2005/10/01 東京板橋「ワーナー・マイカル・シネマズ板橋」で「シン・シティ」を観た。
 
 
監督・脚本:ロバート・ロドリゲス、フランク・ミラー
スペシャルゲスト監督:クエンティン・タランティーノ
原作:フランク・ミラー
撮影・編集:ロバート・ロドリゲス
出演:ブルース・ウィリス(ハーティガン)、ミッキー・ローク(マーヴ)、クライヴ・オーウェン(ドワイト)、ジェシカ・アルバ(ナンシー)、ベニチオ・デル・トロ(ジャッキー・ボーイ)、イライジャ・ウッド(ケビン)、ブリタニー・マーフィ(シェリー)、デヴォン青木(ミホ)、ジョシュ・ハートネット(ザ・マン)、ロザリオ・ドーソン(ゲイル)、マイケル・クラーク・ダンカン(マヌート)、ニック・スタール(ロアーク・ジュニア/イエロー・バスタード)、カーラ・グギーノ(ルシール)、マイケル・マドセン(ボブ)、ジェイミー・キング(ゴールディ/ウェンディ)、アレクシス・ブレーデル(ベッキー)、ルトガー・ハウアー(ロアーク枢機卿)、パワーズ・ブース(ロアーク上院議員)
 
 
本作「シン・シティ」は、ロバート・ロドリゲスとフランク・ミラーが満を持して世に問うすばらしい傑作である。

そのロバート・ロドリゲスだが、彼のキャリアは自主製作映画「エル・マリアッチ」がメジャー・スタジオに買い取られるところからスタートしたのだが、彼は自主製作映画あがりと言うこともあり、撮影・編集・脚本・美術・音楽等なんでもこなす才人である一方、予算管理も厳密で、決して予算をオーバーしない事から製作のワインスタイン兄弟(ミラマックス)から、製作にいっさい口出しされない(らしい)監督としても知られている。

一方フランク・ミラーは、脚本家兼コミック(グラフイック・ノベルズ)作家として知られ、本作「シン・シティ」は勿論、フランク・ミラーその人によって描かれたものである。
そのフランク・ミラーはかつて「ロボコップ」の続編あたる1本の脚本を書くのだが、その脚本はなんと2本に分割され見るも無残に改変され「ロボコップ2」と「ロボコップ3」になってしまった。そういう経緯から、フランク・ミラーはハリウッド映画には良い思い出を持っていなかったらしい。

そんな二人が協力タッグを組んで製作したのが本作「シン・シティ」なのだ。

さて、本作「シン・シティ」だが、先ずは脚本と構成が素晴らしい。

物語は3つの大きなエピソードと1つのブリッジ・エピソードとも言える短いが作品を引き締めるエピソードが描かれ、その全てのエピソードは、フィリップ・マーロウ調(レイモンド・チャンドラー調と言うべきか)のスタイルを見事に踏襲したスタイルで統一されている。
そしてそれらのエピソードの核となる登場人物は、レイモンド・チャンドラーが言うところの「卑しい街をゆく高潔の騎士」たる人物を見事に体現している。

彼ら「卑しい街をゆく高潔の騎士」たちは、自らが忠誠を誓った存在のため、全てを投げ打ち、奉仕するのである。
その孤高で高潔で高邁な精神には、全くもって泣かされてしまう。

またそれらのエピソードの描写手法は、1950年代に一世を風靡した「ドラグネット」の手法を踏襲しナレーションを多用、ここでも作品のハードボイルド感を高めることに成功している。
余談だが、「ブレードランナー」の当初のバージョンのナレーションは、スタジオ・サイドからの要請だったのだが、良くも悪くもハードボイルド感を高める事に成功している。
更に余談だが、ルトガー・ハウアー(ロアーク枢機卿)の死に方は、「ブレードランナー」のタイレル社長の死に方と符合しており、自分が殺した方法で自分が殺されると言う、セルフ・オマージュとなっている。
また、作品全体を考えた場合でも、所謂ハード・ボイルド調な雰囲気は「ブレードランナー」をも髣髴とさせる空気を持っている。

そして物語の構成は、「パルプ・フィクション」の構成を髣髴とさせ、短いながら冒頭とラストに挿入されるエピソードが、まるでパンブキンのエピソードのように作品を引き締め、見事な余韻を与えてくれている。

また、フランクー・ミラーがグラフイック・ノベルズ「シン・シティ」において構築した世界観を、スクリーン上に再現する美術や効果も素晴らしく、本作のほとんどがスクリーン・プロセスであるものの、それを忘れさせてくれるような見事な世界観に酔いしれる事が出来る。

キャストは、所謂主役級のキャストがそれぞれ見事な演技を楽しげにこなしている。
この豪華なキャストの実現には、勿論エピソードが複数に分かれ、独立している点と、更にスクリーン合成を多用した構成によるところが多いだろう。
実際には共演していないのに、スクリーン上では共演しているように見せる事が出来、キャストのスケジュール調整に関係なく撮影が進められたことに因るものが多いのだが、それにしても、豪華キャストの見事な演技合戦が楽しい。

また、話題となっているバイオレンス描写は、一般的に考えると過剰な印象を否定できないのだが、その過剰さは本作「シン・シティ」の世界観に合致した境界線を保っており、そう考えた場合本作の世界観に遊ぶ事が出来る人であれば、それほど気にする事はないのではないかと思う。

演出については、グラフイック・ノベルズ作家フランク・ミラーのおかげか、画面構成が絵画的で美しく、印象に残る画作りが楽しめる。
また動きを含めた画面構成も素晴らしく、その絵画的世界観の中で、第一線級の俳優達が、素晴らしい脚本を演じる、と言う大変贅沢な印象すら受けてしまう。

まあ、結論としては本作「シン・シティ」は、大変素晴らしい、大傑作である。と言うことである。
バイオレンス描写は若干酷いかもしれないが、「卑しい街をゆく高潔の騎士」を是非劇場で体験し、そしてその高邁な精神に涙して欲しい、と思うのだ。

☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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