「電車男」になりそこなった話 その1
2005年8月3日 エッセイ/コラムその時、わたしは調布に住む友人宅での焼肉パーティに参加するため、当時住んでいた「成増」から東武東上線で「池袋」に向かっていた。
「成増」駅から急行池袋行き電車に乗車したわたしは、空いている席を見つけられず、7人がけシートの端のバーに寄り掛かりながら本を読むことにした。
「何よ!」
わたしは突然の女性の声に驚き、声がした方を見ると、わたしの隣、7人がけシートの端に座っていた男性と、その男性のまん前に立っている女性が何やらもめているのに気が付いた。
痴話げんかは電車の外でやってくれよ、と思いながら彼らを見やると、突然その男は女性のスカートの裾で自分の靴を拭きはじめた。
「何すんのよ!」
女性はスカートに伸びた男性の手を振り払った。
「ちっ」
次の瞬間、男は座ったまま、女性の腹部に蹴りを入れていた。
踵と体重が入った蹴りである。
「おまえ何やってんだよ!」
わたしの右手は言葉より早く動き、男の頭を殴っていた。
腹部に見事な足跡を付けた女性は、反対側のシートまでよろめきながら飛ばされていた。
電車は沈黙が支配し、潮が引くようにわたしたちの周りにはスペースができていた。
まるで、異臭がする人が乗っている電車の中みたいじゃないか。
自嘲的に笑いながら、そう思った瞬間、顔色を変えた男がゆらりと立ち上がった。
男は女性ではなくわたしに向かってきた。
「カンカンカンカンカン・・・・」
ドップラー効果付きの踏切警告音の中、わたしとその男は電車の通路で対峙することになった。
真赤な顔をしたその男は「池袋」方面を背にし、いきなりわたしに殴りかかってきた。
笑えるほどの大振りパンチであった。
ジャッキー(「バーチャ・ファイター」)的に言うとビートナックル(P+K)というやつだ。
ところで、わたしは格闘ゲーマーである。
さらに余談だが「バーチャ・ファイター」シリーズで最高28連勝、「鉄拳」シリーズで最高38連勝の腕前である。
格闘ゲーマーは果たして本物の喧嘩に強いのか?
永遠の命題である。
さて、男のビートナックルだが、あまりにも大振りなパンチなので簡単に避けられるものなのだが、わたしは男のパンチがわたしに到達するまでの間、いろんなことを考えてしまった。
「女性に蹴りを入れたのはその男だが、その男に先に手を出したのはわたしだ」
「これは衆人環視の喧嘩だ、最悪警察沙汰になるかも知れない」
「これ以上殴ったらヤバイかも」
「あぁぁ、焼肉パーティ無理かも」・・・・
わたしの方針は決まった。
「ビートナックルは避けないであまんじて受ける」
「もうこれ以上殴らない」
陸橋の影が電車の中を凄い勢いで通り過ぎる。
「池袋」まであと三分。
男のビートナックルが迫る・・・・
つづく・・・・
「電車男」になりそこなった話 その2
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「成増」駅から急行池袋行き電車に乗車したわたしは、空いている席を見つけられず、7人がけシートの端のバーに寄り掛かりながら本を読むことにした。
「何よ!」
わたしは突然の女性の声に驚き、声がした方を見ると、わたしの隣、7人がけシートの端に座っていた男性と、その男性のまん前に立っている女性が何やらもめているのに気が付いた。
痴話げんかは電車の外でやってくれよ、と思いながら彼らを見やると、突然その男は女性のスカートの裾で自分の靴を拭きはじめた。
「何すんのよ!」
女性はスカートに伸びた男性の手を振り払った。
「ちっ」
次の瞬間、男は座ったまま、女性の腹部に蹴りを入れていた。
踵と体重が入った蹴りである。
「おまえ何やってんだよ!」
わたしの右手は言葉より早く動き、男の頭を殴っていた。
腹部に見事な足跡を付けた女性は、反対側のシートまでよろめきながら飛ばされていた。
電車は沈黙が支配し、潮が引くようにわたしたちの周りにはスペースができていた。
まるで、異臭がする人が乗っている電車の中みたいじゃないか。
自嘲的に笑いながら、そう思った瞬間、顔色を変えた男がゆらりと立ち上がった。
男は女性ではなくわたしに向かってきた。
「カンカンカンカンカン・・・・」
ドップラー効果付きの踏切警告音の中、わたしとその男は電車の通路で対峙することになった。
真赤な顔をしたその男は「池袋」方面を背にし、いきなりわたしに殴りかかってきた。
笑えるほどの大振りパンチであった。
ジャッキー(「バーチャ・ファイター」)的に言うとビートナックル(P+K)というやつだ。
ところで、わたしは格闘ゲーマーである。
さらに余談だが「バーチャ・ファイター」シリーズで最高28連勝、「鉄拳」シリーズで最高38連勝の腕前である。
格闘ゲーマーは果たして本物の喧嘩に強いのか?
永遠の命題である。
さて、男のビートナックルだが、あまりにも大振りなパンチなので簡単に避けられるものなのだが、わたしは男のパンチがわたしに到達するまでの間、いろんなことを考えてしまった。
「女性に蹴りを入れたのはその男だが、その男に先に手を出したのはわたしだ」
「これは衆人環視の喧嘩だ、最悪警察沙汰になるかも知れない」
「これ以上殴ったらヤバイかも」
「あぁぁ、焼肉パーティ無理かも」・・・・
わたしの方針は決まった。
「ビートナックルは避けないであまんじて受ける」
「もうこれ以上殴らない」
陸橋の影が電車の中を凄い勢いで通り過ぎる。
「池袋」まであと三分。
男のビートナックルが迫る・・・・
つづく・・・・
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