2005/07/20 東京神保町「日本教育会館一ツ橋ホール」で「七人の弔」の試写を観た。
夏休み、川原でキャンプをしているのは、全国から集まってきた七組の親子たち。
楽しいハズの親子キャンプなのに、七人のこどもたちはみな浮かない顔をしている。親たちがいつもと違って、妙にやさしく、「いい親子」を演じようとしているからだ。
やがて謎の指導員・垣内(ダンカン)が無表情のまま、親だけを集めて説明を始める。これは、単なる親子ツアーでもなければ、特別合宿でもない。子供たちの臓器を売買する秘密の”契約場所”だったのだ!
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督・脚本:ダンカン
出演:ダンカン(垣内仁)、渡辺いっけい(河原功一)、高橋ひとみ(中尾君代)、いしのようこ(橋本染子)、山崎一(柳岡秀男)、温水洋一(横山春樹)、保積ぺぺ(西山政彦)、有薗芳記(前田憲夫)、山田能龍(住田昇)、水木薫(西山美千代)、中村友也(河原潤平)、川原真琴(中尾晴美)、柳生みゆ(西山翔子)、石原圭人(前田正一)、波田野秀斗(横山一樹)、戸島俊季(柳岡三郎)、松川真之介(橋本慎一)
本作「七人の弔」は、比較的良くできた社会派ブラック・コメディである。
しかもダンカンの第一回監督作品であり、ついでに「モスクワ国際映画祭」正式出品作品でもある。
そう考えた場合、本作のタイトル「七人の弔」は、なんとふざけたタイトルを付けたものだ、と思わずにはいられない。
本作がふざけた作品だったのならいざ知らず、本作は作品や題材に対し真摯に取り組んだ作品であり、自らの第一回監督作品と言う記念すべき作品でもあるのだから、出来ればオリジナルのタイトルで勝負して欲しかったと思うのだ。
と言うのも、わたしは本作に驚かされたのである。
「七人の弔」はわたしの先入観を超え、わたしの想像以上に映画していたのである。
まず驚いたのが、背景となる部分を徹底的に省略している点だった。
おそらく一般の映像作家ならば、本作の舞台背景として、垣内(ダンカン)が関与する「子供の臓器売買ネットワーク」を描くのではないかと思う。
しかしながら、いくつかの描写はあるものの、本作ではほとんどと言って良いほど「子供の臓器売買ネットワーク」を描いていない。
物語を描く上で、作品に必要な部分と不必要な部分とを明確に切り分けているのだ。この大胆な背景の省略は、舞台脚本または京劇の背景の省略にも近い印象を受けた。
脚本としては、奇をてらったところが無く、順当にそして淡々と物語は進み、前半から中盤にかけては、現在と過去を行き来する演出は勿論ベタではあるが、登場人物のキャラクターを掘り下げる上で非常に効果的である。
後半部分は、観客の多くは既に物語の結末を予期しており、関心はどうやって予想通りの結末に物語を導くのか、と言う一点に収束してしまっているのだ。
これはスタンリー・キューブリックが「ロリータ」で行った手法に近い印象を受けた。
ラストを先に知らせ、何故そのラストが起きたのかを観客を引っ張りながら描写する手法である。
そしてラストのシークエンスにおいて、本作は恐ろしいほどシニカルな歌で締めくくられる。
これは「ダーティー・ハリー」のバスのシークエンスと比較すると面白いかも知れない。
さて、脚本だが、残念だなと思ったのは、「若い臓器のほうが価値がある」と言う部分が、いつの間にか脚本からすっかり抜け落ちてしまっているところである。この点をスマートに解決する脚本が望ましかったとわたしは思う。
その他の部分は、特に親側の高度や言動にやりすぎの感は否めないが、それは舞台演劇的な見方をすれば、おおむね問題ではないと思う。
また、「七人の弔」と言うタイトルを付けた以上、家族の人数をもう少し考えた方が良かったと思う。上手くすれば、ダブル・ミーニング的な上手いタイトルになったかも知れないのだ。
キャストについては特に言うべきものは無い。皆さんの想像通りの演技が繰り広げられ、順当に演出されている。
テンポは、間と言えば間なのだが、比較的スローモーな印象を受ける。密度の高い間では無く、散漫な間のような印象を受ける。
子役の皆さんは子役の皆さんで大活躍である。
児童虐待されている子供達である、と言う点には若干の違和感とリアリティの欠如を感じるが、本作はファンタジー的な作品に仕上がっているので、不問とする。
本作「七人の弔」は、例えば年に20本とか30本程度しか映画を観ないような人にはあまりオススメはしないが、50本以上観ているような人には、観て損は無い良質の作品に仕上がっていると、オススメ出来る作品である。
☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったら、クリック!(現在のランキングがわかります)
http://blog.with2.net/link.php?29604
夏休み、川原でキャンプをしているのは、全国から集まってきた七組の親子たち。
楽しいハズの親子キャンプなのに、七人のこどもたちはみな浮かない顔をしている。親たちがいつもと違って、妙にやさしく、「いい親子」を演じようとしているからだ。
やがて謎の指導員・垣内(ダンカン)が無表情のまま、親だけを集めて説明を始める。これは、単なる親子ツアーでもなければ、特別合宿でもない。子供たちの臓器を売買する秘密の”契約場所”だったのだ!
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督・脚本:ダンカン
出演:ダンカン(垣内仁)、渡辺いっけい(河原功一)、高橋ひとみ(中尾君代)、いしのようこ(橋本染子)、山崎一(柳岡秀男)、温水洋一(横山春樹)、保積ぺぺ(西山政彦)、有薗芳記(前田憲夫)、山田能龍(住田昇)、水木薫(西山美千代)、中村友也(河原潤平)、川原真琴(中尾晴美)、柳生みゆ(西山翔子)、石原圭人(前田正一)、波田野秀斗(横山一樹)、戸島俊季(柳岡三郎)、松川真之介(橋本慎一)
本作「七人の弔」は、比較的良くできた社会派ブラック・コメディである。
しかもダンカンの第一回監督作品であり、ついでに「モスクワ国際映画祭」正式出品作品でもある。
そう考えた場合、本作のタイトル「七人の弔」は、なんとふざけたタイトルを付けたものだ、と思わずにはいられない。
本作がふざけた作品だったのならいざ知らず、本作は作品や題材に対し真摯に取り組んだ作品であり、自らの第一回監督作品と言う記念すべき作品でもあるのだから、出来ればオリジナルのタイトルで勝負して欲しかったと思うのだ。
と言うのも、わたしは本作に驚かされたのである。
「七人の弔」はわたしの先入観を超え、わたしの想像以上に映画していたのである。
まず驚いたのが、背景となる部分を徹底的に省略している点だった。
おそらく一般の映像作家ならば、本作の舞台背景として、垣内(ダンカン)が関与する「子供の臓器売買ネットワーク」を描くのではないかと思う。
しかしながら、いくつかの描写はあるものの、本作ではほとんどと言って良いほど「子供の臓器売買ネットワーク」を描いていない。
物語を描く上で、作品に必要な部分と不必要な部分とを明確に切り分けているのだ。この大胆な背景の省略は、舞台脚本または京劇の背景の省略にも近い印象を受けた。
脚本としては、奇をてらったところが無く、順当にそして淡々と物語は進み、前半から中盤にかけては、現在と過去を行き来する演出は勿論ベタではあるが、登場人物のキャラクターを掘り下げる上で非常に効果的である。
後半部分は、観客の多くは既に物語の結末を予期しており、関心はどうやって予想通りの結末に物語を導くのか、と言う一点に収束してしまっているのだ。
これはスタンリー・キューブリックが「ロリータ」で行った手法に近い印象を受けた。
ラストを先に知らせ、何故そのラストが起きたのかを観客を引っ張りながら描写する手法である。
そしてラストのシークエンスにおいて、本作は恐ろしいほどシニカルな歌で締めくくられる。
これは「ダーティー・ハリー」のバスのシークエンスと比較すると面白いかも知れない。
さて、脚本だが、残念だなと思ったのは、「若い臓器のほうが価値がある」と言う部分が、いつの間にか脚本からすっかり抜け落ちてしまっているところである。この点をスマートに解決する脚本が望ましかったとわたしは思う。
その他の部分は、特に親側の高度や言動にやりすぎの感は否めないが、それは舞台演劇的な見方をすれば、おおむね問題ではないと思う。
また、「七人の弔」と言うタイトルを付けた以上、家族の人数をもう少し考えた方が良かったと思う。上手くすれば、ダブル・ミーニング的な上手いタイトルになったかも知れないのだ。
キャストについては特に言うべきものは無い。皆さんの想像通りの演技が繰り広げられ、順当に演出されている。
テンポは、間と言えば間なのだが、比較的スローモーな印象を受ける。密度の高い間では無く、散漫な間のような印象を受ける。
子役の皆さんは子役の皆さんで大活躍である。
児童虐待されている子供達である、と言う点には若干の違和感とリアリティの欠如を感じるが、本作はファンタジー的な作品に仕上がっているので、不問とする。
本作「七人の弔」は、例えば年に20本とか30本程度しか映画を観ないような人にはあまりオススメはしないが、50本以上観ているような人には、観て損は無い良質の作品に仕上がっていると、オススメ出来る作品である。
☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったら、クリック!(現在のランキングがわかります)
http://blog.with2.net/link.php?29604
コメント