2005/03/31 東京丸の内「森ビルホール」で「Shall we Dance?<シャル・ウィ・ダンス?>」の試写を観た。

シカゴの弁護士、ジョン・クラーク(リチャード・ギア)は穏やかな人柄でオフィスの人気者。家庭には良き妻ビヴァリー(スーザン・サランドン)とジェナ(タマラ・ホープ)とエヴァン(スターク・サンズ)が待っている。すべてが満たされているはずの彼だが、心のどこかに空しさがつきまとっていた・・・。

そんなある日、通勤電車からぼんやりと外を眺めていたジョンは、ダンス教室の窓辺にたたずむ美しい女性ポリーナ(ジェニファー・ロペス)の姿に目を留める。彼女は何を憂い、何を探して窓の外をみつめているのか?

その答えが知りたい衝動を抑えきれなくなったジョンは、ついに電車を途中下車し、ダンス教室へと足を踏み入れるが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:ピーター・チェルソム
原作:周防正行
出演:リチャード・ギア(ジョン・クラーク)、ジェニファー・ロペス(ポリーナ)、スーザン・サランドン(ビヴァリー・クラーク)、スタンリー・トゥッチ(リンク・ピーターソン)、ボビー・カナヴェイル(チック)、リサ・アン・ウォルター(ボビー)、オマー・ミラー(ヴァーン)、アニタ・ジレット(ミス・ミッツィー)、リチャード・ジェンキンス(ディバイン探偵)、タマラ・ホープ(ジェナ・クラーク)、スターク・サンズ(エヴァン・クラーク)、ニック・キャノン(スコット)

本作「Shall we Dance?<シャル・ウィ・ダンス?>」は、周防正行の「Shall We ダンス?」の驚くべきほど忠実なリメイク版である。

しかしながら、同じ物語を物語っていながらも、日米の文化差異を考えた場合、例えば電車通勤が意味する事柄は違うだろうし、日米の元来の食文化と言うか民族性の差異(極端に言うと狩猟民族と農耕民族との差異)により観客に与えるであろう微妙なニュアンスが異なるのが興味深かった。

特にヒロイン役が草刈民代からジェニファー・ロペスになった事により、本作はやはり肉食文化の国の映画だな、と言う印象が否定できない。

キャストはなんと言っても周防正行版「Shall We ダンス?」で竹中直人が演じた役柄を担ったスタンリー・トゥッチだろう。
竹中直人が演じたコミック・リリーフ的な役柄をほぼそのまま演じているのだが、大きな違いとしては、スタンリー・トゥッチは何しろ格好良いのだ。

日本国内では竹中直人の演技は最早飽きが来ている状況だが、スタンリー・トゥッチはその演技スタイルを踏襲しつつも、ダンディに格好良く魅せてくれるあたりが大変素晴らしい。
仮に「シコふんじゃった。」をハリウッドがリメイクするような事態になった場合、竹中直人の役は是非スタンリー・トゥッチに演っていただきたいと切に願う次第なのだ。

あとはスーザン・サランドンの起用が効果的だった。
周防正行版では原日出子が演じた主人公の妻役なのだが、名女優スーザン・サランドンの起用により、役柄がふくらみ、リチャード・ギアの物語を旋律と捉えるならば、スーザン・サランドンのそれは見事な対旋律を醸し出している。

またスーザン・サランドンと絡むリチャード・ジェンキンスも良い味を出していた。周防正行版では柄本明がこの役柄を演じていたのだが、リチャード・ジェンキンスはある意味、この物語の影の功労者と言える役柄を見事に演じている。

本作の基本コンセプトは「電車から降りる事」つまり「敷かれたレールから自らの意志で逸脱する事」を描いているのだが、物語の登場人物それぞれが、自らが敷いたレールを結果的に自らの意志で逸脱する事を選択している。
周防正行版では「電車から降りる」と言う事を明確に描いていなかったような気がするのだが、本作では、しつこいほどに電車の描写(例えば電車の視点から線路を撮影するカット)を行う事により、敷かれたレールからの逸脱を明確に語っているのだ。

そのあたりから考えても、本作は良い意味のリメイク作品だと言えると思う。

また、リチャード・ギア演じる主人公の職業が、役所広司の経理課長から弁護士に変わっているところが興味深い。
これは、冴えない事務職から、ある意味アッパークラスである弁護士に主人公の職業が変わっており、周防正行版の小市民のささやかな楽しみであった社交ダンスが、ある程度の名声と幸せを得たリチャード・ギアが、それ以上の幸せを望む物語になっている点が興味深いのである。
この辺が、オリジナル版とリメイク版の最大の相違点ではないか、と個人的には思ってしまうのだ。

その辺に目をつぶれば本作「Shall we Dance?<シャル・ウィ・ダンス?>」は大人の鑑賞に堪えうる素晴らしいファンタジー作品に仕上がっていると言える。
周防正行版「Shall We ダンス?」を知っている人も知らない人も、是非劇場で観ていただきたい作品だと思うのだ。

そして、本作「Shall we Dance?<シャル・ウィ・ダンス?>」を、自分がひいたレールを逸脱するひとつの転機として活用していただければ幸いだったりするのだ。

☆☆☆ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったらクリック!
http://blog.with2.net/link.php/29604

コメント

tkr

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索