2005/02/25 東京有楽町「日劇2」で「オペラ座の怪人」を観た。

1919年パリ。
かつて栄華を極めたオペラ座も今や廃墟と化してした。
その廃墟となったオペラ座では、当時の遺物が次々とオークションにかけられていた。
そして、謎の惨劇に関わったといういわく付きのシャンデリアが紹介された瞬間、時代はその悲劇をもたらした1870年代へと舞い戻っていく・・・・。

当時、華やかな舞台でにぎわうオペラ座は、一方で、仮面をかぶった謎の怪人“ファントム”の仕業とみられる奇怪な事件の頻発に揺れていた。
そのファントムを、亡き父が授けてくれた“音楽の天使”と信じ、彼の指導で歌の才能を伸ばしてきた若きコーラスガール、クリスティーヌ(エミー・ロッサム)。
彼女はある時、代役として新作オペラの主演に大抜擢され、喝采を浴びる。幼馴染みの青年貴族ラウル(パトリック・ウィルソン)も祝福に訪れ、2人は再会を喜び合う。
だがその直後、ファントム(ジェラルド・バトラー)が現われ、クリスティーヌをオペラ座の地下深くへと誘い出すのだった・・・・。
 
 
監督・脚本:ジョエル・シュマッカー
原作:ガストン・ルルー
製作・脚本・作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー
出演:ジェラルド・バトラー(ファントム)、エミー・ロッサム(クリスティーヌ)、パトリック・ウィルソン(ラウル)、ミランダ・リチャードソン(マダム・ジリー)、ミニー・ドライヴァー(カルロッタ)、シアラン・ハインズ(フィルマン)、サイモン・カロウ(アンドレ)、ジェニファー・エリソン(メグ・ジリー)

本作「オペラ座の怪人」は、アンドリュー・ロイド=ウェバー版ミュージカル「オペラ座の怪人」の映画化作品である。

「オペラ座の怪人」は1925年のロン・チェイニーがファントムを演じて以来、何度も映像化されているし、ステージ・ミュージカルとしても1976年初演のケン・ヒル版、そして今回映画化されたアンドリュー・ロイド=ウェバー版(1986年初演)と、様々なバージョンが存在する。

で、本作は日本でも劇団四季が公演を行っているアンドリュー・ロイド=ウェバー版の映画化作品と言う訳である。

※ 今回のレビューは原則的に舞台版との比較はしないことにする。

本作を観て印象に残ったのは、やはりなんと言っても楽曲とその楽曲にのる詩の構成の匠さである。
同一の楽曲なのに、場面と歌い手が代わると、その楽曲が表現している事や情感がガラリと変わる、と言う手法が見事である。
勿論これは言わずもがなだしあたり前のことなのだが、ある意味単調な同じ楽曲の繰り返しに過ぎないものが、歌い手と詩が代わる事により、饒舌にそしてエモーショナルに観客に語りかけてくるのだ。因みに押韻も素晴らしいぞ。

また舞台の公演ではでは真似の出来ないドラマチックな舞台(ステージではなく場所の意)の展開も楽しめる。舞台のように物理的・時間的に制約された舞台(場所の意)の巧妙な演出手法ではなく、様々な制限から解き放たれたドラマチックな演出が楽しめるのだ。
このあたりは舞台版と比較して優位なところであろうか。

キャストについてだが、ジェラルド・バトラー(ファントム)の歌唱力については、一般的に評判が悪いようだが、映画単体として考えた場合、全くと言って良いほど問題がないとわたしは思う。

またヒロインのエミー・ロッサム(クリスティーヌ)はヒロインとしては若干「華」が足りないような印象を受けたが、エモーショナルな歌唱と相まって良い印象を受けた。

パトリック・ウィルソン(ラウル)は3人の主要キャストから見ると、添え物的なキャストといわざるを得ないのだが、物語を語る上で印象に残る役柄を演じていた。

しかし主役3人についてはキャラクター設定がそうなのか、演出がそうなのか、演技がそうなのかわからないのだが、人間的な暖かみに乏しく、まるでプラスティックで出来ている人間のような印象を受けた。

一方、キャラクター的にユーモラスな側面を出しているミニー・ドライヴァー(カルロッタ)、シアラン・ハインズ(フィルマン)、サイモン・カロウ(アンドレ)等が良かった。
勿論彼らは、主役3人の重いドラマに対するコメディ・リリーフ的な役柄をふられているのだとは思うのだが、その甲斐あってか、主役3人と比較すると人間味に溢れる魅力的なキャラクターに感じられる。これは、笑顔のせいかも知れない。

また演出的手法としては、要所要所で挿入されるモノクロのシークエンスには釈然としない気持ちである。
もしかすると舞台の幕間を意識したインターミッション的なシークエンスのつもりなのかも知れないのだが、このモノクロのシークエンスは観客の集中力を途絶させ、観客が物語に没入するのを阻害する結果に終わっている。

冒頭のモノクロのシークエンスから時代が遡るシーンは大変効果的で感動的なものに仕上がっているし、ラストのモノクロのシークエンスからアップについては素晴らしいだけに、残念な気がする。つまり、モノクロのシークエンスは冒頭とラストだけで十分であとはいらないのだ。

余談だが、オルガンをフィーチャーした重厚で荘厳なテーマは「ファントム・オブ・ザ・パラダイス」の影響を見て取れるような気がした。
またダニー・エルフマンが書いた「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」のスコアはアンドリュー・ロイド=ウェバー版「オペラ座の怪人」を意識しているのではないか、とも思えた。

楽曲全体として考えるとさすがに素晴らしいのだが、シンセを使うのではなく、全て弦と管で表現して欲しかったような気がした。

なんでもアンドリュー・ロイド=ウェバーは本作を制作することによりアンドリュー・ロイド=ウェバー版「オペラ座の怪人」の永久保存版を創ろうとしたらしいのだが、賛否はあるだろうが、概ね成功しているような印象を受けた。

とにかく本作「オペラ座の怪人」は、絢爛豪華な一大絵巻物として、またミュージカルへの導入として、またはステージ・ミュージカルへの誘いとして十分に機能する感動の巨編と言えるのだ。

現在公開中の大作映画の中では、本作は良心的で良質な作品に仕上がっている。是非劇場に足を運んで欲しい、と思う訳だ。

☆☆☆★ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったらクリック!
http://blog.with2.net/link.php/29604

コメント

tkr

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索