2005/06/15 東京中野「中野ZERO小ホール」で「亀は意外と速く泳ぐ」の試写を観た。

片倉スズメ(上野樹里)は平凡な主婦である。
夫は海外赴任中、定期的に電話をくれるが、離すのはペットの亀の心配ばかりである。
毎日が恐ろしく単調に過ぎていく・・・・。

トイレに行けば自分の存在を無視するかのように、おばさんがオナラをし、夫でさえ時々自分のことを忘れているようだ。

私は見えていないのか?

久しぶりに待ち合わせをした幼馴染のクジャク(蒼井優)には2時間も待たされてしまう始末。

・・・・このまま歳をとり死んでいくのか?
そう思うと恐ろしい・・・・。

そんな平凡を嘆く彼女は、ふとしたことから駅の階段のへこみに張られた広告を目にする。
その広告はなんと「スパイ募集!」の広告だったのだが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督・脚本:三木聡
出演:上野樹里(片倉スズメ)、蒼井優(扇谷クジャク)、岩松了(クギタニシズオ)、ふせえり(クギタニエツコ)、要潤(加東先輩)、温水洋一(パーマ屋のおじさん)、松重豊(ラーメン屋のオヤジ)、村松利史(豆腐屋のオヤジ)、森下能幸(最中屋のおじさん)、水橋研二(白バイ警官)、緋田康人(水道屋)、松岡俊介(韮山)、伊武雅刀(中西)、嶋田久作(福島)、岡本信人(スズメの父親)

本作「亀は意外と速く泳ぐ」は、小ネタにクスクス笑っているうちに、ある種ちょっとだけ壮大な地平へわれわれを連れて行ってくれる、摩訶不思議な物語である。

その世界の住人は、あまりにも曲者揃いなのだが、分を弁えた抑制された演技と、的確な演出でオーバーアクト寸前で踏み止まっているような印象を受ける。

もともと本作は爆笑を目指しているのではなく、くすくす感を大切にした作品だと思うのだが、その微妙なさじ加減が功を奏したおもしろい作品に仕上がっている。

とは言っても、本作は決して万人受けする作品ではなく、観客を大いに選ぶ作品だと思う。
そして、キャストのほとんどが曲者と言う本作を考えた場合、本作は日本映画界が地味に誇る、曲者俳優たちの豪華な競演、と言う観点も出てくるし、テレビ界で数々の伝説的なプログラムを制作してきた三木聡の手腕を楽しむ、と言う観点もあるだろう。
そして勿論上野樹里と蒼井優の作品だととらえる事も出来ますしね。

私見だが、個人的には上野樹里つながりで考えると、前作「スウィングガールズ」よりもおもしろかったと思うぞ。

ところで、本作「亀は意外と速く泳ぐ」で描かれているスパイのコンセプトは、「007」シリーズ等で描かれているようなスパイではなく、「チャーリー・マフィン」シリーズやジョン・ル・カレの一連の作品に登場する目立たない地味なスパイのコンセプトに近いような印象を受けた。

勿論、チャーリー・マフィンやル・カレが創出したスパイのように大活躍するわけでもなく、頭脳明晰な訳でもないのだが、スパイのコンセプトのエッセンスを抽出した場合、同じようなコンセプトが残るような気がするのだ。

キャストは、前述のように曲者ばかりなので、誰がどうこうというのは割愛するが、脚本がしっかりしており、アドリブを廃している(と思う)ので、突出した目立ったキャラクターがいる訳ではなく、しっかりと編み上げられたタペストリーのような言わば群像劇のような印象をも受ける。

本作「亀は意外と速く泳ぐ」は、おそらく大ヒットする作品ではないと思うが、出来ることなら多くの人に観ていただきたい作品のひとつだと思うのだ。

☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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