2005/02/26 東京銀座「銀座ガスホール」で「サイドウェイ」の試写を観た。
離婚のショックから立ち直れない小説家志望の教師マイルス(ポール・ジアマッティ)は、結婚を一週間後に控えた大学時代からの親友で売れない俳優のジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)とカリファルニアのワイナリー巡りの旅に出る。
男二人のワイン三昧の気ままな旅は、ワイン好きの魅力的な女性マヤ(ヴァージニア・マドセン)とステファニー(サンドラ・オー)の出会いをきっかけにマイルス自身を見つめ直す旅へと変わっていく。(ちらしよりほぼ引用)
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ(マイルス)、トーマス・ヘイデン・チャーチ(ジャック)、ヴァージニア・マドセン(マヤ)、サンドラ・オー(ステファニー)
本作「サイドウェイ」はご承知のように低予算映画ながら数々の賞を受賞している作品である。
そう言うこともあり、わたし的には「第77回アカデミー賞授賞式」前に何とか観たいと思っていた作品だったのだ。
そんな訳で、この度なんとか滑り込みで本作を鑑賞する事が出来た訳なのだ。
さて本編についてだが、一言で言うと本作「サイドウェイ」は本当に素晴らしい作品である。
脚本はご存知のように、ワインをフィーチャーしたもので、そのワインや葡萄の熟成や育成を、登場人物そしてわれわれ観客の人生や愛に例えた見事なもので、男二人の莫迦さ加減にゲラゲラ笑いながら、気が付いたら涙を零してしまっている、または見事に背中を押されてしまっている、むという感じのさわやかな感動作品に仕上がっている。
個人的には、特にラスト・カットからの暗転の潔さが大変素晴らしく、こんな格好良い幕切れを持つ作品は、最近お目にかかっていないと思う。
勿論アレクサンダー・ペインの前作「アバウト・シュミット」のラスト・カットも余韻が楽しめる素晴らしい幕切れだったのだが、本作の幕切れは、それ以上の感慨と余韻が楽しめる素晴らしいカットが使用されている。
とは言うものの、やはり低予算映画的な印象は否定できず、「アカデミー賞」の前哨戦たる様々な批評家協会賞の受賞は納得できるものの、果たしてかの「アカデミー賞」を見事受賞できるかどうかと言うと、若干微妙な印象を受けざるを得ない。
勿論、大作嗜好や賞狙い作品へのアンチテーゼ的なチャンスはあると思うのだが、その辺が興味深いのだ。
キャストは、はっきり言って主要キャストは四人とも大変素晴らしい。
と言うか、低予算映画の宿命と言うもので、脚本と演技合戦でしか勝負できないのだから、演技が素晴らしいのは当たり前なのだが・・・・
主役のマイルスを演じたポール・ジアマッティは、われわれ一般大衆のメタファーとなるキャラクターであり、若干神経質でモラリスト、そしてある種自分の閉鎖的な世界を持つ、平均的な大衆を体現するキャラクターとして描写されている。
そしてマイルスは、人生の中で重要な一歩をなかなか踏み出せない、自らが自らの周りに築いてしまっている心の壁に行動を制限されているキャラクターとして描かれているのだ。
そのダメな中年男をポール・ジアマッティは見事に演じている。
モラルや理性に縛られたマイルスのキャラクターは観客が一番感情移入しやすいキャラクターだろう。
一方、モラルが低く本能のままに行動してしまうジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)は、われわれ一般大衆のモラルはともかく、こうありたいと言う願望を体現したキャラクターとして描かれている。
これもまたダメな中年男をトーマス・ヘイデン・チャーチは見事に演じている訳だ。
つまりマイルスとジャックは理性と本能をそれぞれ体現するキャラクターとして描かれているのだ。
本作は、われわれの人生の中で、理性に抑圧されている本能を解き放ち、その人の人生にとって重要な一歩を踏み出す、と言う物語に仕上がっている訳だ。
女優陣については、やはりマヤを演じたヴァージニア・マドセンが良かった。本作の賞レース後、兄であるマイケル・マドセン以上の活躍が期待できるのではないか、と思える。オファーも倍増するだろう。
また、ステファニーを演じたサンドラ・オーも非常に印象的な容貌と印象的な演技を見せてくれている。余談だが、このサンドラ・オーは、本作の監督アレクサンダー・ペインの奥さんと言うこともあり、今後が楽しみな女優さんの一人なのだ。
とにかく、本作「サイドウェイ」は、人生に悩んだ人々のひとつの指針として機能する、もしかしたらわたし達観客の人生すら変えてしまう程の魅力と力を内包する作品なのかも知れない。
ところで余談だが、ラストのカットは行間を読む観客にとっては大変素晴らしいカットだと思うのだが、もしかすると、「何てとこで終わるんだよ!」とお怒りになる観客の皆さんもいるかも知れないと思ってしまう。
わたし的には前述のようにラスト・カットから画面が暗転した瞬間、正に「ニヤリ」と言う感じで、思わず拍手しそうな勢いだったのだ。
こんな格好良い終わり方はなかなかないぞ。
背中を押された結果ではなく、背中を押されて第一歩を踏み出す事が重要なのだ。
☆☆☆☆ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったらクリック!
http://blog.with2.net/link.php/29604
離婚のショックから立ち直れない小説家志望の教師マイルス(ポール・ジアマッティ)は、結婚を一週間後に控えた大学時代からの親友で売れない俳優のジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)とカリファルニアのワイナリー巡りの旅に出る。
男二人のワイン三昧の気ままな旅は、ワイン好きの魅力的な女性マヤ(ヴァージニア・マドセン)とステファニー(サンドラ・オー)の出会いをきっかけにマイルス自身を見つめ直す旅へと変わっていく。(ちらしよりほぼ引用)
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ(マイルス)、トーマス・ヘイデン・チャーチ(ジャック)、ヴァージニア・マドセン(マヤ)、サンドラ・オー(ステファニー)
本作「サイドウェイ」はご承知のように低予算映画ながら数々の賞を受賞している作品である。
そう言うこともあり、わたし的には「第77回アカデミー賞授賞式」前に何とか観たいと思っていた作品だったのだ。
そんな訳で、この度なんとか滑り込みで本作を鑑賞する事が出来た訳なのだ。
さて本編についてだが、一言で言うと本作「サイドウェイ」は本当に素晴らしい作品である。
脚本はご存知のように、ワインをフィーチャーしたもので、そのワインや葡萄の熟成や育成を、登場人物そしてわれわれ観客の人生や愛に例えた見事なもので、男二人の莫迦さ加減にゲラゲラ笑いながら、気が付いたら涙を零してしまっている、または見事に背中を押されてしまっている、むという感じのさわやかな感動作品に仕上がっている。
個人的には、特にラスト・カットからの暗転の潔さが大変素晴らしく、こんな格好良い幕切れを持つ作品は、最近お目にかかっていないと思う。
勿論アレクサンダー・ペインの前作「アバウト・シュミット」のラスト・カットも余韻が楽しめる素晴らしい幕切れだったのだが、本作の幕切れは、それ以上の感慨と余韻が楽しめる素晴らしいカットが使用されている。
とは言うものの、やはり低予算映画的な印象は否定できず、「アカデミー賞」の前哨戦たる様々な批評家協会賞の受賞は納得できるものの、果たしてかの「アカデミー賞」を見事受賞できるかどうかと言うと、若干微妙な印象を受けざるを得ない。
勿論、大作嗜好や賞狙い作品へのアンチテーゼ的なチャンスはあると思うのだが、その辺が興味深いのだ。
キャストは、はっきり言って主要キャストは四人とも大変素晴らしい。
と言うか、低予算映画の宿命と言うもので、脚本と演技合戦でしか勝負できないのだから、演技が素晴らしいのは当たり前なのだが・・・・
主役のマイルスを演じたポール・ジアマッティは、われわれ一般大衆のメタファーとなるキャラクターであり、若干神経質でモラリスト、そしてある種自分の閉鎖的な世界を持つ、平均的な大衆を体現するキャラクターとして描写されている。
そしてマイルスは、人生の中で重要な一歩をなかなか踏み出せない、自らが自らの周りに築いてしまっている心の壁に行動を制限されているキャラクターとして描かれているのだ。
そのダメな中年男をポール・ジアマッティは見事に演じている。
モラルや理性に縛られたマイルスのキャラクターは観客が一番感情移入しやすいキャラクターだろう。
一方、モラルが低く本能のままに行動してしまうジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)は、われわれ一般大衆のモラルはともかく、こうありたいと言う願望を体現したキャラクターとして描かれている。
これもまたダメな中年男をトーマス・ヘイデン・チャーチは見事に演じている訳だ。
つまりマイルスとジャックは理性と本能をそれぞれ体現するキャラクターとして描かれているのだ。
本作は、われわれの人生の中で、理性に抑圧されている本能を解き放ち、その人の人生にとって重要な一歩を踏み出す、と言う物語に仕上がっている訳だ。
女優陣については、やはりマヤを演じたヴァージニア・マドセンが良かった。本作の賞レース後、兄であるマイケル・マドセン以上の活躍が期待できるのではないか、と思える。オファーも倍増するだろう。
また、ステファニーを演じたサンドラ・オーも非常に印象的な容貌と印象的な演技を見せてくれている。余談だが、このサンドラ・オーは、本作の監督アレクサンダー・ペインの奥さんと言うこともあり、今後が楽しみな女優さんの一人なのだ。
とにかく、本作「サイドウェイ」は、人生に悩んだ人々のひとつの指針として機能する、もしかしたらわたし達観客の人生すら変えてしまう程の魅力と力を内包する作品なのかも知れない。
ところで余談だが、ラストのカットは行間を読む観客にとっては大変素晴らしいカットだと思うのだが、もしかすると、「何てとこで終わるんだよ!」とお怒りになる観客の皆さんもいるかも知れないと思ってしまう。
わたし的には前述のようにラスト・カットから画面が暗転した瞬間、正に「ニヤリ」と言う感じで、思わず拍手しそうな勢いだったのだ。
こんな格好良い終わり方はなかなかないぞ。
背中を押された結果ではなく、背中を押されて第一歩を踏み出す事が重要なのだ。
☆☆☆☆ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったらクリック!
http://blog.with2.net/link.php/29604
コメント