「インファナル・アフェアIII/終極無間」
2005年4月7日 映画
2005/04/06 東京新橋「ヤクルトホール」で「インファナル・アフェアIII/終極無間」の試写を観た。
潜入捜査官ヤン(トニー・レオン)の殉職から10ケ月。
ラウ(アンディー・ラウ)は、2名の捜査官の殉職に関わる事件の内部査問も無事切り抜け、一時は庶務課配属になったものの、内務調査課の警部に返り咲く。
警察官として生きる道を選んだラウは、サム(エリック・ツァン)が警察内部に送り込んだ他の潜入マフィアの抹殺に血道をあげていたが、一方では、生まれたばかりの赤ん坊を連れ、ラウの元を去ってしまった妻マリー(サミー・チェン)との離婚調停の問題も抱え、ラウは憔悴しきっていた。
そんな最中、目的の為には手段を選ばない、公安部のエリート警官ヨン(レオン・ライ)が、何かにつけラウの前に立ちはだかる。
公安の壁に業を煮やすラウだったが、過去にヨンが、サムの商売相手だった本土の大物シェン(チェン・ダオミン)と接触していたことを知ったラウは、ヨンを潜入マフィアではないかと疑い、疑心暗鬼の中、独自の調査を開始するが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:アンドリュー・ラウ、アラン・マック
出演:アンディ・ラウ(ラウ)、トニー・レオン(ヤン)、レオン・ライ(ヨン)、ケリー・チャン(リー)、アンソニー・ウォン(ウォン)、エリック・ツァン(サム)、チャップマン・トウ(キョン)、サミー・チェン(ラウの妻マリー)、ショーン・ユー(若き日のヤン)、エディソン・チャン(若き日のラウ)、カリーナ・ラウ(サムの妻マリー)、チェン・ダオミン(シェン)
本作「インファナル・アフェアIII/終極無間」を観て最初に感じたのは、「よくもまあ、こんな壮大な物語をでっち上げたな」と言うものであった。
勿論、良い意味で、である。
元来「インファナル・アフェア」と言う作品は、香港が待ち臨んでいた香港版「ゴッドファーザー」とも言える作品であり、そう考えた場合本作「インファナル・アフェアIII/終極無間」は、前作の「インファナル・アフェア/無間序曲」を脇にどけると、「ゴッドファーザーPART II」的作品である。と言うことが出来る。
事実本作は、時系列的には、潜入捜査官ヤン(トニー・レオン)の殉職をひとつのポイントとして、その前の部分、その後の部分の物語を巧みに描写している。正に、「ゴッドファーザーPART II」の構成を踏襲している、と言えるだろう。
そしてその複雑な構成は、−−しつこいが二作目を脇にどけて考えて欲しい−−、シリーズを通して考えると若干の齟齬や矛盾はあるものの、見事に織られたひとつの工芸品のような輝きをはなっている。
そして第一作「インファナル・アフェア」と本作「インファナル・アフェアIII/終極無間」は同じ物語を語りながら、全く違う印象を観客に与えている。
これは例えるならば「エンダーのゲーム」と「エンダーズ・シャドウ」のような感覚なのだ。
更に言うならば、ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」のプリクェールででやりたかった、ミッシング・リンクが繋がる感じを先にやってしまった作品なのかもしれない。
「エピソードI」「エピソードII」「エピソードIII」を観る事により、従来の「エピソードIV」「エピソードV」「エピソードVI」の印象をガラリと変えさせてしまうように、である。
またこれはアゴタ・クリストフの「悪童日記」シリーズとも比較できるかもしれない。
知っていたハズの物語を再見し、新たな、全く逆の発想の視点を得られるとは、映画ファン冥利につきる一瞬である。
物語については、劇場で堪能していただくとして、気になる点を何点か紹介すると、先ず冒頭のエレベータ・シャフトのシークエンスと言うか、ビジュアル・イメージが秀逸である。これから地獄へ堕ちていく事を明示する素晴らしいオープニングである。
余談だが、リー先生(ケリー・チャン)の診察室のコメディ要素はいらないと思うぞ。「初診日」とか「診療二日目」とかスーパーが出た日にゃあ、一時はどうなるかと思ってしまった。
また、ディスプレイに描かれた赤い丸の真意は凄いぞ。
はっきり言ってわたしは臍を噛んだ。多くの観客同様わたしも、あの図形はラウの狂気を描写していると思っていたのだ。
わたしは北京語と関東語の区別は雰囲気でしかわからないが、気になったのは、本作「インファナル・アフェアIII/終極無間」は、前作・前々作の「インファナル・アフェア」、「インファナル・アフェアII/無間序曲」と原語が違うんじゃないか、という事。
基本的に、香港映画は広東語版と北京語版が製作されるし、一般的に吹替えが行われている。
例えば日本で公開された「インファナル・アフェア」と「インファナル・アフェアII/無間序曲」が北京語(または広東語)だとすると、今回の「インファナル・アフェアIII/終極無間」は広東語(北京語)ではないのかな、と思ったのだ。
何につけても、リップ・シンクがガタガタだった印象が強い。
あと気になって仕方がないのがやはりヤンとキョンの関係だろう。
時系列的に考えると、ヤンはもともとサムの配下にいたキョンの下についた(「インファナル・アフェアII/無間序曲」)事から、キョンの子分的名役柄だったのだが、殉職前サムに裏切られるシークエンスでは、キョンの大切な友達(「インファナル・アフェアIII/終極無間」)に格上げされ、殉職する直前では、キョンに兄貴呼ばわりされている(「インファナル・アフェア」)のだ。
ヤン>キョン 「インファナル・アフェア」
ヤン<キョン 「インファナル・アフェアII/無間序曲」
ヤン=キョン 「インファナル・アフェアIII/終極無間」
あとは、本作のラストのシークエンスが、「インファナル・アフェア」の冒頭に繋がるあたりが、ラウの無間地獄を如実に表していて、良いですね。ラウは何度も何度も三部作を繰り返す訳ですから。
まあ、とにかく、取りあえず「インファナル・アフェア」を観直してから、劇場にゴー!的作品ではあるので、是非劇場に足を運んで欲しいと思う訳だ。
劇場に行け! 観ろ! そして、泣け!
「インファナル・アフェア」、「インファナル・アフェアII/無間序曲」、「インファナル・アフェアIII/終極無間」をリアルタイムに体験できる世代に生まれた事を感謝するのじゃあ!
☆☆☆★ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
「インファナル・アフェア」
http://diarynote.jp/d/29346/20040115.html
「インファナル・アフェアII/無間序曲」
http://diarynote.jp/d/29346/20041007.html
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潜入捜査官ヤン(トニー・レオン)の殉職から10ケ月。
ラウ(アンディー・ラウ)は、2名の捜査官の殉職に関わる事件の内部査問も無事切り抜け、一時は庶務課配属になったものの、内務調査課の警部に返り咲く。
警察官として生きる道を選んだラウは、サム(エリック・ツァン)が警察内部に送り込んだ他の潜入マフィアの抹殺に血道をあげていたが、一方では、生まれたばかりの赤ん坊を連れ、ラウの元を去ってしまった妻マリー(サミー・チェン)との離婚調停の問題も抱え、ラウは憔悴しきっていた。
そんな最中、目的の為には手段を選ばない、公安部のエリート警官ヨン(レオン・ライ)が、何かにつけラウの前に立ちはだかる。
公安の壁に業を煮やすラウだったが、過去にヨンが、サムの商売相手だった本土の大物シェン(チェン・ダオミン)と接触していたことを知ったラウは、ヨンを潜入マフィアではないかと疑い、疑心暗鬼の中、独自の調査を開始するが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:アンドリュー・ラウ、アラン・マック
出演:アンディ・ラウ(ラウ)、トニー・レオン(ヤン)、レオン・ライ(ヨン)、ケリー・チャン(リー)、アンソニー・ウォン(ウォン)、エリック・ツァン(サム)、チャップマン・トウ(キョン)、サミー・チェン(ラウの妻マリー)、ショーン・ユー(若き日のヤン)、エディソン・チャン(若き日のラウ)、カリーナ・ラウ(サムの妻マリー)、チェン・ダオミン(シェン)
本作「インファナル・アフェアIII/終極無間」を観て最初に感じたのは、「よくもまあ、こんな壮大な物語をでっち上げたな」と言うものであった。
勿論、良い意味で、である。
元来「インファナル・アフェア」と言う作品は、香港が待ち臨んでいた香港版「ゴッドファーザー」とも言える作品であり、そう考えた場合本作「インファナル・アフェアIII/終極無間」は、前作の「インファナル・アフェア/無間序曲」を脇にどけると、「ゴッドファーザーPART II」的作品である。と言うことが出来る。
事実本作は、時系列的には、潜入捜査官ヤン(トニー・レオン)の殉職をひとつのポイントとして、その前の部分、その後の部分の物語を巧みに描写している。正に、「ゴッドファーザーPART II」の構成を踏襲している、と言えるだろう。
そしてその複雑な構成は、−−しつこいが二作目を脇にどけて考えて欲しい−−、シリーズを通して考えると若干の齟齬や矛盾はあるものの、見事に織られたひとつの工芸品のような輝きをはなっている。
そして第一作「インファナル・アフェア」と本作「インファナル・アフェアIII/終極無間」は同じ物語を語りながら、全く違う印象を観客に与えている。
これは例えるならば「エンダーのゲーム」と「エンダーズ・シャドウ」のような感覚なのだ。
更に言うならば、ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」のプリクェールででやりたかった、ミッシング・リンクが繋がる感じを先にやってしまった作品なのかもしれない。
「エピソードI」「エピソードII」「エピソードIII」を観る事により、従来の「エピソードIV」「エピソードV」「エピソードVI」の印象をガラリと変えさせてしまうように、である。
またこれはアゴタ・クリストフの「悪童日記」シリーズとも比較できるかもしれない。
知っていたハズの物語を再見し、新たな、全く逆の発想の視点を得られるとは、映画ファン冥利につきる一瞬である。
物語については、劇場で堪能していただくとして、気になる点を何点か紹介すると、先ず冒頭のエレベータ・シャフトのシークエンスと言うか、ビジュアル・イメージが秀逸である。これから地獄へ堕ちていく事を明示する素晴らしいオープニングである。
余談だが、リー先生(ケリー・チャン)の診察室のコメディ要素はいらないと思うぞ。「初診日」とか「診療二日目」とかスーパーが出た日にゃあ、一時はどうなるかと思ってしまった。
また、ディスプレイに描かれた赤い丸の真意は凄いぞ。
はっきり言ってわたしは臍を噛んだ。多くの観客同様わたしも、あの図形はラウの狂気を描写していると思っていたのだ。
わたしは北京語と関東語の区別は雰囲気でしかわからないが、気になったのは、本作「インファナル・アフェアIII/終極無間」は、前作・前々作の「インファナル・アフェア」、「インファナル・アフェアII/無間序曲」と原語が違うんじゃないか、という事。
基本的に、香港映画は広東語版と北京語版が製作されるし、一般的に吹替えが行われている。
例えば日本で公開された「インファナル・アフェア」と「インファナル・アフェアII/無間序曲」が北京語(または広東語)だとすると、今回の「インファナル・アフェアIII/終極無間」は広東語(北京語)ではないのかな、と思ったのだ。
何につけても、リップ・シンクがガタガタだった印象が強い。
あと気になって仕方がないのがやはりヤンとキョンの関係だろう。
時系列的に考えると、ヤンはもともとサムの配下にいたキョンの下についた(「インファナル・アフェアII/無間序曲」)事から、キョンの子分的名役柄だったのだが、殉職前サムに裏切られるシークエンスでは、キョンの大切な友達(「インファナル・アフェアIII/終極無間」)に格上げされ、殉職する直前では、キョンに兄貴呼ばわりされている(「インファナル・アフェア」)のだ。
ヤン>キョン 「インファナル・アフェア」
ヤン<キョン 「インファナル・アフェアII/無間序曲」
ヤン=キョン 「インファナル・アフェアIII/終極無間」
あとは、本作のラストのシークエンスが、「インファナル・アフェア」の冒頭に繋がるあたりが、ラウの無間地獄を如実に表していて、良いですね。ラウは何度も何度も三部作を繰り返す訳ですから。
まあ、とにかく、取りあえず「インファナル・アフェア」を観直してから、劇場にゴー!的作品ではあるので、是非劇場に足を運んで欲しいと思う訳だ。
劇場に行け! 観ろ! そして、泣け!
「インファナル・アフェア」、「インファナル・アフェアII/無間序曲」、「インファナル・アフェアIII/終極無間」をリアルタイムに体験できる世代に生まれた事を感謝するのじゃあ!
☆☆☆★ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
「インファナル・アフェア」
http://diarynote.jp/d/29346/20040115.html
「インファナル・アフェアII/無間序曲」
http://diarynote.jp/d/29346/20041007.html
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