とりあえずこちらを読んでいただきたい。
「宇宙戦争」その0
http://diarynote.jp/d/29346/20050629.html
「宇宙戦争」その1
http://diarynote.jp/d/29346/20050715.html
賛否両論の「宇宙戦争」だが、書き足りないものがいくつかあるので、引き続き「宇宙戦争」について考えてみたい。
従来の宇宙人の侵略もの、例えば「宇宙戦争」(1953)、「インデペンデンス・デイ」、「マーズ・アタック!」等においての視点は、宇宙人の侵略をなんらかの形で撃退する人々、あるいは人類を代表して侵略者に対し、なんらかの対応を行っている人々の視点で作品が語られることが多い。
この視点を採用することにより製作者は観客に対し、宇宙人と人類との戦いの局面を俯瞰的に見せることが可能だった訳であり、これは勿論娯楽作品として、観客に戦局を説明する上でなくてはならない視点だったのである。
しかし「サイン」においては、「人類と宇宙人との対峙」ではなく、「ただの父親(家族)と宇宙人の対峙」に軸足を置き、マクロ的な戦局ではなく、ミクロ的な戦局が描かれていた。
とは言うものの「サイン」の物語の中では、マスコミが生きており、テレビやラジオを通じ、世界中の戦局が刻一刻と一般大衆に伝えられていた。
観客は世界中で起きている「人類と宇宙人の対峙」と「家族と宇宙人の対峙」を同時に見る事が出来たのだ。
一方「宇宙戦争」では、視点は「サイン」と同様に、父親(家族)のそれなのだが、マスコミや情報インフラがほぼ壊滅しているため、世界中で何が起こっているのか、人類と宇宙人の戦局は登場人物にも伝わらないし、観客にも当然ながら伝わってこない。
伝わってくるのは、口コミによる噂やデマだけなのである。
ここ(戦局を描写しないこと)には、娯楽作品を超えた凶悪なまでのリアリティが感じられる。
言わば「宇宙戦争」は、娯楽を廃し、われわれ一般大衆が、侵略を実際に受けた場合に体験するであろう事象を描いているのだ。ここで描かれているのは、戦局や自軍の状況等の情報を全く得られない中、侵略者が自分たちに迫ってくる恐怖なのだ。
そして、トム・クルーズが演じる父親はわれわれであり、トム・クルーズの家族はわれわれの家族そのものなのである。
われわれ一般大衆が圧倒的な武力で侵略を受けた場合、自分と家族の命を救うべく、逃げ惑うこと以外に一体何が出来るのだろうか。観客がトム・クルーズに望んだように、われわれ一般大衆は、世界を救うヒーローとして侵略者に対し一矢報いる事が出来るとでも言うのだろうか。
そう考えた場合気になるのは、後半部分の展開である。
具体的には、「手榴弾による攻撃」と「トライポッドに近づく鳥」である。
「手榴弾による攻撃」は、トム・クルーズがわれわれ一般大衆のメタファーとして捉えるならば、本来トム・クルーズではなく、他の人物が行うべきだったと思うし、「トライポッドに近づく鳥」を発見し軍に告げる役割も他の人物が行うべきだったと思う。
この辺については「プライベート・ライアン」のラストの戦い部分の脚本がおかしくなってしまう、スピルバーグの悪い癖(「娯楽嗜好」)が前面に出てしまったのではないかと思う。
「手榴弾による攻撃」は作品全体のトーンを考えると、「プライベート・ライアン」の「靴下爆弾」に匹敵するほど違和感を感じてしまう。
また、一般的に「宇宙戦争」の宇宙人は、911テロにおけるテロリストであり、宇宙人による侵略は、テロリストによるテロ行為のメタファーだと言われているようである。
しかしながら、ユダヤ人であるスティーヴン・スピルバーグの意図は、宇宙人は勿論ナチス・ドイツのメタファーとして機能しているハズだし、更にはイラクを侵略したアメリカのメタファーとしても機能していると言わざるを得ない。
これは前作「ターミナル」で、ハート・ウォーミング・コメディの体裁を取りながら、人類(アメリカ)はもうダメだ、と言う事を暗に仄めかしていたスピルバーグの考えを、比較的明確に表しているのではないか、と思えるのである。
あと、否定する人が多い結末(オチ)の付け方なのだが、本作「宇宙戦争」で描かれた日数が観客の目には少ない日数に見えるため、違和感があるのかも知れないが、本作の物語の意図やコンセプトを崩さずにあれ以外の方法で結末を付ける方法があったら教えて欲しいものである。
本作「宇宙戦争」にはあれ以外の結末の付け方はありえないのである。
「宇宙戦争」は頭の中で、トム・クルーズを自分に、トム・クルーズの家族を自分の家族に置き換え、更に宇宙人をアメリカに置き換えて考えながら観る作品なのである。
☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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賛否両論の「宇宙戦争」だが、書き足りないものがいくつかあるので、引き続き「宇宙戦争」について考えてみたい。
従来の宇宙人の侵略もの、例えば「宇宙戦争」(1953)、「インデペンデンス・デイ」、「マーズ・アタック!」等においての視点は、宇宙人の侵略をなんらかの形で撃退する人々、あるいは人類を代表して侵略者に対し、なんらかの対応を行っている人々の視点で作品が語られることが多い。
この視点を採用することにより製作者は観客に対し、宇宙人と人類との戦いの局面を俯瞰的に見せることが可能だった訳であり、これは勿論娯楽作品として、観客に戦局を説明する上でなくてはならない視点だったのである。
しかし「サイン」においては、「人類と宇宙人との対峙」ではなく、「ただの父親(家族)と宇宙人の対峙」に軸足を置き、マクロ的な戦局ではなく、ミクロ的な戦局が描かれていた。
とは言うものの「サイン」の物語の中では、マスコミが生きており、テレビやラジオを通じ、世界中の戦局が刻一刻と一般大衆に伝えられていた。
観客は世界中で起きている「人類と宇宙人の対峙」と「家族と宇宙人の対峙」を同時に見る事が出来たのだ。
一方「宇宙戦争」では、視点は「サイン」と同様に、父親(家族)のそれなのだが、マスコミや情報インフラがほぼ壊滅しているため、世界中で何が起こっているのか、人類と宇宙人の戦局は登場人物にも伝わらないし、観客にも当然ながら伝わってこない。
伝わってくるのは、口コミによる噂やデマだけなのである。
ここ(戦局を描写しないこと)には、娯楽作品を超えた凶悪なまでのリアリティが感じられる。
言わば「宇宙戦争」は、娯楽を廃し、われわれ一般大衆が、侵略を実際に受けた場合に体験するであろう事象を描いているのだ。ここで描かれているのは、戦局や自軍の状況等の情報を全く得られない中、侵略者が自分たちに迫ってくる恐怖なのだ。
そして、トム・クルーズが演じる父親はわれわれであり、トム・クルーズの家族はわれわれの家族そのものなのである。
われわれ一般大衆が圧倒的な武力で侵略を受けた場合、自分と家族の命を救うべく、逃げ惑うこと以外に一体何が出来るのだろうか。観客がトム・クルーズに望んだように、われわれ一般大衆は、世界を救うヒーローとして侵略者に対し一矢報いる事が出来るとでも言うのだろうか。
そう考えた場合気になるのは、後半部分の展開である。
具体的には、「手榴弾による攻撃」と「トライポッドに近づく鳥」である。
「手榴弾による攻撃」は、トム・クルーズがわれわれ一般大衆のメタファーとして捉えるならば、本来トム・クルーズではなく、他の人物が行うべきだったと思うし、「トライポッドに近づく鳥」を発見し軍に告げる役割も他の人物が行うべきだったと思う。
この辺については「プライベート・ライアン」のラストの戦い部分の脚本がおかしくなってしまう、スピルバーグの悪い癖(「娯楽嗜好」)が前面に出てしまったのではないかと思う。
「手榴弾による攻撃」は作品全体のトーンを考えると、「プライベート・ライアン」の「靴下爆弾」に匹敵するほど違和感を感じてしまう。
また、一般的に「宇宙戦争」の宇宙人は、911テロにおけるテロリストであり、宇宙人による侵略は、テロリストによるテロ行為のメタファーだと言われているようである。
しかしながら、ユダヤ人であるスティーヴン・スピルバーグの意図は、宇宙人は勿論ナチス・ドイツのメタファーとして機能しているハズだし、更にはイラクを侵略したアメリカのメタファーとしても機能していると言わざるを得ない。
これは前作「ターミナル」で、ハート・ウォーミング・コメディの体裁を取りながら、人類(アメリカ)はもうダメだ、と言う事を暗に仄めかしていたスピルバーグの考えを、比較的明確に表しているのではないか、と思えるのである。
あと、否定する人が多い結末(オチ)の付け方なのだが、本作「宇宙戦争」で描かれた日数が観客の目には少ない日数に見えるため、違和感があるのかも知れないが、本作の物語の意図やコンセプトを崩さずにあれ以外の方法で結末を付ける方法があったら教えて欲しいものである。
本作「宇宙戦争」にはあれ以外の結末の付け方はありえないのである。
「宇宙戦争」は頭の中で、トム・クルーズを自分に、トム・クルーズの家族を自分の家族に置き換え、更に宇宙人をアメリカに置き換えて考えながら観る作品なのである。
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