人で何度も何度も演じたと言うのだから、頭が下がってしまう。
また、デヴィッド・ケリー(ジョーじいちゃん)、ヘレナ・ボナム=カーター(バケット夫人)、ノア・テイラー(バケット氏)等のバケット家のフリーキーな皆さんが非常に印象的だった。
更に、ウィリー・ウォンカの父親ドクター・ウォンカを演じたクリストファー・リーも良かった。最近大作付いているクリストファー・リーだが、本作では「シザー・ハンズ」のヴィンセント・プライスの役柄を髣髴とさせる役柄を楽しげに演じていた。
もし、ティム・バートンが敬愛してやまないヴィンセント・プライスが存命だったとしたら、このドクター・ウォンカの役は、おそらくヴィンセント・プライスが演じた役柄なのだろう。
物語は、ロアルド・ダールの原作「チョコレート工場の秘密」とほぼ一緒だし、オリジナル版の「夢のチョコレート工場」(1971)とほぼ一緒である。
が、原作やオリジナル版にあった、そこはかとない恐怖感と言うか、童話が持つ残酷性と言うか、子ども達が見たらトラウマになっちまうぞ感が、残念ながらあまりなかったような気がする。
ティム・バートン好きとしては、子ども達が見たら泣き出してしまうくらいの作品を期待していたようだ。
また興味深かったのは、様々な映画、特にSF・ファンタジー映画への言及が多かった点だ。
例えば、「2001年宇宙の旅」や「ザ・フライ」と「蝿男の恐怖」、「スタートレック」シリーズや「未来世紀ブラジル」、「シザーハンズ」・・・・という具合だ。
本作「チャーリーとチョコレート工場」は、「ビッグ・フィッシュ」の次にこんな映画かよ、という軽い失望感を感じるが、ファンタジー映画としては、傑作の部類に入る作品だし、子どもに見せても決して怖い夢など見ない、人畜無害な作品に仕上がっている。
そのあたりが賛否の分かれる点だと思うのだが、大変面白い作品であることは間違いない。
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