「ランド・オブ・ザ・デッド」
2005/08/14 東京霞ヶ関「イイノホール」で開催されていた「GTF2005 TOKYO CINEMA SHOW」で「ランド・オブ・ザ・デッド」の試写を観た。

この世で人間は、常に死と隣り合わせ。それでも金持ちの支配階級の人間たちは、かつての幻想を抱き、小都市を作った。ゾンビが入ってこないよう川に挟まれた地形を生かし、陸続きの部分は塀で覆った。まるで要塞のような小都市の中心には、フィドラーズ・グリーンと呼ばれる超高層タワーがそびえ建ち、そのペントハウスからカウフマン(デニス・ホッパー)が、この地を統治していた。彼をはじめとする裕福な者たちは、金の力を使って贅沢な生活を送っていたのだ。

そんな要塞都市の支配者の命令で、ゾンビが溢れる危険地域から贅沢な食料や物資を調達してくるのが、探知機や重火器を備えた強力な装甲車デッド・リコニング(死の報い)号を駆使する傭兵グループだった。そのメンバーには、ライリー(サイモン・ベイカー)、彼の右腕チョロ(ジョン・レグイザモ)、ライリーの良き理解者チャーリー(ロバート・ジョイ)らがいた。

ライリーはこの仕事で金を稼ぎ、塀のない世界と自由を約束する北への逃亡資金を貯める目的があった。一方チョロは、フィドラーズ・グリーンの上流階級の生活を密かに狙っていた。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督・脚本:ジョージ・A・ロメロ
出演:サイモン・ベイカー(ライリー)、デニス・ホッパー(カウフマン)、アーシア・アルジェント(スラック)、ロバート・ジョイ(チャーリー)、ジョン・レグイザモ(チョロ)、トム・サヴィーニ(鉈を持ったゾンビ)、ユージン・クラーク(ビッグ・ダディ)

本作「ランド・オブ・ザ・デッド」は、「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」「ゾンビ」「死霊のえじき」のソンビ三部作に続くジョージ・A・ロメロの新たなゾンビ・ムービーである。

物語は勿論「ゾンビ」「死霊のえじき」の世界観をほぼ踏襲し、別の地域ではこんな出来事が起こっていた、と言う感じの物語に仕上がっている。その時系列は、「ゾンビ」より後で「死霊のえじき」と同時期か、それ以降の時系列を描いており、ゾンビの突然の襲来から幾許かの期間が過ぎ、富裕階級の人々が貧困層の人々を使役し、地形を生かした安全な文明世界を再構築し始めている。そしてなんと貨幣価値が復権しているのだ。

そして、期待のゾンビの描写は勿論かつての作品とは比較は出来ないのだが、昨今の亜流ゾンビ作品とは確実に一線を画し、ただ人に噛み付くだけではなく、きちんと人を噛み裂き喰らうゾンビが真正面から描かれている。残念ながらゾンビが人を喰らうカットは短く物足りないのだが、われわれがそうであったように、現代の少年達にとっては充分ショッキングな描写だと思える。

脚本は、残念ながら、従来のロメロのゾンビ三部作より、ハリウッド・テイストが感じられ、余計な娯楽物語が語られているような印象を受けるし、そのため、語るべき物語の焦点がぶれているような印象を受けるし、またカウフマン(デニス・ホッパー)の結末のつけ方にも失望させられてしまう。
折角カウフマン(デニス・ホッパー)とチョロ(ジョン・レグイザモ)が対立しているのだから、その対立の延長上に、ローズ大佐(「死霊のえじき」)の結末的な描写が欲しかった、と思う。
勿論大人の事情があるのだろうと思うのだが、多くの観客はデニス・ホッパーの見事な結末を期待していたと思うのだ。

そしてその脚本からは、従来通りの大量消費社会への批判が明確に語られ、更に安全で裕福な生活をおくる富裕階級と、彼等に虐げられ使役される貧困層の対比と、知性を持ち始めたゾンビとの対比が非常に興味深い。
それらの描写は、極限状態に陥っているのにも関わらず、ダメな行動を取り続けるダメな人類への批判と失意の視線が感じられる。

しかし、本作「ランド・オブ・ザ・デッド」を作品として考えると、やはりかつてのゾンビ映画は偉大だったのだなと言う印象を受ける。
かつてのゾンビ映画の孤高な精神と毒気が、ハリウッド資本により、マイルドな娯楽作品になってしまったような印象が否めない。

とは言うものの本作「ランド・オブ・ザ・デッド」は、贔屓目かも知れないが、「バイオ・ハザード」や「28日後・・・」のような亜流ゾンビ作品とは違う風格と緊張感と孤高な精神を持っているような気がする。

本作は、ホラー映画ファン必見の作品ではあるし、過去のロメロのゾンビ作品を見直すきっかけともなり得る作品なのだ。
是非劇場でロメロのゾンビを目撃して欲しいのだ。

☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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