先日「ローレライ」のレビューを書いたのだが、語りつくせない熱いモノがあるのでちょっとお話してみたいと思う。

とりあえず、こちらを先に見てください。
「ローレライ」http://diarynote.jp/d/29346/20050302.html

1.絹見真一(少佐/伊507艦長)の背景
浅倉良橘大佐(堤真一)に極秘命令を受けるまで閑職に甘んじていた、絹見真一(役所広司)だが、絹見が失脚したのは、人間魚雷「回天」(※1)の作戦は最早作戦ではないと、作戦に異を唱えた事による。この一件により絹見は臆病者のレッテルを貼られることになる訳だ。

この絹見のバックグラウンドを聞いて思い出したのは、「宇宙戦艦ヤマト」第一話において、冥王星宙域の地球防衛軍とガミラス帝国艦隊の最中、撤退命令を出した沖田十三(納谷悟郎)のセリフに対する古代守(広川太一郎)のセリフである。

沖田十三:「いいか古代、ここで全滅してしまったら地球を守るために戦う者がいなくなってしまうのだ。明日のために今日の屈辱に耐えるんだ。それが男だ!」
古代守:「沖田さん、男だったら戦って戦って戦い抜いて一つでも多くの敵をやっつけて死ぬべきではありませんか!」

そして沖田の指揮虚しく死んでいった古代守の弟である古代進(富山敬)は、兄・守を死なせた沖田を信頼せず、ヤマトの責任者沖田と反目することになるのだ。

そう、絹見真一は沖田十三であり、兄を亡くした人間魚雷「回天」の操縦士・折笠征人(妻夫木聡)は、古代進の役を振られている訳なのだ。

余談だが、一般的には絹見真一はブライト・ノアで、折笠征人はアムロ・レイだと言われているようだが、実際は沖田十三と古代進の影が色濃く感じられる。

ついでに本作には、徳川機関長は小野武彦(岩村機関長)で佐渡先生は國村隼(時岡軍医)が振られているし、真田さんは石黒賢(高須成美)なのである。

更についでに「○○まであと○○時間」とか言うスーパーは、モロに「宇宙戦艦ヤマト」だったりする。

2.悩む艦長・絹見真一の話
伊507の艦長・絹見は脚本上悩むキャラクターとして描かれている。尤も伊507発進後の急速潜航のシークエンスでは、独断的で非常な艦長の側面が描写されていたのだが、その後は何かにつけて悩み、決断が遅い優柔不断なキャラクターとして描かれている。

それで思いだしたのが「ザ・ロック」のフランシス・X・ハメル准将(エド・ハリス)である。

「ザ・ロック」は一般的には人気のあるアクション大作なのだが、わたし的にはジェリー・ブラッカイマーとマイケル・ベイが組んだダメ映画の第一作目だと思うのだ。(その前作「バッド・ボーイズ」はとりあえず良しとする)

でその「ザ・ロック」でエド・ハリスが演じたテロリスト(?)のキャラクターが脚本上ダメなのだ。
テロリストを率いるリーダーのくせに優柔不断で部下に突き上げられ、判断を煽られてしまうダメなキャラクターとして描かれているのだ。
名優エド・ハリスを、何と言うバカなキャラクターに使っているんだよ!と怒りさえおぼえてしまう。

とにかく、悪にしろ善にしろリーダーとなる人物は、悩むキャラクターとして設定してはいけないのである。
何しろ、脚本上で悩むキャラクターは、大前提として成長すべきキャラクターなのであるから。
そう考えた場合、エド・ハリスにしろ役所広司にしろ、出来上がった大人のキャラクターなのだかな、悩むキャラクター(成長するキャラクター)として脚本が書かれているのは、正に噴飯モノと言えるのだ。

例えば「ダイ・ハード」のアラン・リックマン(ハンス・グルーバー)を見ろ!と言うことなのだ。
あれこそ、キャラクターの設定にブレが無い、正しいリーダー像と言えるのだ。

または「逃亡者」のトミー・リー・ジョーンズ(サミュエル・ジェラード捜査官)とかね。

3.木崎茂房(柳葉敏郎)を考える
本作「ローレライ」との共通点が多く、おそらく下敷きにもなったと思われる「潜水艦イ-57降伏せず」(※2)にしても何にしても艦長と副長(先任将校)は対立するのがセオリーなのだ。
しかしながら、本作の艦長が非情で独断専行ではない以上、そのセオリーが通じる訳は無いのかも知れないが、潜水艦映画のひとつの楽しみが、何と言っても対立する艦長と副長の姿なのだ。
勿論、それはお約束のパターンだ、本作はそれをワザと外しているのだよ、と言われたら返す言葉は無いのだが、閉鎖された環境の中で対立しあう姿を描写せずに、何が潜水艦映画なのか、と思う訳だ。

先日もお話したのだが、仮に役所広司がジーン・ハックマンだったら柳葉敏郎はデンゼル・ワシントンなのだ。(※3)
デンゼル・ワシントンがジーン・ハックマンに迎合してどうするんだよ、と言う事なのだ。

また、木崎茂房の最後の見せ場にも驚いた。
同じ艦船モノの「ポセイドン・アドベンチャー」や「スター・トレック2/カーンの逆襲」かと思ってしまったのだ。
木崎茂房が最後に「Remember」とか何とか言わないかと思い、ヒヤヒヤしてしまったのだ。

3.パウラ・A・エブナー(香椎由宇)を考える
「ローレライ」を「機動戦士ガンダム」と比較した場合、パウラはララァ・スンだと言うのが一般的な解釈のようである。
またパウラのビジュアル・コンセプトは「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイだと言うのが一般的なようである。

しかしポスター等のアートワークで使用されている潜水服みたいなスチールは「怪獣大戦争」のX星人のコスチュームみたいだし、白い包帯チックな衣装は「フィフス・エレメント」にも似ているし、「宇宙戦艦ヤマト」の森雪のユニフォームの黒い部分を切り取ったモノのような印象も受ける。
因みに「新世紀エヴァンゲリオン」は「宇宙戦艦ヤマト」の引用に満ちているのは承知の事だろう。

あと、伊507と繋がったN式潜航艇の中にいるパウラと折笠征人は、タイガーモス号に繋がった凧の中にいるシータとパズー(※4)のようである。
余談だが、シータとパズーの凧は雲の上に出て敵船を視認(ローレライ・システム)するために飛ばされたもので、最後はタイガーモス号の艇長ドーラによって切り離される。
これはただの偶然だろうか。

つづくかも・・・・。

※1 人間魚雷については先頃永眠した岡本喜八の「肉弾」と言う傑作があるので、そちらを参照していただきたい。

※2 「潜水艦イ-57降伏せず」太平洋戦争末期、極秘の和平工作のため外交官とその娘を極秘裏に潜水艦が運ぶ話

※3 勿論潜水艦映画の傑作「クリムゾン・タイド」の事である。

※4 舞台は空だが勿論「天空の城ラピュタ」の事である。

■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったらクリック!
http://blog.with2.net/link.php/29604

コメント

tkr

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索