『「電車男」になりそこなった話 その1』
http://diarynote.jp/d/29346/20050803.html

(承前)
陸橋の影が電車の中を凄い勢いで通り過ぎる。
「池袋」まであと三分。
 
男のビートナックルが迫る・・・・
 
 
あぁぁ、本当に来ちゃったよビートナックル。

やっぱ当たったら痛いだろうな、と思ったわたしだが、そんなことで決心は揺るがない。何しろ「ビートナックルは避けないであまんじて受ける」のだ。

男の右腕が放ったビートナックルはあまりにも大振りだった。
わたしは避けずに、左側頭部で男のビートナックルを受けた。
勿論ここで失神しちゃったら、全部おしまいで『「電車男」になりそこなった話』どころではない。
とりあえず打撃に備え足場を固め、気を確かにもって、ついでに歯を食いしばってみた。

あぁあ、やっぱ痛えよ!

車内は失望色の沈黙に包まれた。
何しろ、電車の中で女性に暴力を振るった悪い男を抑えようとして登場した男(わたし)が、その悪い男に殴られちゃっているのだ。しかもあんなに大振りパンチなのに・・・・

しか〜し、これで「わたしも殴られた」と言う事実が乗客の皆さんの記憶に見事に刷り込まれたのだ。目撃者対策はこれで充分なのだ。ついでにヒーローのお約束にも合致しているしね。

そう、ヒーローと言う奴は、やられてやられて、我慢して我慢して、最後の最後に必殺技で勝つものなのだよ!

そう、自分に言い聞かせていたのだが、もうひとつの決心「もうこれ以上殴らない」を実行しているわたしには、残念ながら次の手が無い。

「もうこれ以上殴らない」状態で奴を押さえ込めるのか!
ガンバレ!オレ!!

が、次の瞬間、わたしの右側頭部に見事にヒットしたビートナックルに味をしめた男は、再度大振りのビートナックルを放ってきた。

来たキタ来たよ、二発目のビートナックルちゃん。
ここでアキラ(「バーチャ・ファイター」)的には外門頂肘(−>P+K)だ!
唸れギャラリーども!

とは言うものの、「もうこれ以上殴らない」決心を固めたわたしは、男に肘を入れるところまで行かず(外門頂肘とは相手の攻撃を受け流して相手に肘を入れる当身技)、単に男の右手首を左手でガッチリと掴むにとどめた。

わたしに右手を掴まれた男は一瞬わたしの目を見た。
男の目には怯えの表情が浮かんでいた。

警笛を鳴らした急行電車は「下板橋」駅を通過する。
「池袋」まであと二分。

『「電車男」になりそこなった話 その3』
http://diarynote.jp/d/29346/20060507.html

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