「星になった少年 Shining Boy and Little Randy」
2005年7月18日 映画
2005/07/01 東京竹橋「科学技術館サイエンスホール」で「星になった少年 Shining Boy and Little Randy」の試写を観た。
郊外で細々と動物プロダクションを営む小川家。
息子の哲夢(柳楽優弥)は毎日動物たちと楽しく触れ合っていた。
そんなある日、母・佐緒里(常盤貴子)が、子供のころからの夢を実現すべく、タイからゾウの“ミッキー”を購入した。哲夢はその天性の才能から、すぐにミッキーと心を通わせていくのだった。
そしてまた一頭、CM出演のための子ゾウ“ランディ”もやって来るのだが、訓練を受けていないランディは、なかなか哲夢の言うことを聞かなかった。
そこである時タイのゾウ使いの話を聞いた哲夢は、タイのゾウ訓練センターへの留学を決意するのだが・・・・。
監督:河毛俊作
製作:亀山千広
原作:坂本小百合 『ちび象ランディと星になった少年』(文藝春秋刊)
音楽:坂本龍一
出演:柳楽優弥(小川哲夢)、常盤貴子(小川佐緒里)、高橋克実(小川耕介)、蒼井優(村上絵美)、倍賞美津子(藤沢朝子)
本作「星になった少年 Shining Boy and Little Randy」には泣かされた。
特にラストのシークエンスで、一頭の象がとる行動には、本当に泣かされてしまう。
ついでにその行動は映画の演出上の理由で創出された行動ではなく、実際にその時に象がとった行動だったのにも驚かされてしまうし、泣かされてしまう。正に、事実は小説よりも奇なりである。
脚本は比較的直球勝負で、奇をてらったトリッキーなものは無い。
印象に残るタイでの「象の神様」のシークエンスだが、そのシークエンス自体は伏線としては秀逸なのだが、そのシークエンスが原因となって哲夢(柳楽優弥)が夭折してしまう、と言う解釈が可能なため、釈然としない気がする。
また、哲夢の学校生活に比較的長く尺を割いている点も印象的だった。哲夢がゾウ使いになろうとする過程には、家庭環境だけではなく、学校生活における問題点もあったであろうことを語っている事に好感が持てる。特にこれは校庭でのサッカーボールのシークエンスに顕著である。
そしてラストだが、ラストのタイでのシークエンスも感動的で良かったのだが、哲夢亡き後をもう少し描いた方がより感動的だったのではないかと思えた。
勿論、そこまで描くと物語の焦点が哲夢の生涯から、哲夢の遺志を継いだ人々の物語にずれてしまう感が否めないが、ラストにワンカットだけでも良いからテロップでもかまわないので、母親や弟が現在何をしているのかを入れた方が泣けると思ったのだ。
しかし、本作の構成は残念ながら、テレビ放映時のCF(CM)のタイミングが考慮されているような間の存在が気になった。
キャストは先ずは、哲夢の母・佐緒里を演じた常盤貴子だが、自由奔放に生きる役柄を見事に演じつつ、ラストの嗚咽では女優の力を見せつけてくれる。
その嗚咽のシークエンスでは実際のところ蒼井優(村上絵美)との演技合戦の場面なのだが、女優の格としては常盤貴子に軍配が上がっていた。
そんな蒼井優(村上絵美)だが、最近はさまざまな映画に出ずっぱりなのだが、少ない出番ながら比較的印象に残る役柄を好演していた。哲夢と心を通わせる重要な役を担っていた訳だ。
また哲夢の祖母・藤沢朝子を演じた倍賞美津子も存在感があり、映画を引き締めていた。
ここで、驚いたのは撮影なのだが、フレームが倍賞美津子の顔を半分くらい落すカットが何度も出てきたのには驚いた。
大女優倍賞美津子の顔を切るとは驚きなのだ。
印象に残ったカットは、ゾウのショーのシークエンスとお葬式のシークエンスである。
そのお葬式のシークエンスで倍賞美津子はフレームから外れつつもすばらしい表情をしている。フレーム外にいながらにして抜群の存在感を感じるすばらしいカットであった。
さて、主演の柳楽優弥(小川哲夢)だが、俳優としての岐路に立たされている。
前作「誰も知らない」の作風では、演技しないことが要求され、その演技しない演技が評価されていたのだと思うのだが、本作以降は演出された演技が要求されている訳なのだ。
そう考えた場合、本作の柳楽優弥は残念ながら演技と言うレベルには達していないような印象を受けた。勿論彼には存在感はあり、本作の役柄はあまり喋らない主人公なので、それほど気にならないとは思うのだが、次回作では柳楽優弥は大きな岐路に立たされるのではないか、と思ってしまう。
あと気になったのは、武田鉄也とブラザートムがダメな業界人を見事に演じていた。
さて音楽の坂本龍一だが、はっきり言ってオーバー・スコアであった。
と言うのも、坂本龍一の音楽に力がありすぎで、映像と音楽のパワー・バランスが悪いのだ。もう少し控えめな楽曲の方が良かったのではないかと思う。
まあ本作「星になった少年 Shining Boy and Little Randy」はフジテレビの戦略が見え隠れするのだが、お約束どおりに泣ける感動作品であり、ぜひ劇場で見た後は、「市原ぞうの国」(http://www.zounokuni.com/)にでも行っていただければ、と思うのだ。
☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったら、クリック!(現在のランキングがわかります)
http://blog.with2.net/link.php?29604
郊外で細々と動物プロダクションを営む小川家。
息子の哲夢(柳楽優弥)は毎日動物たちと楽しく触れ合っていた。
そんなある日、母・佐緒里(常盤貴子)が、子供のころからの夢を実現すべく、タイからゾウの“ミッキー”を購入した。哲夢はその天性の才能から、すぐにミッキーと心を通わせていくのだった。
そしてまた一頭、CM出演のための子ゾウ“ランディ”もやって来るのだが、訓練を受けていないランディは、なかなか哲夢の言うことを聞かなかった。
そこである時タイのゾウ使いの話を聞いた哲夢は、タイのゾウ訓練センターへの留学を決意するのだが・・・・。
監督:河毛俊作
製作:亀山千広
原作:坂本小百合 『ちび象ランディと星になった少年』(文藝春秋刊)
音楽:坂本龍一
出演:柳楽優弥(小川哲夢)、常盤貴子(小川佐緒里)、高橋克実(小川耕介)、蒼井優(村上絵美)、倍賞美津子(藤沢朝子)
本作「星になった少年 Shining Boy and Little Randy」には泣かされた。
特にラストのシークエンスで、一頭の象がとる行動には、本当に泣かされてしまう。
ついでにその行動は映画の演出上の理由で創出された行動ではなく、実際にその時に象がとった行動だったのにも驚かされてしまうし、泣かされてしまう。正に、事実は小説よりも奇なりである。
脚本は比較的直球勝負で、奇をてらったトリッキーなものは無い。
印象に残るタイでの「象の神様」のシークエンスだが、そのシークエンス自体は伏線としては秀逸なのだが、そのシークエンスが原因となって哲夢(柳楽優弥)が夭折してしまう、と言う解釈が可能なため、釈然としない気がする。
また、哲夢の学校生活に比較的長く尺を割いている点も印象的だった。哲夢がゾウ使いになろうとする過程には、家庭環境だけではなく、学校生活における問題点もあったであろうことを語っている事に好感が持てる。特にこれは校庭でのサッカーボールのシークエンスに顕著である。
そしてラストだが、ラストのタイでのシークエンスも感動的で良かったのだが、哲夢亡き後をもう少し描いた方がより感動的だったのではないかと思えた。
勿論、そこまで描くと物語の焦点が哲夢の生涯から、哲夢の遺志を継いだ人々の物語にずれてしまう感が否めないが、ラストにワンカットだけでも良いからテロップでもかまわないので、母親や弟が現在何をしているのかを入れた方が泣けると思ったのだ。
しかし、本作の構成は残念ながら、テレビ放映時のCF(CM)のタイミングが考慮されているような間の存在が気になった。
キャストは先ずは、哲夢の母・佐緒里を演じた常盤貴子だが、自由奔放に生きる役柄を見事に演じつつ、ラストの嗚咽では女優の力を見せつけてくれる。
その嗚咽のシークエンスでは実際のところ蒼井優(村上絵美)との演技合戦の場面なのだが、女優の格としては常盤貴子に軍配が上がっていた。
そんな蒼井優(村上絵美)だが、最近はさまざまな映画に出ずっぱりなのだが、少ない出番ながら比較的印象に残る役柄を好演していた。哲夢と心を通わせる重要な役を担っていた訳だ。
また哲夢の祖母・藤沢朝子を演じた倍賞美津子も存在感があり、映画を引き締めていた。
ここで、驚いたのは撮影なのだが、フレームが倍賞美津子の顔を半分くらい落すカットが何度も出てきたのには驚いた。
大女優倍賞美津子の顔を切るとは驚きなのだ。
印象に残ったカットは、ゾウのショーのシークエンスとお葬式のシークエンスである。
そのお葬式のシークエンスで倍賞美津子はフレームから外れつつもすばらしい表情をしている。フレーム外にいながらにして抜群の存在感を感じるすばらしいカットであった。
さて、主演の柳楽優弥(小川哲夢)だが、俳優としての岐路に立たされている。
前作「誰も知らない」の作風では、演技しないことが要求され、その演技しない演技が評価されていたのだと思うのだが、本作以降は演出された演技が要求されている訳なのだ。
そう考えた場合、本作の柳楽優弥は残念ながら演技と言うレベルには達していないような印象を受けた。勿論彼には存在感はあり、本作の役柄はあまり喋らない主人公なので、それほど気にならないとは思うのだが、次回作では柳楽優弥は大きな岐路に立たされるのではないか、と思ってしまう。
あと気になったのは、武田鉄也とブラザートムがダメな業界人を見事に演じていた。
さて音楽の坂本龍一だが、はっきり言ってオーバー・スコアであった。
と言うのも、坂本龍一の音楽に力がありすぎで、映像と音楽のパワー・バランスが悪いのだ。もう少し控えめな楽曲の方が良かったのではないかと思う。
まあ本作「星になった少年 Shining Boy and Little Randy」はフジテレビの戦略が見え隠れするのだが、お約束どおりに泣ける感動作品であり、ぜひ劇場で見た後は、「市原ぞうの国」(http://www.zounokuni.com/)にでも行っていただければ、と思うのだ。
☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったら、クリック!(現在のランキングがわかります)
http://blog.with2.net/link.php?29604
コメント