「クローサー」

2005年5月24日 映画
2005/04/28 東京銀座「銀座ガスホール」で「クローサー」の試写を観た。

小説家志望のジャーナリスト、ダン(ジュード・ロウ)はロンドンの街角で、ニューヨークからやって来たばかりの若いストリッパー、アリス(ナタリー・ポートマン)と出会い、恋に落ちた2人は間もなく同棲を始める。
1年半後、処女小説の出版が決まったダンは、訪れた撮影スタジオでフォトグラファーのアンナ(ジュリア・ロバーツ)に一目惚れしてしまう。彼女もダンに惹かれていたが、アリスとの同棲を知って身を引くことに。
半年後、アンナになりすましチャットでいたずらをするダン。ニセのアンナにつられて、水族館のデートに現われた医師ラリー(クライヴ・オーウェン)だったが、彼は偶然そこで本物のアンナと出逢ってしまうが・・・・。

監督:マイク・ニコルズ
原作戯曲・脚本:パトリック・マーバー
出演:ジュリア・ロバーツ(アンナ)、ジュード・ロウ(ダン)、ナタリー・ポートマン(アリス)、クライヴ・オーウェン(ラリー)

本作「クローサー」は「鏡の国」に迷い込んだアリス(ナタリー・ポートマン)の冒険の物語である。
そしてその「鏡の国」では、人々は赤裸々に自分の思いや考えを語り、理性ではなく本能で、自分の思った通りの行動をとる。
そして、当然の如く、自動車は反対側から来る訳だ。

そうなのだ。「鏡の国」に来たばかりのアリスは、自分が「鏡の国」に来ていることに気付かず、いままでの世界にいた時と同じように、交差点で左側の道路を確認したため、反対側から来た自動車に轢かれてしまうのだ。

そしてこの「鏡の国」では、外と中がアベコベで、嘘は本当で、本当は嘘。そしてそこの住人は、隠すべきものをさらけ出し、さらけ出して構わないものを隠してしまうのだ。

この辺については、「鏡の国」に住む主要登場人物の職業が、自分や他者の内面をさらけ出す職業、写真家(アンナ)、小説家(ダン)、医師(ラリー)として設定されているのが強烈に興味深い。
一方、「鏡の国」にやって来たばかりのアリスは、内面をさらけ出す職業ではなく、外見をさらけ出す職業、ストリッパーとして設定されているのが、恐ろしく興味深い。
そして彼女の名前アリスすら、実は自分の内面からではなく、外から調達したものであった事が、狂おしいほどに興味深い。

本作は「アリスの鏡の国の冒険」である、そう考えて、本作「クローサー」を観た場合、従来の印象は一変する。

人のことを考えないで、自分の事だけを考えて行動するアンナ(ジュリア・ロバーツ)、ダン(ジュード・ロウ)、ラリー(クライヴ・オーウェン)等は、おそらく感情移入を拒むいやな人間として描かれ、傷つくアリス(ナタリー・ポートマン)には好意的な印象を受けるのではないだろうか。

しかし、ここ「鏡の国」では、アンナ、ダン、ラリーは最高に正直な人間で、アリスは不正直な人間に見えてしまう訳だ。
 
 
ところで、脚本はセリフの応酬が激しく、なんだか舞台劇を見ているみたいだな、と思ったら本作は本当にパトリック・マーバーの戯曲の映画化作品だった。
表面的には多分多くの観客が満足行く脚本に仕上がっていないような印象を受けるのだが、「鏡の国」の物語だと思った瞬間に、本作の脚本は輝いてくるような印象を受けた。

キャストは、4者とも素晴らしい。
特にナタリー・ポートマンの文字通り身体を張った頑張りは目を瞠るものがある。
またクライブ・オーウェンも良かった。「キング・アーサー」なんかに出てる場合じゃないぞ。

とにかく本作「クローサー」は、あぁ、なんて面白い構造と構成を持った物語なんだろうか。やはり映画って、面白いな、と思わせてくれる素晴らしい作品なのだ。

☆☆☆★ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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