2005/04/25 東京新宿「東京厚生年金会館」で「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」の試写を観た。

ボードレール家の三姉弟妹、長女のヴァイオレット(エミリー・ブラウニング)は、並外れた知恵とひらめきで様々な発明をこなす14歳の天才発明家。長男のクラウス(リーアム・エイケン)は本の虫で、普通の人が一生かかっても読みきれない量の本をすでに読破している。末っ子のサニー(カラ・ホフマン、シェルビー・ホフマン/二人一役)は、どんなものでも噛みついたら離さない女の子。

ある日三姉弟妹が海辺で遊んでいたところ、自宅が原因不明の火事に遭い、両親は莫大な遺産と謎を残し、焼け死んでしまう。
身寄りのない三姉弟妹は、遠縁だがたまたま近くに住んでいた親戚のオラフ伯爵(ジム・キャリー)の元へ。
しかし、オラフ伯爵の目的は、自分たちに残された両親の遺産だった。

監督:ブラッド・シルバーリング
原作:レモニー・スニケット
出演:ジム・キャリー(オラフ伯爵)、メリル・ストリープ(ジョセフィーンおばさん)、エミリー・ブラウニング(ヴァイオレット・ボードレール)、リーアム・エイケン(クラウス・ボードレール)、カラ・ホフマン(サニー・ボードレール)、シェルビー・ホフマン(サニー・ボードレール)、ティモシー・スポール(ミスター・ポー)、ビリー・コノリー(モンティおじさん)、キャサリン・オハラ(ストラウス判事)、ダスティン・ホフマン(ノン・クレジット)
声の出演:ジュード・ロウ(レモニー・スニケット)

本作「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」は、卓越したビジュアル・イメージの下、見事に構築された素晴らしい世界観が楽しめるファンタジー作品である。
そして、その物語は世界中でベストセラーを続ける児童書「世にも不幸なできごと」シリーズ。

キャストだが、ヴァイオレットを演じたエミリー・ブラウニングは「ビートルジュース」のウィノナ・ライダーや、「アダムス・ファミリー」のクリスティーナ・リッチ等を髣髴とさせる存在感と趣と暗さを兼ね備え、わたし的、今後が楽しみな女優の一人にピックアップさせていただいた。
「ハリー・ポッターと賢者の石」シリーズのエマ・ワトソンとは対極的な印象を受け、ダークな感じに好印象を受けた。

クラウス役のリーアム・エイケンは、まだキャラクターの記号化があまり進んでいないキャラクターを静かに演じている。

サニー役のカラ・ホフマンとシェルビー・ホフマンは、噛みつくという特徴が今回の脚本ではあまり生かされていないような印象を受けるが、名前にふさわしい素晴らしい笑顔と、それに似つかわしくない高度なレトリックにより、つかみはバッチリだろう。
ところで、この双子、ダスティン・ホフマンのカメオを考えると、彼の孫とかなんかの血縁者なのだろうか。

そしてオラフ伯爵を演じたジム・キャリーだが、最近控えめな役柄が多いせいもあるのだろうが、従来のワンマン的なオーバーアクト振りは抑え目で、他の役者、例えばメリル・ストリープ等と同程度のオーバーアクトだった。
本作のジム・キャリーは、バランス感覚に富んだオーバーアクトだと言えるだろう。勿論、本作の物語を考えた場合、必然的にオーバーアクトが求められるし、オーバーアクトにならざるを得ないのだが、本作では他の役者の演技を視野に入れた、おとなしいオーバーアクトが楽しめる。
感覚的には、レトロ・フューチャー的な美術センスとも相まって「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのクリストファー・ロイドに近いような印象を受けた。

一方メリル・ストリープは、最近コメディ付いているようで、「ふたりにクギづけ」のラスト同様、楽しげに演じているのが見て取れる。ダスティン・ホフマンはともかく、メリル・ストリープともなれば、使いづらい女優の一人だと思うのだが、本作でそれが払拭されるのではないか、とも思える印象を受けた。
「永遠に美しく・・・」並みの怪演かも知れない。

そして特筆すべき点は、なんと言っても美術(リック・ハインリクス)と衣裳(コリーン・アトウッド)だろう。
卓越したデザインに基いた素晴らしい世界観の構築に成功している。デザインと言うか、発想が素晴らしい。

感覚的には「バロン」や「ジャイアント・ピーチ」的な印象を受けた。

脚本(ロバート・ゴードン)は、長大な物語からところどころをピックアップした感が否めず、章立てしている感があった。
いっその事、きっちりチャプターをつけた方が面白かったのではないか、と思った。

また、サニーのセリフには、日本語字幕と英語字幕が同時につくのだが、そのサニーの英語字幕のセリフはレトリックに富んだ非常に面白い表現の目白押しであった。
例えば、ボードレール家の三姉弟妹の庇護者となる人々、例えばモンティおじさん(ビリー・コノリー)やジョセフィーンおばさん(メリル・ストリープ)がちょっとイカレていることを、サニーはただ単に「あの人イカレているわよ」と言うのではなく「あの人、イカレた街の市長さんだわ」的な表現を使っているのである。こんなダークで、それでいてウィットに富んだセリフが楽しめる脚本に仕上がっているのである。

音楽(トーマス・ニューマン)は、冒頭のテーマが画面とマッチして最高である。冒頭のテーマは、最近テレビ番組のBGMとかジングルとかで使用されているが、非常に印象的である。

とにかく本作「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」は、卓越した素晴らしい世界観と、ジム・キャリーをはじめとした曲者のオーバーアクトを楽しむ作品であるのだろう。
観客を選ぶ作品であると思うのだが、将来の俳優の芽を確認する上でも、是非観ていただきたい作品ではある。

余談だが「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」の邦題はどうだろうかと思う。レモニー・スニケットと言うのは作者の名前な訳で、勿論作者が本編にも登場しているのだが、観客に対して不親切な印象を受けた。
観客の多くは、レモニー・スニケットが一体何物なのか不思議に思っているのではないだろうか。

☆☆☆ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったらクリック!
http://blog.with2.net/link.php/29604

コメント

tkr

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索