「ロング・エンゲージメント」
2005年3月8日 映画
2005/03/01 東京霞ヶ関「イイノホール」で「ロング・エンゲージメント」の試写を観た。
第一次大戦下のフランス、ブルターニュ地方。まるで子供のように純粋に惹かれ合うマチルド(オドレイ・トトゥ)とマネク(ギャスパー・ウリエル)は、誰が見てもお似合いの恋人同士だった。
だが過酷な運命はそんなふたりをも引き裂いてしまう。
戦場に旅立ったマネクの身を案じていたマチルドのもとにある日、悲報がもたらされる。軍法会議で死罪を宣告された彼が、ドイツ軍との前線である”ビンゴ・クレビュスキュル”に、武器もなく置き去りにされたというのだ。だが、彼の最後を見届けたものはいない。
その日以来、マチルドの必死の捜索が始まる。彼に何かあれば、私にはわかる・・・・、マチルドは不思議な愛の直感に導かれながら、複雑に絡まった糸をほどくかのように、ミステリーを解き明かしていくが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督・脚本:ジャン=ピエール・ジュネ
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演:オドレイ・トトゥ(マチルド)、ギャスパー・ウリエル(マネク)、ジャン=ピエール・ベッケル(エスペランザ)、ドミニク・ベテンフェルド(アンジュ・バシニャーノ)、クロヴィス・コルニヤック(ブノワ・ノートルダム)、マリオン・コティヤール(ティナ・ロンバルディ)、ジャン=ピエール・ダルッサン(ゴルド伍長)、ジュリー・ドパルデュー(ヴェロニック・パッサヴァン)、アンドレ・デュソリエ(ピエール=マリー・ルヴィエール/管財人)、ティッキー・オルガド(ジャルマン・ピエール/私立探偵)、ジェローム・キルシャー(バストーシュ)、ドニ・ラヴァン(シ・スー/フランシス)、シャンタル・ヌーヴィル(ベネディクト/伯母)、ドミニク・ピノン(シルヴァン/伯父)、ジャン=ポール・ルーヴ(郵便配達人)、ミシェル・ヴュイエルモーズ(プチ・ルイ)、ジョディ・フォスター(エロディ・ゴルド)
本作「ロング・エンゲージメント」は、「アメリ」で世界中を魅了した、ジャン=ピエール・ジュネ、オドレイ・トトゥコンビの期待の新作である。
気になる作品の方向性は、ジャン=ピエール・ジュネの初期のそれよりは、前作「アメリ」の方向性を色濃くくみとり、おそらく若い女性層に最もアピールするような方向性(プロモーション展開)を持つ作品だと言えるだろう。
しかし、ジャン=ピエール・ジュネの初期の作品のような趣向は無いのか、と言うとそうでもなく、初期の作品のファンも、「アメリ」のファンも同程度に楽しめるような作品に仕上がっていると思う。
とは言うものの、物語の骨子は「アメリ」に近く、「アメリ」同様、本作には大きな謎が隠されている。
そのため本作「ロング・エンゲージメント」の多くの時間は、その大きな謎の周辺部分の断片を丹念に描く事に費やされているのだ。
その周辺部分を丹念に描く、まるでジグソー・パズルのような構成を持った本作は、ラストのピースをはめる楽しみを、これでもかこれでもかと言う程、引っ張り、所謂周りのピースを丹念に描写し続けている。
しかし、果たしてこの手法が、本作のプロモーションにより、劇場に動員された多くの女性客に理解してもらえるかどうかは、釈然としない印象を受ける。
言うなれば、単純でわかりやすいラブ・ストーリーを期待する観客には、本作は複雑でわかりにくい構成を持った映画に仕上がっていると思えてならない。
そしてその謎解きは、例えは悪いがアガサ・クリスティの世界観で横溝正史が謎をかけたような雰囲気を醸し出しているのだ。
キャストは全てのキャストが良い仕事をしている。
ジャン=ピエール・ジュネがキャストに求めたものの全てがスクリーンに見事に定着されているような印象を受ける。
ホント誰の演技がどうだのこうだの言うのが無意味に思えるほど全てのキャストが全てのキャラクターを見事に演じているのだ。
余談だがジョディ・フォスターの登場には驚かされてしまった。
と言うのも、なんだかジョディ・フォスターにそっくりだけど、やたら若いな、まさか本人じゃないよな、と思って見ていたら、その女優はなんとジョディ・フォスター本人だったのだ。
つまり、本作のジョディ・フォスターは実年齢と比較しておそろしく若く見えるのだ。女優は、否女性は怖いぞ。
撮影(ブリュノ・デルボネル)は、戦場を描く色彩とブルターニュやパリの色彩とを見事に使い分け、素晴らしい効果を出している。戦場は寒色を基調とした彩度が低い色調で描かれ、またブルターニュ等は暖色を基調とした暖かな色調で統一されている。
この対比が美しく、ラストの暖色系の中のシークエンスがより効果的な印象を観客に与えている。
またブリュノ・デルボネルは、ジャン=ピエール・ジュネ独特の視点により、一般的な風景を描きつつも、画面構成等で何かしら一風変わったマニアックで印象的な映像を観客の心に留める事に成功している。
音楽はなんとアンジェロ・バダラメンティ。
デヴィッド・リンチ作品でおなじみのアンジェロ・バダラメンティと言えば、奇をてらったようなマニアックで印象的な作風だと思うのだが、本作では順当で美しい旋律を聴かせてくれている。
デヴィッド・リンチ好きとしては、アンジェロ・バダラメンティが音楽を担当しているだけで、嬉しくなってしまう。
ジャン=ピエール・ジュネの作風は、デヴィッド・リンチの作風とある意味似ている部分があると個人的には思っているので、今後もアンジェロ・バダラメンティの起用を期待してしまう。
美術(アリーヌ・ボネット)も素晴らしい仕事をしている。
アリーヌ・ボネットという人物は寡聞にして知らないのだが、戦場にしろブルターニュ地方にしろ、素晴らしい世界観やドラマを構築している。
ジャン=ピエール・ジュネのマニアックな世界観を見事に再現しているのだ。
つらつらとレビューを書いているだけで、ますます本作「ロング・エンゲージメント」の素晴らしさに唸らされてしまう。
本作「ロング・エンゲージメント」は、映画ファン必見、と言うより最早映画ファンの「義務」と言っても差支えない素晴らしい作品なのだ。
観ろ!
☆☆☆☆ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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第一次大戦下のフランス、ブルターニュ地方。まるで子供のように純粋に惹かれ合うマチルド(オドレイ・トトゥ)とマネク(ギャスパー・ウリエル)は、誰が見てもお似合いの恋人同士だった。
だが過酷な運命はそんなふたりをも引き裂いてしまう。
戦場に旅立ったマネクの身を案じていたマチルドのもとにある日、悲報がもたらされる。軍法会議で死罪を宣告された彼が、ドイツ軍との前線である”ビンゴ・クレビュスキュル”に、武器もなく置き去りにされたというのだ。だが、彼の最後を見届けたものはいない。
その日以来、マチルドの必死の捜索が始まる。彼に何かあれば、私にはわかる・・・・、マチルドは不思議な愛の直感に導かれながら、複雑に絡まった糸をほどくかのように、ミステリーを解き明かしていくが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督・脚本:ジャン=ピエール・ジュネ
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演:オドレイ・トトゥ(マチルド)、ギャスパー・ウリエル(マネク)、ジャン=ピエール・ベッケル(エスペランザ)、ドミニク・ベテンフェルド(アンジュ・バシニャーノ)、クロヴィス・コルニヤック(ブノワ・ノートルダム)、マリオン・コティヤール(ティナ・ロンバルディ)、ジャン=ピエール・ダルッサン(ゴルド伍長)、ジュリー・ドパルデュー(ヴェロニック・パッサヴァン)、アンドレ・デュソリエ(ピエール=マリー・ルヴィエール/管財人)、ティッキー・オルガド(ジャルマン・ピエール/私立探偵)、ジェローム・キルシャー(バストーシュ)、ドニ・ラヴァン(シ・スー/フランシス)、シャンタル・ヌーヴィル(ベネディクト/伯母)、ドミニク・ピノン(シルヴァン/伯父)、ジャン=ポール・ルーヴ(郵便配達人)、ミシェル・ヴュイエルモーズ(プチ・ルイ)、ジョディ・フォスター(エロディ・ゴルド)
本作「ロング・エンゲージメント」は、「アメリ」で世界中を魅了した、ジャン=ピエール・ジュネ、オドレイ・トトゥコンビの期待の新作である。
気になる作品の方向性は、ジャン=ピエール・ジュネの初期のそれよりは、前作「アメリ」の方向性を色濃くくみとり、おそらく若い女性層に最もアピールするような方向性(プロモーション展開)を持つ作品だと言えるだろう。
しかし、ジャン=ピエール・ジュネの初期の作品のような趣向は無いのか、と言うとそうでもなく、初期の作品のファンも、「アメリ」のファンも同程度に楽しめるような作品に仕上がっていると思う。
とは言うものの、物語の骨子は「アメリ」に近く、「アメリ」同様、本作には大きな謎が隠されている。
そのため本作「ロング・エンゲージメント」の多くの時間は、その大きな謎の周辺部分の断片を丹念に描く事に費やされているのだ。
その周辺部分を丹念に描く、まるでジグソー・パズルのような構成を持った本作は、ラストのピースをはめる楽しみを、これでもかこれでもかと言う程、引っ張り、所謂周りのピースを丹念に描写し続けている。
しかし、果たしてこの手法が、本作のプロモーションにより、劇場に動員された多くの女性客に理解してもらえるかどうかは、釈然としない印象を受ける。
言うなれば、単純でわかりやすいラブ・ストーリーを期待する観客には、本作は複雑でわかりにくい構成を持った映画に仕上がっていると思えてならない。
そしてその謎解きは、例えは悪いがアガサ・クリスティの世界観で横溝正史が謎をかけたような雰囲気を醸し出しているのだ。
キャストは全てのキャストが良い仕事をしている。
ジャン=ピエール・ジュネがキャストに求めたものの全てがスクリーンに見事に定着されているような印象を受ける。
ホント誰の演技がどうだのこうだの言うのが無意味に思えるほど全てのキャストが全てのキャラクターを見事に演じているのだ。
余談だがジョディ・フォスターの登場には驚かされてしまった。
と言うのも、なんだかジョディ・フォスターにそっくりだけど、やたら若いな、まさか本人じゃないよな、と思って見ていたら、その女優はなんとジョディ・フォスター本人だったのだ。
つまり、本作のジョディ・フォスターは実年齢と比較しておそろしく若く見えるのだ。女優は、否女性は怖いぞ。
撮影(ブリュノ・デルボネル)は、戦場を描く色彩とブルターニュやパリの色彩とを見事に使い分け、素晴らしい効果を出している。戦場は寒色を基調とした彩度が低い色調で描かれ、またブルターニュ等は暖色を基調とした暖かな色調で統一されている。
この対比が美しく、ラストの暖色系の中のシークエンスがより効果的な印象を観客に与えている。
またブリュノ・デルボネルは、ジャン=ピエール・ジュネ独特の視点により、一般的な風景を描きつつも、画面構成等で何かしら一風変わったマニアックで印象的な映像を観客の心に留める事に成功している。
音楽はなんとアンジェロ・バダラメンティ。
デヴィッド・リンチ作品でおなじみのアンジェロ・バダラメンティと言えば、奇をてらったようなマニアックで印象的な作風だと思うのだが、本作では順当で美しい旋律を聴かせてくれている。
デヴィッド・リンチ好きとしては、アンジェロ・バダラメンティが音楽を担当しているだけで、嬉しくなってしまう。
ジャン=ピエール・ジュネの作風は、デヴィッド・リンチの作風とある意味似ている部分があると個人的には思っているので、今後もアンジェロ・バダラメンティの起用を期待してしまう。
美術(アリーヌ・ボネット)も素晴らしい仕事をしている。
アリーヌ・ボネットという人物は寡聞にして知らないのだが、戦場にしろブルターニュ地方にしろ、素晴らしい世界観やドラマを構築している。
ジャン=ピエール・ジュネのマニアックな世界観を見事に再現しているのだ。
つらつらとレビューを書いているだけで、ますます本作「ロング・エンゲージメント」の素晴らしさに唸らされてしまう。
本作「ロング・エンゲージメント」は、映画ファン必見、と言うより最早映画ファンの「義務」と言っても差支えない素晴らしい作品なのだ。
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