2005/06/29 東京東武練馬「ワーナーマイカルシネマズ板橋」で「宇宙戦争」を観た。

雲ひとつない晴天に包まれた、アメリカ東部のある町に異変は突然起こった。上空で発生した激しい稲光は地上にまで達し、その下で巨大な何かが大地を震わせうごめき始めた。そこに居合わせたレイ(トム・クルーズ)は、恐怖に怯える人々と共に状況を見守る。そして異星人の襲撃が目前で始まった。侵略者が操る”トライポッド”が地底よりその巨大な姿を現し、地球侵略を開始したのだ。何とか家にたどり着いたレイは、テレビのニュースで世界16カ国が同時に襲われたことを知る。レイは息子のロビー(ジャスティン・チャットウィン)と娘レイチェル(ダコタ・ファニング)を連れ、安全と思われる土地へと逃げる準備をするが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:スティーヴン・スピルバーグ
原作:H・G・ウェルズ
脚本:デヴィッド・コープ、ジョシュ・フリードマン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:トム・クルーズ(レイ・フェリエ)、ダコタ・ファニング(レイチェル・フェリエ)、ティム・ロビンス(オギルビー)、ジャスティン・チャットウィン(ロビー・フェリエ)、ミランダ・オットー(メアリー・アン)、ジーン・バリー(祖父)、アン・ロビンソン(祖母)、 モーガン・フリーマン(ナレーション)

とりあえずはココを読んでいただきたい。
「宇宙戦争」その0
http://diarynote.jp/d/29346/20050629.html

本作「宇宙戦争」はひとまずは、万人が楽しめる大変おもしろいSFパニック・ムービーだと言えよう。
勿論本作は、「宇宙戦争」(1953)のリメイクであるし、「宇宙戦争」(1953)の程度の低いパロディでしかない「インデペンデンス・デイ」や、「宇宙戦争」(1953)と「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」を見事に融合させ、本作にも影響を与えたと思われる「サイン」、そしてティム・バートンの傑作「マーズ・アタック!」等の作品を念頭に置いて考えなければならない作品だと言える。

これらの作品(「インデペンデンス・デイ」を除く)に共通するテーマは、「人類は無力だ」と言うこと。
これはH・G・ウェルズが書いた原作でもひとつのテーマとなっており、本作「宇宙戦争」を語る上でもひとつの重要なキーとなっている。
ところで「インデペンデンス・デイ」なのだが、この映画がダメ映画に感じられる原因のひとつは、「宇宙戦争」の設定を無断借用しているのにも関わらず「無力な人類ではなく、強いアメリカ」を描いてしまったところだと思う。

さて、この「人類は無力だ」と言う主要テーマは、本作の重要な伏線のひとつである「レイチェル(ダコタ・ファニング)の指に刺さった棘(とげ)」のシークエンスでも暗喩されている。そのシークエンスでは、レイチェルの指に刺さった棘を、父親らしきところを見せようとして無理に取ろうとするレイ(トム・クルーズ)に対し、自然に体が棘を押し出すからそのままにしておくとレイチェルは言う。

このシークエンスは勿論、拡大解釈すると「ガイア理論」にも通じるし、その「ガイア理論」を下に人類と地球との関係を考えると「人類は地球にとっての棘だ」とも言えるのだ。

また、その前のシークエンスでは、レイチェルがケータリングされて自然食品を食べているのも面白い。おいしそうに無味乾燥な自然食品(本当は無味乾燥ではない)を食べるレイチェルとそんなもの食べられないと言うレイの対比が良い。これは「サイン」にも繋がっているのだが、化学物質に汚染されているレイと、自然治癒力を信じるレイチェルとの対比が描写されている。

そしてこの「人類は無力だ」と言うテーマは、冒頭のモーガン・フリーマンのナレーションにも通じ、本来ならばラストにもってくるべきネタを冒頭にもってきてしまうスピルバーグの英断にも驚くが、CGIでネタを描いてしまう手法にも驚いた。

続いて興味深かったのは、冒頭のレイとロビー(ジャスティン・チャットウィン)のキャッチボールである。

表向きはレイとロビー親子の断絶振りをキャッチボールになぞらえて見せてるのだが、その際レイとロビーがかぶっているキャップが面白いのだ。
と言うのも、レイはニューヨーク・ヤンキースのキャップをロビーはボストン・レッドソックスのキャップをかぶっているのだ。これらのチームは勿論ライバルチーム同士なのだが、実際のところは、レイとレイの元妻メアリー・アン(ミランダ・オットー)の現在の夫との関係をも象徴しており、言うならばロビーはメアリー・アンの夫の代理人としてレイと対決している訳なのだ。

さて、キャップの話の本題だが、本作の物語の舞台はニューヨーク近郊のレイの住居からボストンまでで、本作はロード・ムービーの形式を持っているのだが、なすすべも無いレイ等が逃げ延びる先が希望の象徴ボストンなのである。

そしてそのニューヨークと言えば、勿論911テロの被害を受けた街であり、ボストンと言えばアメリカ最古の街、言わばアメリカ合衆国発祥の地、と言う点が興味深い訳だ。

勿論、本作での宇宙人の襲来は、911テロの暗喩であり、本作の物語でなすすべも無く逃げ惑う人々は、アメリカ合衆国発祥の地ボストンまでなんとか逃げ延び、本作終了後の世界で壊滅したアメリカ全土を復興すべく、その足がかりの地として、かつてのアメリカ合衆国が生まれた街ボストンを選んだ訳なのである。

ニューヨーク・ヤンキースとボストン・レッドソックスは、語弊があるし、悪い例えなのかも知れないのだが、本作では破壊と再生のメタファーとなっているのかも知れないのだ。

キャストはダコタ・ファニングがやはり良かった。
キャー、キャー泣き叫ぶ姿も良いのだが、冒頭の棘のシークエンスやカバンを持ち運ぶシークエンス、自然食品のシークエンス、ティム・ロビンスとのシークエンス等々印象的なシーンの目白押しである。

ティム・ロビンスはオギルビーと言うキレかけている男を好演していた。
意味ありげに映されたオギルビーの腰にぶら下がっているものや、宇宙人が見ていた写真、レイチェルに対する態度、レイの疑惑の目から考えると、明確には表現されてはいないのだが、オギルビーは変わった趣味を持った人物としてキヤラクター設定されているのが興味深い。前作「クリムゾン・リバー」でティム・ロビンスが演じたキャラクターの映画的記憶を利用した、面白いキャラクター設定だと思う。

またトム・クルーズだが、レイをヒーローではなく、ひとりの父親失格者として描いている点には好感が持てる。
勿論そのあたりは「インデペンデンス・デイ」へのアンチテーゼともなっているのだ。

アンチテーゼと言えば、マスコミが壊滅している点は「サイン」へのアンチテーゼとなっている。

「宇宙戦争」その2 へつづく・・・・
http://diarynote.jp/d/29346/20050815.html

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